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下痢だったのに、実は便秘だった猫

下痢だったのに、実は便秘だった猫

うちの子、下痢をしてるんです・・・
しかも幾度もトイレにも行くし
最後にはウンチ色した、汁っぽいのが垂れちゃうまでになってしまって・・・

そんな心配を抱えて、猫ちゃんを連れて来院された飼い主さん。
お尻周りの毛は、漏れ出てくるウンチで汚れちゃってます。

なるほど・・・
ウンチがビチャビチャですけど、これって下痢じゃないかもですよ?
じゃぁ調べてみましょうね!

そんなことで、チェック!
レントゲン写真を撮ってみると、腸の中はウンチの塊がビッシリいっぱい!

下痢と思っていたら。実は便秘だった・・・
なんか変な話のようですが、実際にはそのような事があります。

それって・・・
そんな状態なときに下痢止めを使ってしまったら・・・
メッチャ大変なことになってしまうってこと?
もし自己判断で薬飲ませたら、怖〜い!

目次

下痢のようで下痢じゃない?「偽下痢」とは

便秘になると、腸の中には硬いウンチが溜まっている・・・状態になります。
しかし溜まっている硬いウンチでも、胃の方に近い部分のウンチは水分を含んで軟らかい状態なんです。
その軟らかいウンチが、硬いウンチの横を通り抜けて肛門から出てきてしまう・・・
それって見た目には下痢ですよね?
また場合によっては、ウンチ色した汁っぽいものだけが漏れ出してくることもあります。

このように実際には便秘なのに出てきたウンチは軟らかく、あたかも下痢のように見える・・・
これが「偽下痢」と呼ばれる現象なんです。

見た目はまるで下痢です。

トイレには水分の多い軟らかいウンチや、水っぽいウンチが出ているため「下痢だ」と思いがちです。
しかし実際には腸内には、硬いウンチがいっぱい。

特に、

高齢で動きが少ない
腰などにトラブルを持つ
慢性的な脱水や腎臓病がある
フードの種類や量、水分摂取量など

などが原因となる場合に見られます。

なぜ便秘になるの?

便秘になるには、さまざまな原因があります。
いくつか代表的なものを見てみましょう。

原因の種類具体例解説
消化管運動の低下加齢、神経疾患、甲状腺機能低下など年をとると腸の動きが鈍くなり、ウンチが滞りやすくなる
脱水慢性腎臓病、水をあまり飲まない体内の水分が減ると、腸内のウンチから水が吸収され、硬くなる
痛みや不快感骨盤の変形、肛門疾患排便時に痛みがあると、ウンチを我慢してしまうことがある
環境の問題トイレの数・清潔さ・配置トイレが汚れていたり、他の猫が使っていると、我慢してしまう
食事内容食物繊維の不足、低消化性フード腸の蠕動運動が鈍くなり、ウンチが乾燥しやすくなる

このようにカラダの問題+生活環境などの要因が重なって、慢性的な便秘が起きやすくなります。

🔬 どうやって見分けるの?診断のポイント

「下痢のように見えるけど実は便秘」
これを見抜くには、検査がとても大切です。

• 腹部触診:お腹をそっと触ると、硬いウンチの塊(便塊)に触れることがあります。
• レントゲン検査:最も確実。大腸にウンチがぎっしり詰まっているかを確認できます。
• 直腸検査:肛門や直腸の狭窄、腫瘍などがないか確認します。
• 血液検査:脱水の有無や腎臓の状態、電解質の異常をチェック。
• 甲状腺ホルモン検査(T4):下痢を起こしやすい甲状腺機能亢進症との区別が必要です。

このように原因は様々で、見た目だけでは判断できないことがあります。

「なんとなく下痢っぽい」「食欲も落ちている」などのサインがあるときは、必ずレントゲン検査を行い、確認が必要です!

治療と再発予防

まずはウンチを出すことから

軽度の便秘であれば、浣腸やラクツロース(乳糖下剤)などで排便を促します。
重度の場合は、鎮静下でウンチを出す必要もあります。
放っておくと腸が拡張して「巨大結腸症」になってしまうこともあるため、早めの処置が大切です。

再発を防ぐための生活改善

対策内容
水分補給ウェットフード中心にし、スープを混ぜたり自動給水器を活用する
食事管理可溶性・不溶性繊維をバランスよく含むフードを食べさせる
腸の動きを助ける薬ラクツロース、乳酸菌製剤などを使用
運動促進キャットタワーや遊びで日常的な動きを増やす
環境整備清潔なトイレを複数設置し、落ち着けるウンチ環境を作る

特に高齢猫では腎臓病や脱水などが背景にあることも多いため、水分管理が重要となります。
日々の「飲水量チェック」や「ウンチの硬さチェック」を習慣にすると良いでしょう。

下痢のように見えても、実は便秘が隠れていることがあります。
腸がパンパンの状態では、食欲不振や嘔吐の原因にもなります
また再発しやすいので、「水分・運動・トイレ環境」の3つを整える事が大切です。

猫は元々水をあまり飲まない動物だから、冬の暖房期やシニア期には注意が必要なのね。
ウンチが出ているように見えても油断しないことが、健康維持の第一歩にもなるってこと、わかったわ!

まとめ

見かけの下痢は、「腸からのSOS」ってこともあります。
下痢だからと下痢止めを与えてしまうと、かえって状態が悪化することもあります。
ウンチがゆるかったら、下痢だけじゃなく「便秘ではないか?」と疑うことも大切です。

「下痢=腸炎」と思い込まず、正しい判断とケアを心がけましょう。
特にシニア猫や持病のある猫では、注意が必要ですよ!