Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
犬の車酔い|吐く・ぐったりの原因と対処法・受診の目安
観光地やサービスエリアで、ワンちゃんを連れている方を見かけることが増えてきました。
その一方で、「車に乗るとぐったりする」「吐いてしまう」といった相談も増えています。
本記事では、実際の症例をもとに犬の車酔いの症状・原因・対処法をわかりやすく解説します。
実際の診察でも「車に乗ると毎回吐いてしまう」という相談は少なくありません。

高速道路のサービスエリアの多くにドッグランが設置されていることからも、ワンちゃんを車に乗せてお出かけする方が増えてきているんでしょうね。
ただ車に乗っている時間や距離によっては、車酔いをするワンちゃんもいるため注意しましょう。
車酔いの症状:車に乗ると落ち着かなくなる
飼い主
車に乗せるとソワソワして落ち着かなくて、ハアハアし始めるんです…
Dr.Nyan
その段階で、すでに車酔いの初期症状が出ている可能性がありますね
この車酔いには耳や眼が関係しているとも言われ、以下のような症状が見られます。
- 落ち着きがなくなる
- ハアハア呼吸が荒くなる
- 吠え続ける
- 体が震える
- あくびを頻繁にする
飼い主
まだ吐いてないから大丈夫だと思ってました…
Dr.Nyan
この段階で対処できるかが一番重要なんです
車酔いの症状:よだれ・嘔吐が出てしまう
飼い主
よだれがダラダラ出てきて、そのあと吐いてしまいました…
Dr.Nyan
典型的な車酔いの進行パターンです。早めの対処が重要です
- 鼻水が出る
- よだれが流れ出る
- 胃液や食事を吐く
- グッタリする
飼い主
吐いた後は元気になるんですが大丈夫ですか?
Dr.Nyan
繰り返す場合は負担が大きいので対策が必要です
車酔いの原因
車酔いは、車以外の乗り物でも同じように起こります。例えば船であれば船酔、飛行機であれば空酔いと言われ、乗り物に乗ると気分が悪くなったり吐いてしまうような症状が見られます。
このように車に限らず他の乗り物でも起こるため、「乗り物酔い」とか「動揺病」とも言われます。

飼い主
どうして車に乗ると具合が悪くなるんですか?
Dr.Nyan
耳と目から入る情報のズレが原因なんです。
車の振動や揺れと耳の構造との関係
ワンちゃんも、ヒトと同じように鼓膜の奥には「内耳」があります。
この内耳中には三半規管と耳石器があり、体の平衡感覚を保つ働きをしています。
この三半規管や耳石器が走っている車のスピードや車の揺れ、体の位置などの情報を脳へと伝えます。
しかし走る車の不規則な加速や減速、右折や左折、発進や停車などにより体が前後左右上下に動くため、三半規管や耳石器からの脳へ伝わる情報量が多くなります。

しかも車窓からの景色や車内の様子など眼から入る情報も、脳へと伝えられます。
この結果、耳からの情報と眼からの情報とにズレが生まれ脳が混乱し、これらの情報が脳で処理しきれなくなり自律神経の働きに乱れが出てしまいます。
自律神経は心臓や血管などの循環器、また胃や腸などの消化器の働きをコントロールしているため自律神経が乱れると、それらの働きに問題が起き吐き気など車酔いの症状があらわれます。
Dr.Nyan
つまり車の揺れでバランス感覚が乱れて、気分が悪くなるんです
三半規管と耳石器とは
三半規管は、その中に入っているリンパ液の流れにより体の回転を感知しています。
耳石器は三半規管の根本付近にあり炭酸カルシウムから出来た「平衡砂」と呼ばれる結晶が入っています。
この石の動きにより、体の横方向と縦方向の直線運動を感知しています。

飼い主
うちの子だけ、特に弱い気がするんですが?
Dr.Nyan
いくつか悪化要因があります
車内のニオイとの関係
車内には芳香剤やエアコンからなど様々なニオイがこもっていますが、それらは車を使う我々ヒトにとっては日常生活の中にある普通のニオイになっています。
しかしこれらのニオイは自然のものではありませんし、不快感を覚えてしまうニオイになっている可能性があります。
ストレスや不安
車が怖い・車に乗り慣れていないなどの精神的な不安から、車酔いを引き起こしていることもあります。
また車内は普段暮らしている場所と違う環境であるため、心が落ち着かずストレスを引き起こし車酔いが起こると言われています。
過去に車酔いの経験がある場合には、車に乗った際に呼び戻された過去の記憶からストレスを感じ車酔いを引き起こしてしまうこともあります。
車酔いの対処法
Dr.Nyan
車酔いは出発前の準備でかなり変わりますよ
車酔いの対策No.1は、車に乗ることが大好きになることです。
そのようになるまで車に対する不安を減らし、少しずつ慣らしていくことが重要です。
乗車前の対策
空腹であったり車に乗る直前に食べると車酔いになりやすいため、出発前の2~3時間までにフードを少なめに食べさせ、車に乗せる前に軽く散歩や運動をさせておきます。
予め芳香剤など車内にニオイを放つものは撤去し車内の空気を入れ替えておきましょう。
車でのお出かけが好きになれば、車に乗ることに対しても良いイメージを持ってもらえます。
「酔いやすいから」と人間用の市販酔い止め薬を自己判断で与えることは絶対に避けてください。成分によっては犬に深刻な副作用を引き起こす危険があります。薬を使用する場合は、必ず動物病院で処方されたワンちゃん用の薬を、指示された通りに飲ませてください。
また、ストレスや不安による車酔いには、犬用の安心フェロモン製品(アダプシルなど)も効果的な選択肢のひとつです。クレートの中や車内にスプレーするだけで、愛犬の不安を和らげる非薬物的なアプローチとして活用できます。出発前に使用しておくと、より効果的です。
乗車中の対策

飼い主
乗車中にできることはありますか?
Dr.Nyan
あります。かなり重要です
静かな運転と休憩、そして換気
体の揺れをなるべく少なくするためにも、いつも以上に静かで安全な運転を心がけます。
長時間の移動になる場合には、2〜3時間ごとを目安にこまめに休憩をとるようにしましょう。休憩の際は必ず車から降ろし、外の空気を吸わせてリフレッシュさせましょう。高速道路を走る場合には、サービスエリアやパーキングエリアにあるドッグランを利用し気分転換をするのも良いでしょう!
車内のニオイをできる限り減らすため乗車前の換気だけでなく、運転中は外気導入にしたり窓を少し開けることもお勧めです。

また車酔いの症状が出ていないか、様子をこまめにチェックしましょう!
車内の温度管理も非常に重要です。
犬の車酔いを一気に加速させる大きな要因として、「車内の暑さ(こもった熱気)」があります。
犬は体温調節が苦手で、緊張するとさらに体温が上がります。
特に夏場は、車内の暑さやこもった熱気によって車酔いが悪化しやすくなります。犬は体温調節が苦手なため、エアコンで22〜24℃前後を目安に少し涼しめに設定し、直射日光が当たらないようサンシェードを使用しましょう。
クレートを使う
Dr.Nyan
クレートはかなり有効です
車内での体勢が不安定だと、酔いやすくなります。
そのため移動中は固定したクレートの中で、静かに過ごさせると体勢が安定するだけでなく緊張もほぐれます。
クレートが車酔い防止に効果的な理由は大きく2つあります。
視界を遮ることで目からの情報のズレを減らす
窓の外の流れる景色が見えなくなることで、耳(平衡感覚)と目から入る情報のズレが起きにくくなり、脳の混乱を防ぎます。
体が固定され揺れの影響が少なくなる
クレート内で体が安定することで、急発進・急停止などによる体の揺れが軽減されます。
正しいクレートの設置方法
クレート自体がずれたり動いたりしないよう、シートベルトを通してしっかり固定しましょう。また、クレートのサイズは愛犬が立ち上がって向きを変えられる程度の大きさが目安です。

吐いてしまった場合には、吐いたものが車内に飛散しないようにクレートに入れておくことも方法の一つです。
Dr.Nyan
クレート・トレーニングは、とっても大切だよ!
頑張ってクレートに慣れようね!
車酔いの症状が見られたら
飼い主
もし吐いてしまったら?
Dr.Nyan
まずは安全に停車が最優先です
まず車を停め車から降ろし、外の空気を吸わせ休憩しましょう。

