若山動物病院ブログ
そのサマーカット、チョット待って!
夏になり暑くなってくると、サマーカットと言って丸刈りにすることがあります。
「夏だから涼しくしようと思って」
「見た目をスッキリさせたくて」
そんな理由でワンちゃんをバリカンでスッキリすること、ありますよね。
でも実は、その丸刈りが原因で毛が生えなくなることもあるってご存じですか?
それって「クリッパー後脱毛症」って言います。
クリッパー後脱毛症ってなに?
クリッパー後脱毛症(Post Clipping Alopecia)は、犬の毛をバリカンで深く刈ったあとに毛が生え戻らなくなる、または生え方が変になる症状です。
そうなんです!
毛がまだらにしか生えてこなかったり、全く生えないままツルツルになったり・・・

実際には「いつまで経っても毛が戻らない!」
と驚いてご来院される飼い主さんも多くいらっしゃいます。
起こりやすい犬種は?
特に注意が必要なのは、ダブルコート(2層構造の毛)をもつ犬種たちです。
- ポメラニアン
- シベリアンハスキー
- ゴールデンレトリーバー
- チャウチャウ
- シェルティー など
このような犬種では、硬い「上毛」と内側に柔らかい「下毛」をもっています。
バリカンで深く刈ってしまうと、毛が「抜けた」のではなく「途中で切れた」と体が認識してしまい、新しい毛のサイクルが止まってしまうのです。
なぜ毛が生えてこなくなるの?
犬の毛は「伸びる → 止まる → 休む → 抜ける」というサイクルで生え変わります。
ところが刈り込まれたことで毛穴の中に毛の断面が残ってしまうと、「もう新しい毛は要らない」と体が勘違いしちゃうんです。
結果として、毛がずっと休止状態になり生えなくなってしまうのです。
さらにバリカンによる刺激で毛根にダメージが入ると、回復せず永久脱毛になるケースもあります。
治療はできるの?
クリッパー後脱毛症には、確実な治療法はまだ確立されていません。
ただし、以下のような対処で回復を助けることがあります。
- 皮膚や毛根に良い栄養を補う(亜鉛やオメガ脂肪酸など)
- 保湿や炎症ケア
- 紫外線を避けるためのケア
- 気長に自然回復を待つ
ただし毛が元通りに戻らないこともあるため、予防が何より大切です。
じゃあ、どうすればいいの?
- バリカンで深く刈らないこと
- 特にダブルコートの犬は、丸刈りにしないこと
- 夏場の暑さ対策は、毛の中の通気をよくする「間引き」や「軽めのカット」で対応
トリミング前に経験豊富なトリマーに相談するのが安心です。

最後に
毛が生えてこない…
そんな悲しい思いを防ぐために、「見た目のスッキリ」よりもその子の毛質や体質に合ったお手入れを心がけましょう。
佐倉市の若山動物病院では、犬種や体調にあわせたスキンケアのアドバイスも行っています。
「これって大丈夫?」と思ったときは、いつでもお気軽にご相談くださいね。