佐倉市の動物病院なら若山動物病院|セカンドオピニオン対応

  1. ホーム
  2. 若山動物病院ブログ
  3. 幹細胞療法で探る治療

若山動物病院ブログ

幹細胞療法で探る治療

膵炎、黄疸、糖尿病、そして激痩せの肥大型心筋症の猫ちゃんの治療に、幹細胞療法を行っています。
以下は幹細胞療法が猫ちゃんの各病気に及ぼす可能性について、説明します。
なおこれらの治療での実際の効果は、個体差や病状の重さによって異なります。

目次

幹細胞療法とは

幹細胞は、体内のさまざまな組織に変わる能力を持つ「修理屋さん」のような細胞です。
これらの細胞は炎症を和らげたり、損傷した組織の再生を促したりする働きがあり、以下のような疾患に対して効果が期待されています。

培養中の幹細胞!

膵炎

膵炎の背景
膵臓が炎症を起こすと消化に関わる働きが乱れ、痛みや食欲不振などの症状が現れます。

幹細胞の効果

  • 炎症の軽減:幹細胞が放出する物質が、炎症を和らげる作用を持ちます。
  • 組織の修復:損傷した膵臓の細胞を助け、回復を促す働きが期待されます。

これにより、症状の緩和や再発防止につながる可能性があります。

黄疸

黄疸の背景
黄疸は肝臓の機能低下や胆汁の排出障害が原因で、体内に色素が溜まり皮膚や目が黄色くなる状態です。

幹細胞の効果

  • 肝細胞の再生:幹細胞は損傷した肝臓の細胞を修復し、正常な機能を取り戻す助けとなります。
  • 炎症の抑制:肝臓内の炎症を抑える働きもあり、結果としてビリルビンの処理能力が向上し、黄疸の改善が期待されます。

糖尿

糖尿の背景
猫の糖尿病は膵臓のインスリンを作る細胞の機能低下やインスリンの働きが悪くなることが原因で、血糖値が高くなる状態です。

幹細胞の効果

  • β細胞の再生:幹細胞がインスリンを分泌する細胞(β細胞)の再生を促す可能性があります。
  • 免疫や炎症の調整:炎症や免疫反応を穏やかにすることで膵臓の環境が改善され、インスリンの分泌が増えることが期待されます。

これにより血糖コントロールの改善が期待されます。

脱水

脱水の背景
脱水は体内の水分が不足した状態で、通常は水分の補給が必要です。

幹細胞の効果

  • 直接の治療ではない:脱水そのものは、まずは点滴などの水分補給が基本治療です。
  • 関連臓器の修復:もし慢性的な脱水状態が臓器の損傷、例えば腎臓などによるものであれば、幹細胞がその臓器の修復を助け、体全体の水分バランスの維持に間接的な効果をもたらす可能性があります。

肥大型心筋症

肥大型心筋症の背景
この病気は心臓の筋肉が異常に厚くなり、心臓が十分な血液を送り出すのが難しくなるものです。
結果として心不全や不整脈などの症状が現れます。

幹細胞の効果

  • 心筋細胞の修復と再生:幹細胞がダメージを受けた心臓の細胞を修復し、新しい細胞の形成を促すことで心臓の機能の改善が期待されます。
  • 血管の新生促進:また新たな血管の形成を助けることで、心臓に十分な酸素や栄養を供給できる環境を整える効果も考えられます。  

これにより、心臓への負担が軽減され症状の進行を遅らせる可能性があります。

重要なポイント

個体差
幹細胞療法は、まだ研究が進められている段階であり、全ての猫ちゃんで必ずしも同じ効果が得られるとは限りません。
また病状の重さや猫ちゃん自身の体質によっても結果が異なります。

他の治療法との併用
幹細胞療法は従来の治療法、例えば膵炎の場合は鎮痛剤や抗炎症薬、糖尿病の場合はインスリン療法などと併用する形で行われることが一般的です。

細胞療法は、将来的に猫のさまざまな病気の治療に役立つ可能性がある治療方法です。
しかし現時点では、まだ治療の効果のほどがハッキリとしていない部分もある治療法でもあります。

ただ症状の改善などが見られることも多々ある治療方法ですので、治療の選択肢の中の一つとして考えても良いと思っています。