Dr.Nyanのすこやかコラム
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犬のしこりや元気がない?それリンパ腫かも?症状・原因・治療と受診の目安

首筋や脇の下、膝の裏にコリッとした「しこり」がある!そんな症状がみられたら「リンパ腫」を引き起こしているかもしれません。
飼い主
せんせい、両脇の下や両膝裏にコリコリとしたものがあるの…
これって何かしら?
Dr.Nyan
本当ですね
リンパ腫の可能性もあるので詳しく確認しましょう
血液の中には赤血球、白血球、血小板などの細胞が働いています。そのうちの白血球の中の「リンパ球」が腫瘍化したものが、リンパ腫です。言い換えれば、リンパ腫は「血液のがん」とも言われる病気です。
ここでは「犬のリンパ腫」の症状・原因・治療法について、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
リンパ腫の型と症状
リンパ球は血液の中を流れている細胞のため、体のあちこちの組織にリンパ腫が発生してしまいます。
リンパ腫は犬では発生率が高い悪性腫瘍で、腫瘍全体の20%にもなると言われており、一般的に7歳前後から発症することが多くなります。
飼い主
血液のがんって、すごく怖い病気なんですね…
Dr.Nyan
進行は早いですが、早期発見で対応できるケースもあります
またリンパ腫ができても気付かないことが多く、しかも初期では無症状のことがほとんどです。
そのため腫瘍がある程度大きくなるまで、気が付かないことも少なくありません。リンパ腫は発生場所により、いくつかの型に分類されています。

飼い主
しこりがあるだけでも危険なんですか?
Dr.Nyan
リンパ腫の可能性もあるため、まず確認が大切です
【多中心型リンパ腫】体表面に近いリンパ節が腫れる
多中心型リンパ腫は最もよく見られるタイプで、リンパ腫全体の約80%にもなると言われています。体の表面に近いリンパ節が腫れてくるので、触った時に気付きやすい腫瘍です。
以下が多中心型リンパ腫の症状です。
- 体の表面に近いリンパ節の腫れ
- 体重が減る
- 食欲が落ちる
- 元気が無くなる
- 熱が出る

腫れを確認しやすい体表リンパ節の場所です!
腫れがわかりやすいリンパ節の場所(上図赤字箇所)は
- 顎の骨と首の境目、ヒトで言う喉仏あたりにある「下顎(かがく)リンパ節」
- 脇の下にある「腋窩(えきか)リンパ節」
- 膝の後ろにある「膝窩(しっか)リンパ節」
です。
下顎リンパ節の腫れは「だ液腺」の腫れと間違うことがあります。そのため、他のリンパ節にも腫れが見られるかを調べます。たとえば膝の後ろにあるリンパ節や脇の下など、他のリンパ節も腫れの確認です。
ちなみに各リンパ節は、それぞれ左右に1対ずつあります。

飼い主
触るとわかるものなんですか?
Dr.Nyan
はい、リンパ節の腫れは比較的触って気づきやすいです
【縦隔型(胸腺型)リンパ腫】呼吸異常がみられる
縦隔型(胸腺型)リンパ腫はリンパ腫全体の約5%に認められるタイプです。

赤丸の部分が縦隔です。
縦隔とは、左右の肺の間にある空間です。その空間(縦隔)にあるリンパ節や胸腺が腫瘍化したものが、縦隔型(胸腺型)リンパ腫です。
リンパ節の腫れにより、心臓や肺が圧迫されてしまいます。
以下が縦隔型(胸腺型)リンパ腫の症状です。
- 胸水が溜まる
- 呼吸が浅くなる
- 呼吸が早くなる
- 呼吸困難になる
- 血液中のカルシウムの濃度が高くなる(高カルシウム血症)
リスク先生
元気がない状態を放置すると、短期間で急激に悪化する可能性があります
【消化器型リンパ腫】下痢や吐き気などがでる

