Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
猫の慢性口内炎|食べられない・よだれ・難治性口内炎の原因と幹細胞治療

本記事は、Dr.Nyan症例集「猫の口腔・歯科疾患編」の一部です。
実際の診療症例をもとに、猫の慢性口内炎の原因と、幹細胞治療を含む最新の対応についてわかりやすく解説しています。
「ご飯の前まで行くのに、食べようとしない」
「よだれがひどくて、口も臭う」
「ステロイドで一度は良くなったのに、またぶり返した」
こういうご相談、当院では本当によくいただきます。実はこれ、猫の難治性口内炎(LPGS)にありがちな症状なんです。
普通の治療ではなかなか良くならないやっかいな病気ですが、最近は幹細胞治療という新しい選択肢も選べるようになってきました。
実際の治療例を交えながら、一歩踏み込んでお話ししますね。
【症例】難治性口内炎に苦しむ6歳オス猫の治療例
ステロイドや抗生剤で改善しなかった重度の歯肉口内炎に対し、幹細胞治療(再生医療)を行い、口腔内の炎症が劇的に治まって食欲が回復した症例です。

飼い主
1年以上、口内炎を繰り返しています。大好きなちゅーるを目の前にして舐めたいのに、一舐めした瞬間にギャッと鳴いて飛び上がっちゃうこともあるんです。
お薬を使うとその時だけ良くなって、またすぐ悪化しちゃうのの繰り返しで……
Dr.Nyan
なるほど、よだれで胸の毛や足先が汚れちゃってますよね。
可哀想に、ずっと痛かったんだね。口の中を診ると炎症が喉の奥まで真っ赤に広がっているし、こうなると一般的なお薬だけでは治りづらい『難治性の口内炎』と言えます。

飼い主
もう、ずっとお薬を飲み続けるしかないんでしょうか?
Dr.Nyan
そんなことはないですよ!根本的に治すなら『全歯抜歯(歯を抜く手術)』、体への負担や麻酔のリスクを抑えたいなら『幹細胞治療(再生医療)』。どちらも有力な選択肢になります
今回の治療経過
この子の場合は、すでに長期間ステロイドや抗生剤を使ってきて薬の限界を迎えていたこと、そしてご家族の「麻酔のリスクや体への負担を最優先に抑えたい」という強い想いもあり、相談の上で「幹細胞治療」を実施しました。
点滴で細胞を投与してから2〜4週間ほど経った頃でしょうか。
あれだけ真っ赤だった口腔内の赤みが劇的に引き、痛みが治まったことで、なんとあんなに拒んでいた大好きなご飯を、また自分から音を立てて食べられるようになったんです!
現在は定期的なフォローアップを続けながら、良好な状態をキープしています。
「先生、久しぶりにこの子の『美味しい!』っていう顔が見られました」と、涙ぐむ飼い主さん。
このように「もう打つ手がないかも」と悩まれていた子が、再び笑顔を取り戻す姿を何度も見てきました。
この笑顔に出会えるから、私たちは毎日のタフな診療に向き合えます。もちろん、すべての子が100%同じように上手くいくわけじゃありません。それでも、「諦めなくていい選択肢がここにある」ということは、ぜひ知っておいていただきたいのです。
猫の慢性口内炎(LPGS)とは?
