犬と猫の緊急受診サイン

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犬と猫の緊急受診サイン

「明日まで様子を見よう」
その油断が、愛する家族の命を奪う境界線になるかもしれません。

ペットの体調不良には、人間の「風邪」のように一晩寝て治るものもあれば、1分1秒の遅れが文字通り命取りになる「超緊急事態」が潜んでいます。

彼らは言葉を話せません。痛みを限界まで隠し、静かに耐えてしまいます。

「いつもと様子が違うけれど、夜間病院に行くべき?」
もしあなたが今、そんな迷いの中にいるなら、すぐに以下のチェックリストを確認してください。

ここに挙げる症状は、「朝まで様子を見る」が命取りになる危険サインです。

「いつもと違う」に気づいた時、病院に行くべきか様子を見るべきかの判断は、飼い主にとって難しい問題です。

このコラムでは、動物病院の現場でよく遭遇する緊急症例を取り上げ、見逃してはいけないサインと、受診前に飼い主ができる対応をわかりやすくまとめました。

重症度の目安:本コラムでは各症例を「最重症(即時受診)」と「重症(当日中に受診)」の2段階で表示しています。

飼い主

いつもと様子が違う気がするけれど、夜間病院や救急を呼ぶべきか迷っています。様子を見てはダメな基準ってありますか?

Dr.Nyan

言葉を話せない犬・猫は、痛みを限界まで隠してしまいます。今回は、病院の受付を待つことすら許されない『今すぐ車を走らせるべき命の危険信号』をまとめました。迷ったらすぐに確認してくださいね。

⚠️「最重症(即時受診)」は、夜間・早朝であっても今すぐ病院へ向かうべき状態です。
「重症(当日中に受診)」は、数時間以内に悪化する可能性があり、診療時間終了を待たずに受診相談が必要な状態を指します。

飼い主

夜間料金が高いし、朝まで待てるなら待ちたい気持ちもあります…

Dr.Nyan

実際には朝まで待った数時間が致命的になる病気があります。
特に今回紹介する症状は、「朝まで待たない方がいい危険サイン」です。

目次

胃拡張・胃捻転(GDV)

【対象】犬  最重症(即時受診)

お腹が太鼓のように膨らみ、何度も空嘔吐を繰り返すような症状です。

こんな症状が出たら

  • ✔ 腹部が急激に膨張し、太鼓のように硬い
  • ✔ 何度も嘔吐しようとするが何も出ない
  • ✔ ハァハァと荒い呼吸、落ち着きがない
  • ✔ 立てない・ぐったりしている

飼い主

吐けていないなら、まだ軽い気もしていました…

Dr.Nyan

逆です。
吐きたいのに吐けないのは、胃がねじれて出口が塞がっている危険サインです。

なぜ危険?

胃の中にガスやごはんが溜まって巨大に膨らみ、さらにゴロンとひっくり返って(捻じれて)しまう病気です。

捻じれた胃が周囲の大きな血管を強く圧迫するため、全身の血液の巡りが一瞬で悪化します。

ショック状態に陥り、治療が遅れるとわずか数時間で命を落とす、犬の病気の中でトップクラスに恐ろしい超緊急事態です。

飼い主さんへ

「吐きたいのに、ヨダレしか出ない(何も出てこない)」のは胃がねじれて出口が塞がっている証拠です。

1分1秒を争います。
夜間でもすぐに夜間救急病院を受診してください。移動中も絶対に水やごはんを与えてはいけません。

📌 ひとこと

大型犬・胸の深い犬種(グレートデン、ジャーマン・シェパード等)に多く見られます。
特に「食後すぐに走り回った」「大量の水を一気飲みした」あとに発症するケースがあります。

リスク先生

胃捻転は1分1秒を争います!『夜間だから朝まで待とう』という判断が命取りになります。空嘔吐(吐きそうなのに何も出ない)が始まったら、今すぐ夜間救急へ行ってください!

尿道閉塞(猫)

【対象】猫(雄猫に多い)  最重症(即時受診)

トイレに何度も行くのに尿が出ない場合、尿道が詰まっていることがあります。
放置すると腎不全・心停止を招きます。

こんな症状が出たら

  • ✔ トイレに頻繁に入るが尿が出ない
  • ✔ 陰部を繰り返し舐める
  • ✔ 鳴き声をあげて苦しそう
  • ✔ 嘔吐、食欲がまったくない

なぜ危険?

