犬のニキビダニ症|脱毛・皮膚炎・二次感染の症状と原因・治療法

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犬のニキビダニ症(毛包虫症)|脱毛・皮膚炎・痒みがない初期症状と原因・治療法を解説

犬のニキビダニ症による目の周囲の脱毛と皮膚炎の様子

「顔まわりの毛がごっそり抜けてきた」「足先がハゲてる…でも痒がってる様子はない」
そんな症状を見て、心配になっていませんか?
実は、痒がらない脱毛こそが、ニキビダニ症の大きなサインなんです。

飼い主

先生、うちの子の顔まわりと足先の毛が最近どんどん抜けてきて…。
でも全然痒がってる様子がないんですよね。
ハゲてるのに痒くないなんて、変じゃないですか?

Dr.Nyan

実は「ハゲているのに痒がらない」というのは、ニキビダニ症(毛包虫症)の典型的なサインなんですよ!
皮膚の検査をしてみましょうね。すぐわかりますよ。

犬のニキビダニ(毛包虫)の顕微鏡写真|細長い形状が特徴で体長0.2〜0.3mm
顕微鏡で確認したニキビダニ(毛包虫)の実物写真

検査の結果、顕微鏡でニキビダニ(毛包虫)の寄生が確認されました。

飼い主

えぇー!こんな小さな虫が毛穴の中にいるんですか!?
家族にもうつりますよね?うちには猫もいるんですけど…

ニキビダニ(毛包虫)は、実はほぼすべての犬の毛穴(毛包)の中にいる「常在ダニ」です。体長0.2〜0.3mmと超小型で、顕微鏡でないと見えません。見た目はムカデのような細長い形をしていて、マダニとは全く別物です。

このニキビダニが何らかのきっかけで毛穴の中で爆発的に増えてしまうことで起こるのが、ニキビダニ症(毛包虫症・アカラス症)です。ほとんどの犬は体の中にニキビダニを持っていますが、免疫が正常に働いている限り、症状は出ません。疥癬(ヒゼンダニ)とよく混同されますが、原因ダニも症状の出かたも全く違う別の病気です。

Dr.Nyan

ご安心ください!
犬のニキビダニは犬だけに寄生する種類なので、人間や猫にはうつりません。
ご家族やほかのペットと引き離す必要もないですよ。

【参考】ヒトのニキビダニについての記事(文春オンライン)

Dr.Nyanが、ニキビダニ症の「なぜ?」をすべてわかりやすくお話しします。症例写真もたっぷり載せていますので、ぜひ参考にしてください。

目次

ニキビダニ症の症状

ニキビダニが毛穴の中でどんどん増えると、毛が抜ける・皮膚が赤くなる・ただれるなどの皮膚トラブルが起きてきます。最初は「あれ、ちょっと毛が薄くなったかな?」くらいの変化から始まることが多いです。

犬のニキビダニ症|口周りに脱毛と皮膚炎が広がった症例写真
口の周りの脱毛・皮膚炎(ニキビダニ症 症例)

口の周りにニキビダニが感染し、毛が抜けて皮膚が赤くただれています。

症状が出やすいのは、口の周り・目のまわり・前足です。そこから耳・頭・顔全体へと広がっていくことも多く、頭をフリフリ振る様子が見られたりもします。

ニキビダニそのものは、痒みをほとんど起こしません。なので、脱毛しているのにケロッとしていることが多いんです。逆に言えば、「ハゲてるのに痒がらない」という状態こそ、ニキビダニ症を疑う重要なサインです。

子犬・若い犬(1歳未満)の場合

目の周りや口元にポツポツと脱毛が出てくるケースが多いです。成長とともに免疫力がついてくるので、治療への反応もよく、完治しやすいのが特徴です。

成犬・シニア犬の場合

足先から全身へと広がる重い皮膚炎になりやすく、細菌感染(膿皮症)を併発するケースも多いです。クッシング症候群・糖尿病・腫瘍などの持病が引き金になっていることがあるので、その管理も治療の重要なポイントになります。

犬のニキビダニ症|眼の周囲に脱毛と赤みが見られる症例写真
眼の周囲の脱毛・発赤(ニキビダニ症 症例)

