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酸素吸入の時の酸素濃度

酸素吸入の時の酸素濃度

新型コロナが話題だった時、酸素飽和度と言う言葉がテレビの中で良く聞く事がありました。
この酸素飽和は「SpO₂」とか「サチュレーション」とも言われ、動脈を流れる赤血球に含まれるすべてのヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの割合で、標準値は96~99%です。

もし「SpO₂」が90%を下回る場合には、酸素吸入を行います。
その際に肺に送り込む酸素濃度を「吸入気酸素濃度」とか「FIO₂」と言います。

ちなみ我々が吸っている空気中の酸素濃度は約21%,つまりFIO₂は約21%です。
そのため「SpO₂」を上げるためには、21%よりも高い酸素濃度を送り込む必要があります。

じゃ濃度の高い酸素を使えば良い、つまり「FIO₂」を高くしてあげれば良いのでしょうか?
ところがギッチョン、
FIO₂が高いと体に良い、またFIO₂が低いと苦しくなると思われるかもしれません・・・
しかし、実はそう言うわけでも無い部分があります。

高濃度の酸素を投与し続けてしまうと、カラダに備わる抗酸化防御機構の処理能力が間に合わず老化や様々な病気の発生に関連している活性酸素が発生してしまいます。
その結果、酸素中毒を引き起こし気管支の粘膜や肺の細胞にトラブルが起きてしまいます。

ちなみ肺は投与された酸素濃度に比例して、活性酸素が発生するとされています。
また長い時間「FIO₂」50%以上の高濃度酸素を吸入すると、場合により呼吸不全となってしまう事があります。

酸素が大量に肺の中に入ると、カラダが勝手に「これ以上呼吸しなくても大丈夫!」と勝手に思い込んでしまいます。
その結果、呼吸をサボってしまいカラダの中の二酸化炭素がカラダの外に出せずに溜まってしまいます。
つまりカラダの中の酸素濃度は高くなっても、二酸化炭素濃度は下がらない「CO₂ナルコーシス」と言う状態となってしまい意識障害を起こしてしまう事があります。

慢性の呼吸器病に罹っている場合には、二酸化炭素がカラダの中から出にくい状態になってしまっている事があります。
つまりカラダの中にに二酸化炭素が溜まりやすいため、高濃度の酸素を投与すると「CO₂ナルコーシス」となってしまいます。

毎日普段吸っている空気には,酸素以外に窒素が約78%ほど含まれています。
ちなみ酸素は約21%です。

吸った空気の中の酸素はカラダの中に取り込まれますが、窒素は取り込まれること無く肺胞の中に残ります。
つまり少なくとも吸った空気の8割は肺胞の中に残っている事になり、言ってみれば肺胞は2割くらい小さくなるだけです。

しかし酸素濃度が高くなると、例えば100%濃度の酸素が肺胞内に入ったとします。

酸素は血液中に取り込まれてしまうためと肺胞の中には何も残りません。
つまり肺胞はペチャンコになって、肺が縮んでしまいます。
まぁ100%の酸素じゃ無くても、酸素濃度が濃いと肺胞内に残る窒素の量が減るため肺は縮んでしまう肺の虚脱が起きてしまいます。

このように単純に酸素を吸えば良い訳じゃ無いし、高いFIO₂が体に悪いって事もあります。
酸素吸入する際に設定する「FIO₂」ですが、結構奥深いものがあります。