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犬の「蛋白喪失性腸症」ってどんな病気?

下痢

「うちの子、ずっとお腹がゆるくて・・・」
そんな相談を受けることが少なくありません。
とくに小型犬で長引く下痢の場合、その裏に「蛋白喪失性腸症」という病気が隠れていることがあります。

今回はチワワのメリーちゃん(10歳)が「PLE」と診断され、治療を続けている例を交えてお話しします。

目次

蛋白喪失性腸症(PLE)とは?

体の中を流れる血液の中には「アルブミン」や「グロブリン」という、とっても大切なタンパク質が流れています。
これらは次のような働きをしています。

  • 体の水分バランスを保つ
  • 栄養を運ぶ
  • 免疫を支える

ところが腸にトラブルが起きると、これらのタンパク質が腸から漏れ出てしまうことがあります。
これが「蛋白喪失性腸症(Protein-Losing Enteropathy = PLE)」です。

どうして起きるの?

PLEの原因はひとつではなく、大きく分けると次の2つです。

炎症性腸疾患(IBD)

腸に慢性的な炎症が起こり、壁が荒れてタンパクが漏れてしまう。

腸リンパ管拡張症

腸にあるリンパ管が広がり、そこからタンパクが流れ出してしまう。
小型犬(チワワやヨーキーなど)に多いです。

どちらも「慢性的な下痢」が特徴で、体重が減ったり毛ヅヤが悪くなることもあります。

検査でわかること

メリーちゃんの血液検査では、アルブミンや総タンパク、コレステロールが低いことがわかりました。
これはPLEに典型的な変化です。
腎臓や肝臓に異常はなく「腸からタンパクが漏れている」と考えられました。

治療の基本

1.食事療法

PLEの治療でいちばん大切なのは「フード選び」です。

脂肪を抑えた消化のよいフード
たんぱく質を分解してアレルギーを起こしにくくしたフード

このような「療法食」を続けることで、多くの子が症状を安定させることができます。

2.薬物療法

ステロイド:腸の炎症を抑えるために使います。メリーちゃんもこれで下痢が落ち着きました。
整腸剤(プロバイオティクス):腸内環境を整えるサポート。
免疫抑制剤:ステロイドだけで不十分なときに追加します。

また血液中のタンパクが極端に下がると血栓ができやすくなるため、抗血栓薬が必要になるケースもあります。

治療のゴールは「安定した日常」

PLEは「治る」病気というより、「うまく付き合っていく」病気です。
定期的に血液検査でアルブミンやタンパクの数値をチェックし、フードや薬の量を調整しながら 安定した生活を長く続けることが目標になります。
メリーちゃんもフードと薬で下痢がおさまり、体調が少しずつ安定してきています。

飼い主さんにできること

毎日の便の状態を観察:形・色・回数を記録しておくと診察に役立ちます。
体重管理:痩せてきていないか、定期的にチェック。
薬やフードを自己判断でやめない:症状が落ち着いても、治療は続けることが大切です。

まとめ

「ちょっとした下痢が続いているだけ」と思っていても、そこに重大な病気が隠れていることがあります。
犬の蛋白喪失性腸症(PLE)は、早く気づいて治療を始めることで、元気な時間を長く保つことができます。
わんちゃんのお腹の調子がなかなか良くならないときは、ぜひ一度ご相談ください。