Dr.Nyanのすこやかコラム
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犬が足をつかない?触ると怒る…それ骨折かも|原因・症状・受診の目安
抱っこから降ろした瞬間「キャン!」と鳴いて前足を上げた…実際に当院に来院された症例です。
触ろうとすると怒る、足を床につけない…。
このような症状が見られた場合、「骨折」の可能性があります。
骨折は交通事故のような大きな外傷だけでなく、日常の何気ない動作でも起こる非常に身近なトラブルです。
本記事では、実際の症例をもとに、犬の骨折の症状・原因・治療・受診の目安をわかりやすく解説します。
飼い主
ベッドから飛び降りたあと、前足をつかなくなりました。触ろうとすると怒るんです。
Dr.Nyan
足をつかない、触ると怒る、急に動かない場合は骨折の可能性があります。まずはレントゲンで確認しましょう。

Dr.Nyan
検査の結果、前足の骨が完全に折れていました。これは骨折です。
腕の骨が完全に折れています。「骨折」とは、何らかの衝撃で骨が折れてしまったりヒビが入った状態のことをいいます。
「骨折」と聞くと交通事故など、大きな衝撃が骨に加わり起きてしまうようなイメージがあります。しかし実際にはソファやベッドから飛び降りて、また走っていてクッションにつまづき、骨折した犬もいます。

飼い主
骨折していたら、必ず鳴いたり大きく痛がったりしますか?
Dr.Nyan
いいえ。犬は痛みを我慢することがあります。足を上げる、触ると怒る、動かないなどの小さな変化が大切なサインです。
ここでは『犬の骨折』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
骨折はどんな症状?
飼い主
骨折しているかどうか、自宅で見分ける方法はありますか?
Dr.Nyan
見た目だけでは判断は難しいです。足をつかない場合は、骨折の可能性も考えて受診が必要です。
骨折は、1歳未満の仔犬に多く見られます。
骨折の症状は場所により様々ですが、多くは以下のような症状が見られます。
- 触ると痛がったり抱こうとすると怒る
- 折れている場所が腫れている、熱っぽい
- 足を上げている
- 折れている場所をしきりに舐めている
- 歩くとふらつく
- 隅でじっとうずくまって動かない
- オシッコ・ウンチができない
犬は骨折して痛くても、じっと耐えていることがあります。そのため歩き方や行動などから、異変に気づいてあげることが大切です。

前足が骨折しています。
~Dr.Nyan ポイント~
骨折の約6割は前足に発生します。
特に小型犬では「前足の橈骨・尺骨骨折」が非常に多く、ソファからのジャンプが典型的な原因です。
その理由としては、
- 日常生活で体重の半分以上が前足にかかっている
- 走ると前足から着地する
- 前足の骨は後ろ足に比べて細い
このように、前足に大きな力がかかりやすいため、骨折が多いとされています。

飼い主
捻挫や脱臼と見分ける方法はありますか?
Dr.Nyan
見た目だけでは区別は難しいです。足をつかない場合は、骨折の可能性も考えて検査が必要です。
完全骨折と不完全骨折
「完全骨折」は、骨がきれいにポッキリ折れてしまい連続性が無くなった状態のものです。
「不完全骨折」は、骨がポッキリとはいかず部分的に繋がっている状態のものです。
不完全骨折には、骨にヒビが入ったり状態のものなどがあります。また骨は折れているが、骨膜は無傷で見た目には骨折がわからない状態のものもあります。
骨とその周りの組織には、神経と血管が通っています。そのため骨折すると、とても痛くその部位が腫れてきます。
不完全骨折はレントゲン検査では、なかなかわかりません。痛がっているのに骨折とも言えず、また骨折してないとも言えないこともあります。
臨床では「見た目で判断できない不完全骨折」も多く、痛みがある場合は画像検査が重要です。
複雑骨折と単純骨折
「複雑骨折」とは、折れた骨が皮膚の外に出ている状態の骨折を言います。骨が一箇所しか折れてなくても、複雑なのです。今は「開放骨折」って言うことが多くなりました。
「単純骨折」とは、骨折をした際に皮膚から骨が出ていない状態の骨折です。たとえ骨がバラバラに折れていても、単純なのです!

