猫が咳をする・呼吸が苦しいのは危険?フィラリア症の症状・原因・治療・予防

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猫が咳をする・呼吸が苦しそう…それはフィラリア症かも?症状・原因・治療・予防を解説

息をするときに喉に何かが引っかかったような咳をする!
それって、もしかしたら「フィラリア」に感染しているかもしれません。

飼い主さん

せんせい
空気を吸うときに、何か思うように吸えないような気がする、
それに咳が出ちゃう時もあるし、どうしたのかしら?

Dr.Nyan

それって・・喘息?猫風邪?
ん?それともフィラリアに感染しちゃったのかな?
フィラリア症の予防薬ちゃんとしてた?

蚊から感染し発症する犬フィラリア症(犬糸状虫症)は、犬の病気!
また猫は家の中で暮らしてるし、屋外に出ないので蚊に刺されることはない!
そう思っている飼い主さんは、結構多いかと思います。

飼い主さん

フィラリア?
それってさ犬の病気じゃないんですか?
それに家の中に住んでるから、蚊に刺されることもないし。

Dr.Nyan

それは思い込み、大きな誤解ですよ。
家の中に住んでいても蚊に刺されるし、フィラリアに感染することもあります。

猫にフィラリアが感染しても、犬のようにハッキリとした症状が出ません。
そのため、あまり知られていない病気です。

ここでは『猫のフィラリア症』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。

ちなみにフィラリア症は発症例こそ少ないものの、フィラリアはヒトにも感染することがある寄生虫です!

目次

猫フィラリア症の症状

フィラリアが猫に感染し発症しても、他の病気の症状と似ていることも多いため見逃されてしまうことがある感染症です。
それだけでなく、感染していることさえもわからないこともあります。

そのため猫のフィラリア症は、犬よりも重篤な症状が出たり突然死を招くこともあります。
しかも猫フィラリア症は犬フィラリア症と同じように、しっかりと予防すれば確実に予防できる病気です。

犬と猫のフィラリア症の違い

犬フィラリアは宿主をイヌ科動物とする寄生虫で、猫は本来の宿主ではありません。
そのため宿主ではない猫に寄生しても成長が遅く、また育ちも悪いため大きくはなりません。
しかも感染しても猫に明らかな症状も現れることも少なく、検査でも見つかりづらい寄生虫です。

「原因がわからない、何となく元気が無く、食欲が落ち体重が少しずつ減っている」など、特定の症状が出るわけでもありません。

犬では循環障害を起こします。
しかし猫では心臓に寄生することが少なく、一見健康そうに見えていても、肺に大きなダメージを受けるなど呼吸器に症状が現れます。

しかも多くの猫では、体の変調に気が付いた時には重症化してしまっていることが普通にあります。
また一度感染してしまうと有効な治療方法も無いため、完治することはありません。

Dr.Nyan

それでは一緒に症状を確認していきましょう!

  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 体重が落ちる
  • 嘔吐
  • 咳が出る
  • 呼吸が苦しそう
  • 突然死

猫の突然死の原因は、フィラリア症と心筋症が多くを占めています。
しかもフィラリア症は、突然死の原因の三分の一にもなるとも言われています。

慢性呼吸器疾患

フィラリアの幼虫が肺の血管に到達すると、幼虫に対して異物反応(免疫反応)が起こってしまいます。
その結果、肺の血管や肺の組織に炎症が起きてしまいます。
これが咳が出たり呼吸が速くなったり、呼吸困難を伴う理由です。

肺の炎症が慢性化してしまうと、咳が出てくることがあります。
また元気が無くなり体重が減ってしまうなどの症状も出て、まるで喘息やアレルギー性気管支炎などに似ています。

しかも胸のレントゲン写真を撮ると、肺炎や喘息に似たような異常が見られることがあります。
このように、症状や検査から即フィラリア症と断定できるわけではありません。

犬糸状虫随伴呼吸器疾患

体内に入ったフィラリアは、ほとんどが成虫になる前に猫の体の中で死んでしまいます。

その死骸が原因となり強い免疫反応が起こると、肺に犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)と呼ばれる重度の炎症が引き起こされます。

また血管内で死んだ虫や血栓により、血管が詰まってしまうことがあります。

突然死

犬糸状虫随伴呼吸器疾患などからの肺の炎症が重篤であった場合、また死んだ虫の死骸が肺や心臓の血管を詰まらせてしまうことがあります。
その結果、突然死を起こすこともあります。

フィラリアに感染した猫の10~20%に突然死が認められます。
しかも猫の突然死の死因No1が、フィラリア感染症と心筋症です。

飼い主さん

フィラリアが血管が詰まると、心臓が血をちゃんと送り出せなくなってしまいますよね?
そしたら血液の流れが悪くなって、大変な状態になってしまう

猫フィラリア症の原因

飼い主さん

フィラリア症は、蚊から感染して起こる怖い病気なのね。

犬では、フィラリアに感染しても血液検査により確認することができます。
しかし猫では検査しても感染を確認することが難しいか、確認さえ出来ないことがほとんどです。
これが早期発見が難しいとされている理由です。

蚊に刺される

ヒトの血も吸う蚊であるヒトスジシマカやアカイエカ、トウゴウヤブカなどがフィラリアを媒介します。
蚊は気温が約14℃を超えると活動し始め、フィラリアを媒介させ始めます。

しかし犬の場合とは異なり、猫ではフィラリアが肺や心臓に到達する前に多くが死んでしまいます。

~Dr.Nyan ポイント~
猫の体の中のフィラリアの育ち方

蚊がフィラリアに感染した犬の血液を吸う・・
・蚊の体内に血液と一緒にフィラリアの子虫が入る
・フィラリアの子虫はミクロフィラリアとも言われ、0.3mmほどのとても小さな虫

