猫の慢性腎臓病|水をよく飲む・おしっこが多い原因と治療

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猫の慢性腎臓病|水をよく飲む・おしっこが多い原因と治療

猫が水を飲みすぎる危険サインと慢性腎臓病の可能性を示すアイキャッチ画像

本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の内分泌・代謝疾患編」の一部です。実際の診療症例をもとに、水をよく飲む・おしっこが多い原因と対応についてわかりやすく解説しています。

「最近やたら水を飲むようになった」
「トイレの回数が増えた」
「痩せてきたけど食欲はある」

こうした変化を「年のせいだろう」と見過ごしていませんか?
それ、慢性腎臓病のサインかもしれません。

目次

【症例】こんな猫が来院しました

飼い主

13歳のオス猫です。最近水をよく飲んで、トイレも頻繁に。体重も少し落ちてきた気がして心配で来ました。

Dr.Nyan

血液検査でBUNとクレアチニンが上昇しており、慢性腎臓病と診断しました。早めに来てくれて良かったです。

猫 慢性腎臓病 症例 水をよく飲む 佐倉市 若山動物病院
実際に来院した慢性腎臓病の猫。「水をよく飲む・体重減少」が受診のきっかけになりました。

食事療法と点滴治療を開始し、定期的な通院で状態を管理。この猫は診断から2年以上にわたって安定した生活を続けることができました。

慢性腎臓病とは?

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が数か月〜数年かけて徐々に低下していく病気です。腎臓は一度ダメージを受けると再生しないため、早期発見・早期対応が命を守る鍵になります。

猫の慢性腎臓病は非常に一般的な病気で、7歳以上の猫の約30〜40%、15歳以上では約80%が罹患しているともいわれています。

Dr.Nyan

腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれます。症状が出たときには既にかなり機能が失われているケースが多く、定期的な血液検査が早期発見の最善策です。

慢性腎臓病の症状

初期〜中期に現れやすい症状

  • 多飲多尿(水をよく飲む・おしっこが多い・薄い)
  • 体重減少(食欲はあるのに痩せる)
  • 毛並みの悪化・毛がパサつく
  • 元気・活気の低下

進行すると現れる症状

  • 食欲不振・嘔吐(尿毒症によるもの)
  • 口臭(アンモニア臭)
  • 口内炎・舌の潰瘍
  • 貧血(歯茎・舌が白っぽくなる)
  • 脱水・ぐったりとした状態
  • けいれん・意識障害(重症)

リスク先生

食欲不振・嘔吐・口臭・貧血が出ている場合は末期に近い状態です。一刻も早く受診してください。

脱水の危険

慢性腎臓病では腎臓が尿を濃縮する力が落ちるため、多量の水分が尿として失われます。食欲が落ちると水分摂取も減り、急速に脱水が進みます。脱水は腎臓のダメージをさらに悪化させる悪循環を起こします。

猫 慢性腎臓病 脱水 点滴治療 皮下輸液 佐倉市 若山動物病院
慢性腎臓病による脱水が確認された猫への皮下輸液(点滴)の様子。在宅での皮下輸液指導も行っています。
猫 慢性腎臓病 点滴 輸液療法 在宅ケア 佐倉市 若山動物病院
自宅での皮下輸液の様子。慣れると自宅で実施できるようになり、通院の負担を減らすことができます。

慢性腎臓病の原因

明確な原因が特定できないことが多いですが、以下が関与しているといわれています。

  • 加齢による腎組織の老化・線維化
  • 歯周病(口腔内細菌が腎臓にダメージを与える)
  • 高血圧・甲状腺機能亢進症との合併
  • 感染症・免疫異常
  • ドライフードのみの食生活(水分不足)

Dr.Nyan

甲状腺機能亢進症と慢性腎臓病は同時に起こることがあります。甲状腺の治療で腎臓病が表面化するケースもあるため、必ずセットで評価します。

診断方法

血液検査・尿検査・血圧測定・超音波検査を組み合わせて診断します。

検査項目確認できること
BUN・クレアチニン腎機能の程度(数値が高いほど重症)
SDMA早期発見に有効な腎臓マーカー
尿比重・尿タンパク腎臓の濃縮力・タンパク漏出の確認
血圧測定高血圧の合併確認
超音波検査腎臓の大きさ・形状の確認
猫 慢性腎臓病 血液検査 腎臓 BUN クレアチニン 超音波 佐倉市 若山動物病院
慢性腎臓病の診断に用いる血液検査・超音波検査の実際のデータ。定期的なモニタリングで進行を確認します。

