若山動物病院ブログ
犬と猫の飲水の違い

目次
犬と猫の『飲水に関する』大きな違い
実は、犬と猫では「水の飲み方」も「必要な水分量」も大きく異なります。
特に冬は、気温低下や暖房の乾燥により飲水量が落ちやすく、知らないうちに脱水や下部尿路トラブルを起こしやすい季節です。

この記事では、犬と猫の飲水の違い、冬に起きやすいトラブル、飲水量を増やすための工夫を紹介します。
犬と猫では「必要な水の量」が違います
犬
1日に必要な水の量は、体重1kgあたり50~60mLが目安です。
犬はよく飲む動物なので、のどが渇くと自分からしっかり飲む子が多いです。
猫
猫はもともと砂漠で暮らしていた動物のため、あまり水を飲まなくても平気という特性があります。
目安は体重1kgあたり40~60mLです。

実際にはそこまで飲まず、かなり少ない量しか飲まない子も多いのが現状なんです。
つまり猫は、脱水傾向になりやすい動物ってことんなです!
「飲まない猫」は特に注意が必要です
水をあまり飲まないと、オシッコがとても濃くなります。
その結果、次のような病気につながりやすくなってしまいます。
- 膀胱炎
- 尿結石(ストルバイト/シュウ酸カルシウム)
- オシッコが出にくくなるトラブル
- 腎臓の負担が増える

特に冬は、水を飲まなくなる時期なので注意が必要なんですよ!
冬に脱水が起きやすい理由
- 寒い → のどが渇きにくい
- 室内は暖房で乾燥気味 → 水分が奪われやすい
- 運動量が減る → 飲水量も減りがち
犬は比較的飲んでくれます。
しかし猫は飲水量が大きく減るため、冬にトラブルが増えます。
お水を飲ませるための工夫
犬の場合
- 新鮮な水をこまめに交換する
- 水の温度を常温~ぬるま湯に変更
- お散歩・遊びを増やしてのどを渇かせる
- フードに少し水分を足す
猫の場合
猫は「水を飲まない理由」がとても多い動物です。
以下の方法を組み合わせると、飲む量を増やしてあげましょう!
- 器を清潔にする
- 器の材質を変える(陶器・ガラスなど)
- 置き場所を増やす
- ぬるま湯にする
- 流れるタイプの給水機を使う
- ウェットフード・スープを追加してフードからも水分を補給
- 手作りの「スープ」などを作り使用する
どれくらい飲めば安心?
犬
目安量は、体重×50~60mLに近ければOKです。
猫
以下の状態が続く場合はご相談ください。
- 目安量の 70%以下しか飲まない
- 尿が濃い/回数が少ない
- トイレで踏ん張る、痛そう
- 冬になって急に飲水量が落ちた
猫は「隠れ脱水」になりやすいため、少しの変化でも注意が必要です。
まとめ
- 犬は比較的よく水を飲むが、猫は“飲まない生き物”
- 冬は犬も猫も飲水量が落ちやすい
- 特に 猫は膀胱炎や結石、腎臓病の原因になりやすい
- 飲水量が少ない子には、食事や器の工夫がとても有効
毎日少しだけ「飲む水の量」を意識してあげましょう。
気になる症状があれば、早めにご相談ください。
犬と猫の『飲水に関する』違いの比較

犬と猫の違いをわかりやすくするために、表にしてみました!
1.基本的な飲水量(体重換算)
| 種 | 1日の必要水分量の目安 | 飲水意欲 |
| 犬 | 体重1kgあたり 50~60 mL | 喉の渇きを感じやすく、比較的よく飲む |
| 猫 | 体重1kgあたり 40~60 mL (推奨ラインは50mL) | 元々あまり飲まない動物。 飲水量が少なくても平気に見えてしまう! |
2.祖先由来の生理学的違い(脱水耐性)
| 種 | 生理的特徴 | 臨床での影響 |
| 犬 | もともとオオカミ由来 → 飲水環境依存が高い | 脱水すると比較的早く症状に出る |
| 猫 | 砂漠出身のリビアヤマネコ由来 → 飲む水の量が少なくても腎臓で高度に濃縮できる | 表面上は元気でも「隠れ脱水」になりやすい。 慢性腎臓病への進行リスクが高い! |
3.腎臓の特性の違い(尿濃縮力)
| 種 | 尿濃縮力 | 臨床ポイント |
| 犬 | 中程度 | BUN/CRE上昇が、比較的飲水に左右されやすい |
| 猫 | 非常に高い | 水を飲まなくても尿量が少なく濃いまま → 結石・下部尿路疾患のリスクが増える |
4.水を飲む「行動」の違い
| 種 | 飲水行動 | 臨床的に問題になる点 |
| 犬 | 嗅覚+温度で飲水。比較的素直に飲む | 水の飲み過ぎが早めに気付きやすい |
| 猫 | 流れる水を好む/器の材質にこだわる | 「飲まない理由」が多い → 慢性脱水の温床となりやすい |
5.冬の飲水量の落ち方の違い
| 種 | 冬の傾向 | なぜ脱水になるか |
| 犬 | やや減るが、食餌量が安定していれば大きくは落ちないことも | 活動量低下・水が冷たいと飲まない |
| 猫 | 顕著に減る。 ドライ中心では特に危険となる | 暖房乾燥+低飲水で濃縮尿+尿量低下 → FLUTD を誘発しやすい |
6.病気との関連(腎臓・尿路・心臓)
| 種 | 脱水が引き起こす疾患 | 臨床上の注意 |
| 犬 | 腎前性腎障害・膵炎悪化・熱中症・腎石 | 目に見える飲水量変化で早期に気づきやすい |
| 猫 | 慢性腎臓病の進行、尿閉、膀胱炎、ストルバイト/シュウ酸Ca結石 | 飲水量低下=重大サインになりやすい |
まとめ
| 項目 | 犬 | 猫 |
| 飲水量 | 50–60 mL/kg/日 | 40–60 mL/kg/日(飲まない傾向強) |
| 行動 | よく飲む・喉の渇きを感じやすい | 水をあまり飲まないように進化 |
| 脱水リスク | 中等度 | 高い(隠れ脱水になりやすい) |
| 尿の性質 | 普通~やや濃い | 非常に濃縮 |
| 冬の危険性 | 冷水で飲まない/活動量低下 | 最も危険:低飲水× 暖房乾燥で尿石・膀胱炎増加 |
| 介入方法 | こまめに水交換・運動 | ウェット追加・スープ・流れる水・器変更など必須 |