若山動物病院ブログ
猫の肝臓は繊細
「猫は肝臓が弱い」と聞いたことはありませんか?
実は猫の肝臓は私たちヒトや犬とはチョット違い、解毒があまり得意ではないんです。
今回は、そんな猫の繊細な肝臓についてのお話です。
そもそも肝臓ってどんな臓器?
肝臓は「体の化学工場」とも言われ、とても大切な働きをしている臓器なんです。
その働きは、主に以下の3つがあります
1. 栄養の代謝(加工と貯蔵)
2. 胆汁の生成(脂肪の消化)
3. 有害物質の解毒(分解・無害化)
この中でもヒトや犬では「解毒」する能力が、非常に高いと言われています。
そのため多少の薬や化学物質でも、問題無く処理できる力を持っています。

ヒトや犬は・・・
そうであっても猫は違います!
猫の肝臓には「余裕がない」
猫は、完全肉食として進化してきた動物です。
つまり普通に生活する上では、毒を持つ植物や人工的な化学物質を口にすることはありませんでした。
そのため、それらを解毒する必要がなかったのです。
その結果、肝臓は解毒するシステムが発達する必要も無かったんです。
特に解毒に使われる「グルクロン酸抱合」という代謝経路が非常に弱く、様々な物質をうまく処理できません:

例えば・・・
アセトアミノフェン(ヒトの風邪薬に含まれる)、フェノール類(精油・除菌スプレーなど)、タマネギ・ニンニクの成分、一部の芳香剤
こんなものは、猫の体には有害なモノなんだよ!
そのためヒトの薬を誤って与えてしまうと、わずかな量でも中毒や死に至ることがあります。
肝臓は沈黙の臓器だから怖い
猫の肝臓病は病気になっても、その初期には症状がほとんど出ません。
なぜなら肝臓は「多少のことがあっても黙々と働き続ける臓器」だからなんです。
そして、もう働けないぞとなった時には以下のような症状が出てきます。
食欲が落ちる
元気がなくなる
嘔吐が続く
黄疸(白眼や皮膚が黄色くなる)

猫にありがちな肝臓トラブル
1.脂肪肝(肝リピドーシス)
猫が食べない日が3日以上続くと、脂肪が肝臓にたまって機能不全に。
特に太り気味の猫は要注意!
2.薬物中毒による肝障害
飼い主が「ヒト用の風邪薬を少しだけ…」と与えることで、急性中毒を引き起こすことがあります。
3.慢性肝炎・胆管炎
原因は様々で、細菌感染・免疫異常・胆泥の滞留などが考えられます。
飼い主さんにできる肝臓のケア
猫の肝臓を守るために、以下のポイントをぜひ押さえてください:
絶対にヒト用の薬を与えない
精油や強い香りの芳香剤は避ける(アロマディフューザー含む)
体調不良時の「食べない」は放置しない
年2回は血液検査で肝酵素をチェック
食事に肝臓サポート食を活用することも
肝臓の病気は、早期に見つければ回復しやすいとも言われます。

だから・・・
「少〜し、元気がないかも?」
「んん、なんか変かも?」
と感じたときは迷わずに、相談しに行きましょうね!
まとめ
猫の肝臓は、私たちが思っている以上に繊細です。
「肉だけ食べて、余計なことはしません!」という完全肉食の臓器です。
だからこそ猫基準で暮らしを整えてあげることが、何よりの予防になります。
その小さな体の中で、今日も肝臓は黙ってがんばって働いています。