犬のマラセチア性皮膚炎|症状・原因・治療と受診の目安

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犬のマラセチア性皮膚炎|皮膚がベタベタ・臭い・かゆい原因と治療・受診の目安

犬のマラセチア性皮膚炎によるベタつき・臭い・痒みを表したイメージ画像

お腹がベタベタする、かゆがる、さらに独特な臭いがする。
そんな症状がみられたらマラセチア性皮膚炎の可能性があります。

飼い主

せんせい〜皮膚がベタベタで、しかも甘いニオイがするんです…!

マラセチア性皮膚炎により腹部が赤く炎症している犬の皮膚の実例写真
マラセチア性皮膚炎の典型症状。お腹の皮膚が赤く炎症し、脱毛も見られます。

お腹が赤くなっています。

Dr.Nyan

それは気になるね。マラセチア性皮膚炎の可能性があるよ。

マラセチアは、犬の皮膚の表面に元々住んでいる皮脂を栄養源としている酵母様真菌というカビの仲間です。

犬に皮膚病を起こすのは、マラセチア・パチデルマティス(Malassezia pachydermatis)という種類です。小さなピーナッツ型をしています。

飼い主

見た目だけで分かるものなんですか?

Dr.Nyan

特徴的な症状があるから、一緒に確認していこう。

目次

犬のマラセチア性皮膚炎の症状

飼い主

マラセチア性皮膚炎って奥が深いって本当なの?

Dr.Nyan

そう、皮膚は内臓の鏡とも言われるくらいデリケートなんですよ!

マラセチア性皮膚炎とは、マラセチアが皮膚で異常に増え炎症を起こしてしまう病気です。
猫では少ない皮膚病ですが、犬では多く見られる皮膚病です。

以下にマラセチア症が発症しやすい場所を示します。

マラセチア性皮膚炎が発症しやすい部位(耳・口・脇・お腹・指の間・肛門)を赤丸で示した犬のイラスト
赤丸の部位は皮脂が溜まりやすく、マラセチアが増殖しやすい場所です。

赤い丸がついている部分がマラセチアの症状が出やすい場所です。

皮膚がベタベタし独特な臭いがする

症状の出やすい場所は、耳や口唇、脇の下や内股、下腹部、足の指の間、肛門の周りなどです。本当に体のさまざまな場所で発症するのが、マラセチア性皮膚炎です。

マラセチアは「皮脂」が多い状態が続くと、異常に増えてしまいます。また同時にブドウ球菌も増えてしまい、炎症を悪化させてしまうことが多いとされています。

そして以下のような症状がみられます。

  • 皮脂がたまりやすい場所がベタベタする
  • 脂漏臭」と呼ばれる独特な酸っぱ油っぽい臭いがする

リスク先生

ベタつき+独特な臭いが強くなってきたら、かなり進行している可能性があります。

強い痒みが起こる

マラセチア性皮膚炎は強い痒みを引き起こします。その理由は以下の2つであると言われています。

  • マラセチアが皮脂を発酵させ皮膚に強い刺激を与えて強い痒みを出す
  • マラセチアによるアレルギー反応により生じる皮膚炎が強い痒みを出す

ちなみに、皮膚をすごく痒がる病気として疥癬症があります。
これは犬にも猫にも感染を起こします。

飼い主

こんなに痒がるのは普通じゃないですよね?

Dr.Nyan

うん、マラセチアは強い痒みを出すのが特徴なんだ。

皮膚の表面が厚く固く、色素沈着する

マラセチアが増殖した結果、皮膚に以下のような症状が見られます。これらの症状は「体がマラセチアなどからの刺激を少なくしよう」と反応していることによります。

  • 皮膚が黒く色素が沈着する(皮膚の黒化)
  • ボコボコと皮膚の表面が厚く硬く、苔が生えたような見た目になる(皮膚の苔癬化)

飼い主

皮膚が黒くなったり、厚くゴワゴワになったりするんですか…?

