Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
【猫の歯】猫の乳歯と永久歯の生える時期とケア
猫ちゃんの犬歯は小さいけど、とっても尖っています。
そのため噛まれるとサクッと皮膚の奥まで歯が食い込むので、とっても痛いんです!
また奥歯を「裂肉歯」と言い、肉を噛みちぎったり骨を砕く際に便利な形をしています。
ちなみ肉食の野生動物では、この裂肉歯が失われてしまうと餓死しちゃうとまで言われている、とっても大切な歯です!
そんな猫ちゃんの歯も、ヒトと同じように乳歯から永久歯へ生え変わります。
それでは猫ちゃんの歯の種類や本数、また永久歯への生え変わりや歯のケアについてご紹介します。
歯の種類や本数
猫ちゃんの前歯はとても小さく、しかもキュッと詰まって並んでいて可愛いですよね!
でも犬歯から奥の歯は山のような形をしていて、大きさも形もさまざまです。
それじゃ、歯の種類や本数などについて説明するね!
猫の歯の種類
猫ちゃんの歯にも「前歯」「犬歯」「奥歯」があります。
そしてそれぞれが「切歯」「犬歯」「臼歯」と呼ばれています。
ちなみヒトでは犬歯を「糸切り歯」とも呼ぶことがあります!
それぞれ歯の役割
切歯
「切歯」は顔の正面に隙間なく上下に綺麗に生えている、小さくて可愛い歯です。
この切歯は、肉を引き千切ったり骨から削ぐ際に使われます。
また切歯は、グルーミングをする時にも使用されます。
犬歯
「犬歯」は上下に4本生えています。
あのさ、猫なら「犬歯」じゃなくて「猫歯」でも良いのにね?
でも動物の種類に関係なく「犬歯」って呼ばれてるもんね・・・・
犬歯は、牙とも呼ばれ獲物をしっかり捉えるために大きく尖って「くさび型」をしています。
しかも寿命も長く丈夫な歯で、捉えた獲物の肉を引き裂く際にも使われます。
犬歯は食べる以外に、噛み合わせのズレを治し上顎と下顎がきちんと噛み合うようにする働きもしています。
犬歯には、縦に細かな溝があるんだよ!
これってさ獲物に噛みついた時に、獲物から出る血液が流れ出やすいようにって言うけど・・・
犬歯の表面には、歯石がくっつくと取りづらいくらい細くチョット深い感じの溝があります。
この溝は「血溝」と呼ばれるものだそうです!
臼歯
「臼歯」は、犬歯の奥にある大きな歯で肉を切り裂くときに使われます。
臼歯の中でも上顎の第3前臼歯と下顎の第1後臼歯は、鋏のように噛み合うため「裂肉歯(れつにくし)」と言われています。
このように猫ちゃんの歯は獲物を噛み切って食べるようにできているため、草を食べる動物のように擦り潰すような臼型の形にはなっていません。
歯の本数
歯の本数です。
- 乳歯は全部で26本
- 永久歯は30本
ちなみヒトの永久歯は、全部で32本です。
では「切歯」「犬歯」「臼歯」について、それぞれの本数を見ていきましょう。
永久歯のそれぞれのを「上顎片側の本数 / 下顎片側の本数」で表記してみました。
ちなみ成猫になると、乳歯には無い「後臼歯」が生えてきます。
- 乳歯は、切歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/2
- 永久歯は、切歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/2、後臼歯1/1
乳歯の生える時期
生まれたばかりの猫ちゃんには、歯は生えていません。
そして大きく育つにつれ、乳歯は、切歯、犬歯、前臼歯の順で生え始めます。
【乳歯の生えてくる時期】
- 授乳期が終わる生後2週間ごろから生え始まります。
- 犬歯:生後3週から4週にかけて
- 前臼歯:生後5週から6週にかけて
- 生後7週頃(約1ヶ月半)までには、26本全ての乳歯が生えそろいます。
子猫を保護した際には乳歯の生え具合を確認してみると、ある程度の月齢がわかります。
年齢の「齢」には「歯」と言う文字が入ってるよね?
これって歯を見れば年齢がわかるってことからなのかしら???
永久歯の生える時期と異常
永久歯は乳歯が生えた後に、歯茎の中で形成されます。
そして頭の骨の成長に合わせるかのように、乳歯を押し出すようにして生えてきます。
抜けた乳歯を飲み込んじゃって、ウンチの中に出てた事あったよ!
それとオモチャにくっついていることもある・・・
また生え変わりの際、乳歯の抜けた歯茎から出血することがあります。
歯茎の色が綺麗で健康なら、出血はすぐ治まりますので心配は必要ありません!
乳歯の犬歯の横から、犬歯の永久歯が生えてきているのが見えます!
永久歯の生え始める時期
永久歯も乳歯と同じように切歯、犬歯、前臼歯、後臼歯の順で生え変わります。
また下顎の方が上顎よりも早く生え変わります。
【永久歯の生えてくる時期】
- 生後11週齢頃(約3ヶ月)から生え始まります!
- 切歯:生後11週から16週にかけて
- 犬歯:生後12週から20週にかけて
- 前臼歯:生後16週から20週にかけて
- 乳歯には無い後臼歯:生後20週から24週にかけて
- 25週齢頃(約6ヶ月)までには、30本全ての永久歯が生えそろいます。
臼歯は肉を噛み切りやすいように上下の歯が少しズレて生えるため、「裂肉歯」とも呼ばれます。
残存乳歯と咬合異常
永久歯に生え変わる際、抜け落ちない乳歯が永久歯の横に残っている場合があります。
この生え変わりの時期を過ぎても乳歯が抜けない状態を「残存乳歯」と言います。
残存乳歯があると上顎と下顎の咬み合わせがズレてしまう「咬合異常」を引き起こしてしまいます。
その結果フードが食べづらかったり、乳歯と永久歯の間に歯肉炎が起こりやすくなります。
「残存乳歯」がある場合には、不妊手術や去勢手術に抜きます。
膝蓋骨骨折・歯牙異常症候群とは?