蚊の体内に入ったミクロフィラリアは・・
・発育し感染力を持つ幼虫(感染子虫)へとなる
・感染子虫は、蚊が猫を刺すときにその猫の体内に入る

猫の体内に入ったフィラリアの子虫は、皮膚の下の組織や筋肉の中で成長する
・成長したフィラリアの幼虫は血管の中に入り、血管の中を移動する
・宿主の違いから、フィラリアは猫の体の中で死んでしまう・・

フィラリア症の主な治療法と費用

フィラリアに感染した猫の中には、生涯ハッキリした症状が出ないままであったり自然治癒するものもいます。
またこれ以上の感染しないように、フィラリア症の予防薬を使います。

Dr.Nyan

治療は、症状に応じて行う必要があるんだよ!

対処療法を行う

治療は、現在出ている症状に応じて対処治療を行う必要があります。

咳などの症状がある場合には、症状を和らげるための対症療法が治療の中心となります。
肺の障害が重度の場合には、呼吸を楽にしてあげるために酸素吸入が行われます。

発症した場合には完全に治すが難しく、投薬をやめると症状がぶり返すことが多いとされています。
そのため終生の治療が必要とも言われています。

猫フィラリア症の治療費

猫フィラリア症の治療は、その症状の程度によって大きな幅があります。
重度になると入院も必要となるため、それだけ治療費もかかってしまいます!

蚊に刺されないこと、予防に勝る治療は無いってことね。
なんでも病気は予防が基本ですね

猫フィラリア症の予防方法

猫のフィラリア症は感染しているかを調べることも難しく、しかも治療法も確立されていません。
そのため感染しないようにすること、予防することが重要です。

室内でも蚊に刺されてる

国内での調査によると、フィラリアの抗体を持っていた猫が「10頭に1頭」いたとされています。
またその4割は、室内で飼っていた猫であったとの報告もあります。

抗体を持っていたと言うことは、過去にフィラリアに感染したことがあると言うことです。
つまり「室内飼いの猫は感染はしない」と思って、安心してはいけません!

そのため室内飼いの猫も、猫専用のフィラリア症予防薬を投与することが勧められています。

背中に垂らすスポットオン剤による予防

スポットオン剤は、セラメクチンなどが成分の薬です。

猫のフィラリア予防に使用するスポットオンタイプの予防薬


液体の薬を、首の後ろの皮膚に滴下して使うタイプです。
内服するタイプの薬ではありませんので、食物アレルギーがあっても使えます。

猫の首の後ろに滴下して使用するフィラリア予防薬の使い方

~Dr.Nyan ポイント~
予防薬の効果を最大限発揮させるために知ってほしいこと

フィラリア症予防薬は、体内に入ったフィラリアの幼虫が悪さをする前に駆除する薬です。
蚊に刺されるのを予防する薬ではありません。

スポットオン剤は1ヶ月に1回の使用ですが、1ヶ月間効いているわけではありません。
そのためスポットオン剤の使用期間は、以下のようになります。

  • 投薬の開始;蚊が活動を始める時期から
  • 投薬の終了;気温が下がって蚊が見られなくなった1ヶ月後まで

投薬のタイミングを逃すと、薬の効果が十分に発揮できません!
予防を忘れずに行いましょうね!

予防する期間

猫にフィラリアが寄生する経路や期間、予防する時期は犬と同じです。

感染は気温と密接な関係があります。
1日の平均気温が14℃を超える日が増えると、フィラリアの寄生が起こり始めます。
1日の平均気温が14℃を下回る日が続くと、フィラリアは寄生しなくなります。
ただ日本は南北に長く地域により気温差があるため、予防の必要な時期は地域によって異なります。

必ず蚊の出ている期間+1ヶ月は、フィラリア症予防薬を投与します。
もし予防の間隔が空いてしまうと、猫の身体の中でフィラリアが成長してしまいます。

フィラリア症予防薬は、フィラリア予防の薬ではありません。
体内に入ったフィラリアを幼虫を殺す薬、つまり発症を予防する薬です。

蚊に刺されないようにする

フィラリア症予防薬を飲んでるから安心と思わず、蚊に刺されないようにしてあげます。

例えば蚊取り線香を使ったり扇風機で空気を動かす、また蚊が寄り付きづらいようなアロマを使うなどがあります。

蚊に刺されれば痒いし、蚊によるアレルギー反応を起こしてしまう場合もありますよね!
蚊に刺されないようにしてあげることも、予防の一つになります。

猫フィラリア症を起こしやすい猫種

  • 屋外に出る猫
  • 予防薬を使用していない猫
  • 予防薬を規定どおり飲んでない猫
屋外で蚊に刺されフィラリア感染リスクがある猫のイメージ

こんな症状があればすぐ受診

  • 咳が続く
  • 呼吸が苦しそう
  • 元気・食欲がない
  • 急にぐったりする

まとめ

猫のフィラリア症は思ったよりも多いと言われているのに、目立った症状を示すことが少なく飼い主さんも異常に気づきにくい病気です。
また感染しても検査で発見しづらく、しかも突然死してしまうこともある恐ろしい感染症です。
猫のフィラリア症は予防法が確立されているので、定期的な予防でフィラリア症から守ってあげましょうね。

猫フィラリア症の予防が重要であることを伝える猫のイメージ

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

獣医師 若山正之 プロフィール写真 小動物臨床 犬猫診療

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。