Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
猫の急性胃炎|吐く原因と治療・受診の目安
吐くことが多くなった!
そんな症状がみられたら「胃炎」を引き起こしているかもしれません。

飼い主
元気はあるのに、よく吐くんです!
どうしたのかしら?
Dr.Nyan
吐いている回数と内容が重要ですね。
元気でも胃炎が隠れていることがあるので、まずは詳しく確認していきましょう。
口から胃へは一方通行、しかも口は本来、食べたものを出す場所ではありません。
その一方通行を無視した『嘔吐』と言う症状の裏には、とても大きな問題が隠れています!
Dr.Nyan
「猫はよく吐く」と言われますが、実際の診療では繰り返す嘔吐の裏に病気が見つかることも少なくありません。
嘔吐は一過性の胃炎から重篤な病気まで、様々な病気で普通に見られる症状です。嘔吐の原因は、大きく分けて二つ「胃などの消化器系の問題」と「消化器系以外の問題」によるものがあります。
ここでは「消化器系の問題」の中の『胃炎』、特に猫で多い『急性胃炎』の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。

飼い主
どんな吐き方が危ないんですか?
Dr.Nyan
回数・色・元気の有無が判断ポイントです。
ここから具体的に見ていきましょう。
急性胃炎の症状
『胃炎』は胃の粘膜に炎症が起き、吐くなどの症状を起こす病気です。
『急性胃炎』はさっきまでは元気で食欲もあったのに急に吐き出してしまった、このような症状が見られます。しかも『急性胃炎』は、通常は数日〜1週間以内に症状が治まります。
もし症状が1週間以上も続いてしまう場合は「慢性胃炎」となってしまっていますので、注意しましょう。
Dr.Nyan
急性胃炎では、「吐く」が最初のサインになることが多いです。
実際の診療でも、はじめは軽い嘔吐から始まり、その後徐々に回数が増えて受診されるケースがよく見られます。
元気があっても、「吐く回数が増えてきた」という段階で受診されることは非常に多いです。
嘔吐
嘔吐は、急性胃炎でよく見られる症状です!しかも繰り返し嘔吐することもあります。
また嘔吐の後などに、よだれを流すこともあります。

透明の胃液や、黄色い胃液を吐くこともあります。

血の混じった胃液を吐くこともあります。
吐瀉物の色・状態で危険度を確認しましょう

飼い主
黄色い液体だけでも、病院へ行った方がいいことがあるんですね…
Dr.Nyan
はい。
「空腹だから大丈夫」と思われやすいですが、
繰り返す場合は胃炎や胆汁逆流が隠れていることがあります。
| 吐瀉物の状態・色 | 主な原因・状態 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 白い泡・黄色い液体 | 空腹、または胃液・胆汁の逆流(胃炎の初期) | 続くようなら病院へ |
| ピンク・赤色の液体 | 胃や食道からの出血(粘膜が傷ついている) | 高(早めに受診) |
| 茶色・黒っぽい液体 | 胃や十二指腸での古い出血、または腸閉塞の疑い | 極めて高い(すぐ病院へ) |
| 異物(おもちゃ・紐など)が混じっている | 誤飲による胃の閉塞 | 極めて高い(救急レベル) |

Dr.Nyan
ちなみに「嘔吐」と似ている症状に「吐出」と言うのがあるんだよ。
意味が全然違うんで、その違いを説明するね!
『嘔吐』は、胃の中のモノが口から吐き出されることを言います。嘔吐するときには、苦しそうにお腹を動かしながら下を向き吐き出します。吐いたモノは、消化が始まっている状態です。
『吐出』は、食べたものが胃の中に入る前に吐き出されることを言います。吐出するときには、顔を下げず前に飛ばすように吐き出します。吐いたモノは、消化されていません。
吐出はフードを一気に食べる猫によく見られる症状で、多くの場合は吐いた後も元気で普通にしています。吐出の場合は胃炎である可能性が低いと言われています。嘔吐か吐出かは、猫の吐く様子や吐いたモノで判断してみましょう。
食欲がなくなる

