Dr.Nyanのすこやかコラム
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猫の便秘|何日出ないと危険?原因と治療・受診の目安
本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の消化器疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、猫の便秘・巨大結腸症の原因と対応についてわかりやすく解説しています。
- 2日以上ウンチが出ていない
- トイレで頑張っているのに出ない
- コロコロ便しか出ない
そんな症状はありませんか?
こうした症状が続くとき、猫の便秘を疑います。
放置すると巨大結腸症という重い病気に進行することがあります。
猫の便秘は何日出ないと危険?
健康な猫の多くは1〜2日に1回排便します。3日以上排便がない場合は便秘を疑います。さらに元気がない・食欲が落ちた・嘔吐している・トイレで何度もいきむ、これらを伴う場合は早めの受診が必要です。
【症例】こんな猫が来院しました

飼い主
3日前からトイレでずっと頑張っているのに、ほとんどウンチが出ていません。元気もなくなってきました。
Dr.Nyan
触診で大腸内に大量の硬い便が触れます。レントゲンで確認し、浣腸・摘便処置を行います。

レントゲン検査で大腸内に大量の硬い便を確認。浣腸・摘便処置を実施し、翌日から排便が改善しました。その後は食事変更・水分摂取増加・下剤の継続投与で管理しています。
猫の便秘とは?

飼い主
3日くらい出ないことはよくあるんですが大丈夫ですか?
Dr.Nyan
猫は便秘になりやすい動物ですが、3日以上出ない状態が続く場合は注意が必要です。
便秘とは、排便の頻度が減少したり、硬い便が出にくくなる状態です。多くの猫は1〜2日に1回排便しますが、3日以上排便がない場合は便秘を疑います。
便秘が長期化・慢性化すると、大腸が慢性的に拡張し便を押し出す力(蠕動運動)が低下して動かなくなる「巨大結腸症(megacolon)」に進行します。巨大結腸症になると薬や浣腸では対処できず、外科手術が必要になることもあります。
リスク先生
3日以上排便がなく元気・食欲が落ちている場合は重症です。すぐに受診してください!
症状
便秘の典型的な症状
- 2日以上排便がない
- トイレで長時間いきんでいるのに出ない・少量しか出ない
- 出てもコロコロした硬い小さい便
- 排便時に鳴く・痛がる
- トイレ以外で排便しようとする
- 元気・食欲が低下している
- 嘔吐(便が詰まることで起こる)
重症サイン(緊急受診)
- 3日以上全く排便がない
- 元気がなくぐったりしている
- 嘔吐が続く・全く食べない
- お腹が張って硬い
便秘と尿道閉塞の違い
トイレでいきむ=便秘とは限りません。特にオス猫では尿道閉塞という命に関わる病気があります。排便ではなく排尿できずにいきんでいることもあるため注意が必要です。
リスク先生
オス猫で尿が出ていない場合は緊急疾患です!すぐに受診してください。
原因

飼い主
便秘って単に水を飲まないだけじゃないんですか?
Dr.Nyan
水分不足が最も多い原因ですが、腎臓病や脊髄疾患などが隠れていることもあります。
水分不足(最多)

飼い主
水はあまり飲まないけど大丈夫ですか?
Dr.Nyan
猫は水分不足になりやすく、それが便秘の最も多い原因です。特にドライフード中心の食事では注意が必要です。
猫はもともと水をあまり飲まない動物です。水分が不足すると便が硬くなり排便しにくくなります。ドライフードのみを与えている場合は特にリスクが高いです。
運動不足・肥満
運動量が少ないと腸の蠕動運動(便を押し出す動き)が弱くなり、便が腸内に長く留まって硬くなります。去勢・肥満の中高齢雄猫に多い原因です。
毛球症
グルーミングで飲み込んだ被毛が腸内で蓄積し、排便を妨げることがあります。特に長毛種・グルーミングが多い猫に多く見られます。
トイレの問題
トイレが汚い・トイレの場所が気に入らない・猫砂の素材が嫌いなどの理由で排便を我慢することがあります。これが習慣化すると慢性便秘につながります。
基礎疾患
慢性腎臓病(脱水)・神経疾患・骨盤骨折後遺症・腫瘍などが原因になることがあります。
繰り返す便秘は基礎疾患の検査が必要です。
▶ 猫の慢性腎臓病|水をよく飲む・おしっこが多い原因と治療
▶ 巨大結腸症(作成予定)
▶ 猫の毛球症|毛玉を吐く原因と治療
Dr.Nyan
便秘を繰り返す場合は腎臓病や脊髄疾患が隠れていることがあります。血液検査・レントゲンで原因を特定しましょう。
診断方法