骨が数カ所で折れちゃっていますが、単純骨折です!
ちなみに骨が粉々に砕けた場合は「粉砕骨折」と言います。
骨折した場合には、場合によってはCT検査やMRI検査を行う必要があります。MRI検査は骨折部位の炎症反応までわかる場合もあるので、骨折周囲の詳しい状態までも知ることもできます。
飼い主
家の中で少し飛び降りただけでも骨折するんですか?
Dr.Nyan
特に小型犬では、ソファやベッドからのジャンプだけでも前足を骨折することがあります。
骨折の原因は?
抱っこ中に誤って落とす
愛犬を抱っこした時に誤って落下し、骨折するケースがあります。
そのため、抱っこをする時に落下させないように細心の注意をはらいます。
また、子供が不用意に抱き上げ、落としてしまうこともあります。
実際に最も多い事故の一つです。
ソファーなど高いところから飛び降りる
ソファーやベッドから飛び降りた時に、前足を骨折することが良くあります。
犬は高いところから降りる際には、必ず前足から降ります。その際に、全体重を前足で受け止めます。
体重がかかった手首から肘の骨(橈骨と尺骨)に、大きな負担がかかり骨折してしまいます。前足に骨折が多いのは、このような理由からです。
当院でも非常に多い骨折原因です。
フローリングで滑る
犬にとってフローリングは滑りやすい床材です。
室内で遊んでいる最中に、フローリングの床で滑って骨折するケースがあります。特に小型犬で多くみられる原因です。
特にトイプードル・ポメラニアンで多く見られます。
飼い主が誤って踏む
足元に居ることに気が付かず、踏んでしまうことがあります。
特に1歳未満の仔犬では、飼い主さんの足元に来やすいので注意が必要です。また飼い主さんが開け閉めしたドアでの事故も多く見られます。
仔犬の来院理由として頻繁です。
屋外でのトラブル
屋外では散歩中の事故や、公園やドッグランなどで遊んでいる時に骨折することがあります。また、他の犬と戯れあったりケンカなどでも骨折することもあります。
飼い主
家で添え木をした方がいいですか?
Dr.Nyan
基本は動かさないことが最優先です。無理に固定せず、可能であれば軽く保護して病院へ来てください。
~Dr.Nyan ポイント~
突然の骨折に備えて!骨折の応急処置方法
骨折した時は患部を動かさないようにし、応急処置を行います。
例えば足なら骨折した場所にハンカチやガーゼ、タオルを巻きます。
その上から添え木をして固定します。
例えば薄い雑誌や厚い段ボールを巻き、テープや包帯などを使用し固定します。
痛みから犬が興奮状態になっていることもあります。その場合は患部を確認しようとすると噛まれてしまうこともあるので注意してください!
このような場合には無理に応急処置はせず、動物病院に連れていきましょう。
骨折の治療法と費用
治療前に骨折の場所や状態を確認するためレントゲン検査を行います。
また、骨折の疑いがある場合は、簡単に考えず全身のチェックを行います。骨折以外に出血や内出血、他の部位に何か起きていないかの確認をするためです。
骨折の治療には、以下の四つの方法があります。
- 外副子固定法(ギブスなどで固定する方法)
- 髄内ピン法
- プレート固定法
- 創外固定法
骨折の多くは外科手術が選択されますが、年齢・骨折の種類によって最適な治療法は異なります。
飼い主
骨折は必ず手術になりますか?
Dr.Nyan
すべてが手術ではありません。骨折の場所、ズレの程度、年齢によって、ギプス固定や手術を選びます。
外副子固定法
一般的にいう「ギプス」固定です。患部をアルミ製などのギプスを巻き、固定します。
この治療は生後1才未満の若い犬で、骨折やズレが無い骨折で行われます。手術を行うわけでは無いため、犬の負担が少ないと言えます。
ただ治るまでは安静が必要となります。一般的には骨折は早く治ります。しかし動き回ってしまった場合には、骨折した場所がくっつかないこともあります。
髄内ピン法
全身麻酔で手術する治療方法です。骨の骨髄という部分にピンを通し、骨折部位を安定させます。

