若山動物病院ブログ
「いぬのきもち・ねこのきもち」と私

私が「いぬのきもち」「ねこのきもち」の取材や監修に関わるようになったのは、実は一つの取材がきっかけでした。
そうなんです!
すべては「ねこのきもち」の取材から始まったんです。
気づけば、あれからもう20年近く、本、新聞の連載コラム、雑誌、図鑑となんだかんだとありました。
その間に携わった本や記事の数を数えようにも、自分でも見当がつきません。
最初の頃の「ねこのきもち」では、記事だけでなく撮影まで行っていました。
そのため一つの記事を作るのに、今よりずっと多くの時間と労力をかけていたこと懐かしく思います。
診療室の「会話」が雑誌の「記事」になる
雑誌に載る内容のほとんどは、普段の診療室で飼い主さんにお話ししていることそのものです。
病気のこと、しつけのこと、食事のこと・・・
日々のやり取りの中でお伝えしている内容を、分かりやすく整理し、文章としてまとめたものが記事になっています。

ただ・・・
「言葉として話す」のと「文字にする」のとでは、実はまったく別の作業というか、別のモノなんですよね。
言いたいことを文字にするのは、結構大変なんです!
直接の対話と「文章」の大きな違い
診療室では、飼い主さんの表情を見ながら言葉を足したり、例えを変えたり、説明の順番を調整したりと、その場で柔軟に話し方を変えられます。
まさに生きたコミュニケーションです。
ところが雑誌では、限られた文字と紙面の中で、誰が読んでも分かりやすく、しかも正確に伝えなければなりません。
文字からなる文章を読んで、その内容を誰もが同じように内容を受け止めることはできません。
それだけ「文字だけで伝える」というのは、実はとても難しいことなのです。
「文字になる」ことの難しさ
雑誌づくりでは読者のことを考えながら、編集者さんが文章を磨き上げていきます。
「ここは、ちょっと理解が難しいかも」
「読者の方は、きっとこの部分で『なぜ?』と思うはず」
「もう少し具体例を入れましょう」
そんな具合に、プロの視点から細かく進められていきます。
獣医学的な情報を、読み手が不安になりすぎない形で伝えることは大きな課題です。
私たち獣医師にとって当たり前のことでも、初めてワンちゃん猫ちゃんを迎える方には初めて知る内容もあります。
そのギャップを埋めていく作業は、編集者さんの腕なんです。
伝わる文章ができるまで
私が伝えた内容が、編集者さんの手によって「読者の立場に立った文章」へと磨かれていく過程は、料理にとてもよく似ています。
私は獣医師として「素材」の提供
編集者さんがその素材を「どうしたら読みやすく、わかりやすく、そして心に残るか」を考えて味付けする。
こんな経験を重ねるうちに、診療室でも自然と「相手に伝わる言葉を選ぶ」意識が強くなりました。
雑誌づくりが、私のコミュニケーションそのものを育ててくれたように感じています。
記事を通して伝えたいこと
この20年、たくさんの記事づくりに関わってきましたが、根っこにある想いはずっと同じです。
「飼い主さんが安心して、ワンちゃん猫ちゃんたちとの暮らしをもっと楽しめるようになってほしい」
雑誌を読んだ方が、
「なるほど、これで良いんだ」とホッとしたり、
「今日からこの子のためにできることが増えたな」
と前向きな気持ちになってくださったら、これほど嬉しいことはありません。
これからも日々の診療で得た経験や知識を、より分かりやすく心を込めてお届けしていきたいと思っています。