Dr.Nyan

そう。これは皮膚が自分を守ろうとするサインなんだ。早めに気づいてあげることが大切だよ。

犬のマラセチア性皮膚炎の原因

Dr.Nyan

マラセチア症の原因は複雑なんだけど、一つ一つ確認していくよ。

マラセチアは犬の皮膚に常在していますが、健康な皮膚では問題を起こしません。

免疫力や代謝の衰えから

マラセチアは、体質や病気などから増え、皮膚炎を起こしてしまいます。特に免疫力や代謝の衰えは、マラセチアが増える大きな原因となります。

さらにマラセチアは、「皮脂」が多い状態が続くと異常に増えてしまいます。また同時にブドウ球菌が増えると、炎症の悪化が見られるようになります。

飼い主

体質も関係するんですか?

Dr.Nyan

そう、体質やホルモンの病気が隠れていることもあるよ。

別の病気や基礎疾患がある

マラセチア性皮膚炎は、何らかの病気と重なって現れることがある病気です。しかも思った以上に複雑で、からまった糸のようになっていることもよくあります。

マラセチア性皮膚炎に関係する体質や病気は以下です。

  • 脂漏症、体が皮脂でベタベタする
  • アトピー性皮膚炎
  • 食物アレルギー
  • 甲状腺機能低下症
  • クッシング症候群

基礎疾患が良くなれば、皮膚炎も落ちついていきます。

飼い主

うちの子、アトピーもあるんですが…関係しているんですか?

Dr.Nyan

大いに関係あるよ。アトピーがあると皮膚バリアが弱くなってマラセチアが増えやすくなるから、両方一緒に治療することが重要なんだ。

ジメジメする季節や暖房に関係する

ジメジメする梅雨の時期や、夏に悪化することが、多々あります。また乾燥する冬でも、暖房などで室温が高いと悪化することがあります。

Dr.Nyan

マラセチア性皮膚炎の原因を知るために、問診と経過がとても大切なんだよ!

マラセチア性皮膚炎は複数の原因がからまって、複雑になっています。原因を知るには『問診』と病状の経過、発症の場所がとても大切になります。

また過去に治療した皮膚炎や他の病気と現在治療している病気が、手掛かりとなる場合があります。

マラセチア性皮膚炎の主な治療法と費用

飼い主

すぐ治るものなんですか?

Dr.Nyan

軽い場合は早く良くなるけど、原因によっては長く付き合うこともあるよ。

治療を行うには、皮膚の症状と皮膚の検査を行います。

皮膚の検査は・・・
皮膚の表面に検査用のガラスやセロハンテープを押しつけ、染色液で染め顕微鏡で観察します。ピーナッツ型をしたマラセチアが多数見られれば、マラセチア性皮膚炎として治療を行います。マラセチア性皮膚炎は一般的な病気ですが、発症すると大きなストレスとなるため早めの治療が必要です。

治療の基本は、マラセチアに効果のある飲み薬シャンプーです。

抗真菌成分入りの緑色の薬用シャンプーを全身に塗布されてつけ置き中の犬
抗真菌成分入りの薬用シャンプーで全身を泡立て、5〜10分のつけ置き(泡パック)を行います。

治療効果のあるシャンプーを使うことが大切です!

また、基礎疾患(原因となる病気)がある場合には、皮膚炎と同時に基礎疾患の治療を行います。マラセチア性皮膚炎だけを治療しても、基礎疾患が良くならなければ再発してしまいます。

飲み薬による治療

抗真菌薬を飲ませ、治療します。

飲み薬は、全身に広がっているマラセチア性皮膚炎に効果的です。しかし肝臓などに負担がかかることがあるため、獣医師と相談しながらすすめましょう。

飼い主

飲み薬だけで治ることはないんですか?

Dr.Nyan

飲み薬はとても効果的だけど、シャンプーと組み合わせることで再発しにくくなるんだよ。両方を続けるのが一番の近道だね。

シャンプーによる治療

マラセチアに対して効果のあるミコナゾールなどの抗真菌薬や、硫黄やセレンなどを含む薬用シャンプーを使います。

シャワーで薬用シャンプーの泡をすすいでもらっている犬の正面アップ
泡パック後はぬるま湯でしっかりすすぎます。すすぎ残しも皮膚トラブルの原因になるため丁寧に行いましょう。

シャンプーは効果のある治療です。

シャンプーは過剰な皮脂を落とすだけではありません。しっかり保湿を行い、皮膚に本来備わっている『バリア機能』を改善させることが大切です。シャンプーを用いる治療は、体質が脂漏症の場合にはとても重要になります。

~Dr.Nyan ポイント~
「皮膚のバリア機能」とは?

