若山動物病院ブログ
猫のミルクラインって?
猫ちゃんのお腹に左右に並んでいる「乳首」
この乳首は、前足の脇の下から後ろ足の付け根まで左右に並んでいます。
これがいわゆる「ミルクライン」と呼ばれる、乳腺のラインです。
ミルクラインは哺乳類すべてに共通するものです。
もちろんヒトにも存在していますが、胎児の時点で痕跡が残るのみです。
猫ちゃんでは、このミルクライン上に乳腺が左右対称に並びます。
乳首の数はたいてい8個(4対)ですが、個体差で6個や10個の猫もいますし、左右非対称なこともあります。
これはまったく異常ではなく、自然なバリエーションのひとつです。
普段は目立たない乳腺ですが、妊娠中や授乳中はグッと発達します。
特に出産直前には「ピンクニング」といって、乳首がふっくらしてピンク色になる変化も見られます。
授乳中のママ猫は、全ての乳腺をフル稼働して子猫たちにミルクを与えます。
子猫たちは、自分専用の乳首を決めて、それを毎回吸うという可愛い習性もあるんですよ。
一方で、この乳腺は病気が起こりやすい場所でもあります。
たとえば、授乳期には乳腺に炎症が起きる「乳腺炎」、高齢のメス猫では「乳腺腫瘍(乳がん)」などが代表的です。
特に猫の乳腺腫瘍は8~9割が悪性と言われており、注意が必要です。
予防のために特に効果的なのが、若いうちの避妊手術です。
初めての発情が来る前(生後6か月ごろまで)に避妊すると、将来の乳腺腫瘍の発生率を90%以上も下げられると報告されています。
猫ちゃんは痛みや違和感を隠す動物。だからこそ、飼い主さんの毎日のふれあいの中で「しこりがないか」「腫れていないか」「左右差はないか」をやさしくチェックしてあげることがとても大切です。
猫ちゃんのミルクラインは、母性のしるしであり、健康のバロメーターでもあります。
日々のスキンシップで、お腹にそっと目を向けてあげてくださいね。