飼い主
吐いてばかりいると、他の病気にもなるんですか?
Dr.Nyan
繰り返す嘔吐で逆流性食道炎になることもあります。
食欲低下の原因にもなるので注意が必要ですね。
逆流性食道炎はフードと一緒に吐き出した胃酸で食道が傷つき、炎症を起こしてしまう病気です。そのため食道に違和感を感じ、食べ物を飲み込みづらくなります。また痛みから食欲が落ちてしまったり、食欲が無くなってしまうこともあります。
脱水
食欲がなくなったことで、水も飲まなくなり、その結果脱水になる場合もあります。
急性胃炎の原因
猫で胃炎が多い理由は、猫の『性格』にあります。
- 紐など細いもの好き
- グルーミングをする
- 葉っぱを齧るのが好き
猫が急性胃炎を起こす原因には、以下のようなものがあります。また原因によっては、急性胃炎から慢性胃炎となってしまう場合もあります。
誤飲・誤食
猫は予測不能の行動をとることが多い動物です。その中で気を付けていても起こってしまうのが「誤飲・誤食」です。「誤飲・誤食」とは、食べてはいけないものを飲んだり食べたりしてしまうことです。
単なる食べ過ぎの胃炎なら薬で治りますが、「異物の誤飲」による胃炎の場合、時間経過とともに腸に詰まって腸閉塞を起こし、開腹手術が必要になるケースがあります。お気に入りのおもちゃがなくなっていないか、紐などを噛みちぎった形跡がないかも必ず確認してください。
紐:ひも
猫は紐で遊ぶのが大好きで、しかも飲み込んでしまうこともあります。
また糸や毛糸、リボンなど細長いものも注意しましょう。

吐いたものに混じっていた細い紐です。
毛
毛繕いをしたときに、毛を飲み込んでしまいます。飲み込んだ毛は、胃の中で丸い毛球となってしまいます。毛球は、丁寧に毛繕いをする猫や長毛の猫に多く見られます。
毛玉を吐いた後、すぐに元気になってご飯を食べるようなら生理的なものです。しかし、毛玉を吐いた後も何度も空吐きを続けたり、胃液を吐いたりする場合は、胃の粘膜が傷ついて「急性胃炎」に発展しているサインです。毛玉吐きだからと安心せず、その後の様子をよく観察してください。

飼い主
毛玉を吐くのは猫なら普通だと思っていました…
Dr.Nyan
実際によくある勘違いです。
ただ、「何度も吐く」「胃液まで吐く」は受診サインです。
猫草
毛球を吐かせる手助けのために食べさせると言います。しかし、繰り返し食べさせることで嘔吐が増え、『逆流性食道炎』の原因にもなっています。

猫草を吐き出した時に血までが出てしまいました。
観葉植物
猫は、本当に葉っぱを噛むのは大好きですよね!
観葉植物の中には中毒を引き起こすものもあるため注意が必要です。

観葉植物の葉先を食べている様子です。
寄生虫
回虫、胃虫などの寄生虫の感染によります。これらは経口感染、つまり寄生虫の卵を口にしたことにより感染します。
ウンチを直接口にする機会が無いと思っても、実は玄関でウンチを踏んでしまった靴から感染してしまったこともあります。外に出ることが無いから感染は無いと思わず、注意してくださいね!
フード
胃炎はフードが原因で起こるケースもあります。例えば、食べ慣れないものなどを食べたときや、新しいフードに変えたときに見られます。
ストレス
胃炎はストレスも原因の1つです。
例えば、
- ペットホテルに預けられた時
- 来客や子どもが遊びに来た時
など、心が落ち着かず緊張してしまったときやいつもの居場所に居られなくなった時などに起こります。
急性胃炎の主な治療法と費用

