Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
熟睡時の呼吸数をCHECK!|犬の僧帽弁閉鎖不全症のセルフチェック

「最近、寝てばかりいるな…」 「散歩の途中で、すぐに座り込むようになった?」
年のせいかな? と思いがちなそのサイン、もしかしたら愛犬の「心臓」が出しているSOSかもしれません。
犬の心臓病は、一度発症すると完全に治すことはできない病気です。だからこそ「もう前みたいに一緒に楽しめないのかな…」と、目の前が真っ暗になってしまう飼い主さんも少なくありません。
でも、ここで大切なことを知っておいてください。適切なケアを続けることで、心臓病と診断された後も、愛犬と笑顔で過ごせる時間を大幅に延ばすことができます。「寿命が縮まる」と恐れるのではなく、「ケア次第で長く一緒にいられる」という事実を、ぜひ前向きな力に変えてください。
実際には、お家での毎日の観察や生活環境の工夫によって、心臓への負担を減らし、穏やかな時間を長く保つことができます。
今回は、心臓病を抱える愛犬が快適に過ごすための室内の工夫や食事、そして絶対に知っておくべき「命を守る緊急サインの見分け方」までを分かりやすく解説します。
1日でも長く楽しく笑顔で過ごすために、今日からできる優しいケアを始めましょう!
Dr.Nyan
心臓病は以下のような特徴があるんだよ!
- 心臓と血管の病気は誰にでも起こる一般的な病気である
- 心臓病になっても初期は無症状であることが多い
- 心不全の徴候は潜行性である
- 発生率と重症度は、加齢とともに上昇する

飼い主
最近寝てばかりだけど、歳のせいだと思っていました…
Dr.Nyan
実は「老化だと思っていたら心臓病だった」というケースはとても多いんですよ。
熟睡時の呼吸数をCHECKしよう!
心臓病は、突然に病状の悪化が見られることもあります。
しかし多くは、徐々に悪化していくことがほとんどです。
そのため実際には、「今どのくらい悪化しているのか」を判断するのは難しいことも少なくありません。
Dr.Nyan
病状悪化を知る目安として、
「熟睡時の呼吸数」の確認があります。
熟睡時に、もしくは安静時に呼吸数を測る方法です。
これは、熟睡時や完全にリラックスしている時に呼吸数を測る方法です。
起きている時や興奮している時は、運動や感情によって呼吸数が増えてしまいます。
そのため“本当に心臓や肺に負担がかかっているか”を確認するには、熟睡時の呼吸数が最も参考になります。

飼い主
寝ている時の呼吸なんて、今まで気にしたことありませんでした…
Dr.Nyan
実は熟睡時の呼吸数は、お家でできる心不全悪化チェックとして非常に重要なんです!
心臓病が悪化すると、肺に水がたまりやすくなり(肺うっ血・肺水腫)、酸素をうまく取り込めなくなります。
すると身体は酸素不足を補おうとして、呼吸回数を増やすようになります。
肺水腫とは
肺水腫とは、肺に水が溜まり呼吸が苦しくなる危険な状態です。
重症化すると、横になれない・呼吸が速い・苦しそうに口を開けるなどの症状が見られ、命に関わることもあります。
肺水腫は数時間で急激に悪化することもあり、救急治療が必要になるケースも少なくありません。

