犬の咳が出る?それフィラリア症かも?症状・原因・治療と受診の目安

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咳が出る?それフィラリア症かも?症状・原因・治療と受診の目安

犬の咳、それフィラリアかも?

朝や興奮したときに、喉に何かが詰まったようなをする。
それ、もしかすると「フィラリア症」のサインかもしれません。
放置すると命に関わることもあるため、早めの気づきがとても重要です。

この症例では、実際に見られた症状をもとに解説します。

飼い主

喉に何か詰まったみたいな咳が出るんです。
しかも咳の最後にゲェ〜ってなるんです

Dr.Nyan

その咳は注意が必要だよ。フィラリア症の初期サインの可能性もあるね。検査しないと見逃すことがある。早めに確認しよう

犬フィラリア検査で確認されたミクロフィラリア(血液中の寄生虫)

血液中にフィラリアの子虫(ミクロフィラリア)が確認されます。

飼い主

こんな虫が血の中にいるなんて…症状が出るのも当然ですね…

Dr.Nyan

見た目以上に、血流や心臓に負担をかけるのが問題なんだ

フィラリア症とは、犬フィラリア(犬糸状虫)が心臓や肺動脈に寄生して起こる病気です。
ここでは『犬のフィラリア症』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。

ちなみにフィラリア症は発症例こそ少ないものの、ヒトにもフィラリア症があります。

目次

犬のフィラリア症とは?原因と感染の仕組み

フィラリア症は「蚊」を介して感染します。
感染した犬の血液を吸った蚊が、別の犬を刺すことで体内に寄生虫が侵入します。

体内に入った幼虫は数ヶ月かけて成長し、最終的には心臓や肺動脈に寄生します。
その結果、血液の流れが悪くなり、咳や呼吸困難などの症状が現れます。

飼い主

どんな症状が出たら危険なんですか?

Dr.Nyan

初期は気づきにくいから、ここがポイントになるよ

犬のフィラリア症の症状|見逃しやすい初期サイン

しかも犬フィラリアは血管や心臓の中に寄生するため、血液の流れも悪くなるなど慢性的な循環障害を起こしてしまいます。進行すると命に関わることもある危険な病気です。

特に以下の症状が見られた場合は早めの受診が必要です。

・朝や興奮時の咳
・運動を嫌がる
・呼吸が速い・苦しそう
・元気・食欲の低下

咳をする

犬フィラリア症の初期の特徴的な症状は『です。初めはあまり目立たない程度なので、見過ごしてしまうことも多々あります。

喉に何か詰まったような咳をする犬の様子

徐々に興奮したときや早朝などに咳が出るようになります。食欲や元気があるため見過ごされがちですが、様子を見ているうちに病状は進み次第に状態が悪化してしまいます。そして喉の奥に何か詰まったような咳をしたり、呼吸が苦しくなってしまいます。

ついには「呼吸が困難な状態」となり、場合によっては死に至ってしまうこともあります。

リスク先生

様子見は危険。軽い咳でも進行している可能性がある
しかも進行すると呼吸困難や突然死につながる!

疲れやすい

犬フィラリアは血管の中に住むため、血液の流れを悪くしてしまいます。そのため散歩や運動しても、思うように血が流れず組織への酸素も滞ってしまいます。

その結果、とても疲れやすくなったり階段を登るのも辛くなってしまいます。

飼い主

散歩を嫌がるのも関係あるんですか?

Dr.Nyan

血流が悪くなるから、運動がつらくなるんだ

心臓の異常からの浮腫や腹水

犬フィラリアは主に肺動脈や右心系に寄生し、血流障害や心臓機能低下を引き起こします。
そのため犬フィラリアが三尖弁を傷つけたり、血液の流れを悪くしてしまいます。その結果、右心不全を起こしてしまいます。

フィラリア症による黄疸で白目が黄色くなった犬

犬フィラリアと三尖弁の関係です。

心臓の右側は、全身から戻ってきた血液を肺に送り出す仕事をしています。つまり右心不全になると肺に血液を送り出せなくなるため、全身に血が溜まってしまいます。

その結果、息切れや足の浮腫、腹水が見られるようになります。

赤いオシッコが出る

突然のように、赤いオシッコをすることがあります。場合によっては膀胱炎と勘違いされることもあります。

この赤いオシッコは、血がそのままの出てくる血尿ではありません。血管の中で赤血球が壊れてしまった結果、オシッコが赤い色となってしまう血色素尿と言うものです。

リスク先生

赤い尿は重症サイン。命に関わる状態の可能性もある

また黄疸が出て、眼や皮膚、歯茎が黄色くなってしまうこともあります。黄疸は肝炎でも出ますので注意が必要です。

黄疸の様子

白眼の部分が黄色くなっています。

犬のフィラリア感染の流れ

蚊に刺される

ヒトの血も吸う蚊であるヒトスジシマカやアカイエカ、トウゴウヤブカなどがフィラリアを媒介します。蚊は気温が約15℃を超えると活動し始め、血を吸い出します。

~Dr.Nyan ポイント~
犬フィラリアってどうやって増えていくの?