眼の周りに脱毛と発赤が広がっています。擦ることで腫れてしまうことも。

まず毛が抜けてくる

ニキビダニが毛穴の中でどんどん増えると、毛根がダメージを受けて毛が抜けてきます。最初は毛が薄くなってスルスルした皮膚が見えてくる程度で、この段階では痒みはほとんどありません。「老け顔になったね」「ハゲてきた?」と言われて気づくことも多いです。

次第に膿疱(ニキビのようなもの)ができてくる

脱毛した部分に、黄色っぽい膿が溜まったプクッとした膿疱(のうほう)ができてきます。人間のニキビに似た状態です。そのまま放っておくと、前足→肩→胴体、顔→首へと、どんどん広がっていきます。

犬のニキビダニ症|前足に脱毛と炎症が見られる症例写真
前足の脱毛・炎症(ニキビダニ症 症例)

▲ 足先に脱毛と炎症が見られます。足先から広がるケースも多いです。

重症化すると全身の皮膚炎・膿皮症に

放置して重症化すると、全身の皮膚に炎症が広がります。細菌が二次感染(膿皮症)すると、膿が出たり、皮膚が分厚くなってゴワゴワしたりしてきます。

この段階になると、ようやく強い痒みが出てきます。犬が舐め壊したり引っ掻いたりしてさらに悪化するので、早めの受診がとても大切です。

ニキビダニ症の原因

Dr.Nyan

ニキビダニ症は「免疫力が落ちたときに、ダニが暴れ出す病気」です。
ほとんどの犬は生まれたときから母犬からニキビダニをもらっていますが、免疫が元気なうちは何も起こりません。
何かのきっかけで免疫が下がったとき、ダニが増えすぎて発症するんです。

では、どんなときにニキビダニが増えすぎてしまうのでしょうか?

原因① 生まれたときに母犬からもらう

ほとんどの子犬は、生後まもなくお母さんとのスキンシップを通じてニキビダニをもらいます。授乳中や体をくっつけているうちに、自然と移ってしまうんです。もらったダニは子犬の毛穴に住み着き、そのまま一生そこで過ごします。

大切なのは、「感染していること」と「発症すること」は別ということ。ニキビダニを持っていても、免疫力があれば症状は何も出ません。

犬のニキビダニ症は母犬から子犬へ授乳・接触で感染する
母犬から子犬への接触感染(ニキビダニ症)

お母さんが元気そうに見えても、子犬に感染していることがあります。

子犬はまだ免疫系が育ちきっていないため、ニキビダニが増えやすい状態にあります。だから生後数か月〜1歳くらいの間に発症することが多いんです。

でも安心してください。ニキビダニを持っているほとんどの犬は、一生何も症状が出ないまま過ごしています。発症するのは、何らかの理由で免疫が落ちたときです。

原因② 免疫が落ちたとき(シニア犬・病気の犬)

シニア犬がニキビダニ症を発症するのは、加齢による免疫の低下が主な原因です。また、何か別の病気を持っていると免疫がさらに弱まり、ダニが一気に増えてしまうことがあります。

特に関係が深いのは、次のような病気です。

これらの病気は免疫を低下させるため、ニキビダニが暴れ出すきっかけになります。シニア犬で急に脱毛が出てきた場合は、こうした持病が隠れていないか調べることも大切です。

その他、こんなことも発症のきっかけになります。

  • ステロイドなど、免疫抑制作用を持つ薬の使用
  • 患部を舐めたり爪で引っ掻く
  • 全身の栄養状態や皮膚バリア機能の状態が悪い

ステロイドは免疫を抑える薬なので、長期使用でニキビダニが増えやすくなります。また、栄養が足りていない、皮膚のバリアが弱っているといった状態も、ダニの増殖を助けてしまいます。

ニキビダニ症の主な治療法と費用

リスク先生

ひとつ大事なことをお伝えします。
ニキビダニ症に「かゆみ止めのステロイド」は絶対NGです!
ステロイドは免疫をさらに下げてしまうので、使うとダニがさらに増えて一気に悪化します。自己判断で薬を使わず、必ず獣医師に診てもらってください。

細菌感染を併発していると治療が長引くことがあります。また、シニア犬では持病が絡んでいることも多く、それも一緒に診ていく必要があります。

検査は主に皮膚の掻爬(そうは)検査抜毛検査で行います。最近は皮膚にセロハンテープをペタッと貼るだけの「テープストリップ法」でも確認できるようになりました。ワンちゃんへの負担がとても少ない検査です。

掻爬検査は、皮膚をつまんでダニを押し出すようにして採取します。「痛そう…」と思われるかもしれませんが、皮膚をちょっとつまむ程度なので、ほとんどの子がおとなしくしてくれます。

Dr.Nyan

治療の主役は、イソキサゾリン系のチュアブル内服薬(おやつタイプの薬)です。
フィラリア・ノミ・ダニ予防薬の仲間で、安全で効果も高い。
昔の「薬浴(全身シャンプー治療)」の時代に比べて、ずっと楽になりましたよ!