飼い主
どうして急に胃炎になるんですか?
Dr.Nyan
誤食やストレスなど、日常の中に原因が隠れていることが多いです。
実際の症例でもよく見られるポイントです。
Dr.Nyan
原因がはっきりしない場合は、胃カメラなどの検査が必要になることもあります。
急性胃炎はただの胃の病気と思いきや、実に奥深い病気なんです。しかも繰り返し発症することも多い病気です。
原因や症状によって治療方法は違いますが、異物を伴わない一般的な急性胃炎の治療期間は3日〜1週間です。また軽度の場合には、治療しなくても自然に治ってしまうことがあります。
投薬
吐き気は辛いですよね!まず辛さを和らげてあげるために、症状に応じて飲み薬か注射を使用します。
嘔吐を止める薬や、胃酸の分泌を抑える薬などを使用します。寄生虫から胃炎を引き起こしている場合には、駆虫剤を飲ませます。
サプリメント
毛球症が疑われる場合には、毛球をウンチと一緒に出してしまうサプリメントを使用します。
輸液
嘔吐によって脱水を起こしている場合には、失った水分を補うため輸液を行います。嘔吐がひどく飲み薬を飲ませられる状態でない場合には、入院での治療を行うこともあります。
手術
誤飲・誤食の場合には、内視鏡や手術で異物を取り出すこともあります。その際には全身麻酔を必要とします。
食餌療法
食欲の無い状態が続くと、体が弱まってしまいます。まずは何でも良いので「食べたい」と興味を持ったモノを与えてみます。また「食べたい」気持ちを持たせるようにすることも必要です。
食べることで、病状の回復を早めてあげることができます。
そのためには胃に負担のかからないようにフードを少量から与え始め、徐々に食べさせる量を増やしていきます。
リスク先生
「吐いているから水を止めよう」は危険!
猫は短期間の絶食でも重症化することがあります!
猫は絶食が続くと「肝リピドーシス(脂肪肝)」という命に関わる重篤な肝不全を引き起こすリスクがあります。
また急性胃炎だと思って自宅で絶水させると、脱水が一気に進行して腎不全などを併発する恐れがあります。
半日以上吐き気が止まらない場合は、絶食させる前に動物病院へご相談ください。
Dr.Nyan
食べない時は「与え方」を変えるだけで食べることも多いですよ。
ポイントを一緒に確認していきましょう。
まずは消化の良いフードを与えましょう!
胃炎を起こした猫の胃は傷んでいます。消化の良いフードを与えて胃への刺激をなるべく減らしましょう。
フードは電子レンジで温めましょう!
温かなフードはニオイと美味しさを増します。ウエットフードもドライフードも、電子レンジで軽く温めてあげましょう。
与え方を変えてみましょう!
手のひらにのせて与えてみると、なぜか食べる子がいます。また、フードに好きな物や美味しいモノを、トッピングすると食べる子もいます。
与え方次第で食いつきが変わるので試してみてください。
Dr.Nyan
食べられない状態が続くと回復が遅れます。
無理をせず、早めにご相談くださいね。
治療費