Dr.Nyan

当院ではSDMA検査も実施しています。従来の検査よりも早期に腎臓の異常を発見できるため、シニア猫の健康診断への組み込みをお勧めしています。

ステージ分類(IRIS分類)

慢性腎臓病は国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の基準でステージ1〜4に分類されます。

ステージクレアチニン値状態
Stage 11.6mg/dL未満ほぼ無症状・早期
Stage 21.6〜2.8mg/dL軽度症状あり
Stage 32.8〜5.0mg/dL中等度・食欲不振など
Stage 45.0mg/dL以上重度・尿毒症

治療法

食事療法(腎臓サポート食)

リン・タンパク質を制限した腎臓病用処方食に切り替えることが治療の基本です。早期から食事管理を始めると、腎臓の負担が大幅に減り、進行を遅らせることができます。

Dr.Nyan

食事を変えるだけで進行を遅らせることができます。まずは腎臓サポート食への切り替えが最優先です。

輸液療法(点滴)

脱水の補正・老廃物の排出促進のために輸液を行います。通院での静脈点滴のほか、慣れてきたら自宅での皮下輸液を指導しています。毎日の皮下輸液で状態が安定するケースも多くあります。

薬物療法

  • リン吸着剤(血中リンを下げる)
  • 降圧薬(高血圧の合併がある場合)
  • エリスロポエチン製剤(貧血がある場合)
  • 吐き気止め・食欲増進薬(症状に応じて)
  • カリウム補充(低カリウム血症の場合)

定期的なモニタリング

Dr.Nyan

治療の目的は「治す」ことではなく「進行を遅らせて、できるだけ長く快適に過ごせるようにすること」です。定期検査で状態を確認しながら治療を調整します。

予防方法

  • 定期的な健康診断(7歳以上は年2回、血液検査・尿検査)
  • 新鮮な水をいつでも飲める環境を整える
  • ウェットフードや水分量の多い食事
  • 歯周病の早期治療(口腔ケア)
  • 肥満・高血圧の管理

Dr.Nyan

7歳を過ぎたら年2回の健診を受けてください。SDMAを含む腎臓検査で早期発見できます。

こんな症状があれば早めに受診を

症状受診の目安
水をよく飲む・おしっこが多い・薄い⚠️ 早めに受診
食欲があるのに体重が減る⚠️ 早めに受診
毛並みが悪くなった・元気がない早めに受診
食欲不振・嘔吐が続く⚠️ 急いで受診
口臭(アンモニア臭)・口内炎⚠️ 急いで受診
歯茎・舌が白っぽい(貧血)⚠️ 直ちに受診
7歳以上で最近健康診断を受けていない定期検査を推奨

飼い主

水をよく飲むようになったら要注意です。7歳以上の猫では腎臓病を疑って早めに受診してください。

Dr.Nyan

「なんか変かも」と感じたら、お気軽にご来院ください。佐倉市の若山動物病院でシニア猫の健診を随時受け付けています。

よくある質問

猫が水をよく飲むのは病気のサインですか?

必ずしも病気とは限りませんが、急に飲む量が増えた場合は慢性腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症などの可能性があります。早めの受診をお勧めします。

慢性腎臓病は治りますか?

完治はできません。ただし早期発見・適切な治療で進行を大幅に遅らせ、快適な生活を長く維持することができます。

どのくらい生きられますか?

ステージや個体差によりますが、早期発見・食事管理・定期通院でステージ1〜2の猫が数年にわたって安定した生活を続けられるケースは少なくありません。

自宅での点滴は難しいですか?

最初は不安に感じる方が多いですが、指導を受けると多くの飼い主様が自宅で実施できるようになります。通院の負担を減らし、猫のストレスも軽減できます。

腎臓病用の食事は必ず必要ですか?

はい。タンパク質・リンの制限は腎臓の負担を大きく減らします。市販の一般食との違いが大きいため、早期からの切り替えをお勧めします。

甲状腺機能亢進症との関係は?

甲状腺機能亢進症が腎臓病を隠してしまうことがあります。甲状腺の治療を始めると腎臓病が表面化するケースがあるため、必ず両方をセットで評価します。

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まとめ

「水をよく飲む・おしっこが多い・痩せてきた」——この3つが重なったとき、慢性腎臓病を疑ってください。

腎臓病は完治できませんが、早期発見と適切な管理で進行を大幅に遅らせることができます。7歳を過ぎたら年2回の健診を習慣にしてください。

Dr.Nyan

「なんか変かも」と感じたらお気軽にご来院ください。