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若山動物病院ブログ

膝蓋骨脱臼

千葉県佐倉市の『若山動物病院』の千明です。

関東も梅雨入りして雨の日が多くなってきました。
雨が多くなるとどうしても散歩に行く回数が減ってしまうため、お家の中で体力を発散するしかなくなってしまいます。
しかしお家の中にはソファやテーブルなどの家具があるため体力を発散するための充分なスペースがあるとは言えません。
そんな中で走ったり遊んだりすると家具にぶつかってしまったりフローリングで滑ってしまったりと事故が起こりやすくなります。
こんな時に気をつけなければならないのが『膝蓋骨脱臼』です。

目次

膝蓋骨脱臼とは

膝蓋骨とは膝関節に蓋をするようについている骨のことで「膝のお皿」とも呼ばれており、犬は楕円形、猫は円形の形をしています。
正常の膝蓋骨は大腿骨(太ももの骨)にある滑車溝という溝にはまっていて、この溝を膝蓋骨が滑らかに動くことで膝の曲げ伸ばしをすることができます。
さらに膝蓋骨には大腿四頭筋(太ももの前部分についている筋肉)の力を効率よく伝えるために重要な役割を果たしています。
『膝蓋骨脱臼』とは膝蓋骨が本来の位置から外れて内方または外方に動いてしまう状態のことをいいます。
膝蓋骨が外れてしまうと大腿骨や脛骨(すねの骨)が曲がってしまい、後肢の運動機能異常や関節軟骨の損傷などさまざまな症状を引きおこしてしまいます。

膝蓋骨脱臼
左側:正常位置にある膝蓋骨 右側:脱臼している膝蓋骨

原因

実は膝蓋骨脱臼がおこる根本的な原因ははっきりとわかっていません。
しかしその多くには遺伝的な要因が関与していると考えられており、さらに出生後の環境要因が複合的に関係しているとも言われています。

遺伝的要因

膝蓋骨がはまっている滑車溝が浅いなど骨や靭帯・筋肉の異常により、生まれつきかもしくは成長過程で膝蓋骨脱臼がおこります。
特に1歳頃までの成長期には脱臼の程度が進行しやすい時期であり、成長期に重度の脱臼がある場合には骨や筋肉の変形が進んで歩けなくなったり、より高度な手術が必要となることもあります。

後天的要因

走っていてぶつかったり滑って転んでしまったりなどして膝関節に衝撃が加えられると膝蓋骨脱臼をおこしてしまうことがあります。
また後肢で立ち上がったり飛び跳ねたり、ソファやベッド・階段などの登り降りで膝関節に強い負荷がかかると膝蓋骨脱臼をおこしてしまうこともあります。

膝蓋骨脱臼の症状

膝蓋骨脱臼には膝蓋骨が内側に外れる「内方脱臼」、外側に外れる「外方脱臼」、どちらにも外れる「両方向性脱臼」があり、その重症度はグレードと呼ばれる症状ごとに4つに分類されています。

重症度症状
グレード1手で押すと膝蓋骨を脱臼させられるが、手を離すと正しい位置に戻る。
グレード2膝の曲げ伸ばしなどで自然に脱臼と整復が繰り返し起こる。
グレード3膝蓋骨は常に脱臼している。手で押すと正しい位置に戻すことができるが、手を離すとまた脱臼する。
グレード4膝蓋骨は常に脱臼しており、手で押しても正しい位置には戻らない。

膝蓋骨脱臼には急性・慢性があり、急性の脱臼では痛みから歩行異常が見られ、慢性の脱臼では重症度や骨の変形の程度によって見られる症状は変わってきます。
また成長や加齢に伴ってゆっくりと進行した場合には痛みが出にくい場合もあります。

お家でのチェックポイント

膝蓋骨脱臼で見られる症状はさまざまで正常に見える歩き方の場合もあります。
そのため普段との違いを注意深く観察し、早期発見することが大切です。

  • 後肢を触ると嫌がる
  • 後肢をかばうように歩く
  • 歩いている時や走っている時などに突然後肢を上げる
  • ケンケンやスキップをすることがある
  • ストレッチするように後肢をうしろに伸ばす動作をする
  • 歩いている時や走っている時にガクッと膝が崩れるような様子がある
  • 背中を丸めて膝を曲げたまま歩く
  • 膝を曲げ伸ばしするとポコッと何かが動く感触がある
  • 抱き上げた時にO脚やX脚のように見えたり、後ろ足の足先が交差したりする
  • 歩いている時にあまり膝を曲げずロボットのように歩く

お家でできること

膝蓋骨脱臼は完全に予防することができない病気の1つです。
しかし日頃から気を付けて生活することで発症や進行を遅らせることができます。

お家でできること :筋トレ

衝撃や強い負荷に負けない膝関節を作るには下半身の筋肉や靭帯を強くする必要があり、そのためには日頃の運動がとても大切です。
お散歩時には上り坂を利用して下半身に体重がかかる機会を増やしたり、足首丈の草地や厚みのあるマットの上を歩かせるなどして後肢を高く上げる工夫をしたりすると効率よく下半身を鍛えることができます。

筋トレ
丸めたタオルをまたぐことで後肢を高く上げて歩くことができます

お家でできること:ストレッチ

衝撃や強い負荷に負けない膝関節を作るには筋肉も必要ですが、その衝撃を吸収して逃すためにも体の柔軟性はとても重要です。
膝蓋骨脱臼をおこすと痛みから後肢の動きが制限されてしまうため、関節や靭帯・筋肉が硬く凝り固まってしまい、さらに動きが制限されてと悪循環になってしまいます。

ストレッチ

ストレッチをおこなうことで凝り固まった体をほぐし、悪循環を断ち切ることができます。
またストレッチは全身の血流改善にもつながるので関節の痛みを軽減する効果もあります。

お家でできること:足周りのお手入れ

常に爪や足裏の毛を短くしておくことで足元が滑りづらくなり、滑ったり転んだりなどの事故を防ぎやすくしてくれます。
さらに肉球を保湿してモチモチと柔らかくしておくことで衝撃を吸収し、足元が踏ん張りやすくなります。

お手入れ

肉球を保湿する際には一緒に足先のマッサージをしてあげるとより効果的です。
特に老齢の子は指が開きづらくなっているため、指と指の間を広げたり指1本1本を上下に動かしたりしてマッサージしてあげると指が広がりやすくなり、より踏ん張りがきくようになります。

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