若山動物病院ブログ
お腹の中には…
千葉県佐倉市の『若山動物病院』の千明です。
数日前から下痢と嘔吐を繰り返し、体調を崩していた猫ちゃんが来院。
問診をしながらお家での様子を詳しく聞いていくと、元気がなく食欲も落ちているとのこと。
体重・体温を測って検査のためにウンチを採取。
顕微鏡でウンチの検査をしてみると、そこに見えたのは大量の『腸トリコモナス』でした!
腸トリコモナスとは
『腸トリコモナス』とは脊椎動物全般に寄生する原虫の一種で、結腸や盲腸など大腸に寄生して慢性の下痢を引き起こします。
「トリコモナス」にはいくつか種類があり、歯科健診で見られる「口腔トリコモナス」もそのうちの一種です。
トリコモナスはそれぞれ感染部位に特異的な性質を持っているため腸トリコモナスが口に、口腔トリコモナスが腸に感染するということは稀とされています。
症状
仔犬ちゃん・子猫ちゃんや何らかの原因で免疫力が下がってしまっている場合には下痢や血便、粘液便、肛門の腫れや赤み、直腸脱、脱水などの症状を発症することがあります。
大人のワンちゃん・猫ちゃんでは感染していても無症状の場合があるので注意が必要です。
感染経路
腸トリコモナスへの感染は腸トリコモナスに汚染されたウンチを口にしてしまう「経口感染」が主な感染経路となっています。
通常、ウンチと一緒に体外へ排出された腸トリコモナスは時間の経過とともに活動性も低下していきますが、条件が整っていると5日間ほど生存する場合もあると言われています。
そのためお散歩の途中で口にしてしまったり、人が知らずに踏んでお家の中に持ち込んでしまい、ワンちゃん・猫ちゃんが玄関に降りた際に体へ付着して毛づくろいの時に口にしてまったりということも考えられます。
時間の経過とともに活動性が低下する腸トリコモナスは顕微鏡でのウンチ検査ではなかなか見つけづらく、日頃から動物病院でおこなわれているウンチ検査での検出率は14%程度だそうです。
顕微鏡でのウンチ検査で見つけるためには、採れたてホヤホヤの新鮮なウンチでの検査が推奨されます。
下痢や血便などの消化器症状がなくても定期的にウンチ検査を受けることで、病気の早期発見・早期治療につながります。