Dr.Nyanのすこやかコラム
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犬の糖尿病|水をガブガブ飲む・痩せる・目が白くなる原因と治療・受診の目安
「最近、うちの子やたらとお水を飲むな……」「シニア期に入って、食欲がすごいのは元気な証拠かな?」
そんな風に思っていた愛犬の行動が、実はお腹の中で静かに進行している「糖尿病」の危険なサインかもしれません。
犬の糖尿病は、初期の段階では痛みがなく、むしろ「たくさん食べるのに、なぜか痩せていく」という一見元気そうに見える変化から始まります。だからこそ、病気に気づいたときにはすでに進行してしまっているケースも少なくありません。
「糖尿病になったら、これからどうなるの?」「毎日のインスリン注射は私にできる?」そんな飼い主さんの不安や疑問を解消するために、今回は犬の糖尿病の初期症状や原因、毎日の食事管理、そして気になる治療費用までを獣医師が分かりやすく解説します。愛犬との穏やかな毎日を守るために、まずは正しい知識から始めてみませんか?
実際に「水を大量に飲み、オシッコの量も増え、食べているのに痩せてきた」と来院された犬がいました。
検査の結果、糖尿病と診断されました。
本記事では、当院で多く見られる糖尿病の症例をもとに、症状・原因・検査・治療について解説します。

飼い主
水をたくさん飲んで、尿も多く、体重も減ってきたんです
Dr.Nyan
糖尿病の可能性がありますね。まず血液と尿の検査をしましょう
フルクトサミンを検査すると、検査する1〜2週間前からの「平均血糖値」がわかります。
検査の結果、やはり糖尿病と確定しました。血糖値が異常に高くなり、オシッコに糖が出てしまう病気を「糖尿病」と言います。犬が糖尿病になると、眼が白くなってしまうことがあります。
ここでは犬の糖尿病の原因と対処法について、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
糖尿病の症状
犬の糖尿病の初期では、元気も食欲もあり目立った症状がないため気づきにくい病気です。
糖尿病は、膵臓のトラブルから起こる病気です。膵臓は肝臓や胃、十二指腸に接して存在します。

Dr.Nyan
食べているのに痩せる、水を異常に飲む——これが糖尿病の典型的なサインです。早めの受診をお勧めします
多飲多尿になる
糖尿病が進むにつれ、水を飲む量が増えオシッコの量も多くなります。散歩でしかトイレができない犬は散歩をせがむようになり、屋内トイレを使う犬はその汚れがひどくなってしまいます。このような状態になってはじめて、多くの飼い主さんが異常に気づきます。しかしこの時点では、すでに血糖値が高くオシッコにも糖が出ています。
🔍 飲水量のチェック目安
正常な犬が1日に飲む水の量は、体重1kgあたり50ml以下が目安です。もし体重1kgあたり100ml以上(例:5kgの犬なら500mlのペットボトル1本以上)を毎日飲むようであれば、糖尿病を含む何らかの病気のサインです。一度、水飲み量を計測してみてください。

飼い主
最近すごく水を飲むんですが、どのくらいから異常なんですか?
Dr.Nyan
体重1kgあたり1日100ml以上飲むようなら要注意です。5kgの子なら500mlペットボトル1本分が目安。一度計測してみてください
食欲があるのに痩せてしまう

