バイタルサイン異常|呼吸が早い・熱が高い犬猫の受診の目安

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バイタルサイン異常|呼吸が早い・熱が高い犬猫の原因と受診の目安

犬・猫のバイタルサイン(呼吸・体温・脈拍・血圧)を解説するイメージ画像

医療ドラマでも使われる「バイタルサイン」という言葉ですが、実際の診療現場でも非常に重要な指標です。
このバイタルサインとは「vital=生きている、signs=徴候」のことで、主に体温、脈拍、血圧、呼吸、意識レベルの5つを指しています。
呼吸が早い、体温が高いといった変化から来院し、病気が見つかるケースは非常に多く見られます。

ある日、「呼吸がいつもより早い気がする」と来院した猫ちゃんがいました。
診察してみると、胸の中に水がたまり呼吸が苦しくなっていました。
また別のワンちゃんでは、「少し熱っぽい」という症状の裏に子宮蓄膿症が隠れていたケースもあります。

このように、呼吸・体温・脈拍などの「バイタルサイン」の変化は、病気の最初のサインとして現れることが少なくありません。

本記事は実際の診療でよく見られるバイタルサインの異常の症例をもとに、まとめています。

飼い主

呼吸が早い気がするんですが、大丈夫でしょうか?

Dr.Nyan

呼吸が早くなる変化は、心臓や肺の病気のサインのことがあります。

医療では「サチュレーション(SpO2)」など、一般には馴染みのない言葉が多く使われます。「SpO2」は「経皮的動脈血酸素飽和度」と訳され、「血液中にどれくらい酸素が取り込めているか」を示す数値です。また「サチュレーション」は、動脈血酸素飽和度のことです。

このように医療用語には分かりづらい言葉が数多くありますが、一般的な用語でも意味が全く違うものもあります。

例えば「WBC:World Baseball Classic」は、あの有名な野球のこと、しかし医療では「WBC:White Blood Cell」は血液中に存在する免疫などに関わる白血球のことを言います。
このように医療用語には一般的な略語と意味が異なるものも多く存在します。

犬や猫の健康状態を把握するうえで重要なのが「バイタルサイン」です。

目次

「バイタルサイン」って何?

治療を行うには検査を行いますが、その検査の根底となるものが「バイタルサイン」です。

「バイタルサイン」とは「生命兆候」という意味で、「生きている」 ことを示す重要な指標となるものです。
その基本的なものが「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」「意識レベル」の5つの指標ですが、場合によっては「尿量」を含めた6つを指標とすることもあります。
ただ多くの場合は、基本的な5つの指標を意味します。

バイタルサインを測定することで、その日の健康状態を知ることができますが「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」は個体差もあるため、本来は事前に正常値を知っておくことが大切になります。

バイタルサインを調べることにより、全身状態の変化や異常を早期に発見することができます。そのためには基準値から外れているかどうかだけでなく、前回や前日と比べてみることも重要になります。

項目
呼吸数15〜30回/分20〜30回/分
体温37.5〜39.0℃37.5〜39.0℃
脈拍60〜160回/分120〜220回/分
犬猫の代表的なバイタルサイン正常値の目安

飼い主

家で測る意味ってありますか?

Dr.Nyan

はい、普段から測定しておくと、体の異常などの変化を早めに気づくことができます。

バイタルサイン・呼吸

動物が生きていくために、絶対的に必要なものの一つに「酸素」があります。

「酸素」は肺から体内に取り込まれ、肺は二酸化炭素を体外へと出していますが、この一連の動作が「呼吸」と呼ばれているものです。

飼い主

呼吸数は、どのくらいで異常ですか?