治療はいくつかの方法を組み合わせて行います。状態によって選択しますが、基本の流れは次のとおりです。

犬のニキビダニ症 治療経過|イソキサゾリン系薬による治療中の皮膚の回復
ニキビダニ症 治療経過(治療中の様子)

▲ 治療を続けることで、こんなに改善してきました。

治療① ダニを退治する内服薬(一番大事!)

今の治療の中心は、イソキサゾリン系の内服薬(ブラベクトなど)です。おやつ感覚でパクッと食べられるチュアブルタイプで、フィラリア・ノミ・ダニ予防薬の仲間でもあります。安全性が高く、効果も抜群。かつては「全身を薬液に浸す薬浴(ディッピング)」という大変な治療が主流でしたが、今は飲み薬一つで対応できるようになりました。

注意点として、この薬はダニの成虫には効きますが、卵には効きません。だから「卵が孵化したタイミング」を狙って、間隔をあけて何度か飲む必要があります。途中でやめてしまうと、また増えてきてしまいます。

治療② 注射薬(飲み薬が難しい場合)

ドラメクチンなどの注射薬を使うこともあります。飲み薬と同様に間隔をあけて複数回打ちます。飲み込みが苦手な子や、重症で確実な効果が必要なケースで使います。

治療③ 細菌・真菌の二次感染を治す

細菌や真菌(カビ)が二次感染している場合は、抗生剤・抗真菌薬も使います。症状が改善してきたと感じても、自己判断でやめてしまうと再発することが多いので、完走することが大切です。

くれぐれも「かゆいから」と市販のステロイド系の薬を使わないでください。免疫が下がってダニがさらに暴れ出してしまいます。かゆみ止めが必要な場合は、獣医師の指示のもと抗ヒスタミン剤などを使います。

治療④ 薬用シャンプー(補助治療)

皮膚炎がひどいときは、薬用シャンプーで皮膚を清潔に保つことも大切です。皮膚のコンディションを整えながら、メインの治療を助けます。

治療⑤ 持病(基礎疾患)も一緒に治す

シニア犬のニキビダニ症では、持病が免疫低下の引き金になっていることがよくあります。ニキビダニだけ治しても、持病が放置されていると再発してしまいます。次のような病気を持っている場合は、その治療も同時に進めていきます。

・アトピー性皮膚炎
甲状腺機能低下症
糖尿病

これらの持病の管理なしには、ニキビダニ症を根治することが難しいケースもあります。「皮膚の病気」と「体の中の病気」を一緒に診ていくことが大切です。

✨ 治療後の様子をご覧ください!

犬のニキビダニ症 治療後|顔周りの脱毛が改善し毛が再生した症例写真
ニキビダニ症 治療後の顔(毛が再生しています)

▲ 顔まわりの毛がきれいに生えそろいました!

犬のニキビダニ症 治療後|足先の脱毛・皮膚炎が改善した症例写真
ニキビダニ症 治療後の足(毛が生えそろいました)

▲ 足先もこんなに毛が生えてきました!

ニキビダニ症の予防方法

リスク先生

もうひとつ大事なことを伝えます。
「よくなった!」と感じても、絶対に自己判断で薬をやめないでください。
毛穴の中にはまだダニの卵が残っています。卵が残っている間は、薬をやめた途端にまたダニが増えてきます。検査で陰性を確認するまで、根気よく続けることが完治への近道です。

感染犬の繁殖に注意する

感染の主なルートは母犬からです。ニキビダニ症の治療中・または治療歴のある雌犬の繁殖は、完治確認後が望ましいです。子犬を迎える際には、ブリーダーさんに確認してみるのもよいでしょう。

