佐倉市の動物病院なら若山動物病院|セカンドオピニオン対応

  1. ホーム
  2. 若山動物病院ブログ
  3. ウンチの中から こんにちは

若山動物病院ブログ

ウンチの中から こんにちは

千葉県佐倉市の『若山動物病院』の千明です。

ここ2週間ほど、回虫に感染してしまった子の来院が続いています。

回虫卵
便検査で見つかった回虫の卵

回虫(かいちゅう)とは

回虫は「線虫」と呼ばれるグループに属する内部寄生虫で、多くの哺乳類の小腸に寄生します。
黄白色で細長く、ミミズのような見た目をしており、成虫になると大きさは3~18cmほど。寿命はおよそ1〜2年で、幼虫から成虫になるまでに約3ヶ月かかります。

体内に入った回虫は、小腸で幼虫となり、腸の壁から血管を通って肝臓へ移動し、さらに肺へと進みます。
肺では肺胞に侵入し、気管支を上がって再び口へ。
そこで飲み込まれて再び小腸に戻り、成虫になります。

体の中をぐるっと回るようなこの複雑な移動経路から、「回虫」という名前がつけられました。

回虫
体内から排出された回虫

感染経路

回虫は腸内で卵を産み、その卵は便とともに体外へ排出されます。この排泄された虫卵が主な感染源となりますが、感染経路はそれだけではありません。

主な感染経路は以下の通りです。

  • 経口感染:土や食べ物などに混ざった虫卵を口にすることで感染します。
  • 胎盤感染:感染している母犬や母猫から、胎盤を通じて胎児に感染が広がります。
  • 経乳感染:授乳中に、母親の乳汁を介して子どもに感染することがあります。
  • 待機宿主による感染:ネズミやミミズなどが虫卵を取り込むと、体内で幼虫に成長し、組織内に留まります。これらの待機宿主を食べることで感染することがあります。

回虫の感染は、「食糞をしなければ大丈夫」というわけではありません。
たとえば、便を踏んだ足を毛づくろいしたり、おしりを舐めたりするだけでも、虫卵が体内に入って感染が起こることがあります。

また、回虫の卵は環境にとても強く、土や砂の中で数年間も生き続けることが知られています。
そのため、汚染された土壌を通じて感染が広がることもあります。

さらに、回虫は動物だけでなく人にも感染する可能性がある「人獣共通感染症」のひとつです。

成犬・成猫では、感染していても症状が現れない「不顕性感染」であることが多いですが、体内に多数の成虫が寄生すると、以下のような症状が見られることがあります。

  • 食欲不振
  • 下痢
  • 嘔吐
  • お腹の異常な膨らみ
  • 腹痛
  • 貧血
  • 毛ヅヤの悪化
  • 体重の減少
  • 発育不良(若齢期に多い)

また、回虫の幼虫は体内を移動するため、胃腸だけでなく、気道や肺、さまざまな臓器にも影響を及ぼすことがあります。
特に若齢期に肺の周辺で大量に寄生がみられると、重篤な肺炎に陥る可能性もあるため注意が必要です。


回虫への感染は、決して珍しいものではなく、実はすぐそばにあるかもしれない身近な病気です。
お散歩や日常のちょっとした行動から、気づかないうちに感染していることもあります。
定期的な便検査や予防薬の活用、生活環境の衛生管理を心がけて、大切な家族の健康を守っていきましょう。

ブログタグ: