犬が黄色い液を吐く・元気がない…胆泥症の症例|症状・原因・治療と受診の目安

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犬が黄色い液を吐く・元気がない…胆泥症の症例|症状・原因・治療と受診の目安

実際に来院された症例です。
「黄色い液を吐くようになり、元気や食欲も落ちている」と来院された犬。
検査の結果、胆泥症が確認されました。

本記事では、複数の症例をもとに解説しています。

飼い主

健康診断で肝臓機能の値が高かったし、この頃黄色いものを吐くことが増えていて、元気もありません

Dr.Nyan

胆嚢の異常の可能性があります。超音波検査で確認しましょう

犬の胆泥症で胆嚢内に泥状の胆汁が溜まっている超音波画像

胆嚢の中に泥状のものが溜まった状態(胆泥症)です。

正常に近い犬の胆嚢の超音波画像で胆汁が黒く見える状態

胆嚢に泥がさほど溜まっていないため、胆嚢が黒く見えます。

飼い主

アラッ?胆嚢の中に泥…
泥ってどういうことなんでしょう?

胆泥症は、発症するまでは症状が見られないことがほとんどです。そのため健康診断などで、偶然に見つかることが多い病気です。

それでは犬の「胆泥症」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。

目次

胆泥症の症状

Dr.Nyan

胆嚢は肝臓と十二指腸に接して存在する袋状の組織だよ!

犬の胆泥症で胆嚢に胆泥が溜まる仕組みを示した図

赤い丸印が胆嚢です。

~Dr.Nyanポイント~
胆嚢と胆泥って何?

「胆嚢」は肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にあります。この胆嚢は、【肝臓で作られた胆汁を濃縮し一時溜めておく袋】です。

胆汁は脂肪を分解し、水に溶けやすい状態にする役割を持っています。胆泥はその【サラサラだった胆汁が変質し、泥状になったもの】です。

Dr.Nyan

胆泥症になっても何の症状も見られないこともあるんだけど・・
でもどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!

無症状

胆嚢がある肝臓は「沈黙の臓器」とも言われます。胆泥が少ない場合、胆嚢も肝臓と同様に、何ら症状が見られないことが多々あります。

そのため健康診断などで行った超音波検査で、偶然に見つかることもあります。

消化器症状が見られる

胆泥が増えてくると、胆嚢に炎症が起こり以下の消化器症状がみられるようになります。

  • 元気や食欲が落ちる
  • ウンチが軟らかいか水っぽい
  • 黄色や緑色っぽいものを吐く
  • 熱っぽくなる
  • 腹痛を起こす

胆泥が増えると胆嚢の中の胆汁の量が少なくなります。

その結果、フードを食べた時に脂肪の消化がうまく出来なくなってしまいます。そして消化器症状がみられるようになってしまいます。

さらに併発症がでる場合もあり、

などを引き起こす可能性もあります。

黄疸や腹膜炎を起こす

胆泥症での一番の問題は、胆嚢から流れ出た胆泥が胆管が詰まってしまうことです。胆管が詰まってしまうと、以下のような症状が見られます。

  • 胆汁が血液の中に入り込み黄疸になる
  • 胆泥が溜まりすぎて胆嚢や胆管が破裂し腹膜炎(お腹の炎症)を起こす
胆泥症による黄疸で白目が黄色くなっている犬の症状

眼の白い部分が黄色くなってるのがわかります。

胆泥症による黄疸で血清が黄色からオレンジ色に変化した状態

黄疸になると血清が濃い黄色やオレンジ色になります。

Dr.Nyan

黄疸を起こす理由の説明だよ。
胆嚢から腸に流れ出なくなった胆汁は、肝臓に溜まります。
その結果、胆汁の成分が血液の中に溢れ出てしまい黄疸となってしまうんだよ!

胆泥が胆管に詰まると、急性胆管肝炎や胆嚢破裂を起こす可能性もあります。その結果、場合によっては亡くなってしまうこともあります。

そのようなことが起きないよう、病状をしっかりと把握しておく必要があります。

胆泥症の原因

Dr.Nyan

胆泥症の原因って、ハッキリとはわかってないよ!

