若山動物病院ブログ
腎性貧血と葉酸の関係
慢性腎臓病が進むと「腎性貧血」と言われる貧血が起こることがあります。
そしてこの貧血の裏には「葉酸」という栄養素が関係していることがあります。
そこで今回は腎性貧血と葉酸の関係についてです。
腎性貧血とは?
腎性貧血は、腎臓の機能が低下することで赤血球が減ってしまう状態です。
赤血球が減るとカラダに酸素を十分に届けられなくなるため、食欲や元気が無くなってしまうことがあります。
葉酸って何?
葉酸はビタミンB群の一つで、ビタミンB12とともに赤血球を作るときに必要な栄養素です。
赤血球を作る工場でいえば、葉酸は赤血球を作るために必要な「工具」のような働きをしています。
「葉酸」という言葉の由来は、その発見の経緯に深く関係しています。
葉酸の発見
葉酸は、ほうれん草の抽出物として最初に分離されました。
葉酸の英語名「Folic acid」は、ラテン語の「葉」を意味する「folium」からきています。
日本語では、この「葉」に酸性化合物であることを示す「酸」を加えて「葉酸」としました。
つまり葉酸とは「葉から発見された酸性化合物」という栄養素で、健康維持には欠かせないものとして知られているモノです。
腎性貧血と葉酸の関係とは
腎性貧血において、葉酸は重要な働きをする栄養素です。
葉酸は水溶性なので水に溶けやすいうえ、加熱調理に弱い性質を持っています。
では葉酸について説明します!
赤血球を作る助けをする
腎性貧血では、赤血球を作るホルモンであるエリスロポエチンの不足が主因となっています。
そこに葉酸が不足すると、さらに赤血球が作れなくなってしまいます。
しかし葉酸が十分にあると、エリスロポエチンが多少足りなくても赤血球を作ることが出来ることがあります。
腎性貧血では、葉酸の補給も大切になります。
栄養が不足しやすい
腎臓病の猫は食欲や消化する力が落ちてしまっているため、葉酸を含む栄養素が不足しやすくなります。
そのため貧血が悪化してしまうことがあるため、葉酸を補うことなど栄養状態の改善が必要です。
葉酸を多く摂っても腎臓に負担をかけることはありませんが、葉酸だけでは腎性貧血を改善することはできません。
エリスロポエチン療法やリン・カリウムの管理、ビタミンB群の補給、適切な腎臓食など総合的な治療が必要です。
赤血球を壊されるのを補う
慢性腎臓病ではカラダに毒素が溜まりやすく、赤血球が壊れやすい状態になっています。
しかし葉酸が十分にあると、新しい赤血球を作る助けになります。
葉酸を補うとどうなるの?
- 赤血球のがスムーズに作られる
- 赤血球を作る工場がより効率よく働き、貧血の改善を助ける
- 貧血の症状が軽くなりる、元気や食欲が改善しやすくなる
まとめ
猫の腎性貧血において、葉酸は赤血球を作るにあたって補助的な栄養素です。
葉酸だけでは腎性貧血を完全に治すことはできないため、エリスロポエチンや鉄分、また腎臓食などの栄養管理と併せて使用します。
そして貧血を少しでも改善してあげたいものです。