飼い主
夜に急に苦しくなることもあるんですか…?
Dr.Nyan
はい。肺水腫は夜間や明け方に急変することもあるため、呼吸数チェックがとても重要なんです。

呼吸数を確認しましょう!
胸やお腹の上下運動を「1回」で数え、15秒間測って4倍すると1分間の呼吸数が分かります。

飼い主
1回数えるだけで、そんなに分かるんですか?
Dr.Nyan
はい。毎日記録すると小さな変化に気づきやすくなるんです。
一般的に、犬の熟睡時呼吸数は1分間に30回未満が目安とされています。
以下を参考に、毎日の呼吸数を記録してみましょう。
| 熟睡時の呼吸数(1分間) | 状態の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 30回未満 | ✅ 安定 | 安心してください。毎日記録を続けましょう。 |
| 30〜40回 | ⚠️ 要注意 | 数回測っても高い場合は早めに受診を。 |
| 40回以上 | 🚨 危険信号 | 肺水腫の可能性。夜間でもすぐに救急受診を検討してください。 |
リスク先生
40回以上が続く場合は要注意!
肺水腫の初期サインのこともあります!
また、以前より明らかに呼吸数が増えてきた場合も、心臓病の悪化サインであることがあります。
つまり「熟睡時の呼吸数」は、お家でできる心不全の早期発見にもつながる重要なチェック項目なのです。
呼吸数の増加が続く場合や、呼吸が苦しそうな場合には、早めの受診をおすすめします。
特に
- 呼吸が浅く速い
- 横になりたがらない
- 苦しそうに首を伸ばして呼吸する
- 舌の色が紫っぽい
- 夜間に急に落ち着かなくなる
などが見られる場合は、緊急性が高いことがあります。
呼吸が苦しそうな状態では、酸素室や酸素吸入器が必要になることもあります。
特に夜間や急な悪化に備え、自宅用酸素室を準備するケースもあります。
特に肺水腫を繰り返す子や、夜間救急まで距離がある場合には、自宅酸素室が命を守る準備になることもあります。
Dr.Nyan
こんな症状が見られても来院だよ!
下記のような症状や、気になることがあればご来院ください!
- 寝ている時の呼吸が速い
- 咳が増えた
- 夜間や明け方に咳をする
- 散歩を嫌がる
- 疲れやすい
- 失神した
- 食欲が落ちた
- お腹で呼吸している
心臓病による咳には、大きく2種類あります。
①乾いたコンコンという咳(初期〜中期)
大きくなった心臓が気管を圧迫することで起こります。
②湿ったカッカッという苦しそうな咳(重症・緊急)
肺に水が溜まる「肺水腫」が原因です。
特に後者は一刻を争います。夜間でもすぐに救急受診を検討してください。

飼い主
「コンコン」と「苦しそうな咳」で意味が違うんですね…
Dr.Nyan
はい。咳の音やタイミングはとても重要な情報なんです。
なお、咳は気管支炎や気管虚脱などでも見られる症状です。
特に小型犬では、心臓病と気管の病気を同時に起こしているケースも少なくありません。
ただ心臓病でも咳が全く出ない犬もいます。
「咳がないから安心」とは言い切れないため、呼吸数チェックが重要です。
どちらの咳かは自己判断せず、必ず獣医師に相談しましょう。

飼い主
「歳を取ると咳が出るもの」と思っていました…
Dr.Nyan
実際には、心臓病や気管の病気が隠れていることも多いんです。
心臓にトラブルが起きた場合には、薬が必要となることがあります。
心臓病で処方される薬は、心臓の負担を和らげ進行を抑えるものです。
また心臓病の症状を抑え、呼吸などが苦しくないようにもしています。
もし万が一、不慮の災害などで通院できず手持ちの薬が無くなってしまうと大変です。
災害や急な体調悪化、休診日などで通院できない場合に備え、一か月分くらいの薬を『お守り』として持っておくと安心です。
心臓病は薬を飲み適切なケアを行なっていても、病状は徐々に進んでいきます。
そのため、早め早めの対応が大切になります。
心臓の状態や病状を知るためにも、日々の状態のチェックと定期的な検診が重要となります。