「残存乳歯」がある場合には「膝蓋骨骨折・歯牙異常症候群(PADS」という病気に注意しなくてはなりません。
この病気の多くは残存乳歯やちゃんと歯が生えてこない1~3歳の雄猫に多く見られ、膝蓋骨(膝のお皿)が骨折してしまうというものです。
歯と膝とは何の関係も無いように思われますよね?でも何かの関連性があるそうなんです。
「膝蓋骨骨折・歯牙異常症候群(PADS)」が起こる原因は不明なばかりか、高齢になると膝以外の場所にも骨折が起こってしまうこともあるそうです。
症状は無症状から重度までと様々ですが、重度の場合には手術を行うこともあります。
とりあえず、残存乳歯があった場合には注意をすることが必要です。
歯磨きをする必要あるの?
ヒトでは口の中の衛生状態を保つには、歯磨きは絶対に必要です。
では猫ちゃんには、歯磨きは必要なのでしょうか?
歯磨きは必要なのだが・・
今現在の猫ちゃんでは、口の中を綺麗に保つには歯磨きは必要とは言われます!
それは野生の時の食性とは、大きく違ってしまっているからです。
今の猫ちゃんの食べるフードの多くは、噛むことも必要の無いくらい小さな粒です。
そのため「食べカスが口の中に残りやすく、しかも歯の汚れも落ちにくい」のが現状です。
なるほど噛むことが少なければ歯石は溜まり続け、そして歯周病にも罹ってしまうでしょう。
そしてその結果、腎臓疾患や心臓疾患などまでが引き起こされてしまうのです。
だから「食べカスや歯垢」を落とすためには、歯磨きが絶対的に必要なのですが・・・
ヒトじゃ1日3回、1か所を20回以上も歯並びに合わせて歯を磨くって言うでしょ?
猫はヒトに比べて、歯垢が歯石になるのが何倍も速いって言うじゃん?
そしたら、ヒトよりも歯磨きが必要ってこと???
そんなの無理!無理!無理じゃ〜ん!
実際には、ヒトのようには歯磨きは出来ません!
しかも猫ちゃんの場合、歯石が付く速さはヒトの5倍なんだそうです!
と言うことは、計算上じゃヒトの5倍歯磨きをしないとなんですよ!
歯磨きは子猫のころ習慣付ければ大丈夫と言う方もいます。
しかし猫ちゃんの場合はワンちゃんと違い、口の中の健康状態を維持するのはとっても難しいんです。
それと猫ちゃん特有の病気である「口内炎」があります。
もちろん歯磨きの重要性は理解してますが、口内炎を引き起こしたら歯磨きは絶対的に不可能です。
野生の動物には歯周病がない
そこで思い出して下さい!
野生動物には歯周病はありません。
また火が使えなかった原始時代のヒトにも、虫歯も歯周病も無かったそうなんです。
それは野生動物も原始時代のヒトも、同じような食性出会ったからと言えます。
それって、わかるよ!
野生動物も原始時代のヒトも、木の実を噛み砕いたり肉を食いちぎって食べてたんだ!
だからだよね?
しかしヒトは火が使えるようになり、調理をするようになったんです。
火入れした食材は柔らかくなり噛むことも減り、歯に食べかすがくっついてしまうようにもなったのです。
これはヒトに飼われている猫ちゃんも同じで、噛むことの減るような食生活から起こってしまうものなんです。
つまり良く噛んで食べれば、歯垢は付きづらく歯石も出来ないと言うことなんです。
私ゃ、歯石も付いてないから歯はピカピカだよ!
超大粒のドライフードを良く噛んで食べてるし、水も良く飲むようにしてるもんね!
超大粒のドライフードと水、これって実に単純な事なんですけど実際には難しいと言われちゃいます。
それは子猫の時の飼い方です。
子猫は、母親に食べさせてもらったモノを安全な食べ物として認識します。
そのため子猫の時に缶詰を食べさせていると、缶詰が好きになってしまいます。
またドライフードを食べさせていると、缶詰を食べない猫ちゃんになってしまいます。
このように猫には食の固定と言う、厄介な食性があります。
そしてこれは、一般的には生後3ヶ月までの間に食べたものにより起こると言われています。
サザエさんで出てくるドラ猫さ、
魚をくわえて逃げていったってことは・・・魚の味を知ってるから盗んだってことなのかしら?
ちなみ下は7歳を超えた猫ちゃんの口の中ですが、食性を整えるだけでもこんなにも歯や歯周が綺麗に維持されているんです!
もちろん口の中の免疫力も、大きく関係してるとは思います!
もし口の中の免疫力を上げたいと思われる場合には、スタッフまでご相談ください!、
また腸内免疫力を高めるもの、病気予防に対する一つの方法です!
まとめ
頭を傾げて頷くようにしながら食べる姿を、見たことがありますか?
しかし今では、そのような姿を見ることは少なくなりました。
これはそのままでも飲み込めるような小粒のフードの普及により、噛むことが減ったからです。
そのような食べ方を小さい時からしていると、本来の「奥歯で噛む」ことを知らない、また口の中にトラブルのある猫ちゃんになってしまうんです!
やはり、その歯の作りにあった食性が大切とは思うのですが・・・