バリア機能とは以下の二つです。

  • 体の水分が体の外に逃げるのを防ぐ
  • 外界からのアレルゲンや細菌などの異物が体内に入ってくるのを阻止する

バリア機能を維持するには、皮膚の潤いを保つことが重要となります!

塗り薬での治療

軟膏などの塗り薬を使用する治療です。比較的狭い範囲での治療には効果があります。しかし範囲が広い場合には、塗るのが大変になります。

薬を塗った部分を気にして、舐めてしまう場合が多々あります。そのため薬を塗った後に散歩に行くなどして、気を紛らわせることが必要です。

飼い主

塗り薬って、毎回エリザベスカラーが必要ですか?

Dr.Nyan

舐めてしまうと効果がなくなるからね。散歩や遊びで気をそらすのが一番ストレスが少ないよ。カラーが苦手な子は保護服も選択肢に入るよ。

基礎疾患(原因となる病気)の治療

マラセチアは皮膚に元々存在するため、異常に増えてしまった原因を突き止めることが大切です。基礎疾患がある場合には、それを治療することによりマラセチア性皮膚炎の治療にも効果があります。

症状などを総合的に判断し、治療を進めていきます。

「シャンプーを頑張っているのに、すぐにまたベタつく…」それは、マラセチアが単にそこにいるからではなく、皮膚が『マラセチアにとって住み心地の良い場所』になってしまっているからです。アトピー性皮膚炎や甲状腺機能低下症などの持病が隠れていないか、一度トータルチェックを行うことが完治への近道です。

痒みは犬にとってストレスを感じやすいため、痒みを抑えてあげることは重要です。それでも舐める、噛む、掻くなどするような場合もあります。そのような場合には、皮膚状態の悪化を防ぐためにエリザベスカラーや保護服を使います。

マラセチア症の予防方法

飼い主

そもそもマラセチア性皮膚炎って予防できるのかしら?

リスク先生

再発しやすい病気なので、治療後のケアがとても重要です。

シャンプーによる予防

マラセチアが異常に増えてしまうのを防ぎ、過度に分泌された皮脂を取り除くためにシャンプーを行います。皮脂をコントロールできれば予防だけでなく、症状の緩和や進行を遅くできることもあります。

マラセチア性皮膚炎の予防のために行うシャンプー療法は、とても有効な方法です。しかしシャンプーの仕方を間違えると、皮膚の状態が悪化してしまうため注意が必要です。

動物病院スタッフが飼い主にシャンプー療法の正しいやり方を直接指導している様子
当院では自宅でのシャンプー療法のやり方を飼い主様に直接指導しています。正しい方法を身につけることが再発予防の鍵です。

治療効果のある『シャンプー療法』を行うことが大切です!

正しいスキンケアと、皮膚にストレスをかけない方法で行うことが重要です。そのためには、シャンプーのプロから洗い方を教えてもらうことが必要になることもあります。

薬用シャンプーは、すぐに流しては効果が半減します。有効成分を皮膚に定着させるため、泡を立てた状態で「5分〜10分間のつけ置き(泡パック)」を行うのが鉄則です。この『待ち時間』が、菌の増殖を抑えるための鍵となります。

脂を落とすことだけに集中すると、皮膚は「乾燥した!」と勘違いして、さらに脂を出そうとしてしまいます。シャンプー後には、必ず低刺激な保湿剤でバリア機能を補い、皮膚に『もう脂を出さなくても大丈夫だよ』と教えてあげることが、ベタつき卒業の秘訣です。

健康な犬のシャンプーの方法については、こちらのサイトも参考になります。ただ皮膚炎を起こしている場合にはシャンプー方法が変わりますので、あくまでも参考にする程度でお願いします。

食事療法

皮膚の健康を保ちバリア機能を高めておくことが、とても大切です。そのためには、皮膚に必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。

皮膚炎用のフードは多数あるので、原因にあったフードを選んであげて下さい。皮膚が乾燥気味の場合には、オメガ3・6脂肪酸を多く含んだフードも良いと思います。

飼い主

皮膚炎を良くするには、ごはん選びも大切ってことですね!

