佐倉市の動物病院なら若山動物病院|セカンドオピニオン対応

  1. ホーム
  2. Dr.Nyanのすこやかコラム
  3. 【マラセチア性皮膚炎】犬のマラセチア性皮膚炎とは?症状や治療法を解説

Dr.Nyanのすこやかコラム

コラム記事検索

【マラセチア性皮膚炎】犬のマラセチア性皮膚炎とは?症状や治療法を解説

お腹がベタベタで痒くて臭いもする。そんな症状がみられたらマラセチア性皮膚炎を引き起こしているかもしれません。

せんせい〜見て見て!
皮膚が赤くベタベタ、しかも甘臭いニオイもする。
すっごく痒くて痒くて!どうにかして〜ッ!

お腹の様子

お腹が赤くなっています。

それ、ひょっとしてマラセチア性皮膚炎かもしれないよ?
皮膚を検査してみようね。

マラセチアは、犬の皮膚の表面に元々住んでいる皮脂を栄養源としている酵母様真菌というカビの仲間です。

犬に皮膚病を起こすのは、マラセチア・パチデルマティス(Malassezia pachydermatis)という種類です。小さなピーナッツ型をしています。

ヒトにも、マラセチア性皮膚炎があるんですってネ!

犬に住むマラセチアとは種類が違うから、
犬のマラセチアがヒトに感染することは無いんだよ!
だから安心してネ!

目次

犬のマラセチア症の症状

マラセチア性皮膚炎って奥が深いって本当なの?

そう皮膚は内臓の鏡とも言われるくらいデリケートなんですよ!

マラセチア性皮膚炎とは、マラセチアが皮膚で異常に増え炎症を起こしてしまう病気です。
猫では少ない皮膚病ですが、犬では多く見られる皮膚病です。

以下にマラセチア症が発症しやすい場所を示します。

犬のマラセチア症の症状

赤い丸がついている部分がマラセチアの症状が出やすい場所です。

皮膚がベタベタし独特な臭いがする

症状の出やすい場所は、耳や口唇、脇の下や内股、下腹部、足の指の間、肛門の周りなどです。本当に体のさまざまな場所で発症するのが、マラセチア性皮膚炎です。

マラセチアは「皮脂」が多い状態が続くと、異常に増えてしまいます。また同時にブドウ球菌も増えてしまい、炎症を悪化させてしまうことが多いとされています。

そして以下のような症状がみられます。

  • 皮脂がたまりやすい場所がベタベタする
  • 脂漏臭」と呼ばれる独特な酸っぱ油っぽい臭いがする

強い痒みが起こる

マラセチア性皮膚炎は強い痒みを引き起こします。その理由は以下の2つであると言われています。

  • マラセチアが皮脂を発酵させ皮膚に強い刺激を与えて強い痒みを出す
  • マラセチアによるアレルギー反応により生じる皮膚炎が強い痒みを出す

皮膚の表面が厚く固く、色素沈着する

マラセチアが増殖した結果、皮膚に以下のような症状が見られます。これらの症状は「体がマラセチアなどからの刺激を少なくしよう」と反応していることによります。

  • 皮膚が黒く色素が沈着する(皮膚の黒化)
  • ボコボコと皮膚の表面が厚く硬く、苔が生えたような見た目になる(皮膚の苔癬化)

犬のマラセチア症皮膚の原因

マラセチア症の原因は複雑なんだけど、一つ一つ確認していくよ。

マラセチアは犬の皮膚に常在していますが、健康な皮膚では問題を起こしません。

免疫力や代謝の衰えから

マラセチアは、体質や病気などから増え、皮膚炎を起こしてしまいます。特に免疫力や代謝の衰えは、マラセチアが増える大きな原因となります。

さらにマラセチアは、「皮脂」が多い状態が続くと異常に増えてしまいます。また同時にブドウ球菌が増えると、炎症の悪化が見られるようになります。

別の病気や基礎疾患がある

マラセチア性皮膚炎は、何らかの病気と重なって現れることがある病気です。しかも思った以上に複雑で、からまった糸のようになっていることもよくあります。

マラセチア性皮膚炎に関係する体質や病気は以下です。

  • 脂漏症、体が皮脂でベタベタする
  • アトピー性皮膚炎
  • 食物アレルギー
  • 甲状腺機能低下症
  • クッシング症候群

基礎疾患が良くなれば、皮膚炎も落ちついていきます。

ジメジメする季節や暖房に関係する

ジメジメする梅雨の時期や、夏に悪化することが、多々あります。また乾燥する冬でも、暖房などで室温が高いと悪化することがあります。

マラセチア性皮膚炎の原因を知るために、問診と経過がとても大切なんだよ!

マラセチア性皮膚炎は複数の原因がからまって、複雑になっています。原因を知るには『問診』と病状の経過、発症の場所がとても大切になります。

また過去に治療した皮膚炎や他の病気と現在治療している病気が、手掛かりとなる場合があります。

マラセチア性皮膚炎の主な治療法と費用

皮膚炎の治りが悪くても、あせらず治療をしていきましょう。

治療を行うには、皮膚の症状と皮膚の検査を行います。

皮膚の検査は・・・
皮膚の表面に検査用のガラスやセロハンテープを押しつけ、染色液で染め顕微鏡で観察します。ピーナッツ型をしたマラセチアが多数見られれば、マラセチア性皮膚炎として治療を行います。マラセチア性皮膚炎は一般的な病気ですが、発症すると大きなストレスとなるため早めの治療が必要です。

治療の基本的は、マラセチアに効果のある飲み薬シャンプーです。

シャンプの様子

治療効果のあるシャンプーを使うことが大切です!

