Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
猫風邪|くしゃみ・鼻水・目やにの原因と治療・予防と受診の目安
「クシュン!」と愛猫が小さなくしゃみをしたり、目がウルウルと涙目になって、人の風邪と似ていると思ったことはありませんか?
「人の風邪と同じで、暖かくして寝ていれば治るだろう」と見守っているなら、それはとても危険な油断です。
猫の風邪(猫上部気道感染症)は人間の風邪とは全く異なり、放置すると目やにで目が開かなくなったり、口内炎の激痛でご飯が食べられなくなったり、最悪の場合は肺炎を起こして命に関わることもあります。
しかも猫風邪は非常に感染力が強く、多頭飼いの場合はあっという間に家庭内パンデミックを引き起こす原因にもなります。さらに、一度かかると「一生体内にウイルスが住み着き、ストレスで再発する」という非常に厄介な特徴も……。
本記事では、愛猫を猫風邪の苦しみから守るために、絶対に見逃してはいけない初期症状、動物病院へ行くべき受診の目安、家庭での隔離・予防法までを、実際の症例をもとに解説します。
大切な家族の「命のサイン」を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
猫を飼っている飼い主さんは、一度は「猫風邪」という言葉を聞いたことがありますよね?
飼い主さん
先生!うちの子クシャミするんです。猫も風邪ひくのかしら?
Dr.Nyan
もしかしたら猫風邪かもしれないね。
感染しやすく、長引いたり重症化したりすることもある病気だから、早めに対処していこう。
感染すると大変な『猫風邪』の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。
猫風邪の症状
Dr.Nyan
猫風邪の一般的な三つの兆候は、鼻水・クシャミ・涙だよ!
では、どんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
猫風邪の特徴的な症状は、目の充血や涙、くしゃみです。です。!症状が進むと熱が出たり食欲も落ち、重症化すると肺炎を起こし、命に関わることもあります。
中には、一度感染すると、体内に病原体が潜伏し続けるものもあります。また混合感染すると治りづらい場合も多いのが、猫風邪です。
クシャミ・鼻水
まるでヒトの風邪に似て、クシャミや鼻水が出ます。
猫風邪の鼻水には、サラサラのもあるしドロっと粘っこいのもあります。サラサラ鼻水は遠くまで飛び、ドロっとした鼻水は鼻の下にベチャっとくっついてます。
鼻が詰まってしまうとニオイを感じられなくなるのか、食欲が落ちてしまいます。
眼がウルウル
感染の初期には、眼が涙で少し濡れた感じがするだけのこともあります。しかし時間と共に悪化すると、ウルウルとした眼の周りがグチャグチャしてきます。

猫風邪の中期症状で眼はウルウル、鼻も詰まった典型的な症状です。
他にも
- 白目の部分が充血して腫れた感じになる(結膜炎)
- 眼ヤニが出て眼の下が汚れる
- 痛みからか眼を細める
- 眼をショボショボさせる
などさまざまな症状がみられます。
悪化するとドロッとした黄色の膿っぽい眼ヤニが乾燥し、眼の周りにカピカピになっています。その不快感から眼を気にして前足で擦り、前足に眼ヤニが付いて汚れていることも。
さらに眼ヤニが多くなるとマブタがくっつき、眼が開けなくなってしまうこともあります。特に子猫は、そのような事例が多くみられます。
発熱と脱水
猫風邪にかかると熱が出てしまうことも多く、食欲が落ちてしまいます。鼻が詰まって食べられない上に、発熱が加わることで、さらに体調が悪化します。また水を飲むことも減り、脱水傾向になります。
特に子猫は免疫力が弱いため重症化しやすいので、注意が必要です。
Dr.Nyan
平熱を知っておくと熱が出たときにわかりやすいですよ!
猫の平熱はヒトよりも高く、平均38度台くらいです。ただ平熱は個体差だけでなく測定方法によっても違うため、事前に健康な時に平熱を知っておくことがとても大切です。

体温は太ももの付け根のドクドクと脈を打っている場所で測ります。
健康であれば、安静にしている時の体温は39度以上になることはありません。
口内炎や口の中の潰瘍
猫風邪でも特定のウイルス(猫カリシウイルス)に感染した場合には、口内炎や口の中に潰瘍ができます。そのため、食べるときに口を痛がるような仕草が見られます。
猫風邪の原因
続いては猫風邪の原因について紹介していきます。
Dr.Nyan
原因はウイルスなどの接触・飛沫感染です!
猫風邪の主な原因はヘルペスウイルスやカリシウイルスなどのウイルスや、クラミジアなどの細菌の感染です。
猫風邪の原因ウイルスの症状の違い
猫ヘルペスウイルス
目の症状(重い結膜炎、角膜炎)やひどいくしゃみが中心。生涯キャリアになり再発しやすい。
猫カリシウイルス
口の中の症状(口内炎・舌の潰瘍)が特徴。よだれや口臭が強くなり、痛くてご飯が食べられなくなる。
猫クラミジア・マイコプラズマ
粘り気のある目やにや鼻水、片目から両目へ広がる眼症状が特徴(人にも感染する可能性あり)
感染した猫との接触や、ウイルスなどの飛沫感染によります。多頭飼育の場合、感染している猫は他の猫から隔離しておく必要があります。

