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若山動物病院ブログ

椎間板ヘルニアを乗り越えて再び歩くまで

幹細胞療法

ミニチュアダックスフンドは、その愛らしい体型と性格から非常に人気の高い犬種です。
しかし一方で、「椎間板ヘルニア」という病気と切っても切れない関係にあります。
胴が長く足が短い体型のため、どうしても背骨に負担がかかりやすくなります。
ちなみ「椎間板ヘルニア」は、若い年齢でも発症することがある病気です。

今回は、過去に椎間板ヘルニアによって後ろ足の麻痺を経験した、ミニチュアダックスフンドのお話です。

過去の麻痺と、幹細胞療法による回復

この子は過去に椎間板ヘルニアを発症し、後ろ足に麻痺が出て歩けなくなってしまったことがありました。
歩くこともままならない姿を見るのは、飼い主さんにとって非常につらいことだったと思います。

椎間板ヘルニアの治療というと、手術を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし手術以外にも、内科的治療などさまざまな選択肢があります。
椎間板ヘルニアの治療を行うに当たって、「これが唯一の正解」と言われる治療方法はありません。

椎間板ヘルニアの治療では症状の重さ、進行スピード、年齢、生活環境などを総合的に考え、その子に合った治療方法を選ぶことが大切だと考えています。

飼い主さんは、前回の椎間板ヘルニアの治療の際に「幹細胞療法」を選択されました。
その結果、再び歩けるようになり元気に生活できるまで回復したそうです。

一度は失われかけた「歩く」という当たり前の動作が戻ったことは、飼い主さんにとって大きな希望になったのではないでしょうか。

再び訪れた麻痺、そして当院へ

椎間板ヘルニアは、再発のリスクが高い病気です。
そして今回、この子にも再び後ろ足の麻痺が現れてしまいました。

飼い主さんは以前の経験から、「もう一度向き合って治療をしたい」という強い思いを持ち、幹細胞療法を目的として当院を受診されました。

以前通っていた動物病院では、週に1回のペースで幹細胞療法を行っていたそうです。
当院では、その子の状態や生活環境を考慮し、3~4週に1回の間隔で治療を行う方針を選択しました。

幹細胞療法は「回数を多くすれば良い」という治療ではありません。
カラダの反応をしっかり観察し、その子に合ったペースを見極めることが非常に重要だと考えています。

3回目の治療時点での経過

本日は3回目の幹細胞療法でした。
経過は非常に良好ですが、まだ発症前とまったく同じ状態というわけではありません。
しかし見た目には普通に歩けるレベルまで回復しており、日常生活において大きな支障はなさそうです。

実はこの回復には、治療そのものだけでなく、いくつかの大切な要因が重なっています。

多頭飼いがもたらす、リハビリへの好影響

このご家庭は多頭飼いで、もう1頭ワンちゃんがいます。
この存在が、実はリハビリにとても大きく貢献しています。

犬は本来、群れで生活する動物です。
そばに仲間がいることで、自然と体を動かすようになります。
「一緒に歩く」「一緒に行動する」という日常の動きが、無理のないリハビリにつながります。
無理に歩かせるよりも、自発的に動ける環境の方が、神経や筋肉の回復にはプラスに働くことが多いのです。

また、精神的な安心感も大きいと感じます。
自分の意思で足が動かないという不安や恐怖から、体の動きが鈍くなってしまう子もいます。
しかし仲間がそばにいることで気持ちが前向きになり、その結果、回復のスピードが上がることがあります。

治療は「その子の生活全体」を見ることが大切

椎間板ヘルニアの治療というと、「手術か内科治療か」「どの治療法を選ぶか」に目が向きがちです。
しかし実際には「治療+生活環境+リハビリ+家族の関わり」、これらすべてが合わさって回復が進んでいきます。

今回の症例は、

  • 幹細胞療法の効果
  • 多頭飼いという生活環境
  • 飼い主さんの丁寧なケア

これらが相乗的に作用した、非常に良い症例だといえます。

椎間板ヘルニアは、「もう歩けないかもしれない」と不安になる病気です。
しかし、適切な治療と環境が整えば、回復の可能性は十分にあります。

もし同じようなお悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、「まだできることはある」ということを、ぜひ知っていただきたいと思います。