若山動物病院ブログ
子猫の自分専用の乳首
母猫が子猫にオッパイをあげてる姿って、メッチャ微笑ましいですよね!
何頭もの子猫が、母猫のお腹にピッタリとくっついて飲んですますもんね。
ところで子猫たちは、毎回「空いている乳首に適当に吸いついている」わけじゃありません。
それぞれの子猫が「ここは自分の乳首だぞ」と、自分専用の乳首を決めているのです。

動物行動学の研究によれば・・・
生まれて数日で子猫たちは、それぞれお気に入りの乳首を見つけ毎回そこを目指していくようになります。
実際の観察でも、ほとんどの子猫が特定の乳首を繰り返し使っていたそうです。
そして驚くことに、母猫が体の向きを変えても自分の乳首をちゃんと見つけ出して吸いつくのです。
この行動のヒミツは、ニオイにあると考えられています。
生まれたての子猫は眼も見えず、耳も聞こえません。
でも嗅覚はしっかり働いており、自分がいつも吸っている乳首のニオイを覚えているのです。
さらに乳首に自分の唾液のニオイも染みついていくため、乳首ごとに目印のようなものが出来上がっていくんです!
子猫たちが「自分専用の乳首」を決めることで、子猫にはメリットがあります。
まず兄弟同士で、毎回乳首を奪い合う必要がなくなります。
つまり無駄なエネルギーの消費もなく、また乳首の奪い合いによるケガも減るというわけです。
そして全ての乳首が均等に使われることで母猫の体もバランスよく刺激され、母乳の出も安定しやすくなると考えられています。

授乳の時間は、子猫にとってはお腹がいっぱいになり心休まるひとときです。
ゴクゴクとお乳を飲みながら、前足で母猫のお腹を「ふみふみ」と揉むように動かす子猫もいます。
これは本能的な行動なんです!
「ふみふみ」すると母乳の出をよくなるのでしょうね。
また子猫がリラックスして、喉を「ゴロゴロ」と鳴らして甘えた声を出すこともあります。
これって母猫との心のつながりを深める、大切なサインの一つとも言われています。
母猫のほうも、ただお乳をあげるだけではありません。
授乳の合間に子猫の体を丁寧になめてあげたり、排泄を助けたりリラックスさせたりします。
また子猫に「ミャオぉ〜」など、優しい声で呼びかけたりもします。

生まれて間もないうちから自分の場所を見つけ、兄弟と折り合いをつけながら生きていく子猫たち。
そんな子猫たちの「自分だけの乳首」は単なる本能ではなく、親子の関係をスムーズにするための知恵なのかもしれません。
それにしても小さな命の中に秘められた本能と知恵には、驚きやら可愛らしさや愛おしさ・・・がいっぱいですね。