折れた骨をピンに通しています。
骨折した部分を開いてピンを通す方法と、骨折した部分を開かないでピンを通す方法があります。この方法は固定する力が弱いため、ギプスもかけます。
仔犬や高齢犬では、手術を行えない場合もあります。
プレート固定法
全身麻酔で骨折した場所を開き、手術する方法です。プレート(金属の板)をネジで留めて、骨折した骨を固定します。

骨折した場所にプレートで手術しています。
骨を骨折前の形に戻すことができ、手術した翌日から歩くこともできます。とても良い治療法なのですが、体への負担は大きくなってしまいます。
プレートを取り付けた部分の治りが進みにくいのが欠点です。またプレートが当たっている部分の骨が、細く痩せていくこともあります。そのため、また骨折してしまうこともあります。
創外固定法
全身麻酔をし、皮膚の上からネジ付きの金属製ピンで固定する手術方法です。
この方法は、骨折した場所を大きく切り開くことはありません。大きく皮膚や筋肉を開かないため、骨折が早く、しかも強く治ります。
ただ皮膚から金属のピンが出ているため、見た目が痛々しそうです。また手術後の管理ができない場合には、不向きな治療方法です。
~Dr.Nyan ポイント~
もし骨折を治さずにいたらどうなるの?
骨折を治さずにいると、骨が曲がってくっついてしまうことがあります。また折れた部分が仮関節(関節のように曲がるような状態)になってしまうこともあります。このようになってから治そうとしても、とても大変になってしまいます。
骨折の疑いがある場合は早めに動物病院へ受診しましょう。
骨折の治療費は?
費用は骨折の状態や治療法、また治療期間によって違います。複雑や複数箇所折れている、骨のツキが悪いとかなると費用は嵩んでしまいます。
また手術後も治り方のチェックのため、定期的なレントゲン検査などを行う必要があります。
特にプレート固定などの手術では費用が高額になることがあります。
骨折の状態によっては、整形外科専門の動物病院を紹介しております。

飼い主
骨折を防ぐには、何に気をつければいいですか?
Dr.Nyan
高い場所から飛び降りさせないこと、抱っこ中に落とさないこと、床で滑らない環境を作ることが大切です。
骨折の予防方法
抱っこ時は落とさないように注意する
「抱っこをしていたら、落としてしまった。」
こんな単純な事故は、本当に多いです!そのため抱っこをする時には、腕と体で優しく包み込むようにしましょう。また抱き上げても暴れないように、抱っこに慣れさせておく必要があります。
子供が抱っこ中に落としてしまう事故も多いです。不用意に犬を抱き上げさせない、など注意することが大切です。
散歩時は事故に注意する
適度な散歩は骨を強くし筋肉を鍛えてくれますが、事故に合うリスクもあります。散歩での事故を防ぐには、リードは短く持つことです。
またハーネスを使用し、首輪が抜けてしまうことを防ぎます。ハーネスは犬の動きをコントロールすることも出来ますので、利用することもお勧めします。
躾(しつけ)を行う
仔犬の時から、室内の危険な場所には近づかないように、躾ておくことが大切です。
例えば台所です。
仕事中に足元に来られ足をとられて飼い主さんが怪我をしたり、犬を踏んでしまいます。
Dr.Nyan
飼い主さんが転倒し、犬と一緒にケガをしてしまったケースもあります。
具体的な躾の例としては
- ソファーや椅子、ベッドなどの上などに登らせない
- 室内を走り回らない
- ピョンピョン飛び跳ねさせない
- 車からの飛び降りはしない
- 玄関に降りない
です。
「待て!」を練習をすることで、興奮したときに落ち着かせることができます。また何か行動をするのも、止めることができます。『待て!』は生活をしていく上で、とても便利な躾です。
Dr.Nyan
躾は仔犬のうちから行っておくと、老犬になっても骨折などの事故を減らせます。
適切なフードを与え運動を行う
一般的には各年齢ステージにあった総合栄養食を食べさせていれば、問題は起こりません。例えば仔犬であれば仔犬用のフード、成犬であれば成犬用の総合栄養食を食べさせます。
また総合栄養食を食べさせていても、オヤツの与え過ぎは栄養のバランスを崩してしまいます。そのためオヤツを与える場合には、注意しましょう!
また、丈夫な骨にするためには、筋肉をつけるため適度な運動を心がけます。足の骨は、骨に力が加わることにより強くなっています。そのため強い骨を作るのは、走ることも重要な要素になってきます!
生活環境の見直し
骨折は家の中でも起こります。そのため家の中での事故を防ぐ対策が大切です。
ソファーやベッドなど上り下りのため、スロープや階段を置いたりソファーやベッドの下にクッションやマットを敷く対策が一般的です。
しかし実際にはスロープや階段を思いっきり駆け上がたり踏み外して、骨折した犬がいます。また床に置いたクッションにつまずいて、骨折や膝を痛めた犬もいます!

