若山動物病院ブログ
足の腫瘤
犬の足先に近い部分に、出血を伴う腫瘍が出来てしまいました。
細胞を採取し検査に出してみたら「皮膚組織球腫」とのことです。
この皮膚組織球腫が発生する原因は、また完全には解明されていません。
しかし、いくつかの要因が関与していると考えられています。
皮膚組織球腫は、皮膚の表面近くに存在する「ランゲルハンス細胞」由来の腫瘍です。
ここで「ランゲルハウス」って名前から、何か頭の中に浮かびませんか?
そうなんですよ!
膵臓の「ランゲルハウス島」です!
「ランゲルハンス島」は膵臓内に分布する内分泌腺で、膵島とも呼ばれます。
このランゲルハンス島から、血糖値をコントロールするインスリンが分泌されます。
それに対して「ランゲルハンス細胞」は皮膚など外界と接する場所に存在する細胞です。
膵臓とは関係は無く、免疫システムの重要な役割を果たしている細胞です。
「ランゲルハンス細胞」とは
「ランゲルハンス細胞」は皮膚にある「見張り番」です。
そしてカラダの中に侵入しようとする細菌やウイルスなどの「異物」を見つけて、捕まえるのが仕事です。
もっと簡単に言うと・・・
皮膚はカラダの中を守るための擁壁で「ランゲルハンス細胞」そこをパトロールする警察官みたいな細胞です。
もし異物を発見したら、それを捕まえてカラダの免疫の司令部であるリンパ節まで運びます。
リンパ節で異物を「見せて」、免疫細胞(T細胞)に「敵がいるから戦って!」と伝え異物と戦う準備をします。
なぜ大切な細胞なのか
ランゲルハンス細胞が働いてくれるおかげで異物を早く発見し、感染や病気と戦えるようになります。
もしこれが働かないと、病原体が体の中に入り込み病気になるリスクが高くなります。
ランゲルハンス細胞は外部からの侵入者をいち早く発見し、免疫システムを動かす「皮膚の守護者」なんです。
日常生活で例えると
ランゲルハンス細胞は、家の警備システムのセンサーのようなものです。
細菌やウイルスなどの侵入者が家の中に入り込んだら、それを感知して警報を鳴らします。
そしてセキュリティチームである免疫細胞に異常を知らせる、そんな働きをしています。
治療はどうするか?
もし皮膚組織球腫であった場合、どのような治療方法があるでしょう?
自然消退を待つ
皮膚組織球腫の大半は良性であり、また数週間から数か月以内に自然消退することがほとんどです。
そのため治療を行わず、経過観察するの場合が一般的とは言われています。
外科的に切除する
腫瘍が大きくなってしまったり、表面が潰瘍化して二次感染を引き起こしてしまうことがあります。
そのような場合にはモノに擦れてしまい出血してしまったり、腫瘍の表面がジクジクしたり出血が見られますので外科的に切除してしまうことがあります。
また悪性の可能性が否定できない場合にも、同様に外科的な切除が行われます。
薬を飲む
自然退縮しない場合や免疫不全状態が疑われる場合には、ステロイドや免疫調節剤を用いることもあります。