Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
犬・猫の臭い下痢|危険な病気のサイン?原因・症状・受診の目安
診察をしていると、
「先生、下痢のニオイがいつもと違うんです」
と、便の臭いを心配して来院される飼い主さんがいます。
たしかに、便の臭いは診察のヒントになります。
ただ、ここで大切なのは、「臭い=重い病気」とは限らないということです。
反対に、それほど臭わない下痢でも、何日も続いていたり、食欲が落ちていたりすると、病気が隠れていることがあります。
私が診察するときも、臭いだけを見ることはありません。
「水のような便なのか、泥状なのか」
「1回の量は多いのか」
「少量を何度もするのか」
「血や粘液は混じっていないか」
こうしたことを一つずつ確認していきます。
同じ「下痢」でも、便の様子はずいぶん違うからです。
では、飼い主さんが気付きやすい「とても臭い下痢」と「あまり臭わない下痢」には、どのような違いがあるのでしょうか。
実際の診療で確認しているポイントを交えながら説明していきます。

飼い主
先生、うちの仔が最近下痢気味なんです。いつもより凄く生臭いというか、腐ったようなニオイがして心配で…
Dr.Nyan
それは心配だね。便のニオイは、お腹の状態を考えるときの手がかりの一つなんだ。
ただ、ニオイだけで原因や重症度がわかるわけではないよ。
便の量や回数、色、血や粘液が混じっていないか、それに元気や食欲も一緒に見ていくことが大切なんだ。
とても臭い下痢
原因とメカニズム
強い臭いを伴う下痢では、消化不良や食事内容の変化、腸内細菌叢の変化、感染症など、いくつもの原因を考えます。
血液や粘液が混じることもありますが、臭いの強さだけから原因を特定することはできません。
私は便の臭いを聞いたあと、
「最近フードを変えませんでしたか?」
「いつもと違うものを食べませんでしたか?」
と尋ねます。
診察では、こうした何気ない話が原因を探る手がかりになることがあります。

飼い主
下痢のニオイって、そんなに重要なんですか?
Dr.Nyan
大切な情報の一つだよ。
でも、ニオイだけで病気を決めることはできないんだ。
むしろ診察では、「いつもの便と何が違うのか」を聞くことが大切なんだよ。
私が診察でまず確認するのは、「どんな下痢なのか」です。
実際には便の量だけでなく、排便回数や便の色、食欲まで合わせて考えます。
一つだけで判断せず、全体を見ることが診断では重要になります。
便を大量にするのか、少量を何度もするのか。
実はこれだけでも、小腸の病気なのか、大腸の病気なのかをある程度推測できます。
小腸性では大量の便・体重減少・脂肪便が見られやすく、大腸性では少量頻回・粘液便・血便が特徴です。

飼い主
血が少し混じるだけでも病院に行った方が良いですか?
Dr.Nyan
鮮血だけなら大腸炎のことも多いけれど、黒い便や元気消失を伴う場合は緊急性が高いこともあるんだ。
主な特徴・症状
・いつもの便とは明らかに違う、強い臭いを感じることがある
・粘液や血液が混じることがある
・下痢とともに、嘔吐や食欲低下、腹痛などがみられることがある
ただし、こうした症状と臭いの強さが必ず一致するわけではありません。
具体的な疾患とリスク
リスク先生
「臭いが強い=重い病気」とは限らないぞ!
大切なのは、臭いだけで判断しないこと。
血便、繰り返す嘔吐、食欲低下、元気がないなどの症状が一緒にみられたら、早めの受診だよ!
細菌性腸炎
どんな病気?
当院でも、生肉や傷んだ食べ物を食べた後に発症する犬を診ることがあります。
急に始まった激しい下痢に、血便、嘔吐、腹痛、発熱、元気消失などが伴う場合には、感染性腸炎を含めて原因を調べます。
診察で気になるポイント
臭いだけで細菌性腸炎と判断することはできません。
急に始まった激しい下痢に、血便や嘔吐、腹痛、発熱、元気消失などが重なっていないかを確認します。
また、生肉や傷んだ食べ物を口にしていないかなど、発症前の食事についても詳しく聞いていきます。
不適切な食事・誤食による中毒
どんな病気?