猫の慢性口内炎(LPGS:Lymphocytic Plasmacytic Gingivostomatitis)は、免疫異常によって自分自身の口腔粘膜を攻撃してしまう難治性の疾患です。
「口内炎」と聞くと、たいしたことのない病気だと思われがちです。
しかしLPGSは別で、強い痛みのせいでご飯が食べられなくなってしまう子も珍しくありません。
実際に診察していて特につらいと感じるのが、次の3つです。
激しい痛み
強い痛みのため、大好きなご飯が食べられなくなります。
一般的な抗生剤やステロイドだけでは根本的な解決にならず、一度良くなってもまた再発してしまうことが多いんです。
体重が急激に落ちて、毛並みもぱさついてくる。全身の状態まで崩れてしまうことがあります。
Dr.Nyan
「口内炎くらい…」と侮らないでください。重症化すると、こうした症状が一気に進むことがあります。早めの診断が、その後の回復を大きく左右します。
慢性口内炎の主な症状(受診の目安)
当院では「食欲が落ちた」というより、「食べたいのに食べられない」という訴えで来院される猫を何度も診ています。
飼い主さんは『食欲不振かな』と思われますが、実際には強い口の痛みが隠れていることが少なくありません。
猫は痛みを我慢する動物です。
「うちの子は食べているから大丈夫。」
そう思っていても、実は口の中がかなり痛くても、ぎりぎりまで普段通りに振る舞うことがあります。
一度、ご飯を食べる様子をよく見てみてください。
「食べ方がおかしい」と感じたら、以下の症状をチェックしてください。
食事の異常
食べたそうにするが痛くて途中で食べるのをやめる
フードの前まで行くが食べない
口腔内のサイン
よだれが大量に出る(口から垂れる)
強い口臭
口からの出血
行動の変化
前足で頻繁に口を拭う
口を触られるのを極端に嫌がる
攻撃的になる
全身症状
体重減少
毛並みが悪くなる
体を触らせなくなる
リスク先生
ここまでの症状、当てはまるものはありませんでしたか。中でも、全く食べられない・体重が急に落ちている・口から出血が続く、というときは重症のサインです。脱水や栄養不足になる前に、早めに受診してくださいね。
受診の目安
| 症状 | 緊急度・受診の目安 |
| 口臭が強い よだれが多い 食べたそうだが食べない | 早めに受診 慢性口内炎の疑い |
| 治療をしても口内炎を再発する | 早めに受診 精密検査・治療法を変更する |
| 体重が減少してきた | 急いで受診 低栄養状態の危険あり |
| 全く食べられない 口から出血している | 直ちに受診 脱水や貧血のリスクが高く危険 |
軽い口臭やよだれ程度なら「早めに受診」で構いません。ですが、まったく食べない、出血が続くという場合は、様子を見ずにすぐ来院してください。
慢性口内炎(LPGS)の原因
実際の診療では、FCVやFIVを併発している子も珍しくありません。当院でも、口内炎だけと思って検査した結果、基礎疾患が見つかったケースを何度も経験しています。
LPGSがなぜ起こるのかは、まだすべてが解明されているわけではありません。ただ、臨床の実感としても、次の3つの要因が大きく関わっていると感じています。
免疫の異常(最大の要因)
口腔内の細菌(特に歯垢中の細菌)に対して過剰な自己免疫反応が起き、粘膜の炎症・壊死が起きます。
「歯がある限り炎症が続く」とされており、全歯抜歯が根本的な治療と考えられています。
ウイルス感染(合併リスクが高い)
以下のウイルスが発症や重症化に関わっていることが多いため、事前のウイルス検査が不可欠です。
猫カリシウイルス(FCV)
猫ヘルペスウイルス(FHV)
猫白血病ウイルス(FeLV)
猫免疫不全ウイルス(FIV / 猫エイズ)
歯周病・口腔衛生の悪化
蓄積した歯垢や歯石が免疫系を常に刺激し、炎症をさらに悪化させます。

飼い主
うちの子はいくつも検査を受けましたが、そんなに検査が必要なものなんですか?
Dr.Nyan
そうですね。LPGSは原因がひとつとは限らないんです。免疫の異常が主体なのか、ウイルスが関わっているのか、歯周病がどこまで進んでいるのか。それによって治療の組み立て方が変わってくるので、血液検査やPCR検査、レントゲンなどをいくつか組み合わせて、総合的に判断するようにしています。
診断方法
的確な治療を組み立てるために、当院では以下の検査を組み合わせて総合的に診断しています。ひとつの結果だけで決めつけないことが、遠回りに見えて実は一番の近道だと考えています。
- 口腔内視診・触診(炎症の範囲や重症度を直接確認します)
- 血液検査(全身状態の把握、免疫異常、ウイルス感染の有無を調べます)
