若山動物病院ブログ
ビタミンB12は神経と血液を支える


ビタミンB12の注射って・・・
足がふらつく子にも使うって聞いたけど、何に効くのかしら?
神経痛が良くなる注射なの?

ビタミンB12は、病気を一発で治す薬ではありません。
ただ体が回復していくための土台を整える意味で、回復を支える補助として役立ちます。
ビタミンB12は「神経」と「血液」を支える
ビタミンB12は、犬や猫のカラダの中で健康を保つための大切な栄養素(ビタミン)です。
主な仕事には、以下の2つがあります。
神経のメンテナンス(体の電線を守る)
脳から出された「動け」「止まれ」「痛いよ」といった命令は、神経という通り道を使ってカラダのすみずみまで届けられます。
この神経は、たとえるなら体の中に張りめぐらされた電線のようなものです。
電線は切れたり表面が傷んだりすると、電気がうまく流れなくなってしまいます。
それと同じように、神経が弱ったり傷ついたりすると命令がうまく伝わらなくなります。
その結果「力が入りにくい」「動きがぎこちない」「痛みを強く感じる」といった症状が出ることがあります。
ビタミンB12は、この神経の電線の状態を整え、スムーズに信号が流れやすい環境を作る手助けをする栄養素です。
神経を直接治す薬ではありませんが、神経が回復しやすい土台づくりをサポートします。
血液(赤血球)を作る手助け(酸素の“運び屋”を作る)
血液の成分である赤血球は心臓から送り出され、呼吸で取り込んだ酸素を筋肉・脳・内臓など、すべての細胞に届けています。
つまり酸素は、カラダが作るエネルギーに欠かせない材料です。
そのため、酸素が十分に届かないと、
- すぐ疲れる
- 元気が出ない
- 動きが鈍くなる
といった状態になります。
ビタミンB12は、この赤血球を作るときに必要な栄養素のひとつです。
つまりビタミンB12は、酸素を運ぶ力を支える「元気に動けるカラダの土台」を整える働きをしています。
B12は「魔法の薬」ではない
ビタミンB12は、病気そのものを治してしまう魔法の薬ではありません。
たとえば、骨折をギプスで固定しなければ治らないのと同じように、椎間板ヘルニアや強い炎症には、まず痛み止めや安静、必要なら手術などの本格的な治療が必要です。
ビタミンB12の役割は少し違います。
カラダにはもともと傷ついた部分を修復しようとする「自分で治る力(回復力)」があります。
ビタミンB12は、その回復力がスムーズに働くように、必要な材料や環境を整えるサポート役なのです。
たとえるなら、
- 主役は「治療」
- 監督は「体の回復力」
- ビタミンB12は、その現場を支える裏方スタッフ
という感じの関係になります。
目立たない存在ですが、土台が整えることで体調がしやすくなります。
ビタミンB12が足りないと、どうなる?
ビタミンB12が不足すると、体の中のさまざまな仕組みがスムーズに働きにくくなります。
まず影響を受けやすいのが、血液と神経です。
たとえば――
- 元気がなくなる/食欲が落ちる体のエネルギーづくりがうまくいかず、動くのがおっくうになります。
- 赤血球が十分に作られず、貧血気味になる酸素を運ぶ力が弱くなり、すぐ疲れたり、ぐったりしやすくなります。
- 神経の働きが鈍くなる命令が伝わりにくくなり、ふらつく・力が入りにくいといった症状が出ることがあります。
ヒトでも「ビタミンが足りないと疲れやすい」と言いますが、犬や猫でも同じです。
ビタミンB12はビタミンBやビタミンC違い派手な栄養素ではありませんが、カラダが元気に働くための土台を支える大切な栄養素なのです。
B12は「治療の主役」ではありません
ここが一番、誤解されやすいポイントです。
「B12を打てば、足の麻痺や椎間板ヘルニアが治る」わけではありません。
足が動かない、強い痛みがある、急に悪化した、このような場合は、まず病院での本体の治療が最優先です。
たとえば、
- 痛みを抑える治療(痛み止めなど)
- 炎症を抑える治療(腫れを引かせる)
- 安静(動かして悪化させない)
- 必要に応じた検査や手術(原因そのものに対応する)
ビタミンB12は、こうした治療を進める中で、回復を支える補助(サポート)として使われます。
なぜ神経のトラブルの補助としてB12を使うの?
神経を電線にたとえてみましょう。
電線には、電気がもれないように外側をおおう「カバー(絶縁体)」があります。
神経にも同じように、信号をスムーズに伝えるための保護する膜(カバー)があります。
もし神経が圧迫されたり炎症を起こしたりすると、このカバーが傷んだり弱ったりしてしまいます。
すると電気がうまく流れない電線のように、脳からの命令がスムーズに伝わりにくくなることがあります。
その結果、
- 力が入りにくい
- 動きがぎこちない
- しびれのような違和感が出る
といった症状につながることがあります。
カラダは傷ついた神経を修復しようとしますが、そのためには修復の材料がが必要です。
ビタミンB12は、その修復過程に関わる栄養素のひとつで、神経が回復しやすい環境づくりを支える役割をします。
ただし、ここが大切です。
ビタミンB12は神経を圧迫している原因そのもの(たとえば椎間板の飛び出し)を取り除くわけではありません。
あくまで治療と並行して回復を後押しするサポート役として働きます。
よくある質問(FAQ)
Q1. ビタミンB12注射の副作用はありますか?
ビタミンB12は水溶性ビタミンで体にたまりにくく、一般的には副作用がとても少ない栄養素です。
まれに注射部位の軽い腫れや一時的な元気低下が見られることがありますが、重い副作用は多くありません。
ただし、持病がある子や体調が大きく崩れている場合は、投与量や方法を調整する必要があるため、必ず獣医師と相談して行います。
Q2. ビタミンB12注射は何回くらい打つの?
「何回打てば必ず治る」という決まった回数はありません。
一般的には、週1回ペースで数回行い、その後は状態を見ながら間隔をあけるなど、段階的に調整します。
大切なのは、歩き方・元気・食欲などの変化を確認しながら、その子に合わせて決めることです。
Q3. 飲み薬と注射、どちらがよいですか?
食欲があり、腸の調子が比較的良い子:飲み薬で補えることがあります
吸収が心配な子、早めに体に届けたい場合:注射が有利なことがあります
その子の状態に合わせて、最適な方法を選びます。
まとめ
ビタミンB12は、神経と血液の健康を守る基礎ビタミンです。
麻痺や椎間板ヘルニアを直接治す特効薬ではありません。
しかしカラダが回復していくための土台を整えるサポート(栄養療法)として役立ちます。
そのため、
- 病院で行うメインの治療をきちんと行いながら
- その回復を栄養面から支える
という使い方が大切です。
「薬だけで全部治す」のではなく、治療+栄養で体の修復を支えるという考え方を知っておくと、ケアがよりスムーズになります。