おしっこの通り道(尿道)に結石やゴミが詰まり、おしっこが完全に詰まって出なくなってしまう病気です。

リスク先生

何回もトイレに行っているから、出ているはず」は危険な思い込み!
出ていないなら超緊急です!
そうとしているだけで、実際には出ていないことがあります!

体内のゴミ(老廃物)を排泄できなくなるため、血液中に毒素が回る「尿毒症」を引き起こします。

さらに、おしっこに含まれるカリウムという成分が血液中に溢れると、心臓のドクドクというリズムを狂わせ、突然心臓が止まってしまう非常に危険な状態です。

飼い主さんへ

「トイレに何度も行くのに、おしっこが1滴も出ていない」「トイレで痛そうに鳴く」ときは完全に詰まっています。

12〜24時間出ないだけで命に関わります。「明日まで様子を見よう」は絶対に厳禁です。

📌 ひとこと

雄猫は尿道が細く閉塞しやすい構造です。結石・尿栓が原因の多くを占めます。

急性呼吸困難(猫)

【対象】猫  最重症(即時受診)

猫が口を開けて息をしている場合、すでに重篤な状態です。猫は犬と異なり、開口呼吸は正常ではありません。

こんな症状が出たら

  • ✔ 口を開けて呼吸している(開口呼吸)
  • ✔ お腹全体を使った苦しそうな呼吸
  • ✔ 口の中や舌が紫色になっている
  • ✔ 首を伸ばし、うずくまって動かない

飼い主

犬みたいに暑くてハァハァしているだけじゃないんですか?

Dr.Nyan

猫は通常、口呼吸をしません。
口を開けて呼吸している時点で重症と覚えてください。

なぜ危険?

何らかの原因で肺に酸素が取り込めなくなり、深刻な酸欠に陥っている状態です。 犬は暑いと「ハァハァ」と口で息をしますが、猫が口を開けて息をする(開口呼吸)は100%異常事態です。

限界まで息ができないのを隠し続け、いよいよ耐えられなくなった時に初めて口を開けます。つまり、これが見られた時点で「いつ窒息してもおかしくない」極限状態です。

飼い主さんへ

舌の色が紫色や白っぽくなっていたら(チアノーゼ)、一刻を争う酸欠のサインです。

興奮させるとその場で窒息してしまうため、キャリーケースにそっと入れ、声をかけすぎずに静かに、大急ぎで病院へ運んでください。

📌 ひとこと
猫の心筋症(HCM)は無症状で進行し、突然の呼吸困難として現れることがあります。

痙攣発作・重積発作

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

発作が5分以上続く、あるいは短時間に何度も繰り返す場合は、脳への深刻なダメージを防ぐために緊急処置が必要です。

こんな症状が出たら

  • ✔ 手足がガクガクと震え、意識がない
  • ✔ 5分以上発作が止まらない
  • ✔ 発作が止まっても24時間以内に再度起きた
  • ✔ 発作後も意識が戻らない、または非常に高体温

なぜ危険?

脳の神経回路がパニックを起こし、自分の意思とは関係なく全身がガクガクと震えたり、突っ張ったりする状態です。

特に、発作が5分以上止まらない状態や、意識が戻らないまま短い間隔で何度も繰り返す状態を「重積(じゅうせき)発作」と呼びます。

発作が長引くと脳が異常に発熱し、脳細胞が深刻なダメージを受けて壊死してしまいます。また、体温が41℃を超える熱中症のような状態になり、全身の臓器が溶けるように破壊されてしまいます。

飼い主

舌を噛まないように口を押さえた方がいいですか?

Dr.Nyan

絶対に口へ手を入れないでください。
発作中は無意識なので、強く噛んでしまいます。

飼い主さんへ

発作中は意識がありません。パニックになって口元に手を入れると、ものすごい力で噛まれて大怪我をします。

まずは時間を測り、スマホで動画を撮りながら、5分以上続く場合は毛布にくるんで今すぐ受診してください。

📌 ひとこと

キシリトール(人工甘味料)やネギ類の誤食による中毒が原因になることもあります。

ショック(出血・敗血症)

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

歯茎や口の粘膜が白・灰白色になり、元気がなくぐったりしている場合はショック状態のサインです。

こんな症状が出たら

  • ✔ 歯茎・口の中の粘膜が白っぽい、または灰白色
  • ✔ 体が冷たい、特に手足・耳
  • ✔ 脈が弱い・速い
  • ✔ ぐったりして立てない

なぜ危険?

