若山動物病院ブログ
胆泥症
千葉県佐倉市の『若山動物病院』の千明です。
9月から始まっている『秋の健康診断』
ワンちゃん・猫ちゃん、老若雄雌関係なく多くの子が健康診断を受けて、今までの健康管理の振り返りと更なる健康に向けて生活習慣の改善をおこなっています。
今年の秋の健康診断では、肝機能に関する数値が高くなってしまっている子が多くみられています。
肝機能の数値が高くなるのにはさまざまな原因があり、肝臓自体にトラブルがおきていないかを確認するために追加でエコー検査をおこないます。
その時によく見つかるのが胆嚢内の胆汁が固くドロドロになってしまっている『胆泥症』です。
胆泥症とは
胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁を濃縮して一時的に溜めておくための袋状の臓器です。
胃に食べ物が入ってくると、脂肪の分解を助けるために溜めていた胆汁を十二指腸へと送り込みます。
正常な胆汁はサラサラとしていて流動性があり、エコー検査では胆嚢の中は黒く何も映りません。
しかし、何らかの原因で胆汁の性質が悪化したり、排出がうまくいかなくなったりしてしまうと胆汁がどんどん濃縮されてしまいます。
濃縮された胆汁はドロドロとした砂状や泥状の物質となり、それが『胆泥症』です。
胆泥症が進行すると胆石症や胆嚢粘液嚢腫になることがあります。
胆泥症の原因
胆泥症の原因はさまざまありますが、すべてが解明されているわけではありません。
- 生活習慣:肥満、運動不足、食餌、加齢など
- 肝炎
- 胆嚢炎
- 膵炎
- 腸炎
- 細菌感染
- 糖尿病
- 高脂血症
- 脂質代謝異常
- 甲状腺機能低下症
- 副腎皮質機能亢進症
- 遺伝的要因:ミニチュア・シュナウザー、シェットランド・シープドッグ、コッカー・スパニエル、ダックス、シーズー、ビーグル、チワワ
胆泥症の症状
胆嚢は肝臓と同じく「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期の場合には目立った症状を示しません。
そのため今回のように健康診断などで偶然見つかることも多いです。
症状が進行してくるとさまざま症状が現れることがあります。
- 発熱
- 元気がない
- 食欲低下
- 下痢、嘔吐
- ウンチが白くなる
- 腹痛や腫れ
- 黄疸
胆泥症の予防
胆泥症は完全に予防することはできませんが生活習慣が大きく関わっているので、日頃から気をつけてあげることが大切です。
その1:適正な食餌、適量なおやつ
脂質の高い食餌やおやつは胆泥症を引き起こしやすくするために注意が必要です。
食餌やおやつの原材料に小麦・とうもろこし・大豆が使われている場合には、それらをひかえるだけで改善することもあります。
また、おやつの与え過ぎが胆泥症に関係しているという研究データもあるそうなので、おやつは質の良いものを選んで1日の食餌量の1割程度にとどめましょう。
その2:適度な運動
胆泥症を悪化させる原因に肥満や運動不足が関係しています。
適度な運動をすることで胆嚢の機能を維持して胆汁の流れを促進する効果があります。
ワンちゃんはお散歩、猫ちゃんはおもちゃで一緒に遊んであげるなどして運動不足を解消しましょう。
その3:定期的な健康診断
胆泥症の早期発見には定期的な健康診断がとても重要です。
その子の年齢や生活習慣・環境、持っている疾患などに合わせて、最適な健康診断の内容・頻度を選んであげましょう。