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若山動物病院ブログ

知ってほしい猫咬傷と感染症の怖さ

噛まれた

猫に噛まれて入院・手術に

うちの子にチョット噛まれただけなのに、腕が腫れちゃって・・・
でも傷は小さいし・・・
そんなにも痛くないし・・・
良く洗ったから大丈夫よね!

そんな軽い気持ちでいたら・・・
腕がみるみる腫れ上がり、入院や手術が必要になることがあります。

実際、こうしたケースは決して珍しくありません。
「噛まれた翌日に腫れて動かせなくなった」「点滴と抗生剤で治療中」といった相談は動物病院でもよく耳にします。

今回は、猫に噛まれたことによって起こる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という感染症について、その原因や症状、予防方法をわかりやすく解説します。

目次

猫の歯は注射針にように鋭い

猫の犬歯はとても細く鋭く、噛まれた瞬間に皮膚の奥深くまで細菌を押し込んでしまいます
見た目は小さな傷口でも、実際には歯が深く入り込んだ「トンネル状の傷」になっていることが多いのです。

そのため外見は「ちょっと赤いだけの小さな傷」でも、実際には傷はトンネル状に深く入り込んでいることが多く、その奥で細菌が繁殖してしまうことがあります。

特に猫の口内には多くの常在菌が棲んでおり、その中でもパスツレラ菌という細菌はヒトのカラダの中に入ると急速に炎症を起こすことが知られています。
パスツレラ菌は多くの動物の口腔・呼吸器に常在する細菌で、猫だけでなく犬、ウサギ、鳥類などにも広く分布しています。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは?

蜂窩織炎とは、皮膚の下にある脂肪組織や筋膜の部分まで広がる細菌感染症です。
傷口から細菌が入り、皮膚の深い層で炎症を起こすことで発症します。

主な症状

  • 噛まれた部位の腫れ・熱感・激しい痛み
  • 赤みが広がる
  • 手指や関節が動かしにくい
  • 発熱や悪寒、倦怠感

感染が進むと膿がたまったり、筋肉層まで炎症が及ぶこともあります。
重症化すれば全身に細菌が広がり、敗血症を起こす危険もあります。
このようになってしまうと、最悪の場合は命に関わることもあります。

「たかが噛み傷」と油断しない!

猫に噛まれたときには、初期対応がとても重要です。

① すぐに流水でしっかり洗う

噛まれた直後は、石けんと流水で10分以上しっかり洗いましょう。
血が出ていても止めようとせず、まずは細菌を流すことを最優先にします。

② 消毒と冷却

洗った後は消毒液で軽く消毒し、清潔なガーゼで覆います。
強く圧迫したり温めたりすると炎症が悪化することがあるため、注意が必要です。

③ できるだけ早く病院へ

「傷が小さいから大丈夫」と思わず、早めに外科や皮膚科を受診しましょう。
猫の咬み傷は抗生物質の点滴や内服が必要なことが多く、放置すると数日で手が腫れ上がることもあります。

抗生物質でも改善しない場合には、膿を出する処置や入院治療が必要になります。
「噛まれた翌日に腫れが広がった」「手が握れない」などの症状があるときは、すぐに救急外来を受診してくださいね。

猫に噛まれやすいシーンと予防

実際に噛みつきが起こりやすいのは、次のような場面です。

  • 体調不良で痛みを感じているとき
  • 驚いたり怖いことがあったとき
  • 無理に抱きあげようとしたとき
  • ケンカを止めようとしたとき
  • 遊びに夢中で興奮しているとき


猫は本来とても用心深い動物です。
そのため「逃げる」「噛む」といった行動は、身を守るための自然な行動です。

飼い主さんができる対策

  • ケンカの仲裁は素手でしない
  • 興奮した猫は落ち着くまで触らない
  • 投薬や通院の際は洗濯ネットを活用する
  • 家族にも「噛まれたらすぐ洗って受診」を共有する

猫同士のケンカの仲裁に入ったら、噛まれちゃったの・・・
とんだトバッチリだったわ!
普段おとなしいからって思っても、一瞬の恐怖や混乱で思わず噛んじゃったのね。

猫の行動を理解することが最大の予防

猫の噛みつきは「性格」ではなく「状況」が引き起こすものです。
次のような環境づくりが、ヒトも猫も守る第一歩になります。

  • 恐怖やストレスを感じにくい環境を整える
  • 無理なスキンシップは避ける
  • 威嚇サイン(耳を倒す・尻尾を振るなど)を見逃さない
  • 定期的な健康診断で体調不良を早期に発見する

体調不良や痛みを抱えていると、普段より攻撃的になることがあります。
「いつもより触ると嫌がる」と感じたら、早めに相談して下さいね!

まとめ

猫に噛まれた傷は、見た目よりもずっと深く危険です。
小さな傷でも数時間後には腫れ上がり、蜂窩織炎や腱鞘炎を起こすことがあります。

もし噛まれたら・・・
「洗う」「冷やす」「受診」 の3ステップをすぐに実行してくださいね。

そして日ごろから
「猫の気持ちを尊重する接し方」と
「もしもの時の正しい対処法」
を知っておくことが、大切な猫と家族との関係を守る一番の近道です。