交通事故による大量出血や、体内のひどい感染症(敗血症)などが原因で血圧が下がり、生きるために必要な血液が脳や心臓に行き渡らなくなった状態です。
血液が届かないため、元気がなくなってぐったりし、そのまま放置するとすべての臓器の機能が停止(多臓器不全)して死に至ります。

飼い主さんへ

確認のコツは「歯茎(はぐき)」です。普段はピンク色の歯茎が、血の気が引いて「真っ白」または「どんよりした灰色」になっていたらショック状態です。手足や耳が異常に冷たくなります。体を毛布などで温めながら、大急ぎで病院へ連れてきてください。

📌 ひとこと

脾臓腫瘤の自然破裂(特に高齢犬)や、腸捻転が原因となるケースが多くみられます。

急性腹痛・腹膜炎

【対象】犬・猫  重症(当日中に受診)

お腹を触ると激しく痛がる、または特徴的な「祈り姿勢」(前傾みで腰を高く上げる)が見られる場合は要注意です。

飼い主

お祈りみたいな姿勢をしていて、変だなと思っていました…

Dr.Nyan

「祈り姿勢」は、「お腹がかなり痛い」サインです。

こんな症状が出たら

  • ✔ お腹を触ると強く痛がる・逃げる
  • ✔ 前傾みで後ろを高くした祈り姿勢(犬)
  • ✔ 発熱・嘔吐・下痢
  • ✔ お腹が硬く膨らんでいる

なぜ危険?

お腹の中で胃や腸が破れて中身が漏れ出したり(消化管穿孔)、膵臓が激しく炎症を起こしたり(重症膵炎)することで、お腹全体に猛烈な激痛が走っている状態です。
お腹の膜(腹膜)に炎症が広がると、お腹にバイ菌がウジャウジャと繁殖し、それが血液に乗って全身に回る「敗血症」という命に関わる全身感染症へあっという間に進行します。

飼い主さんへ

ワンちゃんの場合、前足を床につけてお尻を高く持ち上げる「祈りのポーズ」をすることがあります。これはお腹の痛みを少しでも和らげようとする必死の姿勢です。

お腹を触ろうとすると怒る、触るとお腹が板のようにカチカチに硬いときは、すぐに受診してください。また、水は与えず速やかに受診してください。

📌 ひとこと

重症膵炎は犬では高脂肪食の後に多く発症します。猫では膵炎・腸炎・胆管炎が同時に起こる「三炎」が知られています。

急性腎障害(AKI)

【対象】犬・猫  重症(当日中に受診)

尿の量が急に減った、アンモニア臭のような口臭がする、などのサインは腎臓の急激な機能低下を示します。

こんな症状が出たら

  • ✔ 尿の量が急に減った、または出ていない
  • ✔ アンモニア・尿臭のような口臭
  • ✔ 嘔吐・食欲がない
  • ✔ 元気がなく、じっとしている

なぜ危険?

毒物や脱水、病気が原因で、おしっこを作る工場である「腎臓」が、わずか数時間から数日の間に突然機能停止してしまう病態です。

腎臓は体内の毒素を24時間ノンストップで濾過して外に捨てる役割を持っています。その工場が止まるため、本来捨てるべき強烈な毒素がみるみる血液中に溜まり、全身の細胞を攻撃し始めます(尿毒症)。

数日以内に適切な治療をはじめないと、腎臓が二度と元に戻らなくなります。

飼い主さんへ

「急におしっこの量が減った、出なくなった」「お口からツーンとおしっこの臭い(アンモニア臭)がする」ときは超危険です。

特にネコちゃんが「ユリの花・葉」を舐めた、ワンちゃんが「ブドウ・レーズン」を食べた場合は、症状がなくても今すぐ救急受診してください。

📌 ひとこと

猫ではユリ科の花(テッポウユリ・カサブランカ等)の花粉・葉・水を舐めただけでも重篤な急性腎障害を起こします。

子宮蓄膿症

【対象】未避妊の雌犬・雌猫  重症(当日中に受診)

発情後12か月の未避妊の雌で、元気・食欲の低下と多飲多尿が重なる場合は子宮内の化膿を疑います。

こんな症状が出たら

  • ✔ 外陰部から膿のような分泌物が出る(開放型)
  • ✔ お腹が膨らんでいる(閉鎖型・外に出ない場合)
  • ✔ 多飲多尿(水をよく飲み、尿が多い)
  • ✔ 発熱・嘔吐・食欲廃絶

なぜ危険?