環境の管理

適切な部屋の温度や湿度での生活を心がけるようにしましょう。犬の皮膚の温度は24℃ですので、それ以上にならないような環境にします。

脱水に気をつけ、皮膚の水分を保ちバリア機能を整えておきます。皮膚に良い湿度は、約60%くらいと言われています。

飼い主

マラセチア性皮膚炎を治すには気長に頑張らなくちゃですよね!

マラセチア性皮膚炎になりやすい犬種

Dr.Nyan

以下の犬種は要注意!上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。

マラセチア性皮膚炎は若い犬から老齢の犬まで、どの犬種でも幅広く起こる皮膚病です。

  • コッカースパニエル
  • フレンチブルドッグ
  • パグ
  • シーズー

リスク先生

耳まで赤く腫れる、出血する、眠れないほど痒がる場合は、皮膚バリアがかなり壊れている可能性があります。細菌感染が重なっていることもあるため、早めの受診が必要です。

受診を検討すべきサインチェックリスト

Dr.Nyan

「うちの子、受診が必要なのかな?」と迷ったときは、このチェックリストを使ってみてね。

以下の項目に当てはまるものがあれば、早めにご受診ください。

項目チェックポイント
臭い洗っても数日で「熟成したチーズ」や「蒸れた靴下」のような臭いがする。
以前より皮膚が黒ずんできた(色素沈着)、または赤みが強い。
感触触ると指がテカるほどの脂っぽさがある、または皮膚が厚くゴワゴワしている。
1つでも当てはまるなら早めの受診を。悪化するほど治療期間も長くなります。

よくある質問

犬の皮膚がベタベタして臭いのはなぜですか?

皮脂の分泌が増え、マラセチアというカビが異常に増殖している可能性があります。
特に「脂っぽい臭い(脂漏臭)」がある場合は、マラセチア性皮膚炎が疑われます。

マラセチア性皮膚炎はうつりますか?

犬のマラセチアは常在菌であり、基本的に他の犬や人に感染することはありません。
ただし皮膚の状態が悪い犬同士では注意が必要です。

マラセチア性皮膚炎は自然に治りますか?

自然に治ることは少なく、放置すると慢性化することがあります。
早めに動物病院で診断と治療を受けることが重要です。

どんな治療を行いますか?

抗真菌薬の内服や外用、薬用シャンプーによる治療が基本です。
また、基礎疾患がある場合はその治療も同時に行います。

シャンプーだけで治りますか?

軽度であれば改善することもありますが、多くの場合は内服薬などの併用が必要です。
症状の程度によって治療法は異なります。

どのタイミングで受診すべきですか?

・ベタベタや臭いが強くなってきた
・かゆみが続く
・皮膚が黒くなってきた
このような場合は早めの受診をおすすめします。

再発を防ぐ方法はありますか?

定期的なシャンプーや皮脂コントロール、食事管理、基礎疾患の管理が重要です。継続的なスキンケアが再発防止につながります。

犬の皮膚トラブルは、早めに気づき適切に対処することで、重症化や再発を防ぐことができます。

関連記事:犬の皮膚病の原因と対策

「マラセチア皮膚炎は、ワンちゃん自身にとっても非常に不快で痒い状態です。でも、正しいケアと原因の特定ができれば、必ずあのふわふわで心地よい皮膚に戻れます。一人で悩まず、二人三脚で治していきましょう。」

リスク先生

ベタつき・臭い・痒みは「ただの皮膚トラブル」ではなく、体質やホルモン病のサインであることもあります。繰り返す場合は、一度しっかり原因を調べることが重要です。

まとめ

犬の皮膚はヒトの皮膚よりも、思った以上にデリケートです。皮脂が多い犬では治療しても後の再発率が高い皮膚病がマラセチア性皮膚炎です。マラセチア性皮膚炎の治療と再発防止には、飼い主さんの根気と愛情がとても大切です。

マラセチア性皮膚炎には簡単に治るものから、一生付き合っていかなくてはならないものもあります。痒みや気になる皮膚の症状が見られたらご相談ください!

【関連記事】犬の皮膚病とは

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。

これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。

本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。