Dr.Nyanのすこやかコラム
飼い主様に伝えたい犬猫の病気や日常ケアについての役立つコラムをお届け♪
犬のリーキーガット|慢性下痢・皮膚のかゆみ・腸内環境との関係
リーキーガットは、ひとつの病名というよりも「腸のバリア機能が弱くなっている状態」を表す言葉です。
医学的には「腸管透過性が高まっている状態」と説明されることがあります。
ただし、下痢・皮膚のかゆみ・食欲不振などの症状があっても、すべてがリーキーガットとは限りません。
食物アレルギー、寄生虫、膵炎、慢性腸炎、感染症など、別の病気が隠れていることもあります。
そのため、長引く症状がある場合は自己判断せず、動物病院で原因を確認することが大切です。
リーキーガットとは何か?
腸のバリアは、わかりやすく言うと「必要な栄養は通し、不要なものは通さないフィルター」のような役割をしています。
健康な腸では、腸の細胞同士がしっかり並び、細胞と細胞のすき間も適切に保たれています。
しかし、腸に炎症が続いたり、腸内細菌のバランスが乱れたりすると、このフィルター機能が弱くなります。その結果、本来なら体内に入りにくい物質が刺激となり、免疫反応や炎症が起こりやすくなると考えられています。
つまり腸の壁は本来、食べ物を消化し栄養を吸収する役割を持ちつつ、有害な物質が体内に入るのを防ぐ「バリア」の役割を果たしているということです。
「リーキーガット」とは、この腸の壁が弱くなり、本来は通過できないはずの有害な物質(未消化の食べ物や毒素、細菌など)が腸から血液中に漏れ出してしまう状態を指します。

飼い主
リーキーガットって、「腸に穴が開く」って意味なんですか?
Dr.Nyan
本当に穴が開くわけではなく、「腸の壁の守りが弱くなる状態」をイメージするとわかりやすいですよ。
リーキーガットを起こした場合の症状
犬のリーキーガットはさまざまな症状を引き起こし、これらが複雑に絡み合うことがあります。
代表的な症状は以下の通りです:
消化器系の問題
飼い主さんの中には、「昔からお腹が弱い子だから」と考えている方も少なくありません。
しかし実際には、以下のような問題が隠れていることもあります。
- 軽い慢性腸炎(下痢や軟便、便秘)
- 食欲不振
- 食物反応性腸症
- 腸内細菌バランス異常
- お腹がはる(ガスがたまる)

飼い主
少し軟便だけど、元気なら大丈夫ですか?
Dr.Nyan
一時的なら問題ないこともあります。ただ、「ずっと続く軟便」は慢性炎症のサインのこともあります。
特に、
- 軟便が長く続く
- 嘔吐を繰り返す
- 食欲にムラがある
- 体重が減る
といった症状がある場合には、一度しっかり検査することが大切です。
皮膚の問題
腸の不調は皮膚トラブルとして現れることがあります。代表的な症状は以下の通りです。
- 慢性的なかゆみ・湿疹
- 外耳炎
- 足をなめ続ける
- 赤み
- 毛が抜ける
これは、腸と皮膚が免疫でつながっているためと考えられています。

飼い主
皮膚病なのに、なぜ腸が関係するんですか?
Dr.Nyan
腸は「最大の免疫器官」とも言われています。腸内環境の乱れが、皮膚へ影響することもあるんです。
全てがリーキーガットが原因とは言えません。
しかし慢性的な皮膚トラブルの背景には、腸内環境の乱れが関係しているケースがあるのは事実です。
全身の健康状態
- 倦怠感(犬が元気をなくす)
- 体重減少や太りにくさ
- 頻繁な感染症
行動や気分の変化
- 不安や攻撃性の増加
- 集中力の低下(トレーニングへの反応が鈍くなる)
免疫関連の症状
- アレルギー(食物アレルギーや環境アレルギー)
- 慢性的な炎症や自己免疫疾患
次のような場合は早めに動物病院へ
以下のような症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診してください。
- 下痢や軟便が数日以上続く
- 血便、黒い便、粘液便が出る
- 嘔吐を繰り返す
- 食欲や元気が落ちている
- 体重が減ってきた
- 皮膚のかゆみや外耳炎を繰り返す
- 子犬・高齢犬・持病のある犬で症状が出ている
よくある質問
リーキーガットは病名ですか?
厳密には病名というより、「腸のバリア機能が弱くなっている状態」を指す言葉です。
実際には、慢性腸炎、食物反応性腸症、腸内細菌バランスの乱れなど、さまざまな問題が背景にあることがあります。
軟便が続くだけでも受診した方が良いですか?
はい。
「昔からお腹が弱いだけ」と思われている犬でも、慢性的な腸炎や食事不耐性が隠れていることがあります。
特に、
- 数週間以上軟便が続く
- 嘔吐を繰り返す
- 食欲にムラがある
- 体重が減っている
場合は、一度しっかり検査することをおすすめします。
腸の不調で皮膚がかゆくなることはありますか?
あります。
腸は免疫と深く関わっており、腸内環境の乱れが皮膚へ影響することがあります。
そのため、
- 外耳炎を繰り返す
- 足をなめ続ける
- 季節を問わずかゆい
- 皮膚が赤くなりやすい
といった犬では、皮膚だけでなく腸内環境も含めて考えることがあります。
市販のサプリだけで改善しますか?
原因によります。
軽度の腸内環境の乱れでは食事変更や整腸サポートが役立つこともありますが、寄生虫、膵炎、慢性腸炎、食物アレルギーなどが隠れている場合は、サプリだけでは改善しません。
症状が長引く場合は、まず原因を確認することが重要です。
Q. どんな検査をすることがありますか?
A. 症状によって異なりますが、
- 便検査
- 血液検査
- 超音波検査
- 食事試験
- 内視鏡検査
などを組み合わせて原因を調べることがあります。
食事を変えると改善することはありますか?
あります。
特に食物反応性腸症や慢性腸炎では、食事変更が非常に重要になることがあります。
ただし、自己流で頻繁にフードを変更すると、かえって原因がわかりにくくなることもあるため、症状が続く場合は獣医師と相談しながら進めるのがおすすめです。
子犬でもリーキーガットのような状態になりますか?
子犬でも腸内環境が不安定になることはあります。
ただし、子犬では寄生虫感染や感染症など、優先的に除外すべき病気も多いため、下痢や嘔吐が続く場合は早めの受診が大切です。
筆者・若山正之(Dr.Nyan)のプロフィール

本記事は、犬・猫の診療を行う獣医師・若山正之が監修・執筆しています。
1975年より小動物臨床に従事し、現在は若山動物病院院長として地域医療に携わっています。長年の臨床経験に基づき、一般診療から予防医療、シニア医療まで幅広く対応しています。
特に、病気の早期発見・早期対応を重視し、飼い主様にわかりやすい説明と納得いただける診療を心がけています。
また、幹細胞療法や免疫療法などの先進医療にも取り組み、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を提供しています。
これまでに一般飼い主様向けのセミナーや講演活動を多数行い、正しい医療知識の普及にも尽力しています。著書に『老犬生活 完全ガイド』『犬と猫の老齢介護エキスパートブック』などがあります。
本記事は最新の獣医療知見と臨床経験をもとに作成していますが、症状や状態によって対応は異なるため、気になる症状がある場合はお早めに動物病院へご相談ください。