以下のようなことが、胆泥症が起こる原因とされています。また胆泥症の裏には、ホルモン異常などの病気が隠れていることがあります。

胆嚢炎から

胆嚢炎は文字通り、胆嚢に炎症が起こることです。胆嚢炎を起こす原因としては細菌感染や、腸炎、膵炎、肝炎などがあげられます。

胆嚢炎を起こすと、胆汁の性状が変わるため胆泥ができやすくなります。その結果、胆泥症を起こします。

内分泌疾患から

甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患になると、胆汁の性状が変わるため胆泥症になりやすくなります。

胆泥症の主な治療法と費用

治療を行うに際しては胆泥の状態などを知るため、超音波検査や血液検査を行います。

Dr.Nyan

超音波検査では正常な胆嚢は黒く見えます。
しかし胆泥が溜まると、胆嚢の中に白っぽい「半月状やモヤモヤした不定形」のものが見られます。

胆泥症が見られた場合には、同時に他の病気があることもあるため肝臓などもチェックします。

胆泥症の治療は、原因や併発症によって異なります。特に症状もなく、また肝臓の障害も併発症もない場合には経過を観察することもあります。

胆嚢に作用する薬を使う

胆汁の分泌を増やしたり、胆嚢からの胆汁の排泄を促す利胆剤を使います。また胆嚢を収縮する作用を持つ、エリスロマイシンなどを使います。

肝臓を守る薬を使う

肝臓に障害を伴っている場合には、その治療を行います。また肝臓の機能を改善させるために、タウリンやスルフォアデノシルメチオニン(SAMe)などを使います。

抗生物質の投与

胆嚢炎や膵炎などが関わる場合には、抗生剤を使用します。

基礎疾患の治療

甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症がある場合には、その治療を行います。

フードを変更する

胆汁は、脂肪の消化吸収に関わっています。そのため胆嚢の負担を減らすためにも、フードを低脂肪のモノにします。

胆泥症に効果のある療法食も出ていますので、興味のある方はご相談ください!

外科的な治療を行う

以下のような場合には、手術により胆嚢を切り取ってしまいます。

  • 投薬などの治療を行っても胆泥症が進行する場合
  • 胆泥が溜まり過ぎてしまい胆嚢が大きくなっている場合
  • 胆嚢の壁が薄くなってしまっている場合
  • 胆管閉塞の危険が高い場合

外科手術が必要な場合には、外科の動物病院を紹介しております。

治療費

飼い主

気になる胆泥症の治療費は幾らくらいでしょう?

症状の違いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。また症状が重度になっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!

胆泥症の予防方法

飼い主

胆泥症は一生治療が必要なこともあるため、ならないようにしたいです!

適切なフードの選択

栄養バランスのとれたフードにします。できれば、低脂肪のフードを使用することが効果的です。

基礎疾患を治す

胆泥症の原因となる病気の早期治療は大切です。例えば、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などです。

定期的な健康診断を受ける

胆泥症は無症状なことも多いため、早期発見することが大切です。そのため、定期的に健康診断を受けることが重要です。早めに異常が見つかれば、処置も早くでき重症化を防げます。

胆泥症になりやすい犬種

  • 中高齢の犬
  • 高脂血症の犬
  • シェットランド・シープドッグ
  • ミニチュア・シュナウザー
  • コッカー・スパニエル
  • アメリカン・コッカスパニエル
  • ビーグル
  • シーズー
  • チワワ

犬の胆泥症でよくある質問

犬が黄色いものを吐くときはすぐ受診すべきですか?

黄色い液(胆汁)を吐く場合、空腹時の一時的なこともありますが、頻繁に吐く、元気や食欲がない、ぐったりしている場合は早めの受診が必要です。胆泥症や胆嚢炎、膵炎などの病気の可能性があります。

胆泥症は自然に治ることはありますか?

軽度で症状がない場合は経過観察となることもありますが、自然に完全に治ることは少なく、進行することもあります。定期的な検査で状態を確認することが重要です。

胆泥症を放置するとどうなりますか?

胆泥が増えると胆管が詰まり、黄疸や胆嚢炎、膵炎などを引き起こすことがあります。重症の場合は胆嚢破裂や腹膜炎につながり、命に関わることもあります。

手術が必要になることはありますか?

薬での治療で改善しない場合や、胆嚢が大きくなっている場合、胆管閉塞のリスクが高い場合には胆嚢摘出手術が必要になることがあります。

胆泥症は予防できますか?

完全に防ぐことは難しいですが、低脂肪の食事、適切な体重管理、基礎疾患の早期治療、定期的な健康診断によってリスクを下げることができます。

どの犬が胆泥症になりやすいですか?

中高齢の犬や高脂血症の犬、シェットランド・シープドッグ、ミニチュア・シュナウザーなどで発症しやすい傾向があります。

無症状でも検査は必要ですか?

はい、胆泥症は無症状のまま進行することがあるため、定期的な超音波検査による早期発見が重要です。

まとめ

胆泥症は犬によく見られる病気です。また早めに見つけられれば、場合によっては経過観察で済む病気でもあります。そのため早く見つけ出すことが大切です!

気になる症状が見られた場合は、お早めにご相談ください。
胆泥症が悪化しないように、お手伝いをいたします!

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

獣医師 若山正之 プロフィール写真 小動物臨床 犬猫診療

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。