子犬の咳と鼻水が止まらない?それケンネルコフかも|症状・原因・治療と受診の目安

  1. ホーム
  2. Dr.Nyanのすこやかコラム
  3. ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)|子犬の咳・鼻水・発熱の原因と治療・受診の目安

Dr.Nyanのすこやかコラム

コラム記事検索

ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)|子犬の咳・鼻水・発熱の原因と治療・受診の目安

ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)|子犬の咳・鼻水・発熱の原因と治療・受診の目安

「カッカッ」「ハック、ハック」と、まるで喉に何か詰まったような乾いた咳を子犬が繰り返していませんか?

特に「ペットショップから迎えたばかり」「環境が変わったばかり」の子犬では、犬の呼吸器感染症『ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)』が隠れていることがあります

実際に当院でも、元気なのに咳だけ続く子犬が来院します。

  • 子犬の咳が止まらない
  • 遊ぶと咳が悪化する
  • 興奮すると苦しそうに咳き込む

という症状の場合、ケンネルコフと診断されるケースは少なくありません。
軽い風邪のように見えても、重症化すると肺炎へ進行することもあるため注意が必要です。

飼い主

最近迎えたばかりの子犬が、喉に何かつまったような『カッカッ』という乾いた咳を頻繁にするんです。これって風邪でしょうか?

Dr.Nyan

その症状、『ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)』かもしれません。特に環境が変わったばかりの子犬に多く見られる、感染力の強い呼吸器の病気です。

ケンネルコフは、子犬に多く見られる感染力の高い呼吸器の病気で、ドッグランやペットショップ、トリミングサロンなどで感染することがあります。
初期は元気や食欲があることも多いため軽く見られがちですが、悪化すると肺炎へ進行することもあるため注意が必要な病気です

リスク先生

ケンネルコフは単なる『犬の風邪』と侮ってはいけません!体力の低い子犬やシニア犬の場合、重症化して肺炎を引き起こし、命に関わるリスクもある危険な病気なんだ。

飼い主

咳だけなら様子見していいと思ってました…

Dr.Nyan

元気そうに見えても、急に悪化することがあるので注意が必要なんです。

この記事では、以下について飼い主さんにも分かりやすく解説します

・子犬に多い初期症状
・咳が悪化するサイン
・肺炎へ進行するケース
・感染の原因
・PCR検査と治療方法
・受診すべきタイミング
・予防方法

愛犬の咳が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

目次

ケンネルコフとは(犬の伝染性気管気管支炎)

ケンネルコフ(Kennel Cough)とは、直訳すると「犬舎の咳」という意味で、その名の通りペットショップやブリーダー、ドッグランなど、犬が集まる場所で集団感染しやすい呼吸器感染症です。

医学的には「伝染性気管気管支炎」と呼ばれ、複数のウイルスや細菌が複雑に関与する混合感染が多い病気として知られており、特に子犬に多く発症します。

佐倉市の動物病院でも、子犬の来院理由として比較的多く見られる呼吸器感染症の一つです。

飼い主

咳だけなら様子見でもいいですか?

Dr.Nyan

元気そうに見えても、急に悪化することがあるので注意が必要です。

ただし感染初期には症状が軽く、咳だけで元気に見えることも多いため、発見が遅れるケースも少なくありません。

犬の咳の原因にもなるケンネルコフの症状

ケンネルコフの最も特徴的な症状は」です。
佐倉市の動物病院でも、子犬の咳の原因としてケンネルコフは比較的よく見られる呼吸器感染症です。

子犬の乾いた咳 ケンネルコフによる犬の呼吸器症状
ケンネルコフでは「カッカッ」という乾いた咳から始まることが多く、子犬では特に注意が必要です。

ケンネルコフ感染の初期は軽い咳をする程度で食欲も元気もあるため、「元気だから大丈夫」と様子を見てしまい、肺炎まで進行してから来院されるケースもあります。しかし様子を見ていると「気管気管支炎」が悪化し、重症化すると「肺炎」を起こしてしまいます。

飼い主

まさにうちの子も、遊んで興奮したあとに『カッカッ』と苦しそうに咳をします…

Dr.Nyan

ケンネルコフでは、興奮や運動で気管が刺激されると咳が悪化しやすいんです。

口から吸い込まれた空気が肺まで通る道が「気管」、気管と肺をつなぐ部分が「気管支」です。その気管や気管支の粘膜がウイルスや細菌により炎症を起こしたのが「気管気管支炎」です。

咳をする

ケンネルコフの特徴はですが、感染の状態によって咳の出方が違います。

  • 感染初期の「カッカッ」と乾いた咳
  • 症状が進むと「ゴホゴホ」と喉に何か詰まったような咳、また痰が絡んだような咳

飼い主

咳の種類で違いがあるんですね…

Dr.Nyan

最初は「カッカッ」という乾いた咳でも、進行すると「ゴホゴホ」と痰が絡んだような咳に変わることがあります。

咳も軽いし元気だから様子を見ていると、症状が進み重篤な状態へとなってしまうので注意が必要です!