蚊がフィラリアに感染した犬の血液を吸う・・
・蚊の体内に血液と一緒にフィラリアの子虫が入る
・フィラリアの子虫はミクロフィラリアとも言われ0.3mmほどの小さな虫

蚊の体内に入ったミクロフィラリアは・・
・発育し感染力を持つ幼虫(感染子虫)へとなる
・感染子虫は、蚊が別の犬を刺すときにその犬の体内に入る

犬の体内に入った感染子虫は・・
・6ヶ月後には30cmくらいまでに育つ
・犬の心臓や肺動脈の中に住み多数のミクロフィラリアを生む

このように犬フィラリアは犬と蚊の間を行ったり来たりしながら、感染を広げていきます。

犬のフィラリア症の治療法 内科・外科

飼い主

薬ですぐ治せるんですか?

Dr.Nyan

順番を間違えると命に関わる。段階的治療が重要だよ

フィラリア症の治療は「段階的」に行うのが基本です。
いきなり成虫を駆除すると危険なため、順番がとても重要です。

治療を行うに際しては、以下の寄生に対して薬剤などを使用した治療方法を組み合わせて行います。

  • ボルバキア
  • ミクロフィラリア
  • 犬フィラリア成虫

犬フィラリアの体内には、ボルバキア(Wolbachia pipientis)と言う細菌の仲間が住んでいます。このボルバキアは、フィラリアの感染で起こる炎症やフィラリアの生殖にも関わっています。

また、犬フィラリアに感染した犬の体の中には、犬フィラリアの仔虫であるミクロフィラリアが多数住んでいます。このミクロフィラリアは体が小さく体の隅々まで入り込むことができるため、肝臓などの臓器の機能に悪影響を与えています。

〈ステップ1〉ボルバキアに対して抗生剤を使う

犬フィラリア成虫とミクロフィラリアの駆除の前に、ボルバキアの治療を行っておくのが良いとされています。ボルバキアの治療には、ドキシサイクリンやアジスロマイシンなどの薬を投与します。

ボルバキアを治療した際の効果は以下のようになります。

  • 犬フィラリア症の症状が緩和される
  • ミクロフィラリアの数の減少が見られる
  • 幼虫の成長が抑えられる
  • 成虫の繁殖能力を無くする

〈ステップ2〉ミクロフィラリアを駆除する

これ以上犬フィラリア症が悪化しないように、ミクロフィラリアの駆除を行います。

ミクロフィラリアを駆除した際の効果は以下のようになります。

  • 幼虫の成長が抑えられる
  • 成虫の寿命を短くする

ミクロフィラリアが大量に寄生している場合には、一気にミクロフィラリアが死滅してしまうとショック反応が起こることがあります。そのような状態が考えられる場合には、ショック反応に備えた治療を合わせて行う必要があります。

〈ステップ3〉犬フィラリアの成虫を駆除する

成虫の駆除は、あらかじめボルバキアとミクロフィラリアに対しての処置を行なった後に行います。

内科的な治療を行う

犬フィラリア成虫を殺す薬を使用します。ただ成虫は長さが30cmと大きく、しかも心臓や血管の中に住んでいます。

治療を行うと死んだ虫が血管の中を流れ、細い部分に詰まってしまうこともあります。その結果、様々な臓器の障害が起きてしまうことがあります。

そのため、犬フィラリアをジワジワと弱らせるような治療を行うこともあります。このような治療方法では、駆虫に1年以上の時間がかかることもあります。

治療の間は、死んだ虫による呼吸器や循環器などの合併症に細心の注意を払う必要があります。また運動にも、大きな注意が必要です。

外科的に成虫を摘出する

心臓の中に寄生しているフィラリアの成虫を、首の血管から特殊な器具を挿入して取り出します。手術を行うのに当たっては、全身麻酔を必要とするため高度な技術を必要とします。また犬の体には、大きな負担がかかります。

 外科手術で摘出された犬フィラリア成虫(約30cm)

手術で取り出した犬フィラリアの成虫で、1匹の長さが約30㎝です。

状態が悪い場合は対処療法を行う

積極的な駆除を行うには、あまりにも状態が悪い場合には症状を軽くする治療を行います。

フィラリアの影響で心不全がある場合には、症状を緩和するための治療を行います。心臓の負担を避けるため、血管拡張剤や利尿剤などを使用します。また肺高血圧症の治療薬やステロイド剤を使うこともあります。

肺の障害が重度の場合には、呼吸を楽にしてあげるために酸素吸入が行われます。

急性期の最重症「ベナケバ症候群」

内科治療のみでの改善は難しく、迅速な外科的対応が必要になります。

犬のフィラリア症の予防方法|薬・時期・注意点

フィラリア症は「予防できる病気」です。
しかし予防をしないと命に関わることもあります。

リスク先生

感染した状態で予防薬を使うと、ショックを起こして命に関わる状態に陥る!

