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若山動物病院ブログ

猫の糖尿病の幹細胞治療

幹細胞

糖尿病の猫ちゃんに、幹細胞療法を行っています。

では猫ちゃんの糖尿病に対して行われる幹細胞療法について、わかりやすく説明します。

目次

糖尿病の原因

猫の糖尿病の多くは、「膵臓」という臓器にある「ベータ細胞」という細胞がうまく働かなくなり、「インスリン」というホルモンが十分につくれなくなることが原因です。
このインスリンとは血液中の糖分を体の細胞に取り込ませて、血糖値を下げる役割をする大切なホルモンです。
膵臓のベーター細胞がダメージを受けるとインスリンが出せなくなり、血糖値が高いままとなり糖尿病となります。

幹細胞が糖尿病治療に効果的な仕組み

幹細胞とは「体のどんな細胞にも変身できる、特別な細胞」です。
カラダの中に、この細胞を入れることで病気の改善を目指す治療法を「幹細胞療法」と言います。

幹細胞とは「体の中で他の細胞に変化したり、ダメージを受けた組織を修復したりできる細胞」です。
これが糖尿病治療に役立つ主な理由は、以下の3つです。

ベータ細胞を修復・再生する作用

幹細胞を体に注入すると、ダメージを受けて働きが低下している膵臓のベータ細胞に対して「修復」や「再生」を促す信号(サイトカインや成長因子)を出します。

その結果、

  • 傷ついたベータ細胞の働きが回復する
  • 新たなベータ細胞が作られる

という2つのメカニズムで膵臓が改善され、インスリンの分泌量が増える可能性があります。

❷ 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

糖尿病の猫は、膵臓に慢性的な炎症を抱えていることが多く、この炎症がさらに膵臓を傷つけ、病気を悪化させる原因になります。

幹細胞には、

  • 炎症を抑える(抗炎症作用)
  • 炎症を起こす物質を減らす

という効果があり、膵臓や体内の炎症を抑えることで病気の進行を止める、あるいは改善させることが期待できます。
炎症が抑えられると膵臓が受けるダメージが減り、ベータ細胞が回復しやすい環境が整います。
結果的に、インスリンの分泌が改善し血糖値が安定します。

具体的なメカニズム

1.幹細胞を注射で投与

血管や皮下組織に幹細胞を注入すると、体内をめぐって炎症やダメージのある膵臓に自然と集まります。

2. 幹細胞が膵臓の細胞をサポート

「再生因子」や「抗炎症物質」を分泌し、傷ついた膵臓細胞の修復を促す
ベータ細胞が健康になるようサポートする

3. 膵臓の機能回復によるインスリン産生の正常化

回復したベータ細胞は再びインスリンを作り出し、血糖値を正常に戻しやすくします。

他のメリット

合併症の予防

糖尿病の進行に伴う腎臓病や肝臓病、神経障害などの合併症のリスクを下げることが期待されています。

インスリン注射を減らせる可能性

幹細胞療法により膵臓の機能が回復すれば、注射で補充するインスリンの量を減らしたり、治療の負担を軽くできる可能性があります。

治療間隔

猫の糖尿病に対する幹細胞療法は、1回の治療で終わるのではなく一般的に複数回の治療が必要です。
通常は初めに数週間おきに2~3回行い、その後は猫の状態に応じて数か月~半年に1回程度の間隔で繰り返し治療を行います。

猫の状態がよくなり安定すれば、治療の間隔を徐々に伸ばすことも可能です。

このように治療間隔や回数は、それぞれの猫の状態や治療の効果によって変わります。

治療後の見通し

幹細胞療法は糖尿病を完全に治すというより、病気を改善して生活の質を向上させる治療です。

幹細胞療法を受けた猫の多くは、インスリンの量を減らすことができることがあります。
また場合によっては、インスリンを使わずに済むほど改善することもあります。

ただし、すべての猫が同じように良くなるわけではありません。
しかし早い段階で治療を始めた猫の多くは、インスリン注射や薬の使用量が減ったり、血糖値が安定して症状がかなり改善したりします。

つまり膵臓が深くダメージを受けている場合には、効果が出にくいこともあります。

まとめ

幹細胞療法は、糖尿病の完治を必ず保証するものではありません。
しかし生活の質を上げ、より健康に長生きできる可能性を高める治療法として期待されています。

猫の糖尿病に対する幹細胞療法は、新しい希望となる可能性があります。