眼の周りは汚れ体調不良から食欲も無く、やせて顔つきが変わり、ぐったりした印象になり、キツネのような顔になってしまいます。
ヘルペスウイルスに感染すると、体内に一生ウイルスを持ち続けてしまいます。
そのため「一生治らないの?」と不安になりますが、ウイルスは神経の奥に隠れているだけ(潜伏感染)です。引っ越し、新しいペットを迎える、寒さなどの『ストレスや免疫力の低下』が引き金となって再発しやすいため、日頃からストレスのない快適な環境を作ってあげることが一番の予防になります。
猫クラミジアは人にも感染し、結膜炎などを引き起こすことがあります。
飼い主さん自身の健康を守るためにも、猫の目やにや鼻水を拭いた後は、必ず念入りに手洗いや消毒を行ってください。
猫風邪の主な治療法
治療の基本は、症状に合わせた治療(対症療法)を行います。
猫風邪の治療は、人間のように「風邪薬を飲んで寝る」のとは異なり、原因(ウイルスや細菌)を抑えつつ、今出ている辛い症状(鼻水、目やに、口内炎など)を和らげる「原因療法」と「対症療法」の組み合わせが基本です。
猫が自分でご飯を食べられる状態(軽症)か、食欲が落ちて衰弱している(重症)かによって、治療のステップが変わります。
軽症の場合:お家での投薬治療がメイン
猫がまだご飯を食べられており、くしゃみや涙が出始めた初期段階の治療法です。
抗生物質(抗菌薬)の投与
猫風邪の引き金がウイルス(ヘルペスなど)であっても、免疫が落ちたところに細菌(クラミジアやマイコプラズマなど)が二次感染して症状が悪化することがほとんどです。
抗生物質は二次感染(ウイルスで弱った粘膜に細菌が感染すること)や、猫クラミジア・マイコプラズマなどの細菌性の猫風邪に対して使用します。
抗ウイルス薬・インターフェロン
ウイルスの増殖を抑えるため、インターフェロンの注射や目薬、あるいはサプリメント(L-リジンなど)を使用します。
インターフェロンは体内のウイルスを完全に死滅させる薬ではなく、症状の重症化を防ぎ回復を早めるためのサポートとして使用するものです。
点眼薬・点鼻薬
目やにや結膜炎がひどい場合は抗生物質やインターフェロン入りの目薬を、鼻詰まりがひどい場合は点鼻薬を使って、局所的な炎症を抑えます。
家での大切なサポート
目の周りを綺麗にする
乾いたティッシュでこすると皮膚を傷つけるため、ぬるま湯で湿らせたコットンやガーゼで「優しくふやかしながら拭き取る」こと。
フードを温める
猫は「匂い」でご飯を認識しているため、鼻が詰まると目の前に大好物があっても食べ物だと気づきません。

飼い主
猫ちゃんって、「匂い」でご飯を判断してるんですね!
Dr.Nyan
そうなんです。鼻が詰まるだけで、急に食欲が落ちてしまうことも珍しくないんですよ。
家でご飯をあげる際は、ウェットフードを人肌程度(38度前後)に少し温めると、ニオイが立ちやすくなり、鼻が詰まった猫ちゃんの食欲を刺激するのにとても効果的です。熱すぎると火傷をしてしまうので注意してください。
保温と保湿
室温は23〜25℃、湿度は50〜60%を意識する。特に乾燥は喉や鼻の粘膜を痛めるため、加湿器の併用が有効です。
多頭飼育の場合の隔離の重要性
猫風邪は感染力が非常に強いため、同居猫がいる場合は感染のリスクが高いため注意が必要です。
風邪の症状が出ている猫は、完全に別の部屋に隔離する。
食器やトイレは共有せず、分けて使用し、熱湯や塩素系消毒剤で消毒する。
飼い主が触る順番は「健康な猫 ➔ 風邪の猫」とし、触った後は必ず手洗い消毒を行う。
2. 重症の場合:病院での処置や通院・入院治療
鼻が完全に詰まって匂いが分からなくなり、口内炎の激痛も重なって「水もご飯も一切受け付けない」という状態の治療法です。
猫は2~3日ご飯を食べないと肝臓に大きな負担がかかる(脂肪肝・肝リピドーシス)ため、積極的な治療が必要になります。
【重症時の治療ステップ】
1. 脱水の補正(皮下輸液・静脈点滴)
脱水を起こすと一気に衰弱するため、水分や電解質、ビタミンなどを補給する点滴を最初に行います。
これだけでも体が楽になり、少し元気が戻ることがあります。
2. ネブライザー治療(吸入療法)
鼻詰まり・咳の緩和を行います。
薬剤を細かい霧状にして吸い込ませる機械(ネブライザー)を使い、鼻の奥や気管に直接インターフェロンや抗生物質を届けます。
固まった鼻水をふやけさせて排出を促し、呼吸を楽にします。
3.強制給餌または栄養カテーテル
水分や栄養の補給を行います。
どうしても自力で食べられない場合、高栄養の流動食をシリンジ(針のない注射器)で少しずつ口に入れたり、状態によっては鼻や首から胃へチューブ(カテーテル)を通して確実に栄養を補給します。
PCR検査で原因を特定
猫風邪の原因を正確に知りたい場合や、治療を行っても書状の改善が悪い場合にはPCR検査を行うこともあります。
Dr.Nyan
猫風邪の原因を知るのには、PCR検査をすると良いんだよ!
猫風邪の原因となるウイルスや細菌は多数あるため、原因によって治療方法は少し異なります。そのため『PCR検査』を行い、ある程度原因を特定してしまう方が治りは早くなります。
検査は、結膜と喉の奥から綿棒で採取した検体を検査機関に送り行います。その結果により、各症状に対処していきます。

