若山動物病院ブログ
アトピー性皮膚炎
夏は暑さと湿気でいろいろなトラブルがおきやすい季節です。
特に皮膚は紫外線や冷房の冷たい風、他の季節よりも盛んに分泌される皮脂など、負担のかかる刺激が盛りだくさん!
今回は多くある皮膚炎の中でも特に夏に悪化しやすい『アトピー性皮膚炎』についてお話します!
アトピー性皮膚炎とは
『アトピー性皮膚炎』とは強いかゆみのある湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気で、体質や環境中の何らかの要因によって免疫が過剰に反応して炎症をおこしてかゆみが生じるとされています。
皮膚に炎症がおきると皮膚のバリア機能が低下してしまい、さらにかゆみを引きおこしやすくなります。
また、かゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸びることで正常の皮膚状態の子と比べて小さな事でもかゆみを感じやすくなります。
アトピー性皮膚炎はさまざまな要因が複合的に絡んでいるため、一度発症すると完治が難しいとされています。
原因と悪化要因
アトピー性皮膚炎の根本的な原因はまだわかっていませんが、遺伝的な要因が大きく関与していることが知られていて、他にも皮膚のバリア機能の低下や環境中のアレルゲンの存在などが関係しているとされています。
遺伝的要因
遺伝的要因として特定の犬種や猫種がアトピー性皮膚炎を発症しやすいことが知られていますが、好発種に限らずどの子でも発症する可能性があります。
〈 アトピー性皮膚炎の好発犬種 〉
- 柴犬
- シーズー
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- トイプードル
- ラブラドール・レトリバー
- フレンチ・ブルドッグ
- コッカースパニエル
〈 アトピー性皮膚炎の好発猫種 〉
- アビシニアン
- ヒマラヤン
- ペルシャ
環境要因
環境中のアレルゲンに接触することで皮膚にかゆみと炎症を引きおこします。
- ハウスダスト
- ダニ
- カビ
- ホコリ
- 花粉
- 動物の毛やフケ
その他の要因
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因はよってさまざまですが、何か1つの要因ではなく複数の要因が複雑に絡んでいる場合がほとんどです。
- 乾燥
- 皮脂
- 唾液
- 紫外線
- ストレス
- 睡眠不足
- 食べ物
- 衣類
- 金属
- 洗剤や柔軟剤
- シャンプー剤
症状
アトピー性皮膚炎は特定の場所に症状が現れやすく、主に耳・顔・足や指の先・脇の下・お腹周り・足の付け根・尻尾の付け根に皮膚の赤み・腫れ・出血・脱毛・皮膚のびらんや潰瘍なとが見られます。
また強いかゆみがしつこく続くため患部を頻繁に舐めたり、掻いたり、噛んだりして、その刺激によって皮膚の色素沈着が見られることもあります。
症状の重さや現れる場所はその子その子で違い、生活環境や季節、アレルゲンの種類や量の変化によってもその症状は変動します。
夏に悪化しやすいのはなぜ?
アトピー性皮膚炎は季節によって悪化要因が違い、春・秋は花粉、冬は乾燥、そして夏の悪化要因は皮脂と紫外線です。
夏は気温と湿度が高いために体の中に熱がこもりやすく、皮膚の温度も上がってしまいます。
皮膚の温度が高くなると皮脂が過剰に分泌され、蒸発することなく皮膚表面にとどまってベタつきへと変わります。
過剰に分泌された皮脂は紫外線を受けると酸化し、それによって皮膚が刺激されて皮膚の乾燥やバリア機能の低下へとつながり、症状が悪化してしまうのです。
悪化を防ぐには
夏にアトピー性皮膚炎を悪化させないためには皮膚のケアと生活習慣を見直すことが大切です。
そこで重要になってくるのが皮膚の洗浄や保湿などをおこなうシャンプー療法やかゆみのコントロールによる皮膚のケアです。
シャンプー療法の効果
シャンプー療法とは薬用シャンプーや保湿剤などを使って皮膚を正常で健やかな状態に近づけることを目的としています。
そのためには数多くあるシャンプー剤の中からその子の皮膚の状態に合ったものを選択し、皮膚に負担をかけない方法でシャンプーをする必要があります。
- 洗浄効果:皮膚表面についたアレルゲンや細菌、過剰に分泌された皮脂などを取り除くことができます。
- 皮膚修復効果:皮膚の水分と油分のバランスを整え、皮膚のバリア機能を正常に近づけます。
- 保湿効果:皮膚に水分を与え乾燥を軽減します。
保湿剤の効果
皮膚の状態に合った保湿剤を使用することで皮膚に適度な水分を保持させ、皮膚のバリア機能を修復しやすくしてくれます。
また充分な保湿には熱を冷ます効果もあるため、皮膚表面の温度を下げてかゆみや赤みを軽減することにもつながります。
シャンプー後は皮膚が水分を吸収しているため、保湿剤を塗ると水分が逃げないように皮膚に“ふた”をすることができ、より保湿の効果を高めることができます。
アトピー性皮膚炎の皮膚は過敏になっているため少しの刺激でもかゆみを引きおこします。
洗い残しや濯ぎ残しも悪化の原因にはなりますが、だからと言ってゴシゴシ洗ってしまったりシャンプー剤を過剰に使ったりしても皮膚の状態を悪くしてしまい、皮膚表面に必要な油分まで取り除いてしまうので洗い方には充分な注意が必要です。
かゆみのコントロール
アトピー性皮膚炎には強いかゆみが伴います。
かゆみによって患部を舐めたり、掻いたり、噛んだりしてしまうと弱っていたバリア機能がより破壊されて炎症が進み、かゆみを感じる神経がさらに敏感になるという悪循環に陥ります。
また かゆみは心体的ストレスとなり睡眠の質を低下させ、症状の悪化要因を増やすことにもつながります。
アトピー性皮膚炎を悪化させないためにも、かゆみを抑える内服薬や外用薬を使いながら上手にかゆみをコントロールしていくことが必要です。
お家で気をつけたいこと
アトピー性皮膚炎を完全に予防することはできませんが、生活環境を清潔に保ち、アレルゲンへの接触を最小限にすることで症状の発症や悪化を防ぐことができます。
またシャンプー療法とかゆみのコントロールをうまく組み合わせることで症状を早期に抑えることができたり、二次感染を防いだり、抗生剤や痒み止めなどの減薬・断薬にも繋げることができます。