糖尿病は、インスリンという血糖値を下げるホルモンの不足で起こります。インスリンが不足すると、栄養としてのブドウ糖を細胞に十分に取り込めなくなります。そうなると慢性的な空腹状態となるため食欲が増し、よく食べるようになります。しかしいくら食べても細胞に届くブドウ糖が足りず、栄養状態が改善しないまま痩せていきます。
眼が白くなる(糖尿病性白内障)
犬が糖尿病になると、ほぼ全頭で白内障が起きてしまいます。しかもその進行が非常に早いという特徴があります。
Dr.Nyan
糖尿病性白内障は進行が速く、数週間〜数ヶ月で視力を失うこともあります。早期の血糖コントロールが大切です
下痢・嘔吐など様々な症状がみられる
糖尿病の進行に伴い、様々な体調の変化がみられるようになります。
- 下痢
- 嘔吐
- ふらつき
- 食欲がない
- 脱水
- 意識障害
糖尿病になると、ブドウ糖をエネルギーに変換できなくなります。そのためブドウ糖の代わりに脂肪や筋肉をエネルギーとして使うようになり、上記のような症状が現れます。この状態を「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)」と呼び、命に関わる緊急事態です。
リスク先生
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は一刻を争う緊急事態です!「急にぐったりする」「激しい嘔吐が続く」「呼吸が荒い・速い」「口から甘酸っぱい(腐ったリンゴのような)臭いがする」——このサインが出たら即日来院してください。集中治療を行っても助からないケースがある、大変危険な状態です
さまざまな合併症を引き起こす
糖尿病による高血糖の持続は、全身にさまざまな合併症を引き起こします。
- 腎臓に障害を起こしてオシッコがうまく作れなくなる(糖尿病性腎症)
- 細菌感染を起こしやすくなり、皮膚炎や膀胱炎になりやすい
- ケガをしても傷が治りにくい
- 脚腰が弱ったような歩き方や、カカトをつけた歩き方をする
また治りが悪く重症化しやすい点も、糖尿病の合併症の特徴です。
糖尿病の原因
犬の糖尿病のほとんどは「インスリン依存型(1型に相当)」です。免疫異常・膵臓の障害などによってインスリンがほとんど分泌されなくなるタイプで、犬全体の糖尿病の80〜90%以上を占めます。人間のように肥満や生活習慣だけが原因になるケースは稀で、体型が標準的な犬でも突然発症することがあります。「うちの子は太っていないから大丈夫」という誤解は禁物です。
Dr.Nyan
糖尿病の背景には、膵炎・ホルモン異常・食事・肥満など複数の要因があります。犬の場合、1型(インスリン依存型)がほとんどです
炭水化物が多いフードの影響
市販のフードには炭水化物が多く含まれており、食後の血糖値が上がりやすいとされています。もともと犬はタンパク質をエネルギー源としていたため、炭水化物の多いフードを食べると血糖値が高い状態が続きやすく、膵臓への負担が増します。
Dr.Nyan
糖尿病の管理では食事内容の見直しがとても重要です。低炭水化物の療法食への切り替えを検討してください
日頃のストレスにより
ストレスがかかると、血糖値を上げるアドレナリンやコルチゾール(ステロイドホルモン)が過剰に分泌されます。ストレスが慢性的に続くと血糖値が高い状態が持続し、糖尿病に発展することがあります。
肥満から
肥満の犬ではインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じやすく、血糖値が高い状態が続いてしまいます。ただし前述のとおり、犬では肥満でなくても糖尿病になる場合が多く、痩せているからといって安心はできません。
未避妊のメス犬のホルモンの影響
未避妊のメス犬では、発情期(ヒート)の後に分泌されるプロジェステロン(黄体ホルモン)がインスリンの働きを著しく妨げます。これが原因で糖尿病を発症・悪化させるケースは非常に多く、治療の一環として避妊手術が強く推奨されます。発情自体が糖尿病の引き金になりうるため、未避妊のメスには特に注意が必要です。

飼い主
メスの子だと、生理(ヒート)が関係することがあるんですか?
Dr.Nyan
はい。発情後に分泌されるプロジェステロンというホルモンがインスリンの働きを強く邪魔します。未避妊のメスが糖尿病になった場合、避妊手術が治療の一部になることもあります
膵炎の影響
膵臓が炎症を起こす「急性膵炎」になると、インスリンを分泌する細胞が破壊され、正常に分泌されなくなることがあります。食欲があり一見健康そうに見えても、慢性膵炎が進行しているケースがあります。
ステロイドなどの薬の影響
ステロイド薬を長期・高用量で使用すると、血糖値が上昇して糖尿病を引き起こすことがあります。ステロイドを継続使用している場合は、定期的な血糖値モニタリングが重要です。
糖尿病の主な治療法と費用
Dr.Nyan
糖尿病治療の基本は「食事療法」と「インスリン注射」の2本柱です
糖尿病用フードによる食事療法
炭水化物が控えめの糖尿病用療法食を与えることで、食後の急激な血糖値の上昇を抑えることができます。インスリンを使用している場合は、療法食への切り替えによって必要なインスリン量を減らせることもあります。
肥満がある場合は適正体重まで減量を行います。また腎臓病や膵炎などの併発疾患がある場合は、それに適した食事内容を優先することもあります。