避妊手術をしていない女の子の「子宮」の中に、バイ菌が入り込んで繁殖し、子宮がパンパンに膨らむほど「膿(うみ)」が溜まってしまう病気です。

子宮に溜まった大量の膿から、バイ菌の強力な毒素が血液中に溶け出し、全身を巡ります。放置すると子宮が破裂して、お腹の中に膿がぶちまけられて致命的な腹膜炎を起こすか、毒素によってショック死を招きます。

飼い主さんへ

ヒート(生理・発情)が終わってから1〜2ヶ月後くらいに発症しやすいのが特徴です。

「たくさん水を飲み、たくさんおしっこをする(多飲多尿)」「元気がなくて何度も吐く」「おまた(外陰部)からドロっとした膿や血が出ている」といった様子があれば、一刻も早く受診し、手術で子宮を取り出す必要があります。

📌 ひとこと

避妊手術によって完全に予防できます。発情周期のたびにリスクが上がります。

気道閉塞・窒息

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

異物を飲み込んだ直後に突然呼吸ができなくなった場合、数分以内に処置しなければ命に関わります。

こんな症状が出たら

  • ✔ 急に苦しそうに首を伸ばす・口をパクパクさせる
  • ✔ チアノーゼ(唇・舌が紫色)が急速に進む
  • ✔ 何かを飲み込んだ直後に発症した
  • ✔ 咳き込んでいるが物が出てこない

なぜ危険?

おもちゃや大きすぎるおやつ、果物の種などが、空気の通り道である「気管」にスッポリと詰まってしまい、息ができなくなっている状態です。
完全に空気の通り道が塞がると、脳に酸素が届かなくなり、わずか数分で意識を失い、そのまま心臓が止まってしまいます。一分一秒の遅れが生死を分ける、もっとも時間が無い超緊急事態です。

飼い主さんへ

何かを口に入れた直後に、突然首を長く伸ばして口をパクパクさせたり、前足で顔をかきむしるような動作(苦しくて異物を取ろうとする動作)をします。唇や舌があっという間に紫色に変わっていきます。

無理に指を入れると、さらに奥へ押し込む危険があります。

可能であればハイムリック法(腹部突き上げ)を試みながら、急いで動物病院へ向かってください。

📌 ひとこと

短頭種(ブルドッグ・パグ・フレンチブルドッグ)は解剖学的に気道が狭く、閉塞リスクが高い犬種です。

低血糖症(重症)

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

ふらつき・震え・虚脱が急に起きた場合、血糖値の急激な低下が疑われます。インスリン投与中の子は特に注意が必要です。

こんな症状が出たら

  • ✔ ふらつく・よろける・立てない
  • ✔ 全身が震えている
  • ✔ 意識が朦朧としている・虚脱
  • ✔ 痙攣、または意識を失っている

なぜ危険?

血液中のエネルギー源である「血糖(ブドウ糖)」の濃度が、危険なレベルまで急激に下がってしまう状態です。
車がガソリン切れになると動かなくなるのと同じで、特にブドウ糖だけをエネルギーにして動いている「脳」はダメージを直撃します。脳の機能が麻痺し、ふらつき、最終的には意識を失って生命維持ができなくなります。

脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源とするため、血糖値の急低下は直ちに脳機能障害を引き起こします。

飼い主さんへ

子犬や子猫、または糖尿病の治療でインスリン注射を打っている子がなりやすいです。「後ろ足がガクガクして立てない」「目がうつろで呼んでも反応しない」「全身が細かく震えている」ときはすぐ糖分を補給する必要があります。意識があるなら、お家に急いでガムシロップや砂糖水を口の中に塗りつけ、すぐに病院へ向かってください。

📌 ひとこと

キシリトール含有食品(ガム・グミ・一部の菓子)の誤食は犬で急性低血糖を引き起こします。ラベルを確認の上ご相談を。

熱中症

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

暑い環境での激しいハァハァ呼吸・よだれ・虚脱は熱中症のサインです。直腸温が40を超えたら緊急事態です。

リスク先生

車内温度は短時間で命の危険域に達します!
「窓を少し開けていた」では防げません!

こんな症状が出たら

  • ✔ 激しいハァハァ呼吸とよだれ(犬)
  • ✔ 体が熱い、ぐったりしている
  • ✔ 嘔吐・下痢(血が混じることも)
  • ✔ 意識が朦朧とする、痙攣

なぜ危険?