飼い主
寝ている時なら、お家でも毎日チェックできそうです!
Dr.Nyan
毎日同じ時間帯に測ると、小さな変化にも気づきやすいですよ。
食事・塩分制限について
犬の心臓病(特に僧帽弁閉鎖不全症)は、塩分の取り過ぎが原因で発症する病気ではないため、初期(ステージA〜B1)から過度な塩分制限をする必要はありません。むしろ極端な塩分制限は、体が血圧を維持しようとして腎臓に負担をかけるホルモン(RAAS系)を早期に活性化させてしまうリスクもあります。
本格的な心臓病用療法食への切り替えは、心拡大が進んだステージB2後半〜ステージC(心不全期)以降を目安に、獣医師と相談してタイミングを決めましょう。
ただし、ジャーキーや人間の食べ物は塩分が高すぎるため、初期から絶対に与えないようにしてください。市販のおやつも塩分表示を確認する習慣をつけることが大切です。
体格の維持も大切なんです
「太り過ぎは心臓に負担をかけてしまう」と、良く言われます。
しかし逆に痩せ過ぎで筋肉量を落としてしまうと、血液の循環に影響を与えてしまいます。
また筋肉量が少なくなると基礎代謝までもが落ちてしまい、良いことはありません。
そのため「適切な運動」を行い、筋肉量を維持しておくことが重要です。
また、暑さや湿度は呼吸数を増やし、心臓へ負担をかけることがあります。
心臓に負担をかけないための室温の目安は23〜25℃、湿度は50〜60%です。特に夏場の「ハァハァ(パンティング)」は、それだけで心臓に大きな負担をかけます。「人間が少し涼しい、上着が欲しいかも」と感じるくらいの室温をキープしてあげてください。
リスク先生
呼吸が速い・横になるのを嫌がる・眠れない…。
そんな時はかなり苦しい状態の可能性があります!
ただし、激しい運動は逆に心臓へ負担をかけてしまいます。
無症状期(ステージB)では、お散歩を完全にやめる必要はありません。ドッグランで全力疾走させるような激しい運動は避けますが、トボトボ歩く・匂いを嗅ぐといった「息が上がらないマイペースなお散歩」は、ストレス解消や筋力維持のためにぜひ続けてあげてください。「疲れる前に休憩すること」がポイントです。

飼い主
安静にし過ぎても筋肉が落ちてしまうんですね…
Dr.Nyan
心臓病では「無理をさせない」と「筋力維持」のバランスが大切なんです。
適度な体重を維持するには、定期的に体重を測ることが大切です。
また同時に太ももや背中を触り、筋肉の状態のチェックを行うことも重要です。
リスク先生
太り過ぎもダメ!
痩せ過ぎもダメ!
「適切な筋肉量を維持すること」がとても大切なんです!
セルフチェックリスト
これらに1つでも当てはまったら、来院してください!
1. 呼吸や睡眠時の変化(最も初期に出やすいサイン)
[ ] 寝ているときの呼吸が、以前より少し早く感じる
(特に「深く熟睡しているとき」の呼吸数が1分間に30回以上ある場合は要注意)
[ ] 以前に比べて、ハァハァする時間が長くなった、または涼しい部屋でもハァハァしている
[ ] 横向きにゴロンと寝てくつろぐことが減り、伏せの姿勢(スフィンクスのポーズ)で寝ることが増えた(胸を圧迫しないようにするための姿勢)
2. 日常の行動・お散歩での変化
[ ] お散歩の途中で座り込んだり、歩くスピードが落ちたりするようになった
[ ] 帰宅後、以前よりもぐったりと長く寝ている(疲れやすくなった)
[ ] ジャンプしてソファーに飛び乗るのを躊躇したり、階段を嫌がったりする
[ ] おもちゃへの興味が薄れた、遊ぶ時間が短くなった
[ ] 急に倒れた・一瞬意識がなくなったことがある
3. 咳(せき)の変化
[ ] 興奮したときや、水を飲んだあとに「カッカッ」「コンコン」と喉に何かつまったような軽い咳をする
[ ] 明け方や、夜間にときどき咳をすることがある
サプリメントによる補助ケア
お薬が必要な段階に至っていない初期や、お薬の補助として、サプリメントを取り入れることも優しいケアの一つです。
心筋を保護する効果が期待される「アンチノール(オメガ3脂肪酸)」や、細胞のエネルギー産生を助ける「コエンザイムQ10」などは、初期の進行を穏やかに抑えるサポートとして活用されています。
ただし、サプリメントはあくまで補助です。使用前には必ずご相談ください。
参考コラム:僧帽弁閉鎖不全症
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。