飼い主

病院に行くタイミングが分からなくて…

Dr.Nyan

「咳が続く」「悪化してきた」「食欲や元気が落ちる」が受診のサインです。

リスク先生

「軽い咳だから大丈夫」は危険です!
子犬では短期間で肺炎へ進行することもあります!

咳の出るのは、以下のような経路によります。この経路を咳反射と言います。

犬の咳反射の仕組み ケンネルコフや気管気管支炎による咳
気管や気管支の炎症によって咳反射が起こり、犬は「コンコン」「ゴホゴホ」と咳をします。

異物が気道内に入り込む

気道の粘膜のセンサーが反応する

その刺激が脳に伝わる

横隔膜や肋間筋などの呼吸筋に指令が送られる

咳が起こる

このようにして、咳が起こります!

犬の咳には、ケンネルコフだけでなく、気管虚脱・心臓病・肺炎・異物の吸い込みなど、ほかの病気が隠れていることもあります。
咳が長引く場合や、夜間・興奮時・運動後に悪化する場合には、早めの受診をおすすめします。

クシャミや鼻水

炎症が鼻へと進むと、クシャミや鼻水が出るようにもなります。

熱が出る

感染初期や軽症な場合では、39°Cくらいの熱が出ます。しかし重症化してしまうと、40°Cを超える高熱が出てしまうこともあります。

犬の平熱は測定の仕方でも違いますが、だいたいは38℃台で39℃を超えることはありません。体温がどれくらいなのか把握しておくために「日頃から体温を測っておく」ことが大切です。

ケンネルコフの原因

飼い主

どうして感染するんですか?

Dr.Nyan

咳や鼻水の飛沫で広がる、とても感染力の強い病気なんです。

感染した犬との接触により

ケンネルコフに感染した犬の唾液や鼻水などが、咳などの際に飛沫し感染します。そのためドッグランや公園、トリミングサロンなど犬が集まる場所での感染が多くなります。

飼い主

他の犬にもうつっちゃいますか?

Dr.Nyan

はい。咳や鼻水の飛沫で広がるので、多頭飼育やドッグランでは特に注意が必要です

ケンネルコフを起こす細菌などの病原体には、以下のようなものがあります。

  • パラインフルエンザウイルス
  • 犬アデノウイルスII型
  • マイコプラズマ
  • 気管支敗血症菌(ボルデテラ菌)

感染は、これらの細菌やウイルスなど1種類の病原体だけによる場合もあります。しかし多くの場合には、数種類の病原体に感染してしまっている「混合感染」です。

犬パラインフルエンザウイルス

単独では軽症なこともありますが、気管の粘膜を傷つけ、他の細菌感染を起こしやすくします。

犬アデノウイルスII型

呼吸器に強い炎症を起こす代表的なウイルスです。

気管支敗血症菌(ボルデテラ菌)

気管の繊毛運動を障害し、長引く激しい咳の原因になります。

免疫力の低下やストレスにより

免疫力がしっかりとしていない、生後数ヶ月の犬に多い病気です。

また免疫力が落ちている高齢犬や、健康な成犬でも慣れない環境、暑さや寒さ、寒暖の差によるストレスで発症してしまうことがあります。

Dr.Nyan

お家に来たばかりの子犬は、一見元気そうに見えても、移動や環境変化のストレスで免疫力が低下しています。そのタイミングで発症するケースは本当に多いんです。

ケンネルコフの主な治療法

抗生剤を使用する

細菌感染には、抗生剤などを使用します。

Dr.Nyan

原因になっている細菌やウイルスを調べるために、PCR検査を行うことがあります

ケンネルコフの原因となるウイルスや細菌は多数あるため、原因によって治療方法は少し異なります。そのため『PCR検査』を行い、ある程度原因を特定してしまう方が治りは早くなります。

『PCR検査』は、結膜と喉の奥から採取した検体をIDEXX社に送付し検査の依頼をしております。その結果により、各症状に対処していきます。

飼い主

原因って調べられるんですか?

Dr.Nyan

どの細菌やウイルスが関係しているか、PCR検査で調べられることがあります

犬の呼吸器感染症 ケンネルコフのPCR検査による病原体特定
PCR検査では、ケンネルコフに関与する細菌やウイルスを特定できることがあります。

PCR検査の結果で、いくつかの原因がわかりました。

飼い主

薬を飲めばすぐ治りますか?