高い室温や炎天下で体温が異常に上昇し、自分自身の熱で体のあらゆる細胞が壊れてしまう恐ろしい病態です。 ワンちゃん・ネコちゃんは人間のように汗をかいて体温を下げることができません。

体温が40〜41℃を超えると、血液が異常に固まる「DIC(播種性血管内凝固)」を起こし、多臓器不全へ進行します。

飼い主

水を飲ませれば落ち着くと思っていました…

Dr.Nyan

熱中症は、「体を冷やしながら病院へ向かう」ことが重要です。

飼い主さんへ

異常なまでの激しいハァハァ(呼吸)と大量のヨダレ、体が触ると熱い、ぐったりして動けない、目が充血している、といった症状が出ます。病院へ向かう車に乗せる前に、まずは水道の水を全身に大量にかけ、扇風機やクーラーの風をマックスで当てて「冷やしながら」連れてきてください(※氷水は血管が縮んで逆に熱がこもるのでNGです)。

📌 ひとこと

車内放置・炎天下でのお散歩・換気の悪い室内が主な原因です。短頭種・肥満・心疾患のある子はより危険です。

椎間板ヘルニア(IVDD)重症

【対象】犬  重症(当日中に受診)

後ろ足が突然動かなくなった、または排尿・排便のコントロールができなくなった場合は脊髄の圧迫が疑われます。

こんな症状が出たら

  • ✔ 後ろ足がふらつく・または全く動かない
  • ✔ 排尿・排便を自分でコントロールできない
  • ✔ 後ろ足をつねっても反応しない
  • ✔ 急激な悪化(数時間で麻痺が進む)

なぜ危険?

背骨と背骨の間にあるクッション(椎間板)が押し潰されて飛び出し、その上を通っている大切な神経の束(脊髄)をギューギューに圧迫してしまう病気です。

脳からの「足を動かせ」という命令が神経の渋滞で後ろ足に届かなくなるため、足が麻痺します。

さらに怖いのは、神経の圧迫が強すぎると、神経自体が深刻な壊死状態となっていく「進行性脊髄軟化症」という、のちに呼吸が止まってしまう治療法のない致命的な病気に繋がることがある点です。

飼い主

痛がらなくなったので、少し良くなったと思っていました…

Dr.Nyan

それは逆に危険です。
神経が壊れて感覚が消えている可能性があります。

飼い主さんへ

「突然後ろ足を引きずる、全く動かなくなる」「おしっこをポタポタ垂らす(自分でコントロールできない)」、そして「足の指を思いっきりつねっても痛がらない(深部痛覚の消失)」状態は、一刻を争う重症サインです。発症から48時間以内に手術をしないと、一生歩けなくなる確率が跳ね上がります。抱っこするときは背中を丸めず、床と水平にして今すぐ受診してください。

📌 ひとこと

ダックスフンド・コーギー・ビーグルなど軟骨異栄養犬種に好発します。突然の「キャン!」という鳴き声も前兆のことがあります。

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

【対象】犬・猫  重症(当日中に受診)

糖尿病の管理中に急な元気消失・嘔吐・甘酸っぱい口臭が出た場合は、代謝の緊急事態です。

こんな症状が出たら

  • ✔ 甘酸っぱい・アセトン臭のような口臭
  • ✔ 急激な元気消失・食欲廃絶
  • ✔ 繰り返す嘔吐・下痢
  • ✔ 水をよく飲むが具合が悪そう

なぜ危険?

糖尿病のコントロールがうまくいかない時に起こる、体の中の「代謝のSOS(大パニック)」状態です。

ごはんを食べても、インスリンが足りないため糖をエネルギーに変えられません。
その代わりに脂肪を急激に燃やし、「ケトン体」という危険物質が大量に発生します。

このケトン体が血液中に大量に溢れると、血液が強い酸性に傾き(酸性毒の充満)、細胞が一切働けなくなってぐったりします。

飼い主さんへ

「お口から腐ったリンゴのような、甘酸っぱい(または除光液のような)臭いがする」「糖尿病なのに急にごはんを全く食べなくなり、何度も吐く」といった症状が出ます。これはお家での様子見は100%不可能です。24時間体制の集中治療(点滴とインスリン管理)が必要ですので、すぐに受診してください。

📌 ひとこと

自己判断でインスリンの量を変更しないでください。必ず主治医にご相談を。

大量出血(外傷)

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

交通事故・転落・動物咬傷などの直後は、一見元気でも内出血の可能性があります。必ず受診してください。

こんな症状が出たら

  • ✔ 傷口から出血が止まらない
  • ✔ お腹が急に膨らんできた(内出血の可能性)
  • ✔ 歯茎が白っぽい・体が冷たい
  • ✔ ぐったりして立てない

なぜ危険?