飼い主
気になる急性胃炎の治療費は幾らくらいでしょう?
急性胃炎の原因によって、使用する薬と治療期間が違いから治療費が変わります。誤食誤飲を伴わない急性胃炎の場合は、診察料と投薬で治療費は3,000円〜8,000円くらいです。
ただし、異物誤飲や重度脱水を伴う場合には、入院や手術が必要になることもあります。
しかし重度の嘔吐を伴う場合には治療期間も長くなり、その分治療費もかかってしまいます!
急性胃炎の予防方法
原因となりうることを防いでいくことが予防につながります。
誤食・誤飲をさせない
常に室内を整理整頓しておくことが大事です。ヒトと猫では目線が違いますので、注意してください!
オモチャなどで遊んでいるときは、なるべく目を離さずにいましょう。またオモチャなどを片付けるときには、オモチャが元の状態と同じかを確認しましょう。
寄生虫を駆除する
家から出ない猫でも、思わぬところから感染してしまうことがあります。しかも相手は目に見えませんので、寄生虫感染症の予防は駆虫薬を定期的に飲ませてあげることが一番です。
フードの変更は徐々に行う
新しいフードに変更する場合には、徐々に増やしていきます。
例えば3日で変更するなら、初日は新しいフードを3割ほど混ぜ、二日目は6割、三日目は全量新しいフードにという感じで変更していきます。胃のとても弱い猫は、さらに時間をかけて変更していきましょう。
ストレスには慣れる
ストレスがかかるような場合には、慣れるようにしてあげます。例えば、来客があっても逃げ込めるような場所をあらかじめ用意してあげるなどの対策をしておきます。
胃炎になりやすい猫の特徴
- 誤食しやすい猫
- 毛づくろいをよくする猫
- アレルギーの猫
猫の急性胃炎でよくある質問
猫が吐くのはどのくらいなら様子見で大丈夫ですか?
1回だけで元気・食欲があり、その後吐かない場合は様子を見ることも可能です。ただし、1日に何度も吐く・2日以上続く・元気や食欲が落ちている場合は受診が必要です。
猫の嘔吐と吐出の違いは何ですか?
嘔吐は胃の中のものを吐くため、お腹を動かしながら苦しそうに吐きます。吐出は食べたものがそのまま出る状態で、比較的楽に吐き出し、食べた形が残っています。
猫が黄色い液体を吐くのは危険ですか?
黄色い液体は胃液で、空腹や胃炎で見られます。1回程度なら問題ないこともありますが、繰り返す場合は胃炎などの可能性があるため受診をおすすめします。
血が混じった嘔吐はすぐ受診すべきですか?
はい、血が混じる場合は胃粘膜のダメージが疑われます。緊急性が高いこともあるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。
猫が吐いた後に食欲がなくなるのはなぜですか?
嘔吐により胃や食道に炎症が起き、痛みや違和感で食欲が低下します。特に逆流性食道炎を伴う場合は食べづらくなります。
猫の急性胃炎は自然に治ることもありますか?
軽度であれば自然に回復することもありますが、繰り返す嘔吐や食欲低下がある場合は治療が必要です。放置すると悪化することがあります。
猫が吐く原因で多いものは何ですか?
誤飲・毛球・フード変更・ストレス・寄生虫などが多く見られます。複数の原因が重なっているケースも少なくありません。
猫草は与えない方が良いですか?
猫草は毛球排出に役立つこともありますが、過剰に食べると嘔吐や食道炎の原因になることがあります。頻繁に吐く場合は使用を見直しましょう。
どんな場合にすぐ受診すべきですか?
繰り返し吐く、ぐったりしている、食欲がない、水も飲まない、血が混じる場合は早急な受診が必要です。
今回の症例のように元気でも受診すべきですか?
はい、元気でも嘔吐が続いている場合は胃炎が進行している可能性があります。
病院を受診する際の準備
獣医師がスムーズに診断を下せるよう、受診前に以下を準備しておくと助かります。「いつ、何回吐いたか」のメモに加え、吐いたものの写真をスマホで撮影して持参するか、可能であれば吐いた実物をラップなどに包んで持ってきていただくと、原因の特定(異物の有無や出血の状態など)が格段に早くなります。
- いつから・何回吐いたかのメモ
- 吐いたものの写真(スマホで撮影)
- 可能なら吐いた実物(ラップに包んで持参)
- 最後に食べたもの・飲んだもの・飲んだ量
- 最近のおもちゃ・紐などの紛失がないか確認
まとめ
急性胃炎では、「吐く」が最初のサインになることが多いです。
実際の診療でも、はじめは軽い嘔吐から始まり、その後徐々に回数が増えて受診されるケースがよく見られます。
元気があっても、「吐く回数が増えてきた」という段階で受診されることは非常に多いです。
「吐くのはいつものこと」と思わず、気になる兆候が見られたら早めにご相談ください。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。