飼い主
下痢だけでもリンパ腫のことがあるんですか?
Dr.Nyan
慢性的な下痢は注意が必要です
消化器型リンパ腫はリンパ腫全体の5~7%に認められるタイプです。
胃や小腸、大腸やその周囲の組織に見られるリンパ腫です。消化管に出来る腫瘍の中では、このタイプのリンパ腫が最も発生率が高いと言われています。
一般的には高齢犬に出やすいタイプですが、ミニチュアダックスフンドでは若くして発症することがあります。
以下が消化器型リンパ腫の症状です。
- 下痢
- 吐き気
- 嘔吐
- 体重が落ちる
- 食欲が減る
- 血液中のタンパク質の量が低くなる(低タンパク血症)
Dr.Nyan
繰り返す下痢や治らない下痢の場合には、リンパ腫を疑う必要があります!
【皮膚型リンパ腫】皮膚の赤みや腫れがでる
皮膚に発生するリンパ腫です。
症状が細菌性の皮膚炎やアトピー性皮膚炎と似ているため、最初は皮膚病と間違ってしまうこともあります。
以下が皮膚型リンパ腫の症状です。
- 皮膚の赤み
- 皮膚の腫れ
- 潰瘍ができてジュクジュクする
- フケが出る
- 腫瘤ができる
- 痒みがある
皮膚と粘膜の境目や、口の中にも症状が見られることもあります。
「これが…がん?」と思うことがあります。
頻度は高くありませんが、皮膚病のように見えるリンパ腫です。なかなか治らない皮膚病には、注意が必要と言えます!

リンパ腫の原因
リンパ腫の中には遺伝的なものや、発がん性物質の摂取などが関係しているのではないかと考えられています。ただリンパ腫が起こる原因についての詳細は、未だ解明されていません。
リンパ腫の主な治療法と費用
Dr.Nyan
リンパ腫は抗がん剤治療が中心になりますが、ご家族とよく相談して治療方針を決めていきます
リンパ腫の治療を行う前に血液検査やレントゲン検査、超音波検査を行います。また必要に応じて、内視鏡検査や遺伝子検査などを行います。
Dr.Nyan
治療を行わない場合、多くは4〜6週間程度で亡くなるケースが多いと報告されています
残念ながら完全治癒は難しい疾患です
リンパ腫の治療は、リンパ腫による症状を改善し、生活の質の維持を目的とした緩和療法が主体になります。
化学療法(抗がん剤治療)を行う
リンパ腫は全身に起こる病気であるため、化学療法(抗がん剤治療)を行います。一般的には、数種類の抗がん剤を組み合わせて治療します。

治療には数種類の抗がん剤を組み合わせて行います。
抗がん剤の効果から、リンパ節が小さくなって完全に消えたように見えることがあります。
この状態を完全寛解と言います。
しかし残念ながら実際には「しこり」が無くなったかのように思えても、腫瘍細胞が残ってしまっています。そのため、時間の経過とともに再発してしまいます。
多中心型の高悪性度リンパ腫では抗がん剤が効く確率は、約90%以上と言われます。しかし、それでも平均生存期間は約1年ほどとなります。消化器型リンパ腫では抗がん剤の効く確率は約50%、皮膚型リンパ腫も同様とも言われています。
手術を行う(外科療法)
リンパ腫は全身に起こる病気であるため、一般的には手術で取り除く外科療法は行いません。
しかし皮膚やお腹の中に限局した腫瘤としてある場合には、手術により取り除くことがあります。例えば、お腹の中のリンパ腫により腸の運動が邪魔されて食べ物が通過しづらくなっているなどの場合です。
ただ手術で除去しても、「がん細胞の数を減らす」ことができても、その部分しか除去できていません。リンパ腫は全身に散らばっていますので、手術後には抗がん剤などの治療を併せて行うことが必要となります。
放射線療法を行う
放射線治療がリンパ腫に治療効果があると言われています。
限局しているリンパ腫や、生活の質を落としてしまうような場所にあるリンパ腫に照射することがあります。
ただ放射線療法は処置中に動かないようにするため、全身麻酔を施して治療を行う必要があります。また一度の照射で済めば良いのですが、実際には複数回の照射が必要となります。
そのため毎回の処置のたびに、全身麻酔を行う必要があります。
高濃度ビタミンC療法を行う
ビタミンCは強い抗酸化作用を持ち、リンパ腫にダメージを与えることができます。
高濃度ビタミンC療法を行うと、ビタミンCがリンパ腫の細胞の中で『反応性が高く、酸化力が強い活性酸素』を発生させます。

治療に使用しているビタミンC製剤です。
健康な細胞は活性酸素を中和することができるため、ビタミンCの影響を受けません。しかし、がん細胞は活性酸素を分解する酵素を持たないためダメージを受けます。
ビタミンC療法は、他の治療と併用することも可能な治療方法です。ビタミンC療法を行う場合には、事前の検査が必要になります。
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免疫療法を行う
外科手術や抗がん剤の治療と併せて、活性化リンパ球療法などの免疫療法を行うことがあります。
また悪性リンパ腫とわかった段階から、生活の質の維持を目的として活性化リンパ球療法を行うこともあります。
ただリンパ腫のタイプによっては使用できない場合もあるため、処置前には検査を行うことが必要になります。
食事療法を行う
「がん」になった場合は、健康な時と炭水化物や蛋白質などの栄養素の代謝が変わってしまいます。
そのため食べても食べても痩せてしまう「がん性悪液質」という状態が起こります。
この「がん性悪液質」の状態にならないためにも、また「がん性悪液質」の状態になっても生活の質を落とさないようにしなくてはなりません。そのためにはフードの内容だけでなく、積極的な栄養管理を行うことが大切になります。
食欲が落ちてしまった場合には、食欲増進剤を使うことも一つの方法です。また食欲が無い場合には、強制給餌を行うこともあります。強制給餌とは鼻チューブや食道チューブなどを設置し、栄養補給法を行う処置方法です。
これらの処置は延命で行うと考えるのではなく、生活の質の維持・向上のために行うと考えます!
リンパ腫の治療費
それぞれの治療方法により、費用が大きく違います。また治療期間にも違いが出ます。
詳細については、動物病院にお尋ねください。そして、その子にあった治療方法を選んであげて下さいね!
リンパ腫の予防方法
Dr.Nyan
リンパ腫の予防には、特別な方法はありません!
体をよく触り腫れを見つけ出す
リンパ腫は、小さなうちに見つけ出すことが重要です。
リンパ腫の多くは皮膚の近くに出来ます。そのため早期発見するためにも、日々の生活の中にスキンシップの時間を作ることを心がけてください。
早めの受診と健康診断を受ける
治療していても繰り返す下痢や治らない下痢や皮膚病など、何かおかしな症状に気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。また健康診断を受け、早めに見つけることも大切です。
リンパ腫を起こしやすい犬種
- 中高齢の犬
- ボクサー
- ゴールデンレトリーバー
- バッセトハウンド
- ミニチュアダックスフンド
- シーズー
- マルチーズ
犬のリンパ腫でよくある質問
しこりはすぐ受診すべきですか?
急に大きくなった場合や複数ある場合は早めの受診が必要です。
リンパ腫は治りますか?
完全に治すことは難しいですが、治療により進行を抑えることができます。
どんな症状で受診すべきですか?
しこり・元気がない・体重減少・呼吸異常がある場合は受診をおすすめします。
まとめ
次の症状がある場合は早めに受診しましょう。
・しこりが複数ある
・急に大きくなった
・元気や食欲が落ちている
・呼吸が早い・苦しそう
リンパ腫の多くは、スキンシップを日々行うことで腫れたシコリを見つけることもできます。
リンパ腫は治らない病気ですので、治療方法だけでなく気になることや不安なことなどご相談ください。悔いのないように、暮せるお手伝いさせて頂きます!
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、佐倉市で犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。