交通事故、高いところからの転落、他の犬に激しく噛まれた(犬咬傷)などによって、体の中や外で大量の血が流れてしまう状態です。
体内の血液の3分の1を失うと、全身に酸素を運べなくなり心臓が停止します。特に怖いのは「外からは傷が見えない内出血」です。お腹や胸の中で静かに大量の血が漏れ出している場合、見た目では気づきにくく、発見が遅れて手遅れになるケースが後を絶ちません。

飼い主さんへ

目に見える出血がある場合は、清潔なタオルやガーゼを傷口に当て、上から手でギューッと強く「圧迫止血」を続けながら病院へ向かってください。「外傷はなさそうだけど、事故のあとお腹が急にプクッと膨らんできた」「歯茎が白く、元気がなくぐったりしている」ときは、お腹の中で大出血している証拠です。急いで受診してください。

📌 ひとこと

猫の転落症候群(高所からの落下)では、一見歩けていても胸腔内出血が進行していることがあります。

腸閉塞・異物誤嚥

【対象】犬・猫  重症(当日中に受診)

おもちゃ・靴下・紐などを飲み込んだ後に嘔吐が続き、食欲が全くない場合は腸が詰まっているかもしれません。

こんな症状が出たら

  • ✔ 食後に繰り返し嘔吐する
  • ✔ まったく食欲がない
  • ✔ お腹が痛そう・膨らんでいる
  • ✔ 排便がない

なぜ危険?

おもちゃ、靴下、トウモロコシの芯、紐(ひも)などの異物をペロリと飲み込んでしまい、それが「腸」にガッチリと詰まって通り道を完全に塞いでしまう病気です。 詰まった部分の腸は、どんどん血の巡りが悪くなって腐っていき(壊死)、最終的には風船がパチンと割れるように腸が破裂します。腸の中のウンチやバイ菌がお腹の中に全部ぶちまけられ、猛烈な腹膜炎を起こしてショック死に至ります。

リスク先生

「ウンチが少し出たから大丈夫」は危険!
完全閉塞でも、途中まで残っていた便が出ることがあります

飼い主さんへ

「何かを飲み込んだあと、水を飲んでもすぐにビューッと勢いよく吐く」「完全に食欲が落ち、おしっこやウンチが出ない」ときはすでに腸が詰まっている可能性が高いです。特に「紐状の異物(毛糸やリボン)」は腸をアコーディオンのようにクシャクシャに引き縮めるため超危険です。怪しいものを飲み込んだら、症状が出る前でもすぐに病院へ相談してください。

📌 ひとこと

猫は毛糸・輪ゴム・ビニール紐が多く、犬はボールや靴下・コーン棒などが多い異物です。

重症膵炎

【対象】犬・猫  重症(当日中に受診)

高脂肪の食事の後や、繰り返す嘔吐とお腹の痛みが重なる場合は膵臓の炎症が疑われます。

こんな症状が出たら

  • ✔ 繰り返す嘔吐・下痢
  • ✔ お腹を触ると痛がる
  • ✔ 食欲がなく、ぐったりしている
  • ✔ 脱水症状(皮膚をつまむと戻りが悪い)

なぜ危険?

消化液(ごはんを消化する強いお汁)を作る工場である「膵臓(すいぞう)」が、何らかの原因で暴走し、自分自身の強い消化液で「自分自身の体をドロドロに溶かしてしまう」恐ろしい病気です。
お腹の中で強力な火事が起きているような状態になり、その激しい炎症の炎が隣り合う肝臓や腎臓、さらには全身の血管へと燃え広がり、最終的にはすべての内臓が働かなくなる多臓器不全を引き起こします。

飼い主さんへ

ワンちゃんでは、唐揚げや人間のピザ、お肉の脂身など「高脂肪の食べ物」を盗み食いしたあとに発症することが非常に多いです。「何度も何度も激しく吐く」「お腹を触るとキャンと鳴く、お腹を丸めて苦しそうにしている」ときは、膵臓がSOSを出しています。絶食・絶水での強力な点滴治療が必要ですので、すぐに病院へ連れてきてください。