- 口腔内PCR検査(FCV・FHV・FeLV・FIVなどの感染を調べます)
- 病理組織検査(リンパ球や形質細胞の浸潤を確認し、確定診断を行います)
- レントゲン(歯根や歯を支える骨の破壊状態を評価します)
これらの検査を「全部調べる必要がありますか?」と聞かれることがあります。
でも、ここを省いてしまうと治療方針を間違えることがあります。
私はまず原因をできるだけ絞ってから治療を組み立てています。
治療法:3つの選択肢と最新の幹細胞治療
国際的なガイドラインでは、猫の慢性口内炎において「すべての歯、あるいは奥歯を抜くこと」が第一選択とされています。
しかし、抜歯をしても改善しない難治例や、全身状態から麻酔・手術が難しい場合の「新たな希望」として、幹細胞治療(再生医療)が注目されています。
内科療法(ステロイド・抗生剤・免疫抑制剤)
一時的に炎症を抑えるのは、すごく得意な薬です。
ただ私の経験上、これだけで完全に治ることはほぼありません。
長期にわたってステロイドに頼り続けると、糖尿病や感染症といった別のリスクが体を蝕むので、あくまで「次のステップへ繋ぐための時間稼ぎ」であることが多いのが現実です。
全歯抜歯(最も確実な標準治療)
炎症の原因となる歯そのものを取り除く方法で、約60〜80%の猫で症状が大きく改善するといわれています。ただ、改善しない場合もあるのが事実です。
私自身、抜歯を勧める時は今でも迷うことがあります。飼い主さんの気持ちはよく分かるからです。それでも、抜歯後に久しぶりに自分からご飯を食べ始めた猫を見るたび、「やって良かった」と感じることが少なくありません。
Dr.Nyan
「歯を全部抜いたら食べられなくなる?」とよく聞かれますが、猫は歯がなくてもドライフードを食べられます。むしろ痛みがなくなって食欲が戻るケースがほとんどです。
実際には、犬歯や切歯を残して奥歯だけを抜く「全顎抜歯」で、驚くほど改善する子もいます。症状や進行度を見ながら、この段階を踏むことも少なくありません。
知っておきたい選択肢:『全歯抜歯』と『全顎抜歯』の違い
全歯抜歯(ぜんしばっし)
文字通り、一本残らずすべての歯を抜きます。
難治性口内炎(LPGS)の標準治療として選択されます。
全顎抜歯(ぜんがくばっし)
キバ(犬歯)や前歯が綺麗なら残し、激しい炎症の引き金になりやすい「奥歯だけ」をすべて抜く方法です。
もちろん、すべての猫がこの方法で良いわけではありません。炎症の広がりや歯の状態によっては、最初から全歯抜歯を選択することもあります。

飼い主
全歯抜歯と幹細胞治療、うちの子にはどちらが向いているんでしょうか。
Dr.Nyan
年齢や全身状態、麻酔に耐えられるかどうかで変わってきます。若くて元気な子なら、まずは確実性の高い全歯抜歯をおすすめすることが多いですね。ただ、持病があって麻酔のリスクが高い高齢の子や、抜歯後も炎症が残ってしまった子には、麻酔なしで受けられる幹細胞治療を優先することもあります。年齢や体力、これまでの治療経過を見ながら、一緒に決めていきましょう。
幹細胞治療(再生医療)
幹細胞治療は、脂肪組織などから採取・培養した間葉系幹細胞(MSC)を静脈内に点滴投与する再生医療の一つです。
そして幹細胞の特徴は、過剰になった免疫反応を穏やかに整える働きが期待できることです。
私自身、この治療を始めた頃は半信半疑でした。
しかし実際に診療していると、「食べられなかった子がまた食べ始める」そんな場面を経験することがあります。

間葉系幹細胞は、炎症が起きている部位に集まりやすく、炎症を落ち着かせ、傷ついた組織の修復を助ける「調整役」のような働きをする細胞です。
このようにMSCが持つ強力な「免疫調整作用」と「抗炎症作用」により、過剰に暴走した免疫反応を鎮め、粘膜の修復を促します。

幹細胞治療のメリットと概要
| 項目 | 詳細 |
| 対象となる状態 | 内科療法や抜歯でも改善しない難治性LPGS または抜歯が困難な症例 |
| 治療方法 | 培養した幹細胞を静脈内に点滴投与 (麻酔不要・入院不要) |
| スケジュール | 通常2〜4週間おきに 2〜4回の投与を実施(通院治療) |
| 効果の発現 | 投与後2〜4週間後 口腔内の赤みや炎症の改善、食欲回復 |
| 改善率(報告値) | 通常の治療に反応しなかった難治例において 報告によって差はありますが、 約60〜80%の症例で改善が認められている |
Dr.Nyan
幹細胞治療は「魔法の治療」ではありません。すべての猫に効くわけではないので、期待できる効果や他の選択肢、難しい点も含めて、その子にとって本当に良い選択なのかを一緒に考えます。

飼い主
効果が出ない子もいるんですか?
