若山動物病院ブログ
「猫は三日で恩を忘れる?」いや猫の記憶力は凄い!
猫と暮らしていると、ふとした瞬間に「この子ちゃんと覚えてる?!」と驚くことがあります。
たとえば、しばらく使っていなかったオモチャを出すと目を輝かせたり・・・
一度嫌な事があった場所は避けて通ったり・・・
懲りたら、ズッ〜と覚えてますよね?
そうなんですよ、一度嫌なことをしちゃって嫌われたら終生嫌われたままです。
それは偶然ではなく、猫の記憶力のなせるワザなんです!
このように猫の記憶力はとても優れていることが、近年の研究で明らかになってきています。
短期記憶は16時間!
ミシガン大学の研究では・・・
犬が5分程度しか覚えていられなかった課題も、猫は最長16時間後でも正しく記憶していたという結果が報告されています。
特に「ごはん」や「お気に入りの場所」など、自分にとってメリットがある情報には、抜群の記憶力を発揮します。
反対に猫にとって興味がないことは数秒で忘れてしまうこともあるそうです。
これは、いかにも気ままな猫らしい特徴とも言えますよね!
動物種による短期記憶の違い
🔳犬
短期記憶保持時間の目安:約2〜3分/約5分(餌の場所記憶)
特徴
・犬は社会的で人に注目する動物ですが、記憶保持時間は短め。
・ただし、餌などの関心のある対象では少し長く記憶。
🔳猫
短期記憶保持時間の目安:約10分以上/最長16時間(餌の場所記憶)
特徴:
・猫は自分にとって意味のある情報に関して非常に優れた記憶を発揮。
・餌の位置などに関しては、数時間以上記憶できる場合も。

🔳他の種の短期記憶
動物種 | 短期記憶時間の目安 | 備考 |
ウマ | 10~30秒 | 環境やストレスで変動 |
ネズミ | 20~30秒 | 条件により長期保持も(最長24時間以上) |
サル | 5~20秒 | 訓練次第で向上可能 |
人間 | ~30秒(通常) | 意識すれば数日保持 |
長期記憶では嫌なことも嬉しいことも忘れない
猫は、嫌な経験をよく覚えています。
シャンプーが苦手な猫が洗い桶を見るだけで逃げ出したり、投薬が嫌いな猫は薬の入った袋を見ただけで姿を消したりするのは、過去の記憶が呼び起こされている証拠なんです。
逆に、嬉しい経験もきちんと覚えています。
一度だけあげたオヤツの袋の音を何年経っても覚えていて、その音がすると飛んできたりするのはその代表例です。
こうした「報酬記憶」は、猫の脳が得意とするジャンルの一つと考えられています。

飼い主さんの名前や居場所も記憶している
京都大学の研究によると、猫は人の顔と名前を結びつけて記憶している可能性があることが分かっています。
同居する猫の名前を覚えている猫もいるというから驚きです。
また飼い主さんの声が聞こえたときです。
その声の方向から「いま、どこにいるか」を推測する能力も備えており、空間的なイメージを記憶できるのです。
イメージで記憶って、すごいですよね!
数年ぶりの再会でも覚えている
「猫は三日で恩を忘れる」と言われることがありますが、これは迷信です。
実際には数年ぶりに再会した飼い主さんを覚えていた猫のエピソードがあり、このようなことは世界中で報告されています。
イギリスでは12年ぶりに飼い主と再会した猫が、キャリーから飛び出して甘えたという感動的な例もあります。
記憶は『意味』で残るんですって!
犬がヒトの言葉やコマンドを覚えるのに対し、猫は出来事や場所、感情といった体験そのものを記憶する力に長けています。
そうなんですねぇ〜!
猫は「これは安全」「ここは嫌な場所」などと意味づけされて記憶され、それを日々の暮らしに活かしているのです。
このように猫は「自分にとって意味があることだけを覚える」、そんな動物なんです。
だからこそ飼い主さんとの思い出や心地よい時間の記憶は、何年たっても記憶に残っているのでしょうね。