飼い主
糖尿病は食べ物の管理がとても大切なんですよね?
Dr.Nyan
はい。食事療法はインスリン治療と並ぶ治療の柱です。炭水化物を抑えた療法食で血糖値を安定させましょう
避妊手術を行う(未避妊のメスの場合)
未避妊のメスの犬が糖尿病と診断された場合、プロジェステロンの影響を取り除くために避妊手術が治療の一環として強く推奨されます。手術後に血糖値が安定し、インスリン量が減少するケースも多くあります。
インスリンの注射

糖尿病治療のメインは、インスリンを投与して血糖値をコントロールすることです。インスリンは生きていくために絶対に必要なホルモンであり、糖尿病の犬の多くは一生涯、毎日インスリン注射が必要になります。
犬は短時間で血糖値が大きく変動することもあるため、血糖コントロールが難しい面があります。ただし、原因によっては治療中にインスリンが不要になるケースもあり、その場合でも食事療法と定期検査は継続します。

飼い主
インスリンを打ったあと、震えたりふらついたりすることがあると聞きました。どうしたらいいですか?
リスク先生
それは低血糖のサインです!体が震える・ふらつく・ぐったりする・けいれんする——こうした症状が出たら、すぐにガムシロップや砂糖水を歯茎に塗って、至急病院へ連絡してください。インスリン過剰投与や注射後に食事を摂らなかった際に起こりやすいです
糖尿病の治療費
定期通院で行う血糖値確認の検査は、1回8,000円程度が目安です。インスリン製剤・注射器・糖尿病用療法食も別途必要になります。体重や病状により費用は異なります。
重症になると入院が必要となり、それだけ治療費もかさみます。症状的にも経済的にも、早期発見・早期治療が最も重要です。
糖尿病の予防方法
適正体重を維持する
肥満は糖尿病の発症リスクを高めます。若いうちから肥満にならないよう、フードの量と内容の管理が最重要です。

適正体重の維持には運動も大切ですが、それ以上に食事管理が鍵を握ります。屋内で過ごすことが多い犬は特にカロリー過多になりやすいため注意してください。なお、肥満でなくても糖尿病にかかることはありますのでご注意ください。
メスは避妊手術を行っておく
未避妊のメス犬は、発情後のプロジェステロン分泌によって糖尿病リスクが高まります。避妊手術を行うことで、このリスクを大幅に下げることができます。
糖尿病になりやすい犬種・特徴
- 未避妊のメスの犬
- 肥満気味の犬
- トイ・プードル
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・シュナウザー
- ジャックラッセル・テリア
ただし、どの犬種でも・どんな体型でも糖尿病になる可能性があります。上記に当てはまらなくても、多飲多尿・体重減少のサインが見られたら早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 犬の糖尿病は完治しますか?
A. 多くの場合、一生涯インスリン投与が必要です。ただし、プロジェステロン(女性ホルモン)や薬剤が原因の場合、避妊手術や投薬中止で血糖値が改善し、インスリンが不要になることがあります。
Q. インスリン注射は自宅でできますか?
A. はい、ほとんどの飼い主さんが自宅で行えます。当院では注射の手技を丁寧に指導していますのでご安心ください。慣れれば1〜2分で完了します。
Q. 糖尿病になりやすい犬種はありますか?
A. トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザー、ジャックラッセル・テリアなどに比較的多く見られます。ただし犬の糖尿病はインスリン依存型が主体のため、犬種・体型に関わらず発症します。
Q. 治療費はどのくらいかかりますか?
A. 定期的な血糖値確認の検査で1回8,000円程度が目安です。インスリン製剤・注射器・糖尿病用療法食も別途必要です。重症化すると入院費が加わります。早期発見・早期治療が費用を抑えることにもつながります。
まとめ
「インスリン注射も糖尿病の管理も不安」「どうやって生活していけばいいのか心配」——そんな飼い主さんの気持ちは当然です。
しかし正しい知識と適切な管理があれば、糖尿病の犬も穏やかな日常を過ごすことができます。当院では注射の手技指導から食事アドバイス、定期的な血糖モニタリングまで、飼い主さんと二人三脚でサポートしています。何か気になる兆候が見られたら、早めにご相談ください。
Dr.Nyan
佐倉市・若山動物病院では糖尿病の診療・インスリン指導を行っています。お気軽にご相談ください
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール
本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として佐倉市の地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なります。気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。