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若山動物病院ブログ

「お大事に」と言われチョット複雑に・・・

お大事に

先日、私自身が入院してました。
日々動物たちの診察をしている私が、今度は「診られる側」になったのです。

入院中は「お大事にしてくださいね」とたくさんの方々に声をかけて頂きました。
その時に、言葉の優しさを感じたのです。

そして復帰してから、ちょっと不思議な気持ちになる出来事がありました。
退院したと言っても、まだ体調が完璧とは言えません・・・

診察を終えて飼い主さんをお見送りすると「先生こそお大事にしてくださいね」と声をかけられました。
1人ではなく、何人もの方に。
もちろん、皆さんの優しさなのは分かっています。
でも正直なところ、最初はチョット戸惑いました。
なぜなら・・・
私にとって「お大事に」は、飼い主さんや動物たちにお声がけする「こちら側の言葉」だったからです。

「お大事に」という表現は、「どうかご自分の体を大切にしてください」という意味を込めた挨拶で、元々は「お体をお大事になさってください」という丁寧な表現の略語です。
しかも江戸時代や明治時代から医療現場の挨拶として使われてきた歴史ある言葉で、今日でも病院や薬局などでは必ずと言っていいほど耳にします。

文法的に「お大事に」は・・・
「お」は尊敬語、丁寧語の機能を持つ接頭語、「大事」は名詞「に」は助詞で、本来ならならその後に「してください」や「なさってください」といった動詞の尊敬語が続きます。
それを省略して、あいさつとして完成されたのが「お大事に」なんです。

私たちが使うときは、「診察が終わりましたよ。あとはご自宅で静養なさってくださいね」
というような、思いやりと安心を込めた締めの言葉になります。

でもそれが、逆に自分に返ってきたとき・・・
今回は「逆お大事に」とでも呼びたくなるような現象に、戸惑いと嬉しさなどが交じり合ったチョット複雑な気持ちになってしまいました!

普段、動物たちと飼い主さんの健康を支える立場にいる自分が、逆に「体を大切にして」と言われる。
そこには上下関係ではない、人と人との温かいつながりがありました。

疲れているとき、少し無理をしているとき、「お大事に」という言葉は実はとても効くのです。
「ちゃんと見てくれている」「気にかけてくれている」と感じると、不思議と力が湧いてきます。

「お大事に」は、ただの形式的な言葉ではありません。
誰かの体を気遣う、その気持ちがぎゅっと詰まった、日本語ならではの優しい文化だと思います。

次に私が「お大事に」と言うときは、もっと心を込めて言おう。
そんなふうに思えた出来事でした。