Dr.Nyan

安静時で明らかに多い場合は注意が必要です。

呼吸の数え方

呼吸では「呼吸数」と「呼吸の仕方」を、また「SpO2」を調べます。

呼吸数は「吸って・吐く」を1回と数え、胸やお腹の動きを見ながら1分間測ります。胸やお腹が上下に1回動いたら、1回呼吸したと数えます。また胸やお腹の動き以外でも、寝息やイビキなどからでも呼吸数がわかる時もあります。

1分間って短いようですが、実は結構長いものなんですよ。しかも呼吸数を測ろうとジーッと見てたら、視線を感じたのか目を開け見返してくるなんてことも普通にあります。
呼吸数を測る際には見つめられていることを意識されないようにしないと、自然な呼吸数が測れなくなってしまいますので何気ない素振りで悟られないようにする必要があります。

Dr.Nyan

呼吸数を測る際には、15秒間数えて4倍することで1分間の呼吸数とすることもできますよ!

呼吸数を測るのと同時に、呼吸の仕方もチェックします。
息苦しそうかゼーゼーなどの変わった音がしないかなど、いつもの呼吸とは違うことが無いかを確認です!

呼吸数は起きている時には増えてることが多いので、できれば安静時や熟睡時などリラックスした状態の時に測ることが大切です。寝ている時に呼吸回数を数えていると、夢を見たのか突然のように呼吸数が増えることがあります。このような場合には、再度呼吸数を確認してください!

飼い主

猫が口呼吸していたら危険ですか?

Dr.Nyan

はい、緊急性が高い可能性があるためすぐ受診をおすすめします

異常な呼吸

飼い主

寝ている時でも呼吸が速いのは危険ですか?

Dr.Nyan

安静時でも呼吸が多い場合は、肺や心臓の病気が隠れていることがあります。

熟睡時でも呼吸が多い場合には、何らかの病気が隠れていることがあります。
また呼吸数が正常でも、以下のように呼吸の仕方がいつもと違う場合にも注意が必要です。

  • 首を伸ばし上を向いている
  • 深い呼吸をしている
  • 伏せず立ったままでいる

室温が高い時などは、呼吸が早くなることがありますので注意しましょう。

猫は犬と違い鼻で呼吸し、口で呼吸をすることはありません。もし猫が口を開けて呼吸をしている場合は、普通の状態ではありません。また口を開けていなくても呼吸が早かったり肩でする呼吸も普通では無いため、注意が必要です。

特に「横になれない」「口を開けて呼吸する」「舌の色が紫っぽい」場合は、緊急性が高い可能性があります。

リスク先生


呼吸が早い状態は肺や心臓の病気が隠れている可能性があります
放置せず早めの受診が重要です

SpO2を測る

SpO2とは「血液中にどれくらい酸素が取り込めているか」を示す数値です。簡単に言えば、「ちゃんと酸素を吸えているか」を見る検査です。
「SpO2」は「経皮的動脈血酸素飽和度」と訳されます。


簡単に言えば、「ちゃんと酸素を吸えているか」を見る検査です。

Dr.Nyan

経皮的とは「皮膚を通して」という意味です!

肺に取り込まれた酸素は赤血球の中にあるヘモグロビンと結合し、全身に運ばれ利用されます。
酸素飽和度とは動脈の赤血球中のヘモグロビンと酸素とが結合しているヘモグロビンの割合のことです。簡単に言えば、動脈を流れる血の中にどの程度の酸素が含まれているかを示す指標です。

正常であれば96~99%の値を示し、この数値が低ければ血液中への酸素の取り込みが悪いと言うことになります。

犬猫のSpO2(酸素飽和度)と脈拍を測定するパルスオキシメーター
SpO2 97%、脈拍数 73回/分

「SpO2」は「oxygen(酸素)のsaturation(飽和度)をpercutaneous(経皮的)に測定する」という意味で、「経皮的動脈血酸素飽和度」と訳されます。

SpO2は「パルスオキシメーター」で測ることができますが、ワンちゃん猫ちゃんではヒト用のもので測るのは難しいので動物病院で測ってもらいましょう!

バイタルサイン・体温

「なんか、かったるくて調子悪い」
そう思う時には熱を測ってみますよね?
それで熱が高くなければ様子を見るし、熱が出てれば体を休めます!