足首を骨折してしまいました。
Dr.Nyan
いくら注意しても、不慮の事故が起こってしまうことがあります。
少しでも事故を減らすためには躾が大切です。
ソファーはヒトが座るモノ、ベットはヒトが寝る場所とし上がらせないことが大切です。また床で滑らないように足裏の毛を短く切っておいたり、カーペットなどを敷くなどの対策も行いましょう。
Dr.Nyan
ドアを開けた時に、ドアの向こうにいた犬が飛ばされて骨折することがあります。
ドアの開閉にも、注意が大切です。

骨盤が骨折してしまいました。(小さな写真は正常な骨盤です)
骨折を起こしやすい犬種
- 骨が細い小型犬
- イタリアン・グレーハウンド
- ポメラニアン
- トイ・プードル
- パピヨン
- マルチーズ
- ミニチュア・ピンシャー
犬の骨折でよくある質問
犬が足をつかない・触ると怒るのは骨折ですか?
足をつかない・触ると怒る・動かないなどの症状は骨折の可能性があります。捻挫や脱臼のこともありますが、見た目では判断できないため早めの受診が必要です。
骨折は自然に治りますか?
軽度の不完全骨折であれば安静で治ることもありますが、多くの場合は適切な固定や手術が必要です。自己判断で様子を見るのは危険です。
骨折した時に家でできる応急処置は?
患部を動かさないようにすることが最も重要です。無理に固定せず、安静にして速やかに動物病院へ連れて行きましょう。
犬の骨折はどのくらいで治りますか?
一般的には4~8週間程度で骨はくっつきますが、年齢や骨折の種類、治療方法によって異なります。
骨折の治療は必ず手術ですか?
すべてが手術ではありません。ズレの少ない骨折や若齢犬ではギプス固定で治療できることもありますが、多くは手術が選択されます。
骨折の治療費はどのくらいかかりますか?
骨折の状態や治療方法によって大きく異なります。特にプレート固定などの手術では高額になることがあります。
骨折を放置するとどうなりますか?
骨が曲がってくっついたり、関節のように動く「偽関節」になることがあります。後からの治療は難しくなるため早期治療が重要です。
犬はどんな時に骨折しやすいですか?
抱っこ中の落下、ソファやベッドからのジャンプ、フローリングでの滑り、踏んでしまう事故など日常生活で多く発生します。
骨折しやすい犬種はありますか?
骨が細い小型犬(トイプードル、ポメラニアン、イタリアングレーハウンドなど)は骨折しやすい傾向があります。
骨折と脱臼の見分け方はありますか?
見た目や症状だけでの判断は難しいため、レントゲン検査が必要です。自己判断せず受診してください。
骨折を予防する方法はありますか?
高い場所から飛び降りさせない、フローリング対策をする、抱っこ時の落下防止、室内環境の見直しなどが有効です。
受診の目安は?
足をつかない・痛がる・腫れている・動かないなどの症状があれば、できるだけ早く動物病院を受診してください。
骨折はすぐ病院に行くべきですか?
足をつかない、強い痛みがある場合は緊急性があります。早めの受診が重要です。
まとめ
骨折は「突然」ではなく、日常の中で起きています。
特にソファからのジャンプや抱っこ中の落下は非常に多い原因です。
足をつかない」「触ると怒る」といった症状があれば、迷わず受診してください。
また骨折までには至らず、膝のお皿を脱臼(膝蓋骨脱臼)してしまうこともあります。まず周りに危険がないか、見直しが大切です。
健康で元気な毎日を過ごすため、日常の環境管理と適切な躾が、骨折予防につながります。気になる症状があれば、早めにご相談ください。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。