若山動物病院ブログ
療法食は「薬」ではありません


動物病院で
「この子は、この療法食にしましょう」
と言われたことはありませんか?
そのとき、こんなふうに思った飼い主さんも多いと思います。
- 「療法食って、病気の薬みたいなもの?」
- 「一生ずっと食べさせなきゃいけないの?」
- 「元気そうだし、普通のフードに戻してもいいのでは?」
実は、ここにとても大きな勘違いがあります。
療法食は「薬」ではありません

いちばん大事なことは、療法食は薬ではないと言うことです。
薬は・・・
「飲めば効く」
「やめると効果がなくなる」
というものですよね。
でも、療法食はちがいます。

療法食は「病気のある体に、できるだけ負担をかけないように作られた特別なごはん」です。
たとえばヒトでも・・・
胃が弱いヒトが脂っこい食事を避けたり、
塩分を控えたりなどすることがありますよね。
それと同じです。
なぜ病気によって食事を変えるの?
カラダの中には・・・
「腎臓」「心臓」「すい臓」「膀胱」など、たくさんの大切な臓器があります。
しかもこれらは毎日毎日、休まず働いています。
でも病気になると・・・
「普通のごはん」が臓器が働くにあたって負担になることがあるのです。
腎臓の病気の場合

腎臓はカラダの中の老廃物をカラダの外に出す「浄水場」や「フィルター」のような働きをしています。
腎臓が弱ると、老廃物をうまく処理できなくなります。
そのため腎臓用の療法食は・・・
- 老廃物が出るのが少なくなるように工夫されている
- 腎臓に負担をかけにくい成分が選ばれている
このような特徴があります。
心臓の病気の場合

心臓は、血液を全身に送るポンプです。
塩分が多いとカラダに水がたまりやすくなり、心臓はもっと強く働かなければなりません。
心臓用の療法食は・・・
- 塩分を控えめ
- 心臓の働きを助ける栄養を追加
といった工夫がなされています。
糖尿病の場合

糖尿病では、血糖値が急に上がることが問題になります。
療法食では
- 血糖値が急に上がりにくい
- ゆっくり吸収される栄養
といった点が考えられています。
尿路結石の場合

尿路結石は「尿の中の成分のバランス」がくずれることでできてしまいます。
そのため療法食では
- ミネラルの量
- 尿の性質
これらを調整し、石ができにくい尿を作ることを目的としています。
自己判断で変えると、なぜ危険?
ここがとても大切なポイントです!

療法食は、検査結果と病気の状態を見て選ばれています。
元気そうに見えても、カラダの中では静かに病気が進んでいることがあります。
「よく食べるから」
「かわいそうだから」
「ネットで良いと書いてあったから」
こうした理由でフードを変えてしまうと、知らないうちに病気を悪化させてしまうことがあります。
療法食は「一生同じ」ではありません
もうひとつの大事なことがあります。
療法食は・・・
- 病気の状態が変われば見直せる
- 検査結果が変われば見直せる

そうなんです!
療法食は、その時のカラダの状態に合わせて見直していけるフードなのです。
大切なのは・・・
- 自分だけで判断しないこと
- 獣医師と一緒に考えること
です。
まとめ
療法食は・・・
・薬ではありません
・病気のカラダを守るための「特別なごはん」です
・病気ごとに意味のある栄養調整がされています
・自己判断での変更はとても危険です
・食事は「治療の一部」です!

フードに迷ったときは、
「他のフードに変えた方がいいですか?」ではなく
「なぜこのフードを選んでいるのですか?」と聞いてみてください。
それが、食事で健康を守る第一歩です。