万が一、フィラリアに感染しているのに予防薬を飲ませてしまうとショック症状を起こしてしまいます。最悪の場合は死に至ることもあります。

予防してあげたいと思ったのに、それが原因で死んでしまっては重大なリスクにつながる可能性があります

投薬を行う前には、必ず以下の二つの検査を行い感染が無いことを確認し投薬事故を防ぐことが重要です。

  • ミクロフィラリアを検出する方法
  • 犬フィラリアの抗原を検査をする方法

ミクロフィラリアが陽性の場合

ミクリフィラリアの様子

顕微鏡検査で、ミクロフィラリアが見つかりました。

犬フィラリアの抗原検査で陽性の場合

犬フィラリア抗原検査で陽性となった検査キットの結果画像

フィラリア抗原検査で陽性でした。

犬フィラリア抗原検査の判定ライン(陽性結果)

判定結果、上記画像により陽性ということがわかります。

注射による予防

ミクロフィラリアが陰性の場合に使用できます。フィラリア症予防の注射があります。

注射薬の利点は

  • 内服薬のような飲ませ忘れが無いこと
  • 注射は1年に1回、効果は12ヶ月間続くため通年予防ができる
  • 注射の時期を選ばない
  • 確実に予防できるのがメリット

メリットいっぱいの注射ですが、体重の変わる成長期には使用できません。体重が安定する成犬に使用します。

内服薬による予防

ミクロフィラリアが陰性の場合、使用できます。

内服するタイプには、錠剤とチュアブル錠があります。成分は双方とも同じで、イベルメクチンやミルベマイシンなどです。

<錠剤とチュアブル錠の違い>

【錠剤】
薬を飲むことに抵抗の無いわんちゃんにおすすめです。

【チュアブル錠】
噛んでから飲み込むタイプの錠剤です。オヤツ感覚で食べたい子に、錠剤の飲ませ辛さが解消されます。内服薬は毎月1回、1ヵ月間隔で服用します。

背中に垂らすスポットオン剤による予防

ミクロフィラリアが陰性の場合、使用できます。

セラメクチンなどが成分の薬です。液体の薬を、首の後ろの皮膚に滴下して使うタイプです。

内服するタイプの薬を受けつけない犬にも、使用することが出来ます。口に入る薬ではありませんので、食物アレルギーがあっても使えます。

【最も重要なポイント】

予防薬の効果を最大限発揮させるために知ってほしいこと

フィラリア症予防薬は、フィラリアの幼虫が心臓にたどり着く前に駆除する薬です。
予防薬は「蚊に刺されるのを防ぐ薬」ではありません。
体内に入った幼虫を駆除する薬です。

内服薬とスポットオン剤は、1ヶ月間効いているわけではありません。

  • 投薬の開始は、蚊の活動が活発になる時期から
  • 投薬終了は、気温が下がって蚊が見られなくなった1カ月後まで

投薬のタイミングを逃すと薬の効果が発揮できませんので、忘れずに使用しましょうね!
毎月きちんと投薬することが、最大の予防です。

蚊に刺されないようにする

フィラリア症予防薬を飲んでるから安心と思わず、蚊に刺されないようにしてあげます。

例えば蚊取り線香を使ったり扇風機で空気を動かす、また蚊が寄り付きづらいようなアロマを使うなどがあります。

蚊に刺されれば痒いし、蚊によるアレルギー反応を起こしてします場合もありますよね!蚊に刺されないようにしてあげることも、予防の一つになります。

すぐ受診すべきサイン

これらの症状がある場合は、早めの診察をおすすめします。

・咳が増えている
・散歩ですぐ疲れる
・呼吸が苦しそう
・赤い尿が出た(血液がそのまま出る血尿ではありません)

これらは進行したフィラリア症の可能性があります。

犬フィラリア症を起こしやすい犬種

  • 屋外飼育の犬
  • 予防薬を飲んでない犬
  • 予防薬を規定どおりに飲んでない犬

フィラリア症は「予防できる病気」です。
しかし、予防をしなければ確実にリスクが高まります。

飼い主

予防していれば防げるんですね

Dr.Nyan

その通り。フィラリアは予防できる命の病気だよ

犬フィラリア症でよくある質問

犬の咳はすべてフィラリアですか?

気管支炎や心臓病など他の病気でも咳は出ますが、フィラリア症の可能性もあるため検査が必要です。

フィラリア予防はいつから必要ですか?

蚊が活動を始める時期から終了後1ヶ月までが基本です。

室内犬でも予防は必要ですか?

蚊は室内にも侵入するため予防は必須です。

予防薬を飲み忘れた場合はどうすればいいですか?

早めに投与し、状況によっては検査が必要になります。

まとめ

犬フィラリア症は初期には目立たないことも多く、気づいた時には進行していることがあります。
しかし、正しく予防すれば防げる病気です。

・咳が気になる
・少し元気がない

このような小さな変化でも、早めの受診をおすすめします。
フィラリア症は「予防できる命の病気」です。毎年の予防を忘れずに行いましょう。

犬フィラリア予防薬の処方を受ける犬(予防の重要性イメージ)

咳など気になる兆候が見られたら早めにご相談ください。お家での管理や看護方法など、健康を守るお手伝いをします!

参考動画:フィラリア検査

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

獣医師 若山正之 プロフィール写真 小動物臨床 犬猫診療

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。