それは、わんちゃん猫ちゃんの場合でも同じです。
「調子が悪そうに見えるぞ?」
そう感じたときには、同じように体温を測ってみることが大切です!

ワンちゃん猫ちゃんは、ヒトと同じように気温が変っても体温は変わることなく一定に維持されています。そのため体温が高くなるなどの変化がある場合には、何らかの異常が体の中で起きている場合です。このように体温は、体の異常を知らせてくれる分かりやすい指標の一つです。
ただ体温は個体差もあるし、早朝は比較的低く夕方になるにつれ高くなるという性質もあります。

飼い主

少し熱が高いだけでも受診した方がいいですか?

Dr.Nyan

発熱に加えて元気や食欲が落ちている場合は、早めの受診をおすすめします。

体温を測ることで何がわかる?

体温が高いときは、体のどこかに感染がある場合が多いとされます。
また体温が低いときは、寒い場所に長時間いて体が冷えたり栄養状態が悪いことなども考えられます。

体温は脳の中にある「体温調節中枢」によって、一定の温度に維持されています。
しかし「体温調節中枢」の設定温度が、感染などの原因により高くなってしまうと熱が出てしまいます。

微熱程度であれば、通常の生活にはほとんど支障をきたすことはありません。
高熱になると、立ち上がったり歩くことに支障をきたすようになります。

犬猫の体温測定結果と発熱の判断に使用する電子体温計

体温は気温や室温と、体内で作られる熱エネルギーによって変わります。
例えば激しい運動をすれば体温は上がります。また体を動かすには熱エネルギーが必要なため、体が冷えていれば思うように動きません。

体温が高いときには呼吸を盛んにしたり体の表面の血管を広げて、体の熱を放出して体温を下げようとします。また体温が低いときは体表の血管を収縮させ、体温を逃さないようにしたり、また筋肉を小刻みに震えさせ体温を維持しようとします。

Dr.Nyan

寒いときには1分間に、プルプルと200回くらい震えるんだって!
しかも震えると、震えない時と比べて最大で6倍もの熱を作り出すんだってさ!
これって凄くない??

体温と他のバイタルサインとの連動

体温が上がると、他のバイタルサインも高くなることが知られています。

例えば体温が1℃上がると、脈拍も1分間に10回程度は増えるとされています。
また呼吸数も、多少ですが増えることがあります。
ただ異常に呼吸数が増えたりする場合には、十分に注意しましょう!

バイタルサイン・血圧

「歳をとると血圧が高くなる」
そのようなことを、よく聞きますよね。

血圧とは心臓から全身に血液が送り出される際に、血管の壁にかかる圧力のことです。
ワンちゃんや猫ちゃんでは、左心室から送り出された血液による大動脈内の圧力を指します。

心臓がギュッと縮んで血液を押し出した時を収縮期血圧とか最高血圧と言います。
逆に心臓の筋肉が最もゆるんだ状態の時を、拡張期血圧とか最低血圧と言います。

血圧を測ることで何がわかる?

血圧を測ることで「心臓から出た血液が血管の壁をどれだけ押しているか」がわかります。この壁を押す力が強いと、血管の壁を傷つけてしまうことがあります。
血圧に影響を与えるものとしては「心臓の血液を送り出す強さ」「心臓から血液の送り出される量」「血管の柔軟さ」などがあります。血圧を測定することで、心機能の異変や全身の血液量の異常などを察知することができます。

高血圧とは、正常範囲を超えて血圧が高く維持されている状態を言います。
高血圧となっても何ら症状を訴えないこともあるため、注意が必要です。

低血圧症は、一般に収縮期血圧が正常範囲以下の状態です。
やはり症状が見られない場合や、失神などの症状が見られるものまであります。

血圧を上げてしまう要因としては、興奮や恐怖、ストレス、痛みなどがあります。
リラックスすると血圧は、やや下がります。
肥満傾向にある場合は、血圧が高くなってしまいます。