食べ慣れないものを口にしたり、脂肪の多い食事を一度に食べたりしたあとに、下痢や嘔吐を起こすことがあります。
診察で気になるポイント
「昨日、何かいつもと違うものを食べませんでしたか?」と確認します。
飼い主さんが「少しだけだから関係ないと思っていた」という食べ物が、発症の手がかりになることもあります。
腸内細菌叢の乱れ
どんな病気?
腸内細菌叢のバランスが崩れることが、下痢に関係している場合もあります。
食事の変化や腸炎、抗菌薬の使用など、さまざまな要因が腸内細菌叢に影響します。
ただし、便の臭いだけから「腸内細菌が乱れている」と判断することはできません。
下痢が長引く場合には、食事内容やこれまでの治療歴、体重の変化なども含めて原因を探っていきます。
診察で気になるポイント
下痢が長引いていないか、食事変更や抗菌薬の使用歴がないか、体重が減っていないかなどを確認します。
膵外分泌不全(EPI)などの消化器疾患
どんな病気?
膵臓からの消化酵素が不足し、栄養を十分に分解できない。
診察で気になるポイント
しっかり食べているのに体重が落ちる(痩せる)症状を伴い、便量が増え、軟便や脂肪便がみられることがあります。便の臭いが強くなることもあります。
寄生虫感染(ジアルジアなど)
どんな病気?
ジアルジア、トリコモナス、回虫、鉤虫などの寄生虫・原虫感染によって下痢を起こすことがあります。
診察で気になるポイント
軟便や水様便、粘液便などがみられることがあります。
特に子犬・子猫、多頭飼育では注意が必要です。
臭いが弱い下痢でも安心とは限らない
原因とメカニズム
下痢をしていても、いつもより臭いが強くならないことがあります。
食事の変化や食べ過ぎ、ストレスなどによる一時的な下痢でもみられますが、「臭くないから軽症」とは限りません。
私が診察するときは、臭いよりも「何日続いているのか」「1日に何回するのか」「元気や食欲はどうか」「体重が減っていないか」を重視します。
臭いがそれほど気にならなくても、下痢が続いている場合には原因を調べる必要があります。
主な特徴・症状
・軟便から水様便まで、便の状態はさまざま
・臭いが普段とあまり変わらないこともある
・臭いが弱くても、下痢が長引くことがある
具体的な原因
Dr.Nyan
ニオイが弱くても、それだけで軽い下痢とは判断できないんだ。
何日続いているか、元気や食欲はあるか、体重が減っていないか。そこまで一緒に見ることが大切だよ。
ストレス性の下痢
原因
ペットホテルや引っ越し、来客、生活環境の変化などをきっかけに、軟便や下痢を起こすことがあります。
元気や食欲が保たれていることもありますが、下痢が長引く場合には「ストレスだろう」と決めつけないことが大切です。
特徴
環境の変化をきっかけに突然軟便になることがあります。元気や食欲が保たれていることもありますが、症状が続く場合には他の原因も考える必要があります。

飼い主
ストレスだけで下痢になるんですか?
Dr.Nyan
犬や猫の腸はとても繊細なんだ。
来客やホテルだけでも腸の動きが変わることがあるよ
一時的な消化不良
原因
食べすぎや急に新しい食事に変えた場合。
特徴
食べ過ぎや急なフード変更などをきっかけに、一時的に軟便や下痢になることがあります。
フードを急に変更した翌日や、おやつを食べ過ぎた翌日に軟便になる犬は珍しくありません。
数回の排便で改善することもありますが、2〜3日以上続く場合や、嘔吐・食欲低下などを伴う場合には、単なる消化不良だけではない可能性も考えます。
下痢で受診を考えるポイント
| 確認すること | 自宅で経過をみられることがある | 早めに受診したい |
|---|---|---|
| 元気 | 普段と変わらない | 元気がない・ぐったり |
| 食欲 | 普段とほぼ同じ | 食べない |
| 下痢 | 1〜2回程度 | 何度も繰り返す・長引く |
| 血便 | なし | 血液が多い・黒い便 |
| 嘔吐 | なし | 繰り返す |
| 体重 | 変化なし | 徐々に痩せてきた |
| 便の臭い | 判断材料の一つ | 臭いだけでは緊急度を判断しない |
リスク先生
「臭いが弱い=安心」ではないぞ!
