若山動物病院ブログ
尿もれ
千葉県佐倉市の『若山動物病院』の千明です。
夏の暑さが少しずつ和らぎ、秋を身近に感じるようになってきました。
病院内で誰よりも先に体で秋を感じているのは病院犬のシロちゃんです ◁ ´ᴥ` ▷
実はシロちゃんは体が冷えを感じると「尿もれ」をしてしまうんです。
この症状は一昨年くらいからあり、気温が下がる寒い季節になってくると顕著にみられるようになります。
尿もれとは
「尿もれ」は「尿失禁」とも言われ、寝ている時や歩いている途中で少しずつオシッコを漏らしてしまう状態を指します。
尿もれは避妊・去勢をした子や高齢の子に多くみられますが、年齢や性別に関係なくおこる可能性があります。
尿もれの原因
尿もれには様々な原因があり、いくつかの原因が重なっている場合もあります。
筋力の低下
ワンちゃん猫ちゃんも人と同じように歳を重ねるにつれて少しずつ筋力が低下します。
膀胱周辺や排泄に関わる筋肉が衰えてしまうことでお漏らしや尿もれにつながってしまいます。
単純な筋力の低下による尿もれであれば、筋トレやリハビリをおこなうことで症状が改善することもあります。
肥満
お腹の中についた脂肪によって排泄に関わる筋肉の動きが制限されてしまったり、膀胱が圧迫されてしまったりすることによって尿もれをおこしてしまうことがあります。
肥満は尿もれだけでなく他の疾患を引き起こす素因にもなるため注意が必要です。
ストレス
恐怖や不安・興奮などの精神的ストレスを感じると体のコントロールが上手くできなくなり、尿もれをしてしまうことがあります。
仔犬ちゃんや誰にでもフレンドリーですぐにテンションが上がってしまう子などは「嬉しい・楽しい」という正の感情によって尿もれをしてしまうこともあります。
ホルモンの影響
就寝時の尿もれの原因として多いのが「ホルモン反応性尿失禁」です。
特に避妊手術を受けた雌犬に多いとされ、5〜10%程度の子におこるとも言われています。
血中のエストロゲンやテストステロンが低下することで尿道括約筋の緊張が低下し、リラックスをしている時に尿道括約筋の収縮が緩んで尿もれをしてしまいます。
ホルモン反応性尿失禁は雄では稀とされています。
雄では前立腺の問題によって尿もれをすることがあり、特に去勢をしていない雄は注意が必要です。
また性ホルモン以外のホルモンの影響としては「副腎皮質機能亢進症」によって多飲多尿になり、尿もれに似た症状が出ることもあります。
泌尿器疾患
膀胱や腎臓に結石ができていたり感染や炎症をおこしていたりと、なんらかのトラブルによって尿もれやお漏らしをひきおこすことがあります。
また異所性尿管や尿膜管遺残というような先天的疾患がある場合や、腫瘍ができている場合もあります。
神経疾患
椎間板ヘルニアや変形性脊椎症などによって神経が圧迫されて機能障害をおこすと、正常な排泄ができなくなって尿もれをおこすことがあります。
認知機能障害
脳の機能が低下すると排泄に関する神経や筋肉のコントロールが難しくなって尿もれをひきおこしてしまったり、トイレの場所を認識できなくなってお漏らしや尿もれをしてしまうことがあります。
尿もれを治すには
尿もれには様々な原因があり、原因によって治療法も変わってきます。
日常生活の改善で良くなる場合もあれば、より専門的な知識や設備のある二次病院で治療を受けなければならない場合もあります。
どんな状態であったとしても、一番気にかけなければならないのは尿もれをしている子が精神的に傷ついているかもしれないということです。
今まではトイレでちゃんとオシッコできていたのに、寝て覚めたらベッドが濡れていたという状況は人に置き換えて考えても精神的にショックを受けますよね。
症状の改善・病気の治療も大切ですが、お家の子のメンタルケアも重要な治療の一つです。