また、基礎疾患(原因となる病気)がある場合には、皮膚炎と同時に基礎疾患の治療を行います。マラセチア性皮膚炎だけを治療しても、基礎疾患が良くならなければ再発してしまいます。

飲み薬による治療

抗真菌薬を飲ませ、治療します。

飲み薬は、全身に広がっているマラセチア性皮膚炎に効果的です。しかし肝臓などに負担がかかることがあるため、獣医師と相談しながらすすめましょう。

シャンプーによる治療

マラセチアに対して効果のあるミコナゾールなどの抗真菌薬や、硫黄やセレンなどを含む薬用シャンプーを使います。

シャンプーの様子

シャンプーは効果のある治療です。

シャンプーは過剰な皮脂を落とすだけではありません。しっかり保湿を行い、皮膚に本来備わっている『バリア機能』を改善させることが大切です。シャンプーを用いる治療は、体質が脂漏症の場合にはとても重要になります。

~Dr.Nyan ポイント~
「皮膚のバリア機能」とは?

バリア機能とは以下の二つです。

  • 体の水分が体の外に逃げるのを防ぐ
  • 外界からのアレルゲンや細菌などの異物が体内に入ってくるのを阻止する

バリア機能を維持するには、皮膚の潤いを保つことが重要となります!

塗り薬での治療

軟膏などの塗り薬を使用する治療です。比較的狭い範囲での治療には効果があります。しかし範囲が広い場合には、塗るのが大変になります。

薬を塗った部分を気にして、舐めてしまう場合が多々あります。そのため薬を塗った後に散歩に行くなどして、気を紛らわせることが必要です。

基礎疾患(原因となる病気)の治療

マラセチアは皮膚に元々存在するため、異常に増えてしまった原因を突き止めることが大切です。基礎疾患がある場合には、それを治療することによりマラセチア性皮膚炎の治療にも効果があります。

症状などを総合的に判断し、治療を進めていきます。

痒みは犬にとってストレスを感じやすいため、痒みを抑えてあげることは重要です。それでも舐める、噛む、掻くなどするような場合もあります。そのような場合には、皮膚状態の悪化を防ぐためにエリザベスカラーや保護服を使います。

マラセチア症の予防方法

そもそもマラセチア性皮膚炎って予防できるのかしら?

原因を少しでも減らす工夫が最大の予防だよ!

シャンプーによる予防

マラセチアが異常に増えてしまうのを防ぎ、過度に分泌された皮脂を取り除くためにシャンプーを行います。皮脂をコントロールできれば予防だけでなく、症状の緩和や進行を遅くできることもあります。

マラセチア性皮膚炎の予防のために行うシャンプー療法は、とても有効な方法です。しかしシャンプーの仕方を間違えると、皮膚の状態が悪化してしまうため注意が必要です。

シャンプの方法を習っています

治療効果のある『シャンプー療法』を行うことが大切です!

正しいスキンケアと、皮膚にストレスをかけない方法で行うことが重要です。そのためには、シャンプーのプロから洗い方を教えてもらうことが必要になることもあります。

ここに健康な皮膚の犬のシャンプーの方法を紹介したサイトです。ただ皮膚炎を起こしている場合にはシャンプー方法が変わりますので、あくまでも参考にする程度でお願いします。

そうよね〜顔を洗うときは石鹸の泡を作って肌は擦らず優しく・・
しかも流すときは水ですもんねぇ〜
犬の洗い方も同じってことかしら??

そうですよッ!
犬の皮膚の厚さはヒトの皮膚の厚さの3分の1しかありません。
超デリケートなので優しく洗ってあげてください!

食事療法

皮膚の健康を保ちバリア機能を高めておくことが、とても大切です。そのためには、皮膚に必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。

皮膚炎用のフードは多数あるので、原因にあったフードを選んであげて下さい。皮膚が乾燥気味の場合には、オメガ3・6脂肪酸を多く含んだフードも良いと思います。

皮膚炎を治すには飯選びも大切ってことネ!

環境の管理

適切な部屋の温度や湿度での生活を心がけるようにしましょう。犬の皮膚の温度は24℃ですので、それ以上にならないような環境にします。

脱水に気をつけ、皮膚の水分を保ちバリア機能を整えておきます。皮膚に良い湿度は、約60%くらいと言われています。

マラセチア性皮膚炎を治すには気長に頑張らなくちゃですよね!

マラセチア症皮膚炎になりやすい犬種

以下の犬種は要注意!上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。

マラセチア性皮膚炎は若い犬から老齢の犬まで、どの犬種でも幅広く起こる皮膚病です。

  • コッカースパニエル
  • フレンチブルドッグ
  • パグ
  • シーズー

まとめ

犬の皮膚はヒトの皮膚よりも、思った以上にデリケートです。皮脂が多い犬では治療しても後の再発率が高い皮膚病がマラセチア性皮膚炎です。マラセチア性皮膚炎の治療と再発防止には、飼い主さんの根気と愛情がとても大切です。

マラセチア性皮膚炎には簡単に治るものから、一生付き合っていかなくてはならないものもあります。痒みや気になる皮膚の症状が見られたらご相談ください!

【関連記事】犬の皮膚病とは