下痢が続く・食欲低下・嘔吐がある場合は必ず受診じゃ!
よくある質問
下痢が臭いのは細菌感染ですか?
必ずしも細菌感染とは限りません。
便の臭いが強くなる原因には、食事内容の変化や消化不良、腸炎、寄生虫感染などさまざまなものがあります。臭いだけから細菌感染と判断することはできません。
当院でも、臭いだけでは診断せず、便の状態や食欲、元気、嘔吐の有無、必要に応じて糞便検査を組み合わせて原因を調べています。
下痢が魚の腐ったような臭いなのは危険ですか?
便の臭いが急に変わった場合には、食事内容の変化や消化不良、腸炎など、さまざまな原因を考えます。
血便、嘔吐、食欲低下、元気消失などを伴う場合には、臭いにかかわらず早めの受診をおすすめします。
一方で、臭いだけでは重症度は判断できません。元気そうに見えても症状が続く場合は、一度診察を受けると安心です。
臭い下痢でも元気なら様子を見てもいいですか?
元気や食欲があり、下痢が1〜2回で治まり、その後すぐに普通便へ戻るようであれば、自宅で様子を見られる場合もあります。
しかし、悪臭が続く、何度も下痢を繰り返す、血便や嘔吐がある、食欲が落ちてきたという場合は受診をおすすめします。
当院でも「元気だから様子を見ていました」というケースで、寄生虫感染や慢性腸炎が見つかることがあります。
臭いがしない下痢は軽症ですか?
臭いが弱いからといって、必ず軽症とは限りません。
下痢の臭いは、食事内容や消化状態などによっても変わります。臭いが弱くても、慢性的な消化器疾患などが隠れていることがあるため、臭いだけで軽症とは判断できません。
臭いだけではなく、下痢が続く期間や便の回数、体重減少、元気や食欲の変化も重要な判断材料になります。
子犬・子猫の臭い下痢は危険ですか?
はい。子犬や子猫では特に注意が必要です。
成犬・成猫に比べて体が小さいため、下痢による脱水が短時間で進みやすく、体力も急速に低下することがあります。また、ジアルジアや回虫などの寄生虫感染、パルボウイルスなどの感染症が原因になっている場合もあります。
当院でも、子犬・子猫の下痢では便検査を行うことが少なくありません。強い悪臭や繰り返す下痢、元気や食欲の低下がみられる場合は、できるだけ早めに動物病院を受診してください。
下痢のニオイがいつもと違ったら、すぐに病院へ連れて行くべきですか?
臭いが変わっただけで、すぐに緊急受診が必要とは限りません。
まず、下痢の回数、血液や粘液の有無、嘔吐、食欲、元気などを確認してください。
血便や繰り返す嘔吐、食欲低下、元気消失などがみられる場合には、臭いの強弱にかかわらず早めの受診をおすすめします。
また、元気があっても下痢が続く場合には、一度診察を受けて原因を確認しておくとよいでしょう。
病院を受診する際、便を持参したほうが良いですか?
可能であれば、新鮮な便を清潔な容器やビニール袋などに入れてお持ちください。
糞便検査では、寄生虫や原虫など、下痢の原因を調べる手がかりが得られることがあります。
便を持参できない場合には、色や量、形がわかるようにスマートフォンで写真を撮っておくと、診察の参考になります。
まとめ
診療をしていると、「臭いがいつもと違う」という飼い主さんの気付きが、病気の早期発見につながることは少なくありません。
一方で、「臭いが弱いから大丈夫」と思っていた犬や猫に、慢性腸炎や消化器疾患が見つかることもあります。
便は、毎日飼い主さんが見ることのできる大切な健康情報です。
「いつもと違う」
その気付きだけでも、診察では大きな手がかりになることがあります。
臭いだけで判断せず、便の状態と、その子自身の様子を一緒に見てあげてください。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、千葉県佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として、犬猫の診療と予防医療に取り組んでいます。
長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。
著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なります。
気になる症状がある場合はお早めに、佐倉市のDr.Nyan(若山動物病院)にご相談ください。