Dr.Nyan
正直にお話しすると、います。報告では約60〜80%の子に改善がみられていますが、裏を返せば十分に反応しない子も一定数いるということです。特に炎症が長引いて組織の損傷が進んでしまっている場合は、幹細胞治療だけでは足りず、抜歯や他の治療と組み合わせて対応します。うまくいく可能性だけでなく、そうでない場合のこともきちんとお伝えしたいと思っています。
対症療法・緩和ケア
- 鎮痛薬・抗炎症薬(痛みの管理)
- インターフェロン(免疫調整・抗ウイルス)
- 流動食・食欲増進薬(栄養管理)
- ブプレノルフィン、ガバペンチンなど(痛みコントロール)
治療の選択肢の比較
飼い主さんに「どの治療が一番いいのでしょうか」と聞かれます。
実際には年齢や全身状態によって答えは変わります。
それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 治療法 | 症状改善率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 内科療法のみ | 約30〜50%(一時的) | 再発しやすい・長期使用に限界あり |
| 全歯抜歯 | 約60〜80% | 最も確実・全身麻酔が必要 |
| 幹細胞治療 | 約60〜80%(報告値) | 麻酔不要・難治例にも有効な可能性 |
| 抜歯+幹細胞治療 | 追加治療として期待される | 抜歯後も炎症が残る症例での追加治療として |
高齢で全身状態が悪い子では、すぐ抜歯を選べないこともあります。
また、若い猫でも炎症の場所によっては部分的な抜歯から始めることがあります。
自宅でできる日常ケアのポイント
病院での治療と同時に、お家でのちょっとした工夫が、猫ちゃんの生きる力を支えます。
食事の硬さを工夫する
硬いドライフードは炎症に刺さって激痛が走ります。
ぬるま湯でふやかしたり、ウェットフードに切り替えてあげてください
無理な歯磨きは絶対にNG
痛いときは触られるだけでもトラウマになります。
まずは嫌がらないお口用ジェルなどをペロペロ舐めさせる程度からで十分です。
ストレスを減らす
ストレスは免疫力の低下につながります。
快適な環境を整えて、できるだけ穏やかに過ごせるようにしてあげましょう。
毎日の記録をつける
猫の体重が100g減るのは、人間でいうと数キロ一気に痩せるのと同じです。
食欲・よだれの量・体重をノートに記録しておくと、ちょっとした変化にも気づきやすくなります。
定期的な健診
1〜6か月に一度は、口腔内の状態をチェックしてもらいましょう。
Dr.Nyan
おうちでのケアと合わせて、LPGSとは根気よく付き合っていく病気だと思ってください。完治が難しい子でも、QOLを上げることはできます。その子に合った付き合い方を、少しずつ見つけていきましょう。
よくある質問
猫の慢性口内炎は何歳くらいで多いですか?
3〜7歳での発症が比較的多いとされていますが、これはあくまで目安です。
子猫でも高齢猫でも起こりうる病気なので、年齢だけで大丈夫と判断しないでください。
猫の慢性口内炎は自然に治りますか?
自然に治ることはほとんど期待できません。
慢性化しやすい病気なので、様子を見すぎず早めに診てもらうことをおすすめします。
全歯抜歯は可哀想ではないですか?
そう感じる飼い主さんは少なくありません。
ただ、猫は痛みを我慢する動物なので、傍目にはわからなくても本猫はずっとつらい思いをしています。抜歯を終えた猫たちの多くは、痛みから解放されて驚くほどよく食べるようになります。
抜歯すると食べられなくなりますか?
最初は戸惑う子もいますが、数日から数週間で多くの子がドライフードにも慣れていきます。
痛みがなくなった分、以前よりよく食べるようになったというお声をよくいただきます。
抜歯しても再発しますか?
はい、再発することがあります。
全歯抜歯は現在もっとも効果が期待できる標準治療ですが、すべての猫が完全に治るわけではありません。
当院でも、抜歯後に炎症が大きく改善する猫を多く経験していますが、一部では炎症が残ったり再発したりすることがあります。そのような場合には、幹細胞治療や免疫を調整する治療を追加することがあります。
口内炎は予防できますか?
完全に防ぐのは難しいですが、リスクを減らす方法はあります。
混合ワクチンによるカリシウイルス(FCV)対策、定期的な歯科検診やスケーリング(歯石除去)、FeLV・FIVの早期検査。この3つを続けるだけでも、重症化を防げることは多いです。
幹細胞治療はどこで受けられますか?
当院でも実施しています。適応があるかどうかは、口腔内の状態やこれまでの治療経過を見てから判断しますので、まずはご相談ください。
幹細胞治療は抜歯をしなくても受けられますか?