飼い主
検査しないとわからないんですか?
Dr.Nyan
触診である程度判断できますが、レントゲンで便の量や大腸の状態を確認することで重症度を正確に判断できます。
触診(腹部に硬い便の触れ)・レントゲン検査で大腸内の便の量と状態を確認します。基礎疾患が疑われる場合は血液検査・超音波検査も行います。

Dr.Nyan
レントゲンを見ると便の量・硬さ・大腸の状態が一目でわかります。重症度の判断に非常に有用な検査です。
治療法

飼い主
どんな治療をするんですか?
Dr.Nyan
軽度なら下剤や食事療法、重度なら浣腸や摘便、巨大結腸症では手術が必要になることもあります。
浣腸・摘便(急性期)
大量の便が詰まっている場合は、麻酔下または鎮静下で浣腸・摘便(手で便を取り除く処置)を行います。硬い便を柔らかくしてから排出します。
薬物療法(慢性管理)

- ラクツロース(便を柔らかくする下剤・長期使用可)
- ポリエチレングリコール(PEG)(浸透圧性下剤)
- シサプリド(腸の蠕動運動を促進)
- 点滴(脱水補正・便の軟化)
Dr.Nyan
下剤は自己判断で量を増やさないでください。過剰投与で下痢・脱水になることがあります。
食事・生活管理
- ウェットフードへの切り替え(水分摂取量を増やす)
- 水飲み場を複数設置・流れる水を好む猫にはウォーターファウンテン
- 食物繊維を含む消化器サポートフードへの変更
- 毛球ケアフード・毛球除去剤の使用
- 適度な運動・肥満の解消
自宅でできるお腹のマッサージ
【自宅でできる優しく行うマッサージの手順】
「の」の字を書くようにマッサージ
猫が横になってリラックスしている時に、おへその周りを中心に時計回り(「の」の字を書く方向)に、手のひらや指の腹で優しく円を描くように撫でます。

マッサージをする指先には力を入れすぎないのが鉄則
猫の皮膚は非常にデリケートで、特にお腹は敏感な場所です。決して強く押さず、毛並みを整えるくらいの優しい力加減で行ってください。
リラックスしている時間を狙う
ゴロゴロと喉を鳴らしているときや、寝起きなどのリラックスしているタイミングで行うと効果的です。
リスク先生
便が大量に詰まっている場合や異物誤飲では、マッサージが逆効果になることがあります。マッサージは軽度の便秘時のみ行い、異常を感じたらすぐ受診しましょう。
高齢の猫や慢性腎臓病の猫は脱水しやすく、便が硬くなりやすい傾向があります。
そのため便秘を繰り返しやすくなります。
マッサージと合わせて、日頃からしっかりと水分が取れているかも気にかけてあげましょう。
外科手術(巨大結腸症)
大腸が慢性的に拡張し、便を押し出す機能が著しく低下した巨大結腸症では、結腸切除術(大腸の一部を切除する手術)が必要になることがあります。手術後の成績は比較的良好です。
リスク先生
巨大結腸症まで進行すると外科手術が必要になります。そうなる前に早めの受診が重要です。
予防方法
- 水分摂取を増やす(ウェットフード・ウォーターファウンテン)
- トイレは常に清潔に保つ(最低1日1回掃除)
- 定期的なブラッシングで毛球を減らす
- 適度な運動・肥満防止
- 毎日の排便確認(2日出ない場合はすぐ相談)
Dr.Nyan
一番の予防は毎日のトイレチェックです。いつ・どのくらいの量が出たか把握しておくと、早期発見につながります。
発症しやすい猫の特徴
- 中高齢(7歳以上)の去勢済みオス猫
- 肥満・運動不足の猫
- ドライフードのみを食べている猫
- 長毛種・グルーミングが多い猫
- 慢性腎臓病・脊髄疾患がある猫
こんな症状があれば早めに受診を

| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 2日以上排便がない | ⚠️ 早めに受診 |
| トイレで長時間いきんでいる | ⚠️ 早めに受診 |
| 硬い小さい便しか出ない | ⚠️ 早めに受診 |
| 排便時に鳴く・痛がる | 🚨 急いで受診 |
| 元気・食欲が落ちてきた | 🚨 急いで受診 |
| 3日以上排便なし・嘔吐もある | 🏥 直ちに受診 |
よくある質問
猫は毎日ウンチをしないと異常ですか?
個体差がありますが、1〜2日に1回であれば問題ないことが多いです。ただし3日以上出ない場合は便秘を疑います。
便秘で死ぬことはありますか?
便秘そのもので急死することはまれですが、巨大結腸症や基礎疾患が隠れていることがあります。重症化すると手術が必要になることもあります。
マッサージだけで治りますか?
軽度なら改善することがありますが、便が大量に詰まっている場合は逆効果になることもあります。
Dr.Nyanからのひとこと
猫の便秘は「数日様子を見るうちに悪化する」ことが少なくありません。
特に高齢猫や腎臓病の猫では脱水が関係していることも多いため、排便回数の変化に気付いたら早めに相談しましょう。
猫の便秘で吐くことはありますか?
はい。重度の便秘では腸の動きが低下し、吐き気や嘔吐がみられることがあります。便秘だけと思わず早めに受診しましょう。
2日出なければすぐ受診すべきですか?
元気・食欲が正常であれば様子を見ることもできますが、3日以上出ない・元気がない・嘔吐がある場合はすぐに受診してください。
おしっこはできているのに便秘ということがありますか?
はい。便秘とおしっこの詰まり(尿道閉塞)は別の病気です。ただし雄猫の場合、「トイレでいきんでいる」のが排便か排尿かわかりにくいことがあります。どちらも出ていない場合は緊急です。
巨大結腸症はどうなりますか?
大腸が機能しなくなり、薬や浣腸での対応が困難になります。結腸切除術(外科手術)が必要になることがありますが、術後の経過は比較的良好なケースが多いです。
水をあまり飲まない猫はどうすればいいですか?
ウェットフードへの切り替え・水飲み場の数を増やす・流れる水が好きな猫にはウォーターファウンテン設置などが有効です。
下剤は長期間使っても大丈夫ですか?
ラクツロースなどは比較的安全に長期使用できますが、量の調整が必要です。自己判断で増量せず、定期的に通院して経過を確認してください。
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飼い主
便秘って意外と怖い病気なんですね。
Dr.Nyan
はい。特に猫は巨大結腸症になると手術が必要になることもあります。早めの対応がとても大切です。
まとめ
猫の便秘は珍しい病気ではありません。
しかし、「3日以上出ない」「吐いている」「トイレで何度もいきむ」この3つが揃った場合は巨大結腸症や尿道閉塞などの重篤な病気の可能性があります。
「2日以上便が出ない」「トイレで長時間いきんでいる」——これらのサインを見逃さないでください。
猫の便秘は放置すると巨大結腸症という重篤な状態に進行します。
毎日のトイレチェックで早期発見を心がけ、気になることがあれば早めにご相談ください。
様子見ではなく、早めの受診が大切です。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。