Dr.Nyan

軽症なら回復しますが、重症化すると長引くこともあります

リスク先生

人間用の咳止めを自己判断で飲ませるのは危険です!
犬では中毒や呼吸抑制を起こす薬もあります!

症状悪化を防ぐための自宅ケアを行う

ケンネルコフは重症化してしまうこともあるため、症状を悪化させないことが大切です。

  • 重症化を防ぐため体を冷やさないよう保温する
  • 栄養状態が悪くならないようフードを温めるなどして食べさせる
  • 脱水を防ぐため水に味をつけてみるなど飲ませる工夫をする
  • ネブライザーを使い薬を霧状にして吸わせる処置を行う

Dr.Nyan

どうしても食べない飲まない場合には『強制給仕と点滴』を行います!

飼い主

点滴ってそんなに重要なんですか?

Dr.Nyan

食べない・飲めない状態が続くと、脱水で一気に悪化することがあります。
ここからは「様子見しない段階」です。

リスク先生

「ぐったり・食べない・呼吸が荒い」は自宅様子見NGです

重症化した場合は肺炎や全身状態の悪化につながるため、早期の対応が重要です。

ケンネルコフの予防方法

ワクチン接種をする

ケンネルコフの予防をするには、混合ワクチンの接種をしておくことが大切です。ワクチンで予防できるケンネルコフは以下の2種類です。これら2種は、5種以上の混合ワクチンの中に入っています。

  • 犬パラインフルエンザ
  • 犬アデノウイルスⅡ型

細菌に関しては、ワクチン接種での予防はできません。

しかしワクチン接種をしておくことで、上記のウイルスとの混合感染と重症化を防げます。またワクチンは定期的に接種することが必要ですので、接種間隔等は動物病院で相談しましょう。

ちなみにワクチン接種を行っていても、ケンネルコフになる可能性はあります!

環境を改善してストレスを減らす

ケンネルコフからの気管支炎は慢性化してしまうことも、肺炎を起こしてしまうこともある病気です。そのため慢性化を防ぐためにも、ストレスを減らし症状を和らげてあげます。

暑くて湿度の多い、また寒くて乾燥した環境を改善し保温と保湿を心がけます。また栄養状態にも気をつけてあげます。

ケンネルコフを起こしやすい犬種

  • 6週~6か月齢の子犬
  • 免疫力の落ちている犬
  • 体力が落ちている犬
  • 他の犬と接触する機会の多い環境で飼育されている犬

犬のケンネルコフでよくある質問

咳が続く場合はすぐ受診すべきですか?

咳が3日以上続く場合や、「悪化してきた」「食欲が落ちた」「呼吸が荒い」場合は早めの受診をおすすめします。

咳だけでも受診した方がいいですか?

軽い咳でも数日続く場合は受診をおすすめします

元気があれば様子見でも大丈夫ですか?

元気でも悪化することがあるため注意が必要です

ケンネルコフは他の犬にうつりますか?

非常に感染力が強く、接触でうつります

ケンネルコフの時に散歩してもいいですか?

咳が出ている間は散歩を控えましょう。
運動や興奮によって咳が悪化しやすく、他の犬へ感染を広げる原因にもなります。

シャンプーはしてもいいですか?

おすすめしません。
シャンプーは体力を消耗し、湯冷めによって悪化することがあります。完治までは安静と保温を優先してください。

ワクチンをしていてもかかりますか?

完全には防げず軽症化を目的とします

ケンネルコフは人にうつりますか?

通常は人へ感染することはほとんどありません。ただし免疫力が低下している場合は注意が必要な感染症もあるため、衛生管理は大切です。

飼い主

どのタイミングで病院に行けばいいですか?

Dr.Nyan

「咳が続く」「悪化してきた」「元気や食欲が落ちる」があれば、早めに受診してください。

病院へ行く時に気をつけることはありますか?

非常に感染力が強いため、来院前に「咳がある」とお電話でお伝えください。
待合室で他の犬へ感染させないよう、キャリー使用や車内待機をお願いする場合があります。

まとめ

ケンネルコフは多くの場合は軽症で、元気も食欲も変わらずある事も多い病気です。
そのため犬の咳は軽く見られがちですが、感染症や肺炎のサインのこともあります。
しかも気がついたら重症化し、命に関わる状態になってしまう事もあります。

佐倉市や佐倉周辺で犬の咳や呼吸器症状がある場合は、早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします。当院では、犬の呼吸器疾患の診断やPCR検査、適切な治療を行っていますので、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール写真

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。