はい、受けられる場合があります。
ただし、すべての猫が対象になるわけではありません。
当院では、年齢や全身状態、麻酔のリスク、これまでの治療経過、口腔内の炎症の広がりを総合的に評価したうえで判断しています。
若くて全身状態が良く、抜歯で改善が期待できる場合は、まず抜歯をおすすめすることが多くあります。一方、高齢で麻酔の負担が大きい猫や、抜歯後も炎症が残った猫では、幹細胞治療が有力な選択肢になります。
幹細胞治療だけで治りますか?
効果には個体差があります。
すべての子が完治するわけではありませんが、難治例でも炎症や痛みが和らぎ、食欲が戻ってくることは少なくありません。
抜歯や内科療法と組み合わせることで、さらに改善が進む子もいます。
幹細胞治療に副作用はありますか?
ゼロではありません。
発熱や元気・食欲の低下、点滴部位の違和感が出ることがありますが、たいていは軽く、自然に落ち着きます。
それでも当院では、その子の状態を見ながら適応を慎重に判断したうえで治療をご提案しています。
幹細胞治療は何回くらい必要ですか?
その子の反応次第ですが、目安は2〜4週間おきに2〜4回です。
そこから先は経過を見ながら、追加が必要かどうかを判断していきます。
幹細胞治療の費用はどのくらいですか?
治療回数や使う幹細胞の種類によって変わるので、一概にはお伝えできません。
まずは適応があるかどうかの診察も含めて、ご来院時に詳しくお話しします。
ステロイドを長期使用していますが副作用が心配です
糖尿病や感染症のリスクが上がってくるので、その心配はもっともです。
ずっとステロイドに頼るのではなく、抜歯や幹細胞治療といった根本的な選択肢に切り替えられないか、一度診せていただけたらと思います。
幹細胞治療は保険が使えますか?
加入しているペット保険会社や契約内容によって異なります。
今のところは、再生医療は補償対象外となる保険が多いようですので、事前に保険会社へ確認することをおすすめします。
まとめ:「食べられない」は見逃さないサインです
50年以上にわたり犬・猫の診療に携わっていますが、LPGSほど猫が「食べたいのに食べられない」つらさを見せる病気は多くありません。診察室で食べ物を前にしてためらう姿を見るたび、何とか痛みだけでも取ってあげたいと思います。
「食べたそうにしているのに食べられない」「口内炎の治療をしても再発する」難治性口内炎(LPGS)は、放っておくと体重減少や脱水につながることもあります。
内科療法だけで改善しないケースでも、全歯抜歯や幹細胞治療など選択肢はいくつかあります。「もう治らないかもしれない」と諦める前に、一度当院にご相談ください。
Dr.Nyan
「食べたいのに食べられない」は危険なサインです。早めの受診が、その後の回復を大きく左右します。そのためLPGSの診療でいちばん大切にしているのは、まず痛みを取り除いてあげること。そのうえで全歯抜歯にするか幹細胞治療を選ぶかは、その子の年齢や体力、ご家族の希望をふまえて、私なりに一番良い方法を考えていきたいと思っています。ひとりで悩まず、まずは今の状態を診せてくださいね。
まとめ表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 病名 | 猫の慢性口内炎(LPGS) |
| 原因 | 免疫異常・ウイルス感染・歯垢 |
| 代表症状 | 食べられない・よだれ・口臭 |
| 標準治療 | 全歯抜歯・症例によっては全顎抜歯〔奥歯のみ〕 |
| 再生医療 | 幹細胞治療 |
| 受診の目安 | 食べられない・体重減少・出血 |
私は、病気だけを診るのではなく、その子がもう一度「おいしく食べられる毎日」を取り戻せることを一番の目標にしています。LPGSは難しい病気ですが、治療の選択肢は以前より確実に増えてきました。抜歯が良い子、幹細胞治療が向いている子、両方を組み合わせた方が良い子。それぞれ答えは違います。だからこそ、私はその子の年齢や体力、ご家族の思いまで含めて、一番納得できる治療を一緒に考えていきたいと思っています。
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参考文献
・AAFP Feline Chronic Gingivostomatitis Guidelines
・WSAVA Dental Guidelines
・BSAVA Manual of Canine and Feline Dentistry
・Merck Veterinary Manual
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、千葉県佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として、犬猫の診療と予防医療に取り組んでいます。
長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。
著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。