車酔いは、吐きやすい状態となっています。
もし休憩中に水を欲しがったなら、少量飲ませてあげます。
また食べ物も同様に、少なめにします。
走行中に吐いたら
もし走行中に車酔いで吐いてしまったら、焦らず慌てずに車を路肩に停め対処しましょう。
もし吐いても停車するまではよそ見したり、大きな声を出したりなどせず冷静に行動することが重要です。焦りや大きな声は、交通事故や新たな車嫌いの原因にもなりかねません!
リスク先生
吐いたことを叱ると、車=怖い場所になってしまいます!車嫌いと車酔いが悪化する原因になるため、絶対に怒らないでください!
「車に乗ったら怒られた」という記憶(ストレス)が愛犬の脳に刻まれ、「車=怖い・嫌な場所」というイメージがより強まります。その結果、車に乗るたびに不安が増し、車酔いがさらに悪化するという悪循環に陥ります。
愛犬は故意に吐いているわけではありません。穏やかに声をかけてあげましょう。
Dr.Nyan
万が一に備えて車内にティッシュやペットシーツ、ビニール袋などの掃除用品を用意しておくと何かのときに慌てずに対処できますよ〜!
車に慣れさせよう
車酔いは車に慣れることで、気にせずにお出かけできるようになります。
そのためにも、日頃から車に乗ることに慣らしておきます。
Dr.Nyan
最終的な対策は“慣れ”です
車に慣れる
初めて車に乗ったときに車嫌いになってしまうと、その後に車に乗ることを嫌がるようになってしまいます。そのため「車は安心していられる場所」と理解することから始めましょう。最初が肝心です!
以下のステップで少しずつ慣らしていくのがおすすめです。
ステップ1:車に乗るだけ(エンジンOFF)
まずはエンジンをかけない状態で愛犬を車に乗せます。クレートの中でクッションを敷き、体が動き回らないよう安定させます。おやつをあげたり、声をかけたりして「車の中=安心できる場所」というイメージを持ってもらいましょう。
ステップ2:エンジンをかけて停車したまま
車内でリラックスできるようになったら、次はエンジンをかけた状態で少しの間過ごさせます。エンジン音や振動に慣れてもらうのが目的です。おやつやおもちゃを活用して、ポジティブな体験と結びつけましょう。
ステップ3:近所を短距離ドライブ
緊張せずに落ち着いて過ごせるようになったら、いよいよ走り始めます。最初は5〜10分程度の短い距離からスタートしましょう。
小さなピクニックに行こう
車の中で緊張せず落ち着いているようだったら、少し走ってみましょう。そして近所の公園などでオヤツを食べたり遊んであげたりして、車の乗ることは楽しいことだと知ってもらいます。また公園でレジャーシートを敷いて、皆で座ってくつろぐのもひとつの方法です。車は楽しい場所に行けるものと覚えてもらうと、車好きにもなります!車酔いの症状が見られなければ、徐々に距離と時間を延ばしてみましょう。

楽しいお出かけに行こう
遠くまでお出かけできるようになれば、見たことのない風景、嗅いだことのないニオイ、聞いたことのない音などを感じられます。
そしてそれらが刺激となり、脳の働きや免疫力が上がるなどお出かけの大きな効果も得られます。
お出かけのメリットはたくさんありますので、車酔いにならないようにして楽しい思い出をいっぱいつくって下さいね!


飼い主
体質だから仕方ないですか?
Dr.Nyan
いいえ、改善できるケースがほとんどです
受診の目安

飼い主
どのくらいで病院に行くべきですか?
Dr.Nyan
ここはしっかり判断しましょう
- 毎回必ず吐く
- ぐったりが強い
- 水も飲めない
- 長時間回復しない
- 車に乗る前から体調不良
よくある質問
子犬と成犬では、車酔いのしやすさに違いはありますか?
一般的に、子犬の方が成犬よりも車酔いしやすい傾向があります。これは平衡感覚をつかさどる内耳(三半規管・耳石器)がまだ発達途中であることと、車そのものに慣れていないことが大きな理由です。
多くの場合、成長とともに内耳が発達し、車に慣れることで車酔いが改善されるケースが少なくありません。
人間用の酔い止め薬を犬に与えても大丈夫ですか?
絶対に与えないでください。人間用の市販酔い止め薬は犬に対して安全が確認されておらず、成分によっては深刻な副作用を引き起こす可能性があります。
薬を使用したい場合は、必ず動物病院に相談し、犬用に処方・承認された薬のみを使用してください。
車酔いに効果的な犬種や体格の特徴はありますか?
特定の犬種が必ずしも酔いやすいというわけではありませんが、不安やストレスを感じやすい性格の犬、または車に乗り慣れていない犬は酔いやすい傾向があります。体格よりも「慣れ」と「精神的な安定」が酔いやすさに大きく影響します。
どのくらいの期間で車に慣れますか?
個体差がありますが、毎日少しずつ慣らしていけば、早い子で数日〜1週間程度、慎重な子でも1〜2ヶ月ほどで改善が見られるケースが多いです。焦らず、愛犬のペースに合わせて段階的に進めることが大切です。
どのような場合に動物病院を受診すべきですか?
毎回必ず吐く・ぐったりが強い・水も飲めない・長時間回復しない・車に乗る前から体調不良といった症状が続く場合は、お早めに動物病院を受診してください。
まとめ
車酔い対策の一番は、お出かけが好きになってもらうことです!
しかも車酔いは、きちんと対策をとることで防げることもあります。
そのため車酔いしやすい子は、できるだけ酔い防止のための対策を立てお出かけを楽しみましょう!

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。