Dr.Nyan

結局のところ、ニキビダニ症の最大の予防は「免疫力を落とさないこと」なんです。
毎日の食事・睡眠・適度な運動を整えること、それだけで体の免疫がしっかり働いてくれます。
オメガ3脂肪酸(魚油など)を少し補ってあげると、皮膚のバリアも強くなりますよ。

シニア犬は定期的に体調チェック

シニア犬がニキビダニ症になると、なかなか治らないことが多く、場合によっては生涯にわたって管理が必要になることもあります。でも、定期的な健康チェックで持病を早期に発見・管理していれば、発症リスクを下げることができます。

規則正しい生活・バランスのよい食事・オメガ3脂肪酸(魚油サプリなど)による皮膚ケア。シンプルなことですが、これが免疫力を保つための大切な習慣です。

ニキビダニ症になりやすい犬種

どの犬種でも発症する可能性がありますが、特にウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウエスティ)、フレンチ・ブルドッグ、シャーペイ、ドーベルマン、バセットハウンドなどは遺伝的に発症リスクが高いとされています。愛犬がこれらの犬種の場合は、定期的な皮膚チェックを習慣にしておきましょう。

よくある質問

犬のニキビダニ症とはどんな病気ですか?

毛穴の中に常在しているニキビダニ(毛包虫)が、何らかのきっかけで爆発的に増えてしまうことで起こる皮膚病です。ほとんどの犬が持っていますが、免疫が元気なうちは症状は出ません。子犬期の免疫未発達や、シニア犬・持病がある犬で発症しやすいのが特徴です。

犬のニキビダニ症の主な症状は何ですか?

一番の特徴は「毛が抜けているのに痒がらない」こと。顔・目周り・口元・足先に毛が薄くなってスルスルした皮膚が見えてくるのが最初のサインです。進行すると膿疱(ニキビのようなもの)ができ、細菌が二次感染すると強い痒みが出てきます。

ニキビダニ症は犬同士でうつりますか?

健康な成犬同士ではまずうつりません。ただし、母犬から子犬へは授乳中などの濃密な接触でうつります。人間・猫・他の動物にはうつりません。感染した犬がいても、ご家族やほかのペットを隔離する必要はありません。

ニキビダニ症の原因は何ですか?

根本的な原因は「免疫が下がってダニが増えすぎること」です。引き金になるのは、①子犬期の免疫未発達、②加齢、③クッシング症候群・糖尿病・甲状腺機能低下症などの持病、④ステロイド等の免疫抑制薬、⑤栄養不足・皮膚バリアの低下などです。

犬のニキビダニ症の治療方法は?

今の主役は、おやつ感覚で飲めるイソキサゾリン系チュアブル内服薬(ブラベクトなど)です。必要に応じて抗生剤・抗真菌薬・薬用シャンプーを組み合わせます。ステロイドは使えません(悪化します)。持病がある場合はその管理も同時に行います。

治療期間はどのくらいかかりますか?

子犬の軽症(顔だけのポツポツ脱毛)であれば、数週間〜3カ月ほどで改善することが多いです。全身に広がっている場合や持病を抱えたシニア犬では、6カ月以上かかることもあります。「皮膚の検査で2回連続陰性になるまで」が治療完了の目安です。

ニキビダニ症は予防できますか?

完全な予防は難しいですが、①規則正しい生活と栄養バランスのよい食事で免疫力を維持する、②オメガ3脂肪酸(魚油サプリなど)で皮膚のバリアを強くする、③シニア犬は定期検診で持病を早期発見する、④感染犬の繁殖を管理する、この4つが効果的です。

まとめ

ニキビダニは顕微鏡で見ると少し衝撃的な姿をしていますが、「正体がわかれば怖くない病気」です。今は優れた内服薬があるので、昔と比べてずっと楽に治療できるようになりました。

「うちの子、顔まわりや足の毛が抜けてきたけど、痒がっていないな…」と感じたら、それが受診のサインかもしれません。
早め早めに来ていただくほど、治療もシンプルで済みます。

治った後も、毎日の規則正しい生活・バランスのよい食事・適度な運動が、ニキビダニを「おとなしくさせておく」一番の方法です。

▶ 関連コラム:疥癬症(ヒゼンダニ)の解説 | 犬の甲状腺機能低下症 | 犬の糖尿病

気になる症状がある場合は、お気軽にご相談くださいね。スタッフ一同、しっかりサポートします!

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

獣医師 若山正之 プロフィール写真 小動物臨床 犬猫診療

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。