若山動物病院ブログ
突然の攻撃やダッシュ、その裏の心理
普段は穏やかな猫が、突然怒ったり、別の猫に飛びかかったり・・・・
「急にどうしたの?」とびっくりしたことはありませんか?
実はそれ「転位行動(てんいこうどう)」と呼ばれる、猫の心理反応のひとつなんです。

猫が,、自分でもどうしていいかわからない「もやもやした気持ち」を、違う相手や行動で発散してしまう、それが「転位行動」なんです。
転位行動ってどういうこと?
転位行動とは・・・
怒りや興奮、怖さなどの感情を、本来の相手ではない別の対象に向けてしまう行動です。
ヒトにも似たことがありますよね。
たとえば仕事で怒られたあと、家族に八つ当たりしてしまう・・・
本当は家族が悪いわけじゃないのに、気持ちの行き場がなくなって爆発してしまう。
猫の転位行動も、まさにそれと同じなんです。

なるほど
八つ当たりしてしまうようなものなのね!
どうして猫は転位行動をするの?
猫は本来、とても繊細で感情をため込みやすい動物なんです。
怖い・興奮する・混乱する!
そんな刺激を受けたとき、その「気持ちのエネルギー」をどこにぶつけていいかわからなくなることがあります。
そしてその結果、攻撃的な行動を取ってしまうのです。

ふーん・・・
まったく関係のない猫やヒトに対して、怒っちゃうのね。
それって迷惑な話よね!
たとえばこんな場面
状況 | 猫の気持ち | 起こる行動 |
---|---|---|
窓の外に見知らぬ猫が来た | 「あいつ、縄張りに入ってきた!」 | 怒りの矛先がそばの猫に向く |
病院やトリミングから帰宅 | 「いつもと匂いが違うぞ!お前誰だ?」 | 仲良しの猫を敵と勘違い |
大きな音や来客で驚く | 「怖い怖い!逃げたい!」 | 驚きが攻撃行動に変わる |
飼い主が強く叱った | 「怖いけどどうしていいかわからない」 | 手近なものに八つ当たり |

なるほど・・・
直接の原因ではない相手に対して、イチャモンつけちゃうのね。
実際の様子はこんな感じ
室内の猫Aが、屋外の猫を見て興奮する
興奮した猫Aが、屋内の近くにいた猫Bに突然飛びかかる
猫Bは驚いて猫Aに反撃!唸り合いに発展
その後もしばらくお互いを警戒する

一度転位行動が起きると、仲良しだった猫同士の関係がギクシャクしてしちゃうこともあるのね。
それって困るわよね・・・

転位行動のサイン
• 瞳孔が開いている
• 毛が逆立つ
• 耳が後ろに倒れる
• 低く唸る
• 攻撃相手を頻繁に見つめる
• ケンカのあと距離を取る
これらのサインが見られたら、猫はまだ冷静ではありません。
この状態で近づくと、飼い主が噛まれることもあります。
対処法は、まず距離を!
転位行動が起きたら、まずは「止める」よりも「距離を取ることが大切です。
1. すぐに離す
興奮している猫には理屈が通じません。
手を出すと噛まれることもあるため、「クッションやタオルなどを間に入れて」離します。
2. 静かな環境で休ませるクールダウン
別室で1日ほど落ち着かせましょう。
その間、刺激になるテレビや外の音は避け、安心できるスペースを作ってあげます。
3. 匂いをリセット
猫は「匂い」で仲間を認識します。
双方の猫を同じタオルで体を拭いたりして、匂いの違いをなくすと再会がスムーズです。
またフェリウェイなどを使うのも効果的です。
4. 再会はゆっくり
扉越しやケージ越しでお互いを見せるところから再開。
威嚇が収まってから少しずつ距離を近づけましょう。
再発を防ぐために
対策 | 内容 |
---|---|
外の刺激を減らす | カーテンで外猫の視界を遮る対策 |
個別スペースを確保 | 逃げ場所として、高い場所や隠れ家を複数作る |
日中に遊びで発散 | 猫じゃらしなどで遊んであげエネルギーを使わせる |
健康チェック | 痛みや体調不良が攻撃性を高める原因になることも |
転位行動は「猫が悪い」のではなく、混乱やストレスのサインなのです!
落ち着ける環境を整えることで、自然と減っていきます。

猫って、喧嘩した後すぐに仲直りができない子っているよね。
そんな時は焦らず、安全と安心を優先しなくちゃなのね!
注意して見てほしいサイン
以下のような場合は、単なる転位行動ではなく医療的原因も疑われます。
- いつもより唸る・隠れる
- トイレや食事のリズムが乱れる
- 何もないのに攻撃的になる

こうした変化が続く場合は、体調やホルモンバランスが影響していることもあります。
獣医師に相談して、健康面からも確認しましょうね!
まとめ
- 転位行動=感情の行き場を失って別の相手にぶつける行動
- 原因は恐怖・興奮・ストレスなど
- まずは距離を取り、静かな環境でクールダウン
- 遊び・安心できる空間・健康管理で再発を防ぐ
猫が突然怒るのは、“心の中で整理できない気持ち”のサインです。
叱るのではなく、「何があったのかな?」と見守ることが、猫との信頼関係を深める第一歩になります。