血圧は一般には夜や寝ている間は下がり、食後や運動後は上がります。
また暖かいと下がり、寒いと高くなります。

犬猫の血圧・脈拍を測定する血圧計と循環状態の評価
最高血圧 112、最低血圧 53、脈拍 65

バイタルサイン・脈拍

脈拍数は血圧と同じように、血液の流れを把握する指標になります。
脈拍数は心拍数と同じように思われがちですが、チョット違います。

心拍数は心臓が1分間に拍動する回数のことですが、脈拍数は体の中の動脈が1分間に拍動する回数を言います。脈拍と言われるのは、動脈に触れる場所で測るためです。このように脈拍とは心臓の収縮により血液が大動脈に送り込まれる時に生じる波動が、全身の動脈に伝わったものです。

心拍数=脈拍数と同じように思われがちですが、これもチョット違います。
心臓の拍動は血管の中では脈拍として伝わりますが、不整脈がある場合には心臓の拍動は血管の中にちゃんと伝わらず、脈拍は跳んだり休んだりするように感じます。つまり心臓に異常がある場合には、心拍数=脈拍数とはならないことがあるため、脈拍数を測るときには、同時に脈拍のリズムを確認することが大切です。

Dr.Nyan

脈拍が異常に多いのを頻脈、異常に少ないのを徐脈と言うんだよ。

脈拍を知ることで何がわかる?

脈拍は、身体のすみずみまで血液が行き渡っているかどうかを知る指標になります。

頻脈や徐脈、また拍動のリズムの異常がある場合には、心臓や血液循環に関連した病気が疑われます。
脈拍数は個体差が大きく年齢や体温、また活動状態によっても変化します。
しかも脈拍は心臓の動きが基になっているため、交感神経が興奮するような状況になると脈拍は早くなります。
また年齢や気温、食事や運動、また興奮や怒りなどの感情によっても変動します。

バイタルサイン・意識

「意識がある」とは脳において刺激を認識し、その刺激に対しちゃんとした反応を示す状態を言います。しっかりと目が覚めていて刺激を感じ取ることができ、判断や解釈に何ら問題も無い状態です。
目がきちんと覚めていず、また判断や物事を解釈できない状態を「意識障害」と言います。

意識障害が起きると周りからの刺激に対して、きちんとした反応が取れなくなってしまっています。つまり「意識がある」=「刺激認識→判断→反応・行動が出来る」状態ですから、当然  息もしているし心臓が動いています。

バイタルサイン・尿量

尿は体外に排泄されるもので、その中には体の代謝によって作られた不要物や老廃物が含まれています。
尿は腎臓によって作られるため、腎臓の機能にトラブルが起こると正常な尿を作ることができません。
そのため尿量は腎臓の機能の評価に有効な指標となります。

ただ尿量の評価には膀胱留置カテーテルを使用し、正確な尿の量を測る必要があります。
1日の尿量が極端に少ない場合は、泌尿器の疾患や腎臓機能の異常などを疑います。また多い場合にも、ホルモン病などが疑われます。

バイタルサインでよくある質問

呼吸が早いのはすぐ受診ですか?

安静時でも呼吸が早い場合は早めの受診をおすすめします。

犬猫の正常体温は?

約37.5〜39.0℃が目安ですが個体差があります。

猫が口呼吸していたら危険ですか?

はい、緊急性が高い可能性があるためすぐ受診をおすすめします

犬や猫の呼吸数は何回から異常ですか?

安静時でも呼吸数が普段より明らかに多い場合は注意が必要です。特に猫では、安静時に40回/分を超える呼吸が続く場合は早めの受診をおすすめします。

バイタルサインは自宅で測れますか?

呼吸数や体温は可能ですが、異常があれば動物病院で確認が必要です。

まとめ

「呼吸が早い」「熱が高い」「元気がない」「猫が口呼吸している」などの変化があれば、軽く考えず早めの受診が重要です。

日頃から正常な状態を知っておくことが、早期発見につながります

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。

これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。

本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。