📌 ひとこと

猫では膵炎・腸炎・胆管炎が同時に起こる「三炎(トライアドティス)」が知られており、より複雑な管理が必要です。

急性肺水腫(心原性)

【対象】犬・猫  最重症(即時受診)

心臓病の管理中に急に咳が増え、息苦しそうにしている場合は肺に水が溜まっているかもしれません。

こんな症状が出たら

  • ✔ 湿った感じの咳が急に増えた
  • ✔ 横になれず座ったまま呼吸している
  • ✔ 呼吸が速く・荒い(安静時でも)
  • ✔ 口の中が青白い(チアノーゼ)

なぜ危険?

心臓のポンプ機能がガタガタに低下した結果、血液の流れが滞り、行き場を失った血液中の水分が「肺の中(肺胞という空気の部屋)」にジワジワと漏れ出して溜まってしまう病態です。
文字通り「陸の上にいるのに、自分の体液で肺がおぼれて溺(おぼ)れている」のと同じ状態になります。どれだけ息を吸っても空気が入らないため、この世の終わりほどの激しい息苦しさに襲われ、そのまま窒息死してしまいます。

飼い主さんへ

もともと心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など)と言われている子がなりやすいです。「ゼーゼー、ゴボゴボと湿った苦しそうな咳をする」「横になって寝ることができず、お座りの姿勢のまま首を伸ばしてハァハァ息をしている」「寝ているときの1分間の呼吸数が40回を超えている」ときは、肺に水が溜まり始めています。一刻を争うため、夜間でもただちに受診してください。

📌 ひとこと

犬では僧帽弁疾患(MMVD)が最多原因で、キャバリア・チワワ・シー・ズーに多く見られます。

副腎皮質機能低下症クライシス(アジソンクライシス)

【対象】犬  最重症(即時受診)

元気だったのに急にぐったり・嘔吐・下痢が重なり、特にストレス後や旅行後に起きた場合はアジソンクライシスを疑います。

こんな症状が出たら

  • ✔ 急激な元気消失・虚脱
  • ✔ 嘔吐・下痢(血が混じることも)
  • ✔ 体が冷たく、脈が弱い
  • ✔ 旅行・引っ越し・健康診断などのストレス後に発症

なぜ危険?

生きるために絶対に必要な元気のホルモン(副腎皮質ホルモン)を作る工場が壊れてしまい、体に強いストレス(旅行やペットホテル、お留守番、引っ越しなど)がかかった拍子に、ホルモンが完全にゼロになって体が大崩壊(大破綻)を起こす状態です。 血液中のナトリウムが異常に減り、逆にカリウムが異常に増えることで、心臓の脈が急激に遅くなり、そのまま心停止を招く非常に恐ろしいショック状態(クライシス)です。

飼い主さんへ

この病気は「偉大なる詐欺師」と呼ばれるほど、最初はただの「胃腸炎(なんとなく元気がない、下痢、嘔吐)」のようなありふれた症状で見つかりにくいのが特徴です。しかし、ストレスのあとに「命の灯火が消えそうなほど急激にぐったりした」「脈が弱く、体が氷のように冷たい」ときはこのアジソンクライシスの可能性があります。すぐに血液検査をして電解質のバランスを確認し、ホルモンを注射しなければ救えません。今すぐ受診してください。

📌 ひとこと

「Great Pretender(偉大なる詐欺師)」と呼ばれるほど症状が多彩で、消化器疾患や腎不全と見分けにくい病気です。早期診断と治療で普通の生活を送れます。

犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA

【対象】犬(猫も稀にあり) ▶ 最重症(即時受診)

こんな症状が出たら

  • 白目や皮膚、歯茎が急に黄色くなる(黄疸)
  • おしっこの色が濃い紅茶やウーロン茶、赤っぽくなる(血色素尿)
  • 急激に元気がなくなり、ハァハァと息が荒い

なぜ危険?

