若山動物病院ブログ
踵様跛行って何だろう?
「なんだかうちの猫ちゃん、後ろ足のかかとまで床につけて歩いてる…」
「後ろ足がふらついてて、ジャンプもうまくできないみたい…」
そんな様子に気づいたことはありませんか?
実は、このような歩き方には「踵様跛行(しょうようはこう)」という名前がついています。

踵様跛行は病気のサインであることが多く、特に中高齢の猫ちゃんでは注意が必要なんだよ。
今回は、この「踵様跛行」について説明ね!
猫の正常な歩き方と、異常な「ベタ足歩行」
健康な猫ちゃんは、後ろ足の「つま先」部分だけを床につけて歩きます。
つまり「かかと」は地面につかず、スッと持ち上がっているのが普通です。
ところが、「踵様跛行」では・・・
その「かかと」を床にベタッとつけて歩くようになります。
見た目には・・・
「足首が落ちている」
「しゃがんだような姿勢で歩いている」
ように見えることもあります。

この歩き方は、しなやかな動きではないため気づく飼い主さんも多いと思うの!
でも「年のせいかな?」「ケガしたのかな?」と見過ごされてしまうこともありあり・・・
なぜ踵様跛行になるの?
この歩き方の原因で「糖尿病性ニューロパチー(末梢神経障害)」と呼ばれるものがあります。
当然、そのほかにも猫ちゃんが踵様跛行になる理由はいくつかあります。
しかし、もっとも多いのが「糖尿病性ニューロパチー」です。
猫もヒトと同じように、糖尿病になります。
糖尿病ではインスリンというホルモンの働きがうまくいかなくなり、血糖値が高い状態が続いてしまいます。
この高血糖の状態が長い期間続くと、神経にダメージを与えてしまうのです。

特にダメージを受けやすいのが、後ろ足の長〜い神経なんだよ!
そのため、次のような症状が見られます・・・
- 足の感覚が鈍くなったり
- 筋力が低下したりし
- つま先で体を支えられなくなってしまう
その結果「かかと」をつけて歩く「ベタ足歩行」になるわけです。
その他の原因もあるけれど・・
まれにですが、アキレス腱の損傷や神経の腫瘍、筋疾患などが原因で同じような歩き方になることもあります。
しかし・・・
・食欲はあるのに痩せてきた
・よく水を飲んで、おしっこの量が多い
・踵様跛行
これらが一緒に見られた場合には、かなり高い確率で糖尿病が関与していると考えられます。
放っておいても治るの?
答えは「ダメ」です。
踵様跛行は、カラダの中で起きている問題の「結果」として現れた症状です。
そのため根本の問題である糖尿病をコントロールしなければ、症状は悪化していきます。
しかも原因となる糖尿病を放置すると、以下のようなこととなってしまいます。
- 糖尿病性ケトアシドーシス(命に関わる緊急状態)を起こす
- 感染症への抵抗力が低下してしまう
- 腎臓の働きが悪くなってしまう

そのままにしておくと・・・
色々な重篤な合併症を引き起こすリスクがあるので、頑張って治さないとだよ!
治療すれば元に戻るの?
嬉しいことに、早期に治療を開始すれば回復する可能性があります!
まずは糖尿病の治療をしなくてはなりません。
そのためにはインスリンを注射し、血糖値を安定させることが第一です。
そして神経の回復をサポートするために、活性型ビタミンB12が補助的に使われることもあります。
またリハビリや生活環境の見直しも大切です。

神経の回復には、時間がかかちゃうんだよ!
中には数ヶ月かけてゆっくりと回復していく場合もあるので、あきらめずに治療を続けようね。
おうちでできるサポートは?
- トイレの縁を低くしてあげる
- ジャンプ台やスロープを設置する
- 滑りやすい床にはマットを敷く
- 毎日の歩き方を観察しておく

後脚が不自由になってるので、チョット工夫が必要!
そうすれば生活の質が守られるし、暮らすのも楽ちんになるんだ。
まとめ
猫ちゃんはとても我慢強い動物なので、多少の不調があっても問題なく普通に見えます。
しかも不調があっても鳴きませんし痛がっても、その素振りを見せません。
だからこそ歩き方や行動の変化に、飼い主さんが気づくことがとても重要です。

「ベタ足」で歩くようなら、それはカラダが「助けて」と出しているサインです。
さぁ〜猫ちゃんがまた軽やかな足取りを取り戻せるよう、一緒にサポートしてあげましょうね!