ウイルス感染にはL-リジンやインターフェロン、ウイルス治療薬を、また二次感染予防のため抗生物質などを使用します。

細菌感染には、抗生物質などを使用します。また結膜炎などを起こしている場合には、目薬を使う場合もあります。
また、症状を悪化させないことも大切です。

Dr.Nyan
原因が何にしろ治療の基本は、症状を悪化させないようにすることです。以下のケアをぜひ意識してください。
- 体を冷やさないよう保温する
- 眼や鼻周りを綺麗にする
- 吸入器を使い薬を霧状にして吸わせる処置を行う
- フードを温めニオイがたつようにして食べさせる
- 水を飲ませる工夫をして脱水を防ぐ
Dr.Nyan
どうしても食べない飲まない場合には『強制給餌と点滴』を行います!
猫風邪に関わる治療費
参考治療費を表にまとめました。
治療は重症でなければ投薬がメインとなります。脱水時は点滴をする場合もあります。当院ではストレスを考え、基本的には入院を行わずに通院で治療を行うようにしています。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| PCR検査 | 約3万円/回 |
| 投薬 | 5,000~10,000円/1週間 |
| 吸入処置 | 3,000円/回 |
| 点滴 | 4,000~8000円/回 |
実際の費用は症状の重さや治療内容によって異なるため、詳しくは診察時にご説明します。
飼い主さん
猫風邪にはならないようにしたいです!
Dr.Nyan
定期的なワクチン接種でも予防することができます。
混合ワクチンを打つ
猫風邪の予防として、混合ワクチンを行います。しかしワクチンを接種していても、感染を完全には防ぐことができません。ワクチンは感染しても、重症化しにくくさせるものです。
ちなみに猫風邪の原因のすべてが、ワクチンに含まれているわけではありません。
生活環境と栄養状態を整える
猫風邪は気温が低い時期や、寒暖の差が激しい季節の変わり目に多く見られます。生活環境を整え栄養状態をよくし、ストレスの少ない生活を心がけてあげます。
ウイルス性の猫風邪はヒトには感染しませんが、ヒトを介して他の猫への感染の可能性があります。そのため飼い主さん自身の消毒も、感染の予防には重要です!
免疫力の低下を防ぐ
猫風邪の予防には免疫力の低下を防ぐことも重要です。
寒暖の差が激しい季節や、寒さが厳しい季節は免疫力が低下してしまいます。また環境の変化やストレス、また歯周病などの基礎疾患や老化も免疫力を下げてしまいます。
免疫力を下げないようにして、快適に過ごせるようにしてあげてください!
猫風邪になりやすい猫種
Dr.Nyan
猫種には関係なく感染するので要注意!
上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。
- 生後2~3ヶ月の子猫
- ワクチン未接種
- 免疫力が弱まっている場合
- 持続的なストレスがある場合
猫風邪でよくある質問
猫風邪は人にうつりますか?
ヒトには感染しませんが、ヒトの手や衣類を介して他の猫へうつることがあります。
猫風邪は自然に治りますか?
軽症であれば自然に回復することもありますが、悪化すると肺炎など重篤化することがあるため注意が必要です。
猫風邪はどれくらいで治りますか?
軽症であれば数日から1週間程度ですが、重症化や慢性化すると長引くことがあります。
猫がくしゃみをしていたらすぐ病院に行くべきですか?
くしゃみや鼻水、目やにが続く場合や食欲低下がある場合は早めの受診が重要です。
猫風邪はワクチンで防げますか?
完全に防ぐことはできませんが、重症化を防ぐ効果があります。
猫風邪は他の猫にうつりますか?
感染力が強く、多頭飼育では簡単に広がるため隔離が必要です。
まとめ
猫風邪は感染しやすく、また治療してもなかなか治らず長引くこともある病気です。また子猫に感染してしまうと、場合によっては重症化すると命に関わることもある病気です。
多頭飼育の場合には、蔓延してしまうことあるためワクチン接種と風邪をひきにくい体質と環境作りが大切です。もちろん、このことは多頭飼育じゃなくても同じですよ。
猫の最高長寿は38年、長生きさせてあげましょうね!
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。