自分の体の免疫システム(本来はバイ菌と戦う防衛軍)がバグを起こし、あろうことか自分の命を繋ぐ大切な「赤血球(酸素を運ぶ細胞)」を敵と勘違いして、猛烈な勢いで破壊し尽くしてしまう病気です。 体の中で赤血球が次々と壊されるため、重篤な酸欠(超スピード進行の貧血)になります。さらに、壊れた赤血球のゴミが血管に詰まり、脳や肺の血管を塞ぐ「血栓症」という致命的な合併症を高い確率で引き起こし、突然死を招きます。

飼い主

昨日まで普通だったのに、急にぐったりしました…

Dr.Nyan

IMHAは「昨日元気だった子が突然急変」する、代表的な病気です。

飼い主さんへ

昨日まであんなに元気だった子が、わずか1〜2日で急変するのがこの病気の最も怖いところです。チェックポイントは「白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)」、そして「おしっこの色が濃いウーロン茶や赤っぽくなる(壊れた赤血球がおしっこに漏れるため)」、そして「息がハァハァと激しく荒い」です。これを見つけたら猶予はありません。夜間でも躊躇せず病院へ走ってください。

📌ひとこと

コッカー・スパニエルやプードル、マルチーズなどに好発します。昨日まで元気だった子が、1~2日で命の危機に陥る怖い病気です。

猫の大動脈血栓塞栓症(ATE

【対象】猫 ▶ 最重症(即時受診)

こんな症状が出たら

  • 後ろ足が突然動かなくなり、引きずって歩く
  • 激しい痛みのため、大声で鳴き叫び続ける
  • 後ろ足の肉球が冷たく、紫色(または白っぽく)なっている

なぜ危険?

心臓病(心筋症)が原因で心臓の中にできてしまった血の塊(血栓)が、血流に乗って流れていき、後ろ足へ分かれる一番太い動脈の分かれ道に詰まってしまう病気です。

後ろ足への血液が完全に止まるため、後ろ足の筋肉が急速に壊死(腐敗)していき、その際に耐えがたいほどの猛烈な超激痛が猫を襲います。

治療が数時間遅れるだけで、足が二度と動かなくなるだけでなく、壊死した筋肉の毒素が全身に回って心停止を招く、ネコちゃんの病気の中で最も恐ろしいもののひとつです。

リスク先生

「ヘルニアかな?」で朝まで待つのは危険!
猫の突然の「後ろ足が動かない」は、まず血栓症を疑います!

飼い主さんへ

「ついさっきまで元気だったネコちゃんが、突然後ろ足をダラリと引きずり、立ち上がれなくなる」「今まで聞いたことがないような凄まじい大声で鳴き叫び続ける(激痛のため)」「後ろ足の肉球を触ると氷のように冷たく、色が紫色や白っぽくなっている」というのが教科書通りの典型的な症状です。「ヘルニアかな?朝まで様子を見よう」とした結果、朝には手遅れになるケースが非常に多いです。1分1秒を争いますので、今すぐ夜間救急病院に連絡して走ってください。

📌ひとこと

「ヘルニアかな?」と様子を見てしまう飼い主さんが多いですが、猫の後ろ足の突然の麻痺は、この血栓塞栓症が圧倒的に多く、一刻を争います。

よくある質問(FAQ

夜間救急へ行くか迷った時、電話だけでもしていい?

迷った時点で、まず電話してください。
症状や呼吸状態から、緊急性を判断できる場合があります。

夜間や休診日に緊急症状が出た場合、まずどうすればいいですか?

まずは当院(診療時間内)または提携・お近くの夜間救急動物病院へ必ず事前にお電話をおかけください。向かう途中で病院側が受け入れ準備(酸素室や手術室の確保)を整えることができるため、到着後の処置がスムーズになります。

緊急状態のとき、移動中の車内で飼い主ができることは?

呼吸が苦しそうな場合は、首を曲げないようまっすぐ伸ばした姿勢(あるいは本人が一番楽な姿勢)を保ち、できるだけ声をかけすぎずに静かに運んでください。熱中症なら濡れタオルで冷やす、出血なら清潔なガーゼで圧迫止血するなど、電話口で獣医師から指示された応急処置を落ち着いて行いましょう。

飼い主

大げさだったらどうしようと思って迷ってしまいます…

Dr.Nyan

結果的に軽症なら、それが一番です。
本当に怖いのは、「様子を見て手遅れになること」です。

最後に

「もしかして」と思ったら、まず動物病院にお電話ください。電話での相談だけでも、次の行動の手がかりになります。
動物たちは自分の辛さを言葉にできません。飼い主さんの「気づき」が、大切な命を救います。

「大げさだったかな」で終わる受診はあります。
しかし、「連れて来れば助かった」が最も後悔の大きいケースです。

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

若山動物病院院長 獣医師 若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール写真

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。

特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。

これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。

本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。