猫の歯が折れた?穴が開いた?それ吸収病巣かも?症状・原因・治療と受診の目安

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猫の吸収病巣|歯が折れた・穴が開いた原因と治療・受診の目安

猫の歯に穴が開く吸収病巣の症状と治療を解説するイメージ

歯が虫歯みたいになったり、歯が折れてしまったりした。
そのような症状が見られたら「吸収病巣」を引き起こしているかもしれません。

飼い主さん

先生〜歯が折れちゃった!硬いもの噛んだのかしら?
こんなに折れてるのに、普通にご飯食べてたんです……

猫が歯の吸収病巣によって歯冠が折れてしまった症例写真
吸収病巣によって歯が内側から壊れ、歯冠が折れてしまった猫の症例

Dr.Nyan

猫ちゃんは痛みを隠すのが本当に上手なんだ。だから発見が遅れやすい病気なんだよ。

猫の吸収病巣で歯に穴が開き虫歯のように見えている症例
黄色い矢印部分では、吸収病巣によって歯に穴が開いて見えています

飼い主

えっ…虫歯じゃないんですか?

Dr.Nyan

猫は虫歯より、この吸収病巣の方がずっと多いんだよ。

猫でも犬と同じように、歯を失ってしまう原因としては「歯周病」や「破折」があります。
しかし猫には『吸収病巣』という、犬には見られない歯の病気があります。

猫の吸収病巣で歯肉が赤く炎症を起こしている状態
猫の吸収病巣で歯肉が赤く炎症を起こしている状態

まだ4歳なのに吸収病巣が見られます。

『吸収病巣』は、3歳以上の猫の半数近くが罹っている(25%〜75%とも)と言われています。
それなのに…あまり知られていない病気なんです。
しかも飼い主さんは歯周病とか歯石が原因と思い、歯のトラブルに気が付くことは多くはありません。

では猫で多い『吸収病巣』の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。

Dr.Nyan

しかも初期はほとんど気づかれないのが怖いところなんだ。

目次

猫の吸収病巣で見られる症状

飼い主

最近、カリカリをポロポロ落とすことが増えたんです……

Dr.Nyan

それ、吸収病巣のサインかもしれないね。痛みでうまく噛めなくなる子が多いんだ。

初期の症状は歯と歯肉の境目の部分の歯肉が赤くなったり、赤く盛り上がる程度です。
痛がるような素振りもないため、よく見ていないと見逃してしまいます。

しかもそのままにしておくと、次第に歯に小さな穴が開いてきます。
またフードを食べるときなどに歯に大きな力が加わると、その部分から歯が折れることもあります。

Dr.Nyan

吸収病巣の症状は歯周病の症状に似ているから
歯周病と勘違いしちゃうこともある病気なんだよ!

歯周病に似ている吸収病巣の症状

吸収病巣を起こすと痛みから、食欲が落ちるなど以下のような症状が見られます。

  • 口を痛そうにしている
  • 歯をギシギシさせる
  • フードを口からポロポロ落とす
  • 食欲が落ちてくる
  • 口周りを触られるのを嫌がる
  • 顔をこすったり口を気にする
  • よだれが垂れる
  • 前足がよだれで汚れている

リスク先生

食欲はあるけど食べにくそう,は要注意!
食べないより前に、食べ方が変わることが多い病気です。

猫の歯に穴が開いて虫歯のように見える吸収病巣の症例

猫の吸収病巣で歯が溶け虫歯のように見えている症例写真
緑色の矢印部分では、吸収病巣によって歯が溶け、虫歯のように見えています

飼い主

人の虫歯みたいに黒くなってるんですね……

Dr.Nyan

そう見えるよね。でも実際は、歯の内部が“吸収”されて壊れている状態なんだ。

緑色の矢印の部分の吸収病巣ですが、虫歯のようにも歯が欠けているようにも見えます。
吸収病巣の部分が歯石で覆われていて、よく見えなくなっていることもあります。

歯石に覆われて見えにくくなっている猫の吸収病巣
歯石に隠れてしまい、外からは見つけにくくなっている吸収病巣の症例

吸収病巣が歯石で隠れてしまい、見えません。そのまま放置しておくと徐々に病巣が大きくなり、それに伴い強い痛みを感じるようにもなります。

飼い主

歯石に隠れたら、お家では分からないですね……

Dr.Nyan

だから食べ方の変化口を気にする仕草がすごく大切なヒントになるんだよ。

吸収が進むと、歯の根の部分(歯根)を残して歯が折れることもあります。
その場合は、残った歯根に炎症を起こしてしまいます。

猫の吸収病巣の原因

吸収病巣の原因は『破歯細胞』の働きと言われています。
しかし、まだはっきりした原因はわかっていません

飼い主

じゃあ予防できないんですか…?

Dr.Nyan

完全な予防は難しいけど、早く見つけることはできるよ。

『破歯細胞』は乳歯が永久歯に生え変わる時に、乳歯の根の部分を壊す細胞です。
このように『破歯細胞』は、乳歯を抜けやすくする働きをしています。

この乳歯が生えるときに働く『破歯細胞』が、永久歯の根の部分までを壊してしまうのです。
これが『吸収病巣』と言われる病気です。

この乳歯にしか働かない『破歯細胞』が、なぜ永久歯にも働いてしまうのか?
その理由は、未だにわかっていません。

飼い主

歯磨きしててもなることがあるんですか?

Dr.Nyan

あるんだ。だから歯磨きしてるから絶対安心とは言い切れない病気なんだ

吸収病巣の治療法

リスク先生

痛みを取り除くには「原因の歯を抜く」しかありません。放置すると慢性痛になります。

治療の一番は抜歯!

『破歯細胞』の働きを止め、歯の吸収が進まないようにする治療方法はありません。
そのため、痛みを止めるなどの治療をしても再発してしまいます。
治療としては痛みの原因となる歯を抜いてしまうのが、一番の治療方法と言われています。

飼い主

抜歯ってかわいそうな気がしてしまいます……

Dr.Nyan

でも痛い歯を残す方が、猫ちゃんにはつらいことも多いんだ。抜歯後に食欲が戻る子も多いよ。

飼い主

やっぱり麻酔が心配です…

Dr.Nyan

その子の状態に合わせてリスクを評価していくから安心してね。

治療費

吸収病巣の最終的な治療は、抜歯です。
ただ高齢とか他の基礎疾患を持っている場合などでは、全身麻酔にリスクが高くなります。
そのような場合には、内服薬などで痛みを取ってあげるなどの対処療法を行います。

全身麻酔で抜歯を行うにしても、重度の吸収病巣になると歯と顎の骨が癒着しています。
そのため抜歯に時間もかかるため、それだけ治療費もかかってしまいます!

飼い主

高齢だから麻酔が心配です……

Dr.Nyan

年齢だけで判断せず、血液検査や全身状態を見ながら、その子に合った方法を考えていくよ。

猫の吸収病巣の予防方法

残念ながら、有効な予防方法はありません
そのため歯周病や口内炎など、他の口の中の病気と併発しないように注意が必要です。

定期的に歯周病の検査など、定期的な歯科検診を行います。
また歯石がついている場合には、口腔内のケアを行います。

日々の歯磨きなどのホームケアも、大切ですよ!

飼い主

じゃあ定期検診って大事なんですね!

Dr.Nyan

すごく大事。初期は症状が少ないから、見つけてもらう病気なんだよ。

吸収病巣を起こしやすい猫種

すべての猫がなってしまう可能性があります。
またドライフードよりウェットフードを食べている猫に多いとも、言われています。

Dr.Nyan

歯が折れたと思った時点で、すでに進行していることも多いよ。だから“気づいた時点で受診”がすごく大事なんだ。

猫の吸収病巣でよくある質問

猫の歯に穴が開くのは虫歯ですか?

吸収病巣の可能性が高く、虫歯とは異なる病気です。

吸収病巣は自然に治りますか?

治りません。進行するため治療が必要です。

吸収病巣はどのくらい痛い病気ですか?

吸収病巣は非常に強い痛みを伴うことがある病気です。ただし猫は痛みを隠すため、「食べ方が少し変」「硬いものを避ける」程度にしか見えないこともあります。

抜歯しないとダメですか?

基本的に抜歯が最も確実な治療です。

どのタイミングで受診すべき?

歯が欠けた・穴が開いた・口を痛がる様子がある場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。

リスク先生

「少し食べにくそう」だけでも、強い痛みを我慢していることがあります!
まだ食べてるから大丈夫とは限りません。

まとめ

吸収病巣は、口内炎や歯周病と勘違いされやすい病気です。
しかも猫に多い口の中の病気ですが、早期に見つければ痛みの少ない生活ができます。
もし、気になる兆候が見られたら早めにご相談くださいね!
元気に暮らせるよう、お手伝いします!

・歯が折れた
・歯に穴が開いている
・口を痛がる
・食べ方がおかしい

このような症状があれば、早めの受診をおすすめします。

■アニコム:このサイトにも猫の歯について説明してます!

筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

獣医師 若